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トリフィドさんのレビュー一覧

投稿者:トリフィド

312 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

ジョークRFCの解説

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

毎年エイプリルフールに出されるジョークRFC。面白いのが出ると、
ネットの然るべきコミュニティでは話題になっていたりするもので
ある。

本書は、すべてのジョークRFCを日本語に翻訳し、詳細な解説をつ
けたものである。傑作は原文つきの対訳という親切ぶりだ。

原文を読んだことがある人にとっても、自分の専門外の領域に関す
るものなど、内容の解説があったりして興味深いのではないだろう
か。IETFあたりの文化圏の様子を知るのにも役に立つ本だ。

しかしジョークを解説することほどつまらないことはないとも云う。
興味深い内容の本であるが、面白いかと訊かれれば、首をかしげざ
るを得ない。なんだか問題集はないのに、その解答集だけある状態、
ゲームはないのにゲームの攻略法の本だけある状態という感じだ。

一冊持っておくと役に立つかもと思いつつ、なんの役に立つのだと
も思う、どう評価したらよいのか良くわからない本である。

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紙の本

紙の本宇宙のランデヴー 2 上

2002/02/07 05:52

この本は存在しない(と云うことにしたい)

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 いろいろと物議を醸しているクラークとジェントリー・リーの共作。

 この本の評価は簡単。よーし、こうなったもう断言しちゃうぞ。この作品は、名作、『宇宙のランデヴー』を穢しているだけです。

 なぜラーマでサイコサスペンスが展開されなければならないのか? なぜラーマでホラーが展開されなければならないのか? なんとなく出てくるクラークっぽい謎の部分も、科学性、論理性を二の次にして、読者に謎を提示することを主目的としてでっちあげられた作り物だということが見え見え。白けます。

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紙の本

無意味

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 「なんだこりゃ……」と云うのが、読み終えたあとにまず思ったこと。映画『ブレードランナー』の続篇に、その原作、小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の世界がまぶしてあって、ぐちゃぐちゃです。

 映画『ブレードランナー』での「事実」を否定していたり、世界観を損ないかねない設定が新たに出てきたり、映画では描かれることのなかった舞台裏的なことが妙にしつこく描かれていたりするし、映画のシーンをむりやり再現してみせたり登場人物に回想させてみせたりしているのが執拗。また、映画の「じめじめ真っ暗人がごちゃごちゃ」の世界と、「カラカラ太陽ギラギラ誰もいない」の小説世界がまぜこぜに出てきて違和感この上なし。

 さらに、映画で生き残った登場人物という登場人物を片端から殺し、そして、映画では死んだ登場人物が実は生きていたり、あるいは何らかの形で登場したりで、なるほど、「死んでいる人は生きていて、生きている人は死んでる」ということねと云うことは読み取れるものの、だからといって、「はぁ?」と困惑するしかない。どうも映画を徹底して否定しているように思えるのですが。

 もっと云うと、主人公が何もしない。何も事件が起こらない。登場人物がみんなマヌケと云うのも白けました。この作品を、面白く読む人もいるのでしょうか。いたらどこがいいのか訊いてみたいものです。

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紙の本

紙の本3001年終局への旅

2001/03/26 04:08

クラークはどうしてこの本を書いたのだろう?

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 クラークはどうしてこの本を書いたのだろう?

 なにげなくこの本を読んで愕然とする人は多いのではないだろうか。それは、この本が、『2001年宇宙の旅』『2010年宇宙の旅』『2061年宇宙の旅』で描かれていたことを、ことごとく否定しているからだ。

 シリーズ前作までに示された、われわれ読者を感動させてくれたさまざまなビジョンは、すべてヴァーチャルリアリティによる疑似体験だったのだ、作りものだったのだとばっさり切り捨て、見事に読者を突き放してくれる。スターチャイルドはウソ、スターゲートもウソ。モノリスの超越性もウソ。

 この本が存在することが悲しい。クラークがこの本を書いたことが悲しい。

 「大風呂敷をひろげる」という表現がある。シリーズ前作までにひろげにひろげた風呂敷を、クラークは静かに微笑みながらこの作品でたたんでしまい込んでいるように思える。そのことがなんとももの悲しい。

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紙の本

紙の本星虫

2001/09/08 05:13

夢とは……

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 第1回ファンタジーノベル大賞で好成績を収め、1990年に新潮社ファンタジー文庫の一冊として出され、その後絶版になっていた幻の本の再版である。多くの人々がほめていたため、大変期待して今回の再版を読んだのだが、残念ながら、わたしは高く評価することができなかった。

