トリフィドさんのレビュー一覧
投稿者:トリフィド
2003/11/26 22:51
PerlとRubyを行ったり来たりする人に
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こういう切り口の本を探している人は多いのではないだろうか。
Perl者のためのRuby入門である。
プログラムのさまざまな細かい構成要素について、Perlのコードと
Rubyのコードを対比させて説明しており、すでにPerlを習得した人
にとっては、かなり良いRuby入門書になっているのではないだろう
か。クセの多い言語であるPerlをなんとか御している者にとって気
になる点である、Rubyのクセや特徴、妙な所や落とし穴についても
ちゃんと触れられている。
つまり、Perlでのこの処理に相当するコードはRubyではどう書くの
か? どう書くがもっとも最適なのか? というような関心に応える入
門書なのである。
また、本書は、入門段階を過ぎRubyを一人前に操れるようになって
もから使える本である。
RubyのコードをPerlで書き換える時や、逆にPerlのコードをRubyに
移植する際などに、手っ取り早い相互参照として役に立つのだ。
薄い本であることもあり(その分安い)網羅的ではなく、個性の強い
本であるが、役に立つ使える本である。
2003/06/11 23:23
最近のPCの中の人
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PCをめぐる技術の移り変わりはまさに日進月歩で、ちょっと注意を
払うのを怠っていると、聞いたこともない方式が主流になっていた
り、自分のPCが「前世代の遺物」になっていることに気がついたり
して、目をまわしたりする。
で、最近、ちょっと時代に遅れてるなと認識したので、このムック
に当たってみたわたしである。
この本は、自作系ユーザのためのPC雑誌『日経WinPC』の技術解説
系の連載記事「WinPC Labs」の1年分をまとめたものである。
CPU、メモリ、ディスプレイから、デジカメやADSLまで、PCの内部や
その周辺で用いられているさまざまなテクノロジーの原理や仕組み、
それを取り巻く現状、将来的な展望などが、適度に詳しく、しかし
専門的にはならない程度のレベルで解説されている。PCの中身がど
うなっているのか知りたい人の本棚には、必ず置いてあって然るべ
きムックではないだろうか。
さて、この本に収められている記事は、2002年12月号までの分との
こと、書かれてからすでに1年ほどが過ぎ、この本の内容自体が、
ジリジリと古くなりつつある。しかし、1年程度昔に出てきた技術
は、まさに今現役だったりするものだ。まだまだ捨てて良い古物と
化してはいないし、最新テクノロジーに追いつくベースとして十分
に意味がある。本書をまずはガリガリと読んで地歩を固め、そして
あとは雑誌を読んで、最新テクノロジーをキャッチアップしつづけ
るのだ。
紙の本BLAME! 9
2002/12/25 23:46
真っ黒な本
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最近ますます凄味を増して目が離せない、SFコミックの傑作の最新
巻だ。
まずは前巻につづき、主人公霧亥が怖い! ますます怖い(^◇^;)。
そして霧亥の歩みと共にさまざまな顔を見せる都市構造体の姿は、
ますます磨きがかかってすばらしい。じっくり眺めてしまおう。
奇妙な相棒を得たものの、霧亥はふたたび1人に戻り(?)、物語は1
巻の雰囲気に戻った感じだ。そして出会う、さまざまな存在たち、
さまざまな思い……
また、暗闇の使い方や空間の描き方もすばらしいのだ。闇また闇、
そこをわずかに照らし出す光。闇の中にポツンと輝くディスプレイ。
暗闇の中に霧亥の顔だけがボウッと浮かぶ。あるいは、途方もなく
巨大な施設の中を孤独に歩む霧亥の小さな姿。息詰まるような狭い
空間から途轍もない大空洞へと息を呑むような大転換。SF的風景を、
これでもかと見せてくれる。
中でも、この巻の最終話「LOG.57 観測者」は、一種詩情さえ漂わ
せる凄味のある物語であり絵である。
次巻にますます期待がかかる、目が離せないシリーズだ。
紙の本FreeBSD expert ワンランク上のFreeBSDユーザを目指せ! 2003 徹底検証!FreeBSDの潜在能力 FreeBSDで作るイントラネットサーバ
2002/12/03 04:27
FreeBSDのムック最新版
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PC-UNIXというと、とかくLinuxばかりが脚光を浴びているが、かの
BSDの流れを汲むFreeBSDも、地味ながら堅実なシステムとして絶大
