森のくまさんさんのレビュー一覧
投稿者:森のくまさん
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波に座る男たち
2005/08/13 10:19
SFではなくても
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
くじらと聞いて何を思い出すだろう。ヤング?シーゲル?大原まり子?SFファンならそんなところだろうか。でもこれからは梶尾真治の名前も思い浮かぶことになるだろう。
物語の構造は簡単で、借金で首の回らなくなった板さんを語り手に、ヤのつく人たちが日本の伝統食文化である鯨を食卓に復活させるべく鯨取りに乗り出すという話。思い起こすと、子供のころ給食ではくじらのケチャップあえとか竜田揚げとか出されたっけ。
日本では世界各地の美味いものが食べられる。ところがその影で食べられなくなっているものもある。ドードー鳥の轍を踏むことは許されないが、それを犯さぬ限りでは食は文化であり、他者から押し付けられるものではないとも言えるのだ。また、個人的には昔から感じているのだが、牛や豚と鯨の境界線に関する、独善的とも言える解釈の違いには釈然としないものがあるのも事実。何が正しくて、何が正しくないかとかではなく、食に関すること、人間の環境に対する考えのこと、いろいろなことに思いを馳せることになる1冊。
梶尾真治といえば、どちらかといえばセンチメンタリズムの強い作品を思い浮かべてしまうが、これはユーモアにふった作品でところどころ笑わせてくれる。またファンタスティックな要素はないのだが、そんなことはどうでも良くなる、大人向けの御伽噺として玩味していただきたい。
ショートショートで日本語をあそぼう
2003/12/29 21:35
あなたは自分の使う日本語に自信がありますか?
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本書はベテランSF作家の著者が、日本語をネタにした旧作の再録と日本語の誤用をテーマにした新作を交互に配置して、各編に解説を加えたショートショート集である。
旧作は過去の傑作を集めてあるためそれだけでも十二分に面白い。でも実際に読んで『どきっ』とするのは誤用ショートショートのところで、正直読んでいて冷や汗が出る。アマチュアではあっても何らかの文章を書いているものにとっては、心臓に悪いというかなんというか、「あ痛ぁ」というところが多い。作中でいろいろな言葉についておかしいところを取り上げているのであるが、普段何気なく使っている言葉でも存外間違いが多いことに驚かされる。
もちろん言葉というものは生き物で、時の流れと使う側の人間によって変容していくのが当然という部分は確かにあり、著者も重々承知の上なのだが、それでも今の日本語のおかしさには不合理なものを感じているのであろう。それは作家という言葉を操る仕事であれば当然だと思うし、意識して変形して使う場合はあるにしても、やはり一読者としては作家の方は正しい日本語を使って欲しいと思うのだ。またそれは巻末にある『ニホン語』という作品のように、活字媒体から言葉が変形していってしまってはなす術が無いだろうし、そこだけでも正しい言葉を使うことで現代の日本語を守っていくことができるのではないかと思うからでもある。
常日頃からもっとセンシティブに文章は書かなくてはいけない、そう強く感じさせてくれる、落語的でとても面白いショートショートと、まじめな日本語に対する含蓄をうまくブレンドした好著。
本書を読んだ後でも、あなたは自分の使う日本語に自信がありますか?
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