山村 芙蘭 さんのレビュー一覧
投稿者:山村 芙蘭
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無影灯 上
2001/02/07 16:51
ラブロマンスと医療批判の融合作
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医学部出身の渡辺淳一氏の初期の作品には、「死化粧」、「ダブルハート」など、医療現場を舞台とし、現代医療制度を批判的に小説化したものが多い。
「無影灯」は、1971年1月号から「サンデー毎日」に連載された。渡辺氏にとって初めての週刊誌連載小説だったためか、私立病院を舞台としながら、全体はラブストーリーの手法で描かれている。
主人公の直江庸介は大学病院で講師までした外科医だが、なぜかその栄進の道を捨てて、個人病院の医師となった。看護婦倫子は、ハンサムな直江の持つ影にひかれて付き合い始める。しかし、直江には意外な秘密があった。その秘密とは……。
渡辺淳一といえば、言わずと知れた「恋愛小説の大家」だが、後の大家のラブロマンス路線を予感させる兆候が「無影灯」にある。しかし、「失楽園」や「化身」の主人公が女性につくしたり(性的に)奉仕的であったりするのに比べると、本作品の直江医師は、デートも一方的で、かなりナルシストである。ニヒルさが男のカッコ良さであるような印象さえ受ける。渡辺氏の恋愛観の変化を実感できる1冊です。
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