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変態庵主人さんのレビュー一覧

投稿者:変態庵主人

18 件中 1 件~ 15 件を表示

伝承によって洗練された俗謡の数々…英語圏の物語歌たち

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書は要するに、チャイルドという学者の編著によるイギリス、スコットランドの「バラッド」と呼ばれる伝承歌謡に関する集大成本に掲載されているバラッドの歌詞の翻訳本である。原書では、一つのバラッドについていくつものバージョンの歌詞が載っていて、しかも詳細な比較解説がなされているのだが、本書ではそれぞれの歌の歌詞を一編ずつ単純に訳出しているだけのものである。しかし、バラッド研究の定番本であるチャイルドが集めたバラッドがとりあえず全訳されるというのは、19世紀末に原著が出版されて以来、本邦初のことと思われる。
 バラッドはいわば昔のポップスといえよう。しかし、人々の間で伝承されて残るだけの生命力があるものだけあって、現代にも通用する音楽性を持っている。例えばサイモンとガーファンクルのヒット曲に『スカボロー・フェア』という歌があるが、その原曲は本書2番目にある『妖精の騎士』である。
 さて、バラッドは俗謡なので、歌詞の内容も殺人、不倫などゴシップ的なテーマを持つものが多い。38番として訳出されている『マスグレイヴとバーナード夫人』もその一例である。マスグレイウという騎士とバーナード郷という貴夫人の不倫の歌である。不倫はバーナード郷にバレて、怒った彼は二人を剣で刺し殺し、一緒に埋葬する。そのとき、夫人の方を上にしろと命ずる。その理由は、彼女の方が身分が高いから、という。かなりブラックなオチだが、この辺もバラッドの魅力である。
 できれば、原著と合わせて読むことをお勧めするが、誰かチャイルドの解説も含めた完全和訳を出してくれないかな。

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紙の本抄訳フィネガンズ・ウェイク

2004/08/20 05:37

不眠も厭わぬ勇気ある読書家のための一冊

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 『イナフ』という映画の冒頭で、主役のジェニファー・ロペス演ずるウェイトレスが「今、何を読んでるの?」と作家だといってモーションをかけてきた客に、こう答える。

「今はね、ジェイムズ・ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』。英文学で一番の難物だって聞いたけど、読めないってことはないわね」
「どのくらい読んでるの?」
「かれこれ6年」

 なかなかウィットのある会話だが、『フィネガンズ・ウェイク』が何ものであるかを知らなくてはこの会話の面白味は理解できない。

 英語圏では何冊か、『フィネガンズ・ウェイク』のあらすじや内容を解説した本が出ているが、日本では柳瀬尚紀氏の全訳は出ているものの『フィネガンズ・ウェイク』全体を分かりやすく解説した本というのは見当たらない。本気で読んだら、6年どころか一生を費やすはめになること必至のこの難解の書をその表層だけでも紹介したガイドブックがあればなあと思ったフィネガン読者は数多いだろう。

 そんな状況の中で出てきた本書は「抄訳」という形で『フィネガンズ・ウェイク』の表層をなぞったもので、本邦では初の本格的な作品紹介本と言うべきものである。本文のフォーマットは、概要解説と訳文がページ上段にあり、下段に先に刊行されている『ユリシーズ』同様、細かい訳註が付されている。原書の約半分の「抄訳」とはいえ、その訳業は『フィネガンズ・ウェイク』全章にわたっているので、作品の全体像を眺めるには十分だろう。もちろん、柳瀬訳と併せて読むのもオススメだ。難物中の難物『フィネガンズ・ウェイク』に挑戦しようという勇気ある読書家必携の一冊ではある。

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紙の本O・ヘンリ短編集 改版 1

2004/06/15 10:30

作品自体は短くとも息の長い名作揃い

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 O・ヘンリーといえば、ユーモアとウィット、そしてペーソスが彼の作品のキーワードでしょう。
 さて、今さらありきたりの書評を書いてもつまらないので、ここは定量解析をやってみましょう。解析の対象は英語の原文とします。
 では、何を定量解析するのか。
 色々考えましたが、とりあえず、原文テキストに於けるアルファベットの出現頻度を調べてみますか。