な支持を得ているUNIX系オペレーティングシステムである。
PC-UNIXに入門しようとしている人にも、Linux使いの人にも、ぜひ
FreeBSDをおすすめしたいと思う。
本書は、1年前に出た『FreeBSD Expert』の第2弾である。第1弾と
同様、非常に密度の高い内容で、入門者も熟達者にもおすすめの1
冊だ。附属のCD-ROMは、最新版であるFreeBSD 4.7-RELEASE。この
リリースの入手方法として、本書は現在ベストのチョイスであろう。
掲載の記事もすばらしい。FreeBSDのインストールや解説といった
基本事項はもちろんのこと、FreeBSDを使ったイントラネットの構
築のガイド、IPv6の話題、FreeBSDを内部に持つMac OS X Serverの
解説、帯域制御メカニズムDummyNetの使いこなし術、そして現在開
発が進められている次期バージョンFreeBSD 5.0のレポートと、
読みごたえのある内容である。
ベテランのFreeBSD者も満足の面白い本である。お見逃しなく。
紙の本新編別世界通信
2002/11/13 12:58
色々な本が読みたくなるブックガイド
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『別世界通信』は、昔から定評のあったファンタジーのブックガイ
ドだ。その方面のコミュニティでは、基本図書などとも云われてい
たように思う。本書は、その25年前の本のアップデート版である。
わたしもファンタジーは結構読み込んでいるつもりなので、「いま
さらブックガイドなど……」という気持ちを抱きつつ、いちおう読
んでおくか、くらいのつもりでこの本を紐解いたのだが……いや、
とんでもなかった。
ファンタジーというものは、本来とても間口が広いものだったのだ
なと、いつの間にか見失っていたことを思い起こさせられた。いつ
の間にかファンタジーというと『指輪物語』のようなエピックファ
ンタジーばかりを見るようになってしまい、視野が狭くなっていた
ことに気づかされてしまったのである。
本書は、神話や伝承、ヨーロッパでの東洋への憧れ、ウソの解説書
などまで、実に多彩なファンタジー世界を概観しているたいへん興
味深い本である。さまざまな世界があるのだということをあらため
て思い起こさせてくれる目から鱗が落ちる本であり、そして、本当
に色々な本を読みたいと思わせてくれる素晴らしいブックガイドで
ある。
書誌情報が古いなど、編集にもっとしっかりしろと云いたいところ
はあったが、まあ大した難点ではない。ファンタジーを読むもの皆
に読んでほしい本である。
紙の本子どもと性被害
2002/09/16 23:57
ある悲惨な現実の一側面
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子どもに対する性的虐待についてのルポルタージュである。
子どもに対する性暴力は、情けないことに、マスコミでは「いたず
ら」などという軽い言葉で適当に誤魔化されている。だが、この
「いたずら」なるものが、被害者にどれほど甚大なダメージを与え
るものなのか、その点に関する一般の認識はあまりにも低すぎるの
が現状である。
娘を強姦する父親、子どもの訴えを信じない母親、被害を訴える子
どもを異常者を見る目で見る大人たち——被害者である子どもは、
時として疎外され、排除される。
さまざまなケーススタディを扱ったパートは悲惨な話の連続で、正
直なところ、次のページを開くのが辛かったりする。だが、目を閉
ざそうとする人々のそういうスタンスが、被害者をなおいっそう追
いつめているのだということにも気づかされるのだ。
本書は、子どもに対する性的虐待の現実について解説し、それが被
害者にとってどれほど酷い経験なのかということを説いている。さ
らに被害者へのケアの取り組みや、社会的、法律的な問題にも広く
触れている。
ぜひ本書を読んで、この悲惨な現実を直視してほしいと思う。
2002/09/03 00:03
適度に良い本
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インターネットが日常的に用いられる世の中になり、ネット書店の
読者書評や、色々なものの評価をしまくる人々の存在によって、
「良い本」を見つけ出すことが非常にたやすくなったという認識を
持っていた。
が、やはり通用しない分野はあるもので、今回、久々にHTMLの参考
書を買おうとしてみて、ハタと困ったのであった。なにしろキーワー
ドで検索してみようにも、“HTML”というWeb世界で超ポピュラーな
文字列は地獄的な数のヒット数を持ち、また、新しい本が次々に出
ているため、はたまたHTMLの規格自体が次々に更新されているため、