 まず小道具の類がいけない。「第5世代コンピュータ」とか「プロローグ」とか(ふつう「プロログ」でょ…)、出てくる小道具の類が恥ずかしくて、床の上をのた打ち回ってしまった。おまけにこれらは、(一般向け入門書の受け売りなのだろうか)「なんか凄いらしいもの」という扱いでしかない。そして宇宙飛行士を志望することが恥ずかしいことだというこの設定はなんなのだろうか? 宇宙飛行士が募集されるこの世の中で、なぜそのような不自然な設定が必要なのか。このあたりでもう、物語に入り込めなくなってしまった。この作品世界が、ストーリーのために逆算されて構築された人工物であることを念頭から消すことができなくなってしまった。

 さらに、この作品がもともと持っていたと思われるインターネットなしの世界と、再版にあたって書き加えられたと思われる「一般のエンドユーザから見たインターネット」ありの世界がチグハグで、プレハブの貧相さを露呈してしまっている。こんなことしかできないのなら、なにもしなければ良かったのにと思う。

 そのような末梢を別に置いたとしても、いろいろと引っかかる部分があった。「夢をかなえるには行動が必要」とかいいつつ、その夢方向に何があるかというと、この宇宙は自分の夢が必然である世界だったということが棚からボタモチで判明したということ、自分の前方に誰かがレールを敷いてくれたということ、願書の提出先を誰かが作ってくれたということ、やりたいことをやる制度をだれかが作ってくれたということだという。これではまるで「夢とはだれかがそれを叶えるための下準備をしてくれるもの」ではないか。
 夢を実現する上で本当に困難な箇所を、思い切り逃げてしまっている。なんという他力本願。そしていかにも学校に通っていて将来の進路について悩んでいる青少年が喜びそうな構造でもある。中高生の頃に読んで感動したという人が多いのはこのあたりが理由かと思ったりしてしまうのはうがちすぎか。

 読み終わってから、SFの逃避文学としての側面について考えさせられてしまった本だった。SFなんか読んでいていいのだろうかとひさびさに考えてしまった。

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紙の本

紙の本地を継ぐ者

2002/07/21 04:08

もったいない……

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

世界設定などは非常に期待させ、提示されるテーマも面白そう。な
のでたいへん期待しつつ先へと読み進んだのだが……どうしてこう
なっちゃうかなあ? どうしてこの世界にこのストーリーかな?

設定の無駄づかいと云う言葉が浮かんできてしまう。他の作家にこ
の設定でこのテーマで書いてもらいたいと思ったり。その場合には、
ちょっとイーガン要素を入れてほしいものだ。この魅力的な世界設
定も、少々保守的なところがあるゆえ。

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紙の本

紙の本ホームズと不死の創造者

2002/07/18 00:39

若干の違和感

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

最先端テクノロジーを全面的に取り入れた未来観の上に構築された、
もっと書かれてほしいと思うタイプのSFなのだが、この作品はどう
もいけない。

19世紀世紀末の匂いに溢れた、わたしも大好きなスノッブな趣味に
走っている作品なのだが、その趣味に走る走り方にも、足が縺れる
ような齟齬を感じざるを得ない。あ、そうそう、話の枠組みはミス
テリーなのだが、そっちの方もいまひとつぱっとしないのだ。

と云うわけで、魅力的な道具立てが揃っているものの、いまひとつ
訴えかけてくれるもののない、惜しい作品である。妙な話だが、もっ
となんとかならなかったんですかと、作者に文句を言いたくなって
しまった。

が、もしかすると読み方によっては良かったりするのかもしれない。
これを好きな人というのはいるのだろうかと興味もあったり。

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紙の本

紙の本ラヴクラフトの遺産

2002/07/06 01:27

かなり内輪

2人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

力量も方向性も異なる作家たちの、これまた気合いの入れ方もコン
セプトも異なる作品がゴタマゼになった、なんというか、ゼリービー
ンズとかけそばを同時に食するが如き違和感を禁じ得ない、まとま
りのないアンソロジーであった。

ラヴクラフトに心酔する同士、こういう本を作りたがる気持ちはわ
からないでもないのだが、しかしもう少しなんとかならなかったも
のかと思わざるを得ない。

わたしは、ラヴクラフトは好きだが、朝松健氏の熱い語りのノリに
はまったく共感できないのだ。この本の氏の解説「遺産相続人たち」
も、白けながら読んだ。そんなわたしと同様の諸氏はこの本はあま
り楽しめないかも。

本を閉じて内容を思い出そうとしても、出てくるのは最後に収めら
れていた作品、F.ポール.ウィルスンの「荒地」だけである。だが
これも連想したのは「X-Files」であった。