 調査対象に選んだのは、O・ヘンリーの下記3作。

 「賢者の贈り物:The Gift of Magi」
 「最後の一葉:The Last Leaf」
 「よみがえった改心:A Retieved Reformation」

 では、早速、結果をご披露しましょう。
 データは各アルファベット毎に出現回数と出現率(%)、ピリオドとコンマの使用数を算出したものです。

The gift of magi The last leaf A retrieved reformation

a 724: 8.31 786: 7.99 1000: 8.20
b 134: 1.54  145: 1.47 197: 1.61
c 200: 2.29 215: 2.19 278: 2.28
d 427: 4.90 458: 4.66 565: 4.88
e 1052:12.07 1188:12.08 1484:12.16
f 187: 2.15 187: 1.90 238: 1.95
g 174: 2.00 211: 2.15 272: 2.23
h 553: 6.34 606: 6.16 730: 5.98
i 593: 6.80 675: 6.86 815: 6.68
j 45: 0.52 30: 0.31 64: 0.52
k 81: 0.93 83: 0.84 133: 1.09
l 430: 4.93 456: 4.64 554: 4.54
m 223: 2.56 221: 2.25 403: 3.30
n 555: 6.37 728: 7.40 885: 7.25
o 649: 7.45 799: 8.12 934: 7.66
p 146: 1.67 131: 1.33 187: 1.53
q 10: 0.11 5: 0.05 13: 0.11
r 463: 5.31 524: 5.33 651: 5.34
s 540: 6.19 634: 6.45 753: 6.17
t 778: 8.93 881: 8.96 1067: 8.75
u 232: 2.66 253: 2.57 310: 2.54
v 71: 0.81 97: 0.99 103: 0.84
w 231: 2.65 272: 2.77 275: 2.25
x 15: 0.17 12: 0.12 13: 0.11
y 202: 2.32 232: 2.36 269: 2.20
z 2: 0.02 5: 0.05 8: 0.07

計 8717   9834 12201   …全文字数

ピリオド 146 160 210
コンマ  103 166 188


 集計結果を見ますと、3編とも各アルファベットの出現率がほぼ揃っているという結果が非常に興味深いというか、不気味というか…。

 出現頻度第1位は3編共に[e]でありまして、揃って12%台。
 母音系統を見ますと、頻度は[e,a,o,i,u]の順という処でしょうか。

 子音系統では[t]がやはり3編共に9%に近い8%台となっておりますな。後は[n][s][h]が6〜7%台でドングリの背比べ。さらに続くは[r][d]辺りかという感じ。

 ここで、対象3作品、各々の母音系アルファベット[aeiou]出現率を足してみますと、

8.31+12.07+6.80+7.45+2.66=37.29%
7.99+12.08+6.86+8.12+2.57=37.62%
8.20+12.16+6.68+7.66+2.54=37.24%

 3作揃って37%台という面白い結果がでました。この37%という数字を、逆に「子音が63%」と取ってみると、日本人にはなかなか聞き取りが難しい英語の子音成分が持つ情報量の多さを示していると言うことにもなりそうです。

 さて、「賢者の贈り物」はピリオド146個。つまり、146の文で書かれていると言うわけです。
 世界的名作を、たった26種類の表音文字で綴った150前後の文章で仕上げてしまったO・ヘンリー。彼はオーヘンリっぱな、いや、大変立派な作家であったということに異論はありますまい。

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紙の本フィネガンズ・ウェイク 1

2004/01/09 18:52

何回読んでも難解。しかし柳瀬尚紀の言語アクロバットで日本語の素晴らしさをRejoyceできる

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

まさか文庫化されるとは夢にも思っていなかった鯔背な柳瀬尚紀翻訳版『フィネガンズ・ウェイク』が河出から出たと聞いては買わではいられまいといつものようにインターネットで注文すればいいんだねっとばかりにbk1に注文をしてみたら本日本が本当に届いてページをめくりまくってみれば例によってめくるめく夢言語の大洪水総ルビ原書ノンブル附記仕様はハードカバーと変わらず不眠念願してまで読破めざすフィネガン読者には嬉しい版組序文はかのノーベル賞作家大江健三郎が述べるジョイスのノベルを柳瀬訳で Rejoyceすることの喜びと漢字の視覚性と多様な読み方をイイ感じで利用した柳瀬訳への大江なる賛辞なり。

