クラリスさんのレビュー一覧
投稿者:クラリス
隣の家の少女
2003/02/26 10:28
最もありうる可能性を秘めた現代の童話?
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すでに、本の内容を、何となく書評などで知ってから読んだが、これはまた、予想を超えた。ページをめくるたびに、まさかここまでしないだろうという予想を超えた展開に再びページをめくる。何か救いはあるだろうと、期待しながらページをめくり、再び裏切られる。救いはない。にもかかわらず、読み続けてしまう。やめることは不可能。すばらしい?小説だ。十数年前の、あの事件を思い出すのは、日本人だからだ。プロローグは、現実を彷彿とさせる。なぜなら、あの事件の少年たちは、結婚して家庭を築いたもの、居酒屋を開き、客に「おれ、あの事件の少年なんだ」と自慢げにうそぶくもの、自宅に引きこもっているものなど、さまざまだ。小説は終わっても、現実は終わらない。きっと♂なら、必ず、こういう願望を一度は持つのかも…それが怖い。
悪意
2002/02/13 13:28
悪意をもつのはヒトの原罪か?
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先の2人の方の書評の通り、二人の登場人物の手記や告白という形で物語は進んでいく。推理小説としてはなかなか読ませる秀作であると私は思う。先日、テレビでもドラマ化されたので読んでみようと思った人も多いはずである。読んで損はない。
さて、推理小説としての構成は面白く、殺害方法、トリックも楽しめる。では、肝心の動機はどうであるか? この動機こそが、タイトルの「悪意」である。
悪意に理由はいらない。誰でもが心のどこかにもっているものであり、誰でももっているのならば、誰でもがその悪意を動機として人を憎むことがあるということである。殺人を行うかを別として。
また、「教育は錯覚である」というような意味の下りが本文中に出てくるが、何となく読後に頭に残るフレーズである。
また、加賀刑事の「私の人生最大の敗北である」というような意味のフレーズも同様に頭に残る(どちらも、あまり、推理の解明には関係がないが…二人の登場人物の生きてきた過去? を的確に表す文章であると思う)。十分に人に勧められる本なので★は5つ。
「こころ」はどこで壊れるか 精神医療の虚像と実像
2001/09/01 11:17
シロウトの偏見、誤解…
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テレビでの心理クイズや、ワイドショーの精神科の先生の話や、重大事件が起こるたびに犯人は精神病だとか、多重人格のホラー映画などばかり見ている私を含めた一般人は、精神病というものに大変な誤解、あるいは偏った認識をもっていることに気づくかせてくれる本である。出版されたばかりで話題も新しく、また身近なことについて、滝川先生と佐藤さんの対話で一般人にも分かりやすく話は展開していく。
そして、自分の中にある意識していない、あるいは無知から来る一般人の罪のない差別に気づく(少し大げさ…)。
なるほど、そうなのかと、単純に精神医学について(少し)分かる大変良い啓蒙書であると思う。また、これを呼んでからマスコミやワイドショーなどを見ると、自分が報道や情報をきちんと認識できる(多分)。
とくに、心の折り合いということについての話は、誰もが自分のこととして考えながら読めて、何だかすっきりする。
ともかく、必読の書である。
白い巨塔 上巻
2001/08/15 23:43
医師の資格とは、医術、医学、医道の3つ。
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はっきり言って、圧巻。医者とは、人として生きるために必要なこととは…全てがここにある。人の命を預かる尊厳すべき白い巨塔である大学病院での、欲望と狡猾さ。はたして、医道とは…。
取材力のすごさ、文章の力強さ、校正のすごさ。どれをとっても凄く、読み始めたら止まらない。上・中・下巻とドンドン読み進める名作。
最近の医療ミス、高度に進んだ医療、クローンなどの倫理問題。全ての原点が、既に36年前にここで語られている。年輩のヒトは、亡き田宮二郎の映画やドラマでご存じのはず(最近、ドラマがDVD化されたはず…)。
こういった骨のある原作のドラマがあればと思う。無ければ、原作を読もう。特に、若い人にお勧め? ともかく、だまされたと思って読んでも間違いない。
★10個は無いので、★5つ。
図説奇形全書
2001/06/22 00:45
ヒトって凄い???
