愛・蔵太さんのレビュー一覧
投稿者:愛・蔵太
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死の匂い
2000/07/30 06:58
シンプルながらもコワイです
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『わらの女』(やはり創元推理文庫)でおなじみの、というかたいていの人間はそれしか知らなくて、もっとたいていの人間はそれすらも知らない、フランスのミステリー作家の長編第一作(「処女作」って言葉は恥ずかしくってさー)。かっこいい科学者と結婚したわがまま系の金持ちお嬢さまが、ひどい目に会うという話。
科学者はヒロインの父親の中風を治し(結局は父親、死んじゃうんですけど)、それにひと目惚れしたヒロインが結婚する。まぁどちらも、自分にはないものを持っていた相手に惚れてしまったわけなんですが、当然のことながら破局するわけで、結婚の条件としてヒロインが提示した「研究所」の約束が果たされないまま、彼女のわがままに翻弄される科学者は、とある陰謀を考える。
ヒロインとその科学者、および彼女の世話をする女性、というほとんど3人しか出てこなくて、おまけに語られている場所(シーン)も限定されている、実にシンプルながらもコワイ話で、会話とか心理とかだけでそれなりに読める長編にしているところは、たとえばスティーヴン・キングの長編(というより、中編か)がお好きなかたには面白いと思います。ミステリーとしての趣向(仕掛け)は、ほとんど、というか、まったくありません。初期の物語展開で、ラストのシーンまで続いています。いくら何でも、これで終わるわけがないだろう、と思ったら…。
ヒロインは悪女ということになるんでしょうが、これ、どう考えても男性の科学者のほうが悪いので、「すまない、○○、すべて君のためなんだ」とこの男が口にするたびに、実はこいつ、この話の悪いこと(科学者に都合がいいこと)は全部自分の陰謀でやってるんじゃなかろうか、と懐疑的になります。ある種のフェミニストからは抗議が来そうな展開だよなぁ。
結論としては、「かなり面白い」というレベルではあります。でも、ミステリーを楽しむようには楽しめないですね。サスペンスとかスリラーといった、ミステリー周辺の話でしょうか。今だったらホラー周辺に位置する話かも知れません。
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