『フィネガンズ・ウェイク』は「数千年の人類の全歴史を酒場の家族の一夜の夢に圧縮した」物語ここに用いられている言語は言語道断ならぬ言語横断かつ言語縦断つまりあらゆる言語と言語を紡ぎ合わせ多重の意味を持たせて夢というものを表現しているのであるがそれは例えば新潮文庫フロイト著高橋義孝訳『夢判断』上巻281ページ「夢のいくつかの意味が重なりあって層を成しているということは、夢判断のもっとも扱いにくい、しかしまたもっとも内容豊富な問題のひとつである」とか382ページ「夢の圧縮作業の有様はこの作業がこれから圧縮しようとする対象に言葉と名称とを選び与えるときにもっとも明瞭になるのである。夢というものはしばしば言葉を事物のごとく取扱う。そして言葉は事物の表象と同じような合成作用を経験する。滑稽なそして奇妙な造語はそういう夢の所産である」さらには下巻51ページ「教養ある人々の思考生活中において言葉の洒落や諺や歌の文句や格言などの果たしている役割を念頭に置くならば、夢思想の表現のためにそういう種類の変装手段がじつに頻繁に利用されようとしているのは、決して怪しむに足りないと思う」などの記載からも奇才ジョイスの目論見は明らか因みにジョイスは1882年生まれ1941年没でフロイトは1856年生まれ1939年没でほぼ同時代を生きていて『フィネガンズ・ウェイク』は1923〜1939年の間に書かれ『夢判断』は1900年の著作であるからしてフロイトから始まった精神分析学における夢理論に従ってジョイスは酒気夥しい洒落や造語によって酒場の家族の一夜の夢を『フィネガンズ・ウェイク』に映し込んだのではないかそれはともかく…

夢は連想のつながりでできていて多層構造であるとそう考えてその重なりあった層を一つ一つ剥がすように柳瀬尚紀渾身の錚々たる日本語訳を読むのがフィネガン読みの王道だろうけどあまりに層が大層重なっているのでそうそう読み切れるものではなさそうだしかし柳瀬尚紀の豪放な翻訳で日本語の表現の豊かさを Rejoyceするだけでもこの本を所有する価値はあるだろう。

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楽器の音色を目で見えるようにした珍本。シンセ奏者必携!

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

■色々な波長あるいは振動数の光の混ざり具合から、人が視覚的に感じるものを『色』という。音の場合も同じで、色々な周波数の音の混ざり具合、いわゆる周波数スペクトルの違いで、人は『音色』を分別する。「色」と「音色」の決定的な違いは、当然のことながら、目で見えるか否かである。しかし、現代ではフーリエ解析とコンピュータ技術の融合によって『音色』は目で見ることができるようになっている。

■人が『音色』というものを特に意識するのは、やはり音楽を聴くときだろう(音声会話も音声の広い意味での音色変化を認識することで成り立っているものだが、音声に『音色』という言葉を当てはめることは稀と思われる)。音楽の中から聞こえてくる種々の楽器の音、これらは『音色』の違いで識別されるわけだ。『音色』は前記したように、どんな周波数成分を含み、それらが時間によってどのように変化するかをグラフ化などすれば「見る」ことができる。

■一方、ある特定の自然楽器の『音色』を、例えばシンセサイザで再現合成したいとする。その場合、熟練した奏者ならほとんど勘だけで音色を設定できてしまうこともままあるが、楽器毎のスペクトルグラフや音の振幅の時間変化(音量エンベロープ)をプロットしたエンベロープグラフがあれば、より精度の高い音色作りができるだろうし、未熟な奏者にとっては良きガイドラインになるだろう。

■本書は70種の楽器音の音域別スペクトルと波形、音量エンベロープ、スペクトル成分エンベロープ、音高(ピッチ)の時間変化など、音色を識別、評価する上で重要な要素の測定、分析結果をグラフ化し、タイトル通り、楽器の音色を目で見えるようにしたものである。こんな本を国書刊行会が出すとは意外だが、MIDI、シンセサイザのプログラミングを楽しみとしている者としては実に有り難いデータ本が出たなあと、喜んでいる次第である。できれば、PC画面上で収録されている各種グラフを見ながら分析対象の楽器音が聞けるようなCD−ROMを付録につけて欲しかったのと、代表的なシンセサイザでシミュレートした楽器音の分析結果との比較から、生の楽器音と電子合成音との差を見せても欲しかったが、数々の有用なデータがぎっしり詰まっているので、一応満足。