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図説っていうぐらいで、写真は沢山。レンタルビデオ屋の名作? コーナーで「フリークス」という映画があるけど、これを見て、この本を読むとなお良い。本の中でもこの映画については触れている。
ヒトという生き物は何と凄いのかと感動する。そして、ヒトの内に秘めた残酷さも分かる。そしてそれらは、自分の中にあるのだと気が付く本です。興味本位でももちろん良いと思います。
最近のベストセラーで「五体不満足」というのがありましたが、これは過去??? の「裏五体不満足」。本の中のこの彼が、すらっとした美人と結婚して子供を二人作って、アメリカの人気者であったなんて!!
福祉が充実した現在、何処にも見せ物小屋なんて無い現在、全ての奇形と呼ばれるヒト達が本を書いてベストセラーになることが不可能な現在、医学が進歩した現在だからこそ、この本が意味する物は大きいかも。
と云うことで★6つはないので、★5つ。
マイ・アルファベット トレヴァー・ブラウン画集
2001/09/28 12:55
あなたのしらない世界…
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まってました、重版です。女の子が、しばられ、傷つけられている、包帯まいている? こんなことされている、あんなことされている…。他に表現方法がない。でも、芸術です。ちょっと(かなり?)危ない系の画集です。表紙のイメージはちょっと違うかも…。
アルファベッド順に、画にタイトルが付いています。ちなみに、重版の表紙は、上図の茶色ではなく、黒色になっています。区別が付く? 同時に、フォービドゥン・フルーツという画集も発売されました。2冊同時に鑑賞するのが通です。ちなみに、2001年10月頃?、メディカル・ファンという題名のこれまた別の画集も発売されます。ちなみに、トレヴァー氏のファンは、吉田良一や四谷シモンの少女関節人形のファンも多いとかいうことで、やっぱり、ちょっと危ない系の人は、一家に一冊必要です。
一度、あなたの知らない世界へ、この画集を買っていらっしゃい。画集の中の女の子達が歓迎してくれます。
饗宴
2001/08/15 23:28
プラトニックラブの語源??
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云わずと知れた哲学者プラトン(プラトーン)。大学で哲学、社会学、心理学等々専攻すると、必ず一度は出会う本。しかし、読んだヒトは何人いるのだろうか?まあ、少し興味を持ってもらうためには、一つエピソードを…。
原始のヒトは男女の区別がなかったのだとさ(アンドロギュヌス)。ところがヒトは罪を犯して、怒った神様が真っ二つにしたのだとさ。そして、その時以来、ヒトには男女の区別が出来たとさ。ところがヒトは、原始のヒトの姿を懐かしみ、一つに戻ろうとして、男女が合体するように愛し合うようになったとさ。つまり、男女の性愛は、ヒトが原始の姿に戻ろうとする行為であり、性愛とは二つに分かれたヒトを本来の姿に還元する行為であるとさ(何とすばらしい解釈…)。
やはり、偉大な哲学者は考えることが違う。でも、ヒトは罪を許されず、一つになれずに彷徨うのか?
野獣死すべし
2001/07/22 00:49
ドブネズミ…
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ハードボイルドの傑作。大藪春彦のデビュー作品。いわゆる松田優作主演の映画の原作。ただし、少しばかり映画とは違う…。
小説の方が主人公がハードボイルドに徹している。画一化され、専門化されたこの社会はドブネズミの社会だ。首からネクタイを提げて、毎日荷物のように満員電車のラッシュで揺られ、上司にペコペコして自分を見失ったあなたは、主人公、伊達邦彦のように、野獣になり社会に復讐するか?
人畜無害のブロイラーより、死すべき野獣は美しい。
図解クローン・テクノロジー “複製人間”は現実になるか!?
