担当編集者よりさんのレビュー一覧
投稿者:担当編集者より
| 1 件中 1 件~ 1 件を表示 |
汝の敵を愛せ
2005/05/10 20:21
アルフォンソ・リンギスについて
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
アルフォンソ・リンギスは、こんにち、最も異彩をはなつ哲学者である。この本では、私たちを、イースター島、日本、ジャワ、ブラジルへの旅に連れだす。彼は、なみはずれた描写力で、無垢、罪悪への愛、喜びと暴力との関係、動物の宗教について、私たちに語りかけてくる。仕事や理性の領域が崩れたとき、私たちは、不安とともに、喜びに満ちた興奮や恍惚感を感じるのではないか? 私たちは、死を受け入れることだけでなく、臨終の喜びをも理解できるのではないか? リンギスは、異邦の土地での日常生活から生じる強烈な体験から、理性を出しぬき凌駕する情動や熱情を描きだす。
リンギスは、哲学のテクストの諸要素を、とくにメルロ=ポンティ、レヴィナス、ギブソン、そしてニーチェ、ドゥルーズの諸要素を、さまざまな土地や文化での日常生活から生じる奇妙な経験と混ぜあわせる。その印象的で大胆な表現は、哲学や文学、社会学といった領域だけでなく、フェミニズムやポストコロニアリズム論のあいだでも、さまざまな議論を引き起こしてきた。
この本は、哲学によって見落とされがちな、自分を浪費することの喜びに満ちた瞬間、侵害されることに身を晒すという出来事を探究している。それは、哲学が生を理解し生をよく生きる方法を提供しようとすれば、ぜひとも扱わなければならないような瞬間であり出来事である。【原書Dangerous Emotions裏表紙のエディターレビューを訳出して転載】
「自分を魅了するひとと効果的にコミュニケートするというのは、相手の統一、性質、独立性、自立性を打ち破る、つまり相手を傷つけるということである。精神的・物質的統一の裂け目を通じてのコミュニケーションは、結果を考慮することなく、渦を巻く。コミュニケーションそれ自体が「善」であるわけではない。コミュニケーションは将来への配慮をことごとく排除する。コミュニケーションは利害へのいかなる配慮も排除する。それゆえ、起こることや存在するものに直面して苦しむひとすべてに、私たちは惹かれるのだ。」(本書163頁より)
【著者紹介】
アルフォンソ・リンギス
Alphonso Lingis(1933—)哲学者
リトアニア系移民の農民の子どもとしてアメリカで生まれる。ベルギーのルーヴァン大学で哲学の博士号を取得。ピッツバークのドゥケーン大学で教鞭をとった後、現在はペンシルヴァニア州立大学の哲学教授。世界のさまざまな土地で暮らしながら、鮮烈な情景描写と哲学的思索とが絡みあった著作を発表しつづけている。メルロ=ポンティ『見えるものと見えないもの』、レヴィナス『全体性と無限』、クロソフスキー『わが隣人サド』の英訳者でもある。本書以外の著作に『何も共有していない者たちの共同体』(洛北出版刊行予定)などがある。
| 1 件中 1 件~ 1 件を表示 |