■楽器とその音色そのものに興味を持つ者、それらをシンセサイザなどの手段で合成しようとする者など、ニーズは狭い範囲に留まりそうな、はっきり言って「珍本」の域に入るものかもしれないが、必要とする者にとっては実に価値ある一冊である。

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紙の本犬のことば辞典

2003/12/22 22:54

人間の本質を鋭く突いた奥の深い辞典

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 辞書事典マニアの小生も、「犬がまちがえやすいことば、にちじょうよく耳にすることば」をまとめた辞典というのは初めてである。著者はきたやまようこさんという人間の女性のようだが、犬のポチが監修を担当しているので、犬のことばの辞典としての信頼性は高い。

 本書では、項目見出し語それぞれについて、人間の子ども、大人、そして犬にとっての意味や用法が説明されている。その説明文は基本的にはユーモアに満ちたものだが、時に辛辣であり、ハッとさせられるものがある。つまり、子ども、大人、犬、三者三様の言葉の解釈から、言葉に秘められた真実が見えてくるのである。例えば、

|【えんりょ】ほしくても ほしくないふりをすること。

| 子どもは しないが 大人はする。
| 犬は されない。


 この項を読めば、どんなに可愛がっているとしても、人間の心のどこかに犬に対する傲慢があることに気付かされる。

|【もんく】こまることや、ふまん

|子どもは いったり いわれたり。
|大人は いわない、いわれないようにする。
|犬は めったにいわないが よくいわれる。


 犬も大変なのである。

 さて、数ある項目の中でも、是非読んでおきたいのは【すてる】と最後の【ん】である。何がどう書かれているのかは、本書を読んでのお楽しみ。特に【すてる】では実に鋭い語義説明がなされていて、必読である。そこには人間が人間であると認められる最後の一線が示されている。この項一つ読むだけでも、本書の奥深さが分かるだろう。

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紙の本ラッキーマン

2003/01/11 18:34

おかげで私もラッキーサラリーマン

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 30代後半のある年のある日、東京の丸善でどっさり本の買い物をして、クレジットカードの支払伝票にサインしようとペンを持った時だった。突然、私の右手はぶるぶると震えだし、自由を失った。病院できちんと診察を受けようと思い立ったのは、それからほぼ1年後だ。下された診断は若年発症の「パーキンソン病」。この問題と事実を受け入れ、実家の家族に明かすには、さらに7年間という時間が必要だった。

『ラッキーマン』に記されたマイケルの苦悩や現実としての病気との闘いは、私にとって他人事ではありません。視床破壊術と呼ばれる定位脳外科手術まで受けている彼に比べれば、ラッキーなことに、私の病気の進行はずっと遅く、軽いものだけれど、同じ若年発症患者として強い共感を覚えつつ、一気に邦訳414ページを読了しました。

 誰もいつどんな病気や障害に出会うか分からない。今はそうでなくとも人間はいつか老いて、多かれ少なかれ、否応なく不自由を強いられるものです。どんなことになっても命ある限り、生きていかなければならない。でも、生きているのは、生きていかなければならないのは、自分独りきりではないのです。家族がいる。仲間がいる。それだけでも何と人間はラッキーな生き物なんだろう。一介のサラリーマンにすぎない私も家族や職場など、周囲の理解と協力に恵まれ、さらには、お互いまだ知り合いではないけれど、マイケル・J・フォックスという同志を得て、同じ病気と闘うラッキーマンの一人として生きています。

 月並みながら……一人でも多くの人に読んでもらいたい一冊です。

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紙の本僕のマーチン君

2004/10/11 22:48

僕のはオベーション君

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 とにかく何かを書くということが好きなのだ。残念ながら小生の文章力は「好きこそ物の上手なれ」の法則からは外れているが、好きなことはやめられない。つまり、下手の横好きである。小生、自慢じゃないが、下手の横好きなら、書くことだけに留まらない。その一つにギター演奏、いや、「ギターいじり」がある。元々、下手っぴいの上に、数年前に上肢、下肢が不自由な第2級身体障害者になってしまった小生である。当然、まともにギターを弾くことは難しい。他人の耳にも音楽として聞こえるだけのことができなければ「演奏」とは言えない。しかし、それでも、ギターを爪弾くことがやめられないでいる。

