宮島理さんのレビュー一覧
投稿者:宮島理
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2003/04/24 16:17
最新の学説を交えた「愛すべきバブル」研究の知的エンターテインメント
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古くはチューリップバブル、南海バブル、鉄道バブル。最近では平成バブルやネットバブルなど、バブルは歴史の教訓とならずに繰り返されてきた。
本書はバブルという現象に関する、最新の学説を集めた知的エンターテインメントである。バブルかどうかは、それが弾ける前に判定することができるのか。バブルは未然に防ぐことができるのか。そもそもバブルは存在するのか。人々がバブルだと思いこんでいるだけで、合理的な現象ということは考えられないか。
ある学説によれば、ネットバブルと言われた時期のイーベイの株価は、意外にも適正な水準だったという。当時の株価からは、71%という高水準の期待利益成長率が導き出されるが、実際の成長率はその期待を上回った。イーベイの株価はその後も高水準を維持しており、今のところは学説を裏づけている。
高騰した株価が弾けた時に、合理的な理由があれば、ある程度予測もできる。しかし、株価に大きな変動があった過去のケースを調べていくと、特に大きな戦争のニュースもなければ、期待を大幅に下回る利益発表もなかったというケースが結構多い。たとえば1987年10月19日のブラックマンデー(ダウ・ジョーンズ工業株平均が23%近くも下落)では、価格変動についての合理的な原因は見あたらないという。
不確実性・曖昧性による株価変動への影響と、そこから導き出されるバブルの法則の秘密。結論部分では逆説的なメッセージが提示されるが、詳しくは本書をご覧いただきたい。
最後に、筆者はバブルの持つフロンティア性の意義を説いて終わっている。カリフォルニアのゴールド・ラッシュに見られるような、アメリカ的フロンティアとリスクを厭わない精神が本書には流れている。「愛すべきバブル」を研究した本だと言えよう。
(宮島理/フリーライター 2003.04.23)
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