旧い情報が富士山よりも高く積み上がっている始末。
と云うわけで、情報を求めてWebサイトを駆け巡り、Web掲示板をさ
まよい、Web日記を読み漁り、そしてなによりも書店でHTMLコーナー
をうろうろしてなんとか見つけ出した、「ほどほどに新しく、適度
に良さそう」な本がこれ。
計算機やネットワーク関係の分野には、「究極の一冊」「バイブル」
というものがしばしばあるものだが、どうやらこの分野には、そう
いうものは存在しないようだ(ザンネン)。
確かにハンドブックとしては手元に置いておく価値のある本である。
特にCSSについて詳細なのが良い感じだ。
しかし、HTMLのバージョン毎の違いについて、などという点を突き
詰めようとすると、この本は役に立たない。使用が推奨されないタ
グにも、なんのコメントもついていない。しかしまあ、そういう点
については、w3cからオリジナルのテキストを持ってきて参照でき
るだろう。
と云うわけで、若干の不満は残るものの、役に立つ本である。
2002/07/31 22:14
花冠
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ミルクと砂糖菓子、そして愛情を糧とする愛らしい少女の生きた人
形、観用少女。その観用少女——プランツドール——と彼女たちに
関わった人々が織りなす物語を綴ったシリーズの第4巻。
野外へ、陽の光の元へという傾向は相変わらずだが、初期の頃のよ
うなダークな物語も収められている巻だ。ユーモラスな物語、美し
い物語も収められているが、この巻の白眉は、何といってもうしろ
半分を占める「メランコリィの花冠」。観用少女の頭に花を咲かせ
るという、へたをするとお笑いになってしまうテーマがうまく料理
されているのは、川原女史の美しい絵ゆえというところか。それに
しても、人形屋のおにいちゃんは、いつもいい味を出している。
さて、これは、現在出ているうちでは最後の巻である。まだ単行本
未収録のストーリーもあるはずなのだが、それらを見られる日は来
るのだろうか……
2002/07/31 22:12
明るい陽の光の中へ
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観用少女——それは、ミルクと砂糖菓子、そして愛情を糧とする、
この上もなく美しく、そして繊細な生きた人形。彼女たちと関わっ
た人々が織りなすさまざまな物語を収めたシリーズの第3巻である。
このシリーズは、巻が進むにつれ、屋外へ、郊外へ、陽の光の元へ
という傾向が見えるように思える。絢爛たるイラストの装幀のこの
巻は、前巻までと比べて、かなり明るいものとなっている。人々の
楽しげな笑い声が聞こえてくる感じである。収められている物語も、
前向き、上向き、ハッピーエンドというものばかり。雰囲気が変わっ
たが、これもまた良い。
ところで、その値段を知った者は例外なく目玉を飛び出させている
観用少女の値段。具体的にはどれくらいなのだろうと、首をひねっ
ている人多数であろう(^◇^;)。
2002/07/31 22:11
歌う人形
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ミルクと砂糖菓子、そして愛情を糧とする愛らしい少女の生きた人
形、観用少女。その観用少女——プランツドール——と彼女たちに
関わった人々が織りなす物語を綴ったシリーズの第2巻。
天使の微笑みを見せるこの上もなく愛らしいプランツドールも、時
には禍々しさの焦点となる。この巻には、そんなホラー風味の物語
から、心温まる物語、哀しいく、美しい物語などが収められている。
観用少女の美しさもさることながら、服装や背景や小物などの美術
にも注目したい。すばらしく手の込んだ美しい品々、デザインであ
る。背景やメカなどを、イラストレーターの佐藤道明氏も描いてい
るように思うのだが、氏のイラストの退廃的な雰囲気もまた、いい
味を出している。
なお、このシリーズは文庫本でも出ているようだが、すばらしい装
幀のこのオリジナル版をぜひ推薦したい。
2002/07/31 22:09
夜の空気
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観用少女——それは、ミルクと砂糖菓子、そして愛情を糧とする生
きた人形。とてつもなく高価で、すばらしく可愛らしい少女の人形
である。
舞台となるのは、どこか香港を思わせる、SF的な超高層ビルの建ち
並ぶ中国風の都市。これは、この観用少女と関わった人々が織りな
すさまざまなストーリーを集めた作品集だ。
この第1巻は、冥い夜の雰囲気を色濃く漂わせている。そこはかと
ない、デカダンの薫り……語られるのは、あるいは皮肉な物語、あ
るいは恐ろしい人の心の闇、そしてこっぱずかしいラヴラヴ(^◇^;)