 そんな小生のようなギターいじり屋にも、エリック・クラプトンのような神様級演奏者にも、ギターを愛する者には共通する思いがある。それは、


            いいギターが欲しい


…という願いである。中でも、特にアコースティック・ギターに関して言えば、

      少なくとも一本はマーチンのギターが欲しい


…である。マーチン(C.F.Martin & Co.)は1833年に創業したアメリカのギターメーカーだ。繊細さと重厚さを併せ持つ、その音色はアコースティック・ギターの「標準」とされる。安価なモデルも出ているが、マーチンならではという機種は総じて高価である。普通のサラリーマンには、ちょっと思い切りのいる値段だ。でも、やはり、欲しいものなのである。諸々の壁を打ち破って、マーチンを自らの腕の中に抱きたい。

 本書は、齢41才にして、夢にまで見たマーチンを買い込み、果てはマーチン本社を訪ねるまでに至った一人のギターオヤジの情熱の記録である。青春は年代ではない。熱い気持ちこそが青春なのだ。

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紙の本日本現代小説大事典

2004/07/11 17:22

あらゆる事典は見よう引きよう使いよう

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

■昨今の「あらすじ本」ブームに決着をつけるが如きの大冊。収録された日本現代小説作品約2200本、作家1500名。収録作品は特定のジャンルに偏ることなく、広い範囲から選定されており、手塚治虫『鉄腕アトム』や宮崎駿『千と千尋の神隠し』なども解説対象として立項されている。

■各作品には作者や発表時期などの書誌事項と共に「あらすじ」「みどころ」についての解説が付されている。また作家編では、各作家の略歴と代表作が紹介されている。従って、基本的には、この事典は特定された小説タイトルで作品項目を引いて、その作品がどんなあらすじで、どういうみどころを持っているかを知るための書籍型データベースと言えるだろう。一方、「こんな感じのストーリーの小説は?」といった作品内容から作品を特定するための機能はあまり考慮されていない。内容についてのキーワード検索くらいは付けて欲しかったところ。しかし、モノは使いようで、この事典のページをぱらぱらめくりつつ拾い読みして、これは面白そうだと思えるような未読の作品を見つけ出すといった冒険もできるだろう。税込み16800円と高価でずっしり重い本だが、物好きな小説好きには強くオススメの事典ではある。

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紙の本フランス短篇傑作選

2004/06/12 04:30

「エスプリのテロリズム」と評されたアルフォンス・アレーの作品収録

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「はい、コーヒー。あ、ミルクだけだったわよね」
「サンキュー。いつも美味しいよ、君が淹れてくれるコーヒーって」
「うふ、ありがと。で、最近、なんか読んでる?」
「うん。たまにはフランスもの、と思ってさ、ほら、この岩波のフランス短編傑作選」
「へえ〜。珍しいこともあるものね」
「いや、でも、僕が小説らしいもの初めて読んだのはフランスものだよ」
「うそぉぉ」
「いや、ほんと。ルブランのルパンとか、ベルヌの月世界旅行に海底二万哩」
「ふーん。なるほど」
「で、それから大学まで探偵小説とSFばっかり読むことになったというわけさ」
「うふふ。でも、今は英米ものが多いんでしょ?」
「まあね。でも、探偵、推理ものは乱歩とか、横溝とか国産もいいよ」
「そうなの?」
「うん、海外ものは登場人物の名前とかが覚えられなくて誰が誰だかわかんなくなったりして」
「あはは。なに、それ」
「さあね。そうなんだから、しょーがないよ」
「で、この短編集、面白かった?」
「うん」
「何が一番面白かった?」
「うーん、と。アルフォンス・アレーって人の『親切な恋人』かな」
「どんなの?」
「3ページほどしかない、すごく短いヤツなんだけどさ」
「へえー、いかにも好きそうね」
「なはは、まあね。でも、妙にインパクトあったな。ちょっとブラックでね」
「ほんとに好きそうね。今度、読んでみようかな」
「うん。じゃ、これ、貸してあげるよ」
「わあい、ありがと。あなたって親切ね」
「そりゃ、もちろん……うっ、うぐっ、ううっ、く、くるしい…」
「あら、どうしたの?」
「コ、コーヒーに何か入れたな。うぐぐぐ、く、くるしい。た、たすけてくれ」
「うふふ、毒が効いてきたようね」
「ど、どうして…」
「あたし、他に好きな人ができたの。何かとしつこい、あなたには死んでもらうわ」
「うぐぐぐぐ」
「さよなら。あなたは親切な恋人だったけど、あたしはちょっとばかし残酷なの」

