神奈備開設者さんのレビュー一覧
投稿者:神奈備開設者
| 3 件中 1 件~ 3 件を表示 |
くまの九十九王子をゆく 第1部 紀路編
2000/07/17 20:38
県知事様の御通りでござるーー
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
西口前知事は、熊野体験博の開催と言う大仕事をされました。氏が現職の多忙な合間をぬって、熊野九十九王子社巡りの京都から田辺までの熊野古道、王子社、それに纏わる伝承などを収集し、記述された労作です。
黄門様ではないのですが、やはり知事様が来られるとなれば、地元の郷土史家はこぞって御説明に参上します。普段は不在の神社の神主さんんも待機します。普通の人には真似の出来ない古道歩き(どうもほとんどは公用車で行った?)となり、それだけに中身は充実しています。それだけではなく「御幸記」にのっとり、紀伊名所図会等の文献を丁寧に調べられて書かれています。
惜しむらくは、大阪の王子社については、道筋の説明が不足しているようです。例えば地蔵堂王子跡については「JR山中渓駅から少し行った所」とだけ記述されていますが、山中渓駅の手前2km程の住宅街の中だったり、次の馬目王子跡については、推測するだけとされていますが、本当に歩けばしかっり見える所に跡の標があります。和歌山県知事の御威光も大阪人にはあまり利かなかったようです。大阪の詳細な地図と場所は神奈備の熊野古道で補って下さい。
和歌山県に入ると流石です。ただやはり政治家か、王子社の写真にはほとんどきちんと御本人も写っておえられます。写っていない所は行かれていないのかと思わせる程です。
最後に、熊野博について一言、王子社は時代によって転々としています。そう言う意味では伝承の地が多く残っています。ところが、熊野博で分かり易くする歩いて頂く為にでしょうか、上野王子、次は叶王子と実に単純な目印が出来ていますが、実際には、津井王子が途中にあるようで、王子田と言う地名が残っています。【観光】で割り切り過ぎているのではないでしょうかと思います。よかれと思った事が歴史の抹殺にならねばいいのですが。
この書と後編の中辺路編の2冊がこの割り切りを補ってはくれていますが…。
古代丹後王国は、あった 秘宝『海部氏系図』より探る
2000/07/16 14:10
丹後の古代へようこそ
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
丹後半島周辺の古代史ロマンを伝える説話・神社・土地柄の多くを紹介している。歴史好きの方で、丹後辺りの基礎的な知識を得たいとか、丹後方面へ小旅行でも、と思っている方には、打って付けの一冊でしょう。
およそ土地勘なくして歴史は語れません。従って、住んでいる人々にとっては、何ら変哲のない所にでも、歴史を調べる人は幾度となく、足を運ぶのものです。著者の伴とし子氏は網野町生まれとの事で、丹後の山川草木と遺伝子を共有されています。さらに山城で学び、近江で生活をされています。そのような目から丹後にまつわる伝説と籠神社に伝わる海部氏系図を軸に記紀等を参照しながら、古代丹後王国の存在と歴史を明らかにしようとされたのが、この書の目的です。
女史は、始祖の天火明命を天孫として疑わず、また海部氏を語るに尾張の海部氏を語らず、大和・難波を語るに物部氏に触れず、ましてや国の先住民族の国津神との関係を語らず、ただひとえに、天孫・天火明命の開いた丹後王国を見つめています。それだけに丹後にまつわる伝説、浦島太郎、天女の羽衣、徐福、八百比丘尼、億計王弘計王、日子坐王と様々な話題が所狭しと、しかし分かり易くまとめられています。
一つ指摘しておきたいのは、女史は、卑弥呼が系図の中の「日女命」としたのは澤田某氏とされていますが、昭和50年、鳥越憲三郎氏が『おおいなる邪馬台国』の中で物部氏の系図の「日女命」を比定されています。
消された王権・物部氏の謎 オニの系譜から解く古代史
2000/07/13 14:19
鬼がささえた神・天皇家
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
今や日本の叡智となった、「あいまいさ」と「神・天皇家の永続」、の原理を縄文時代からの八百万神信仰の中にある「守り神」と「祟り神=鬼」との対峙と裏面からの双方の支えの構造にあると見抜いて書かれている。特に、物部氏の没落、大化の改新、藤原氏の興隆の古代史を通じての検証は、読む人を引きつける。
具体的には、没落したゆえ鬼と化した物部氏を中心にした日本の律令外の民人が、神・天皇家からの通行交易の自由の保証と交換に、神・天皇家をささえ続けて来た、この見えざる闇の力を、織田信長と言えども無視出来なかった、これを永続の原理とする。
壮年期真っ最中の著者会心の作である。
この種の書物としては、どうしても、状況証拠を積み上げて仮説を展開していく宿命を負わされるのはやむをえない所がある。それでも仮説に反感を覚えない程度に比較的易しく丁寧に記述されており、読者が一層日本の歴史や日本そのものに興味を持っていただけるであろう好書と言える。
| 3 件中 1 件~ 3 件を表示 |