なによりも、川原女史の美しい絵が目を引く。この上もなく愛らし
い生きた人形たち。こんな作品が存在することが奇蹟に思えるほど
の、上質なコミックだ。
紙の本ホビットの冒険 新版 下
2002/07/31 22:04
『指輪物語』をより深く味わうために
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とはいえ、やはり『ホビットの冒険』は『指輪物語』の前日譚なの
である。この物語では、ビルボが「ひとつの指輪」を手に入れるに
至った経緯が描かれるが、そのことはそう重要ではない。なにより
もこの物語を読むことで、『指輪物語』で描かれたさまざまな出来
事や登場人物たちの喜びや哀しみに共感できるようになり、またさ
まざまなアイテムの出自について知ることもできるようになるのだ。
『指輪物語』でさりげなく出てきた「つらぬき丸」やミスリルの鎖
帷子、ガンダルフの剣グラムドリングの由来は、この物語で描かれ
る。旅の一行は、途中、レゴラスの父に囚われの身となる。そして
モリア坑道へと消えたバーリンも、この物語の登場人物のひとりな
のだ。この本を読むことで、読者は『指輪』の冒頭で描かれた、ビ
ルボの旅へのあこがれを共有することができるようになるのだ。
逆に、『ホビットの冒険』でさりげなく語られていることの意味を、
『指輪物語』を読むことで知ることができるという点もある。『ホ
ビットの冒険』は『指輪物語』をより高めるし、逆もまた真なりと
いうわけだ。ぜひ両方の物語をくり返し読んで欲しいと思う。
紙の本ホビットの冒険 新版 上
2002/07/31 22:02
竜退治とお宝探し
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本書は、『指輪物語』の前日譚。『指輪物語』をより深く味わうた
めに読んでおこう、などと、まるで添え物のように言及されること
が多い。しかしそれは少々可哀想である。『ホビットの冒険』もま
た、冒険あり、喜びと哀しみありの、ちゃんとした完全な物語なの
だから。
軽妙な語り口で面白おかしく語られる物語は、わかりやすい、スト
レートなプロットだ。ホビット庄から、はるか彼方のはなれ山まで、
ドワーフたちが竜に奪われたお宝を取り返しに行くのだ。これは、
その、ゆきて帰りし物語である。
完全な善人でもなく、もちろん完全な悪人でもないリアルなキャラ
クターたちは、とても人間臭くて共感が持てる(ガンダフルでさえ、
お宝には目を輝かすのだ)。旅路と共に移ろいゆく季節、暗闇の怖
さと光の大切さや、食べ物がないことがどんなに恐ろしいかなど、
文明世界に暮らす私たちが忘れてしまったことを、色々と思い出さ
せてくれる。この物語のもつ、リアルで高級な世界観は至宝のもの
だ。
この物語がもっとポピュラーになって、子どものうちにみんな読ん
でいるようだと良いのにと、つくづく思う。
2002/07/31 21:58
怪奇小説の原初の姿
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20世紀初頭の怪奇小説の黄金時代の一翼を担った巨匠のひとり、
M.R.ジェイムズの2巻からなる怪談全集の第2巻。内部の構造は、ジェ
イムズが出版した本を合本したかのような形になっており、それぞ
れ本の序文も抜かりなく収められているマニアぶりだ。第1巻には
『考古家の怪談集』、『続・考古家の怪談集』が収められ、第2巻
には『痩せこけた幽霊』、『猟奇への戒め』それに拾遺集と未完作
品が収められている。
第2巻には、うちわ受けの怪談や、ボーイスカウトたの合宿で語ら
れた物語なども収められている。特定の読者を想定したと思しいこ
れらの怪談は、さすがに戸惑うものがあるが、しかし身近にこうい
う怪談を語れる人物がいたというのは、うらやましい限りである。
翻訳者の紀田氏による解説も詳細で参考になる。怪奇小説に感度の
ある人はみんな持っていたい珠玉の怪談全集だ。
2002/07/31 21:57
古物趣味と怪談
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20世紀初頭の怪奇小説の黄金時代を形作った巨匠のひとり、M.R.ジェ
イムズの怪談全集全2巻の第1巻である。この全集は、かつて創土社
から出た『M.R.ジェイムズ全集』からファンタジー『五つの壺』を
除き、その後書かれたものや未刊行作品を追加したもので、最も完
璧なものと云えるであろう。
題名に「怪談」とあるのがミソで、M.R.ジェイムズの作品は、なる
ほど怪奇小説ではなく、怪談というのがしっくり来る。妙な話だが、
この古物趣味や、後の世の作品群のように、妙な理屈づけなどがな
されていないあたりに、心が洗われるようなすがすがしささえ覚え
てしまう。