*************

 岩波文庫[32-588-1]山田稔編訳「フランス短編傑作選」、なかなか楽しめます。

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紙の本フィネガンズ・ウェイク 2

2004/02/22 01:28

読み方、お楽しみはこれもなのじゃ

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 予告通り、文庫版第2分冊が出た。解説は第1分冊の大江健三郎氏に替わって、小林恭二氏。解説の最後に紹介されている小林氏の恩師の言葉は、フィネガン読みの極意だろう。ところで、前巻解説者の大江健三郎氏の名は第2分冊にもひょっこり登場している。

(彼はフォナールの吉みの増エ素敵ングの手剛い造りの詩をものし、大江に健筆を振るって三国一の郎子と呼ばれ、筒口を市井の康和に隆起せんと、思ったものの、己は常づね磐古に新奇をないまぜただけの平々凡々うす黒う酢べったい文士気取りにすぎないと気づき)
《文庫版 p.29:L.4-7》

 大江氏の他に、吉増剛造、筒井康隆、両氏の名も見える。もちろん原著者のジョイスがこれらの三氏を知っていたはずはないから、ここは柳瀬流の解釈と遊び心。他にも、女優の大空眞弓、画家で作家の安野光雅、サントリー創業者の佐治敬三、赤胴鈴之助、笛吹童子、歌手のアイ・ジョージ、松下幸之助、小野小町などの名が登場する。どこでどう登場するかは、この奇っ怪な文庫のページをめくってみるべし。これもフィネガン読みの楽しみの一つなり。

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ラッキーウーマン

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 自らの生い立ちとともに、難病であるパーキンソン病との闘いを記したマイケル・J・フォックスの『ラッキーマン』が日本でもベストセラーになっている。彼の前向きに生きる姿は、実に感動的だ。彼同様、若くして同じ病気を患ってしまった私にも大きな希望を与えてくれた。

 さて、パーキンソン病(PD)は数ある難病の中でも意外と発病率の高い病気である。他にも、マイケルのような「ラッキーマン」あるいは「ラッキーウーマン」がいても不思議はない。そう思って、探し当てたのがこのスー・ドーフィン著『パーキンソン病』である。著者自身はPD患者ではなく、別の難病患者であり、旦那さんの方がPDを発病したことをきっかけにこの病気について徹底的に調べ上げた結果がこの本になったということである。

 劇作家でもあるという著者は、PDの発見、その原因の解明、治療法の開発がどのようになされたか、どのように進んでいるかを正にドラマティックに書いていて、PDに直接関わっている人はもちろんのこと、一般の人にも読みがいのある本に仕上げられている。冒頭には、PDの病理学を一気に押し進めることになったある麻薬事件の経緯が描かれているが、TVドラマ『ER:緊急救命室』を観ているような気分でどんどん引き込まれてしまった。

 とにかく、よくここまで調べ上げたと感心させられる。自身の難病、旦那さんの難病という二重の負荷を抱えながらも、こんな本を書き上げた著者スー・ドーフィンは間違いなく見事な「ラッキーウーマン」である。

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紙の本ジーニアス英和辞典 第4版

2007/01/15 20:23

G4「ジーニアス英和辞典第4版」をピンポイントで読む

28人中、28人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 初版のG1が出てから、ほぼ20年。今や一般向け中型英和辞典の代表格となった「ジーニアス英和辞典」はG4となった。
 そのG4をぱらぱらとめくってみれば、 in 、into などの前置詞のニュアンスをイメージ図で示したり、多義語には語義展開図でその意味の派生を表すなど、辞典としての新たな工夫が見られる。そんなG4は、辞書を必要時に引くだけでなく、ランダムに開いてその見開きページに何か面白い意味を持った言葉はないか、変わった音韻を持つ言葉はないかと読む癖を持っている辞書ヲタクには少なからず、嬉しい仕様の辞書である。
 さて、G4から初めて立項されたものではないが、こんな単語も載っていますよということで、電子メールで使われるという略語をいくつか拾ってみる。例えば「I」の項から集めてみると、
IIRC : if I remember correctly=私の記憶が正しければ
IMHO : in my humble opinion=愚見では、私の意見では
IMO : in my opinion=私の意見では
IOW : in other words=言い換えれば
IYKWIM : if you know what I mean=もし私の真意をおわかりいただければ
…ということで、IYKWIM、G4は面白い辞書だということである。