2001/04/11 14:30
図説は分かりやすい
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クローンブームの昨今、クローン本は翻訳を含めてかなり出ていますが、この本は一項目2〜3ページで、しかも図がついているので、初心者でも分かりやすい。また、こんなことがあり得るというような少しSF的な話題や、身近なマンガ、アニメにもこんな所にクローンのキャラクターがいるというような話題もあり、生物学や生殖、発生について知らなくても、十分に楽しめる。文章ばかりの活字本はちょっと苦手という人は、この本から読み始めると良い。
我らが隣人の犯罪
2001/03/09 16:59
我らが隣人の犯罪
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幾つかの短編が集まった本です。表題のデビュー作もいいですが、なんといっても「サボテンの花」はいいです。卒業間近の小学生の生徒達が、親や教師の意向に反してサボテンの観察を卒業研究に選んだ。その真相をめぐるお話です。最後はとても感動します。まあ、内容は書けませんが…。このサボテンの花だけでも読む価値があります。
「心の悩み」の精神医学
2001/09/05 20:51
心の悩みは人それぞれ
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『心の悩みの精神医学』とあるが、いわゆる鬱病や分裂病の解説の本とは違う。
著者の野村先生の(心の悩み外来)と野村先生自身が名付けた精神科外来を訪れた8人の患者さんの診療・治療の例をあげながら、精神病、神経症などを分かりやすく解説している。
何だか読んでいるうちに、ああ、こういう事もあると思ってします(私自身は精神科を訪れたことはありませんが…)。
何といっても、野村先生も文中で云っているが、文にユーモアがある。例えば、患者さんの名前(仮名)など。けれども、決してふざけているのではなく、わかりやすく読みやすいという意味である。
心の悩みが無くとも? 一読に値する本である。文中の所々にある精神医学ノートという精神医学用語や病名の判定の基準だけでも、ちょっとした価値がある。
また、精神科の医者の診療・治療のちょっとした苦労話なども所々に載っており、医者の先生も心の悩みがあるのだな?と、ちょっと安心?した。
マンガ心理学入門 現代心理学の全体像が見える
2001/09/01 11:28
マンガだからとあなどる無かれ…
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大学で心理学を専攻しているとか、臨床心理士になろうとかではなく、何となく心理学について興味があるとうことで、この本を読む(見る)動機は十分である。しかし、マンガだからとあなどる無かれ。
ほぼ、心理学についてのすべてが流れとして書いてあり、高いビルの上からマクロ的に心理学という町並みを見ているようなわかりやすさがある(変な比喩?)。心理学の現在の分野?、学派?についての特徴、歴史、違いなどが端的に(少し)分かる。
これを読んでから、ほかの心理学の本や、精神医学の本を読むと、なるほどこの著者は、この学派の考えをもっているので、こういう本を書くのだなとか、この人はフロイトの精神分析が嫌いなのだななどと、結構、分かってしまうかも?
図が西洋的であるが、ウィットに富んでいて、図を見ているだけでも楽しめる。ちなみに文字は少ないので、日頃本を読まない人にも抵抗が無く読める(という心理作戦で書かれたのかも?)。
パレスチナから来た少女
2002/05/24 11:54
小説と現実の間で…
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最近の中東情勢を感じつつ、この小説が書かれた当時の頃を思い、まだ何も解決していないことを残念に思う。
リアリズムのあるスパイ小説?という感じもあるが、その一方で、フィクションであるということを読みながら感じてしまうのは、少女が主人公だからであろうか。
テロリスト、あるいは、殺し屋である少女の側から書いてあり、その正当性や理由が、テレビのヒーロードラマのように勧善懲悪的である。これは、世界の紛争に巻き込まれた少女の恋愛小説なのか、それとも、世界紛争を糾弾する小説なのか、世界紛争の裏側を描いたスパイ小説なのか、完全なるエンター小説なのか、どう考えるかは、読者一人一人の価値観の違いになると思う。
書物の王国 9 両性具有
2001/06/22 00:36
ヒトが愛すること、それは…
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アンドロギュヌス、つまり両性具有に関する文章をランダムに集めた者。古典的なものが多い。やや難解な文章も多い。けれども、全ての作品がそのまま載っているのではなく、上手い具合に抜粋してあるので、良い。
これを読んで、本作品を取り寄せて読んでも良いかも。まあ、ちょっと知的になれるし、所々思いもよらない文に感動するかも。
…男女が愛し合うのは、昔ヒトはアンドロギュヌスだったからだと云う(本当?)。愛するというのは、男と女に分かれたヒトが、元に戻ろうとする行為であるとか????
遺品
2001/12/18 10:55
やっぱり、ホラー文庫だ。
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女優フェチ? の実業家? の遺品を管理して、展覧会を開く学芸員の女性にまつわる不思議な出来事の数々。読みやすく、徐々に引き込まれていくのだが………。
あくまで角川のホラー文庫であり、推理小説ではない?? ことに注意して読まなければいけない。ついつい犯人は誰かとか、どんな謎解きがあるのかと期待してよんでいくと、だんだんと超次元の怪奇の世界に入っていき、こんな結末あり? と思ってしまう。何だか、入り口は事件であり、謎解きなのに、だんだんと怪奇ホラーの結末になっていくところが、以前ブームになったツインピークスに似ている展開???? だ(誰か覚えている?)。長編小説であり、事件、動機、謎解き、探偵役と一応に要素はそろっているし、舞台設定が学芸員という特異なだけに、怪奇ホラーではなく、推理ミステリーで展開して欲しかったと個人的には思う。ということで★は3つ。