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紙の本不思議おもしろ幾何学事典

2007/02/12 07:42

数学者のみならず衒学趣味人の好奇心をかき立てる一冊の事典

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 ビーケーワンに来ると、必ず「事典」と「辞典」の新刊をチェックすることが日日の習慣になっている。それで今回、入手したのがこの『不思議おもしろ幾何学事典』である。ちょっとふざけたタイトルであるが原題が『Curious and Interesting Geometry』と、そのまんまだから致し方ない。原著者は、ディヴィッド・ウェルズという人だが、偶然ではあろうが、そのウェルズという名字にSFファンとしては「ふふん」とつい口元が緩んでしまう。
 幾何とは元をたどれば、土地の測量を意味するギリシャ語に由来する漢語だそうだ。そして、幾何学といえば「図形や空間の性質を研究する数学の一部門」(大辞泉)であるが、今や、幾何学は単に数学の一部門ではなく科学の基礎の一つであり、コンピュータと幾何学の融合は新しい芸術、エンターテインメントを生むまでに至った。そんな幾何学の研究対象である「幾何学図形の不思議さおもしろさを紹介するのが本書」と言う著者ウェルズ氏の本に、捏造やデータ改ざんはあるまい。
 さてページを開いてみよう。見出し語として出てくる幾多の図形や定理の名前だけでも面白い。「アンデュロイド」「3次元ビリヤード」「ッジオデシックドーム」「追跡曲線(犬の追いかけ合い!)「デルトイド」「トラクトリクス」「ドラゴン曲線」「ナポレオンの定理」「ニコメデスのコンコイド」「ネフロイド」「8角星」「光の届かない部屋」「美術館の定理」等々、これらの見出し語で「一体全体、どんなんや?」と湧いてこなきゃ読書人の名折れである。そして、その好奇心を満たすにはもはや本書を手に取るしかないのである。

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紙の本日本俗語大辞典

2003/11/20 01:40

日国、広辞苑、大辞林、新明解だけが日本語辞書じゃない

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◆例によって、ご当地bk1で東京堂出版から米川明彦編『日本俗語大辞典』が出たと知ったので、辞書事典マニアの小生、早速入手した。編者が序文で書いているようにこのクラスの「俗語辞典」は本邦初と言って間違いないだろう(『隠語辞典』というのは以前、同じ東京堂から出ていたように思うが)。英語圏では腐るほど出版されている俗語辞典がなぜ我が国にはこれといったものがないのか、小生、辞書の面白さに魅せられて幾星霜、ず〜っと不思議に思っていたところ、やっと出た出たやっと出たと、重い便秘が一気に解消された気分である。

◆収録されているのは、明治から平成に至る時代の俗語6300語と用例12000となっている。ざっと見たところ、もうちょっと比重を現代に近いところにおいて欲しかったというのはあるが、「本邦初」の俗語辞典としてはまずまずの線である。各項目の構成は、見出し、一般表記、品詞、語義、初出時代、関連語に続いて、年代順に挙げられた用例となっていて、見出し語の意味と歴史が追いやすいものになっている。

◆そんなこんなでちょっと拾い読み。「せこい」は勢子(狩りに駆り出す人足の意)が語源で、初出は1914年か。「まじ」はもちろん、真面目の略だが、初出は江戸時代寛政年間の頃の楽屋言葉だそうだ。「まじ切れ」は1998年。しかし、小生、「きもい」(気持ち悪い)は最近のものかと思っていたが、本書によると1979年初出だという。意外と古いんだ。これには小生、「へえ〜」と、ちょっと驚かされた。てなわけで、いろんな発見のある辞書だから、一冊持っておくというのもいいんじゃない?と言ってみたりするのである。

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