ラヴクラフトが好きな人は、いちおう目を通しておいた方が良いか
も、という程度にオススメしておきます。

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紙の本

システム崩壊前

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 『BLAME!』世界の外伝。あるいは前日譚とでもいうべき作品。
 霧亥とシボの時代から何千年も前、ネット端末遺伝子のプロジェクトが開始され、セーフガードが活動を開始したまさにその時代の物語。のちに珪素生物を生み出す組織「教団」と、教団による連続児童誘拐事件を追う女刑事、裾野結の抗争を通して、『BLAME!』世界の成り立ちを描く。

 とはいえ、この作品においても、『BLAME!』において世界のすべてである、巨大な都市構造物の由来は描かれていない。その成り立ちは、この作品の時代よりも前に遡る。そしてシステムが崩壊する原因となった、「感染」によるネット端末遺伝子の変異も描かれない。これはのちの時代の出来事であるわけだ。

 都市システムの崩壊に関しては、なぜそれが起こったのか今だ明らかになっていないこともあり、興味が尽きないものがある。いずれ、そのあたりの空白も埋めてもらいたいものである。

『BLAME!』のファンの人はチェックしておきましょう。

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紙の本

紙の本『2001年宇宙の旅』講義

2002/07/12 04:05

こ、これは試金石?(^◇^;)

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一気に読ませるおもしろさだが、しかし……「そう解釈することは
可能だけど、そう解釈しなければならない必然性はないでしょ?」
と、何度も目を点にした本であった。要するに作者の極々プライベー
トな私論なのだろうが。

まわりのSF者たちにこの本について訊いてみると、顔をしかめて
「色々と云いたいことはあるけどねえ……」と言葉を濁す人と、
「あれ、すごいよねえ」と感嘆をあらわにする人に分けられるよう
だ。おまけに両グループに属する人々には、明確な差異があるとい
う(^◇^;)。踏み絵のように使えるヤナ本である。

そのまま納得するのは危険だとコメントを付けつつ、SF者であるあ
なたに、ひとつ試しに読んでみなされと興味津々の顔でオススメし
ておきたい。

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紙の本

紙の本暗黒神ダゴン

2002/07/07 01:23

かなり変

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うむむ、クトゥルー神話の話のひとつと思って読むと、読み終えて
から目を点にすることになるかもしれない。クトゥルー神話関係の
本としてはかなり異色、相当に変だ。

なんとも執拗でフェティッシュ、気持ち悪く不快で、おまけに退屈
な物語。こういう物語を好む人々もいそうだとは思うが、しかし、
果たしてクトゥルー神話ファンと重なっているのだろうか? と、ク
トゥルーの友たちを思い起こして首をひねってしまうところである。

しかし逆に、この本を読んで、一般のクトゥルー神話ものが、いか
に「お約束」の中に囚われているのかということを意識させられた。
現実にクトゥルーやらインスマウスが実在したら、この本に描かれ
ているような状況が繰り広げられたりしそうである。

と云うわけで、挑戦者はぜひトライされたしという、奥歯にモノが
挟まったようなオススメ具合である。

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紙の本

紙の本90年代SF傑作選 下

2002/06/21 04:16

その先へ行くのが怖いのか

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90年代の欧米SFの傑作を集めた日本オリジナル編集のアンソロジー
の下巻である。90年代SFを集めたという点で、あるいは河出文庫の
『20世紀SF(6) 1990年代』と比較するべきなのかもしれない。しか
し、それと比べてもこのアンソロジーは翳りが多いといわざるを得
ない。どうも近視眼的なところが見受けられるように思う。

さて、下巻では以下の作品が印象に残った。

「理解」— まるでヴァン・ヴォークトの作品ようだ。凄まじく執
拗な書き込みがスリリングで息もつかせない。

「フローティング・ドッグズ」—伝統的なSFのようなヴィジョンが
繰り広げられる作品、地味だがなかなか良い。こういう物語性を持っ
た作品をもっと読みたいものだ。

「ダンシング・オン・エア」—このテーマはこれからの社会にとっ
て極めて重要で、SFはもっとこの方向を追求し、人々に訴えかける
べきだとつねづね考えている。しかし、しかしだ、この作品はベア
の「姉妹たち」(80年代の作品だ)に負けていると思う。もっとがん
ばってほしいものだ。

90年代のSFは、妙にこじんまりとしてはいないだろうか。現在のス
トレートな延長線上にある近未来を扱い、地球からもあまり出ない。
おなじみの驚天動地、見なれたセンス・オブ・ワンダー……
たまに古いSFを読むと、はるか彼方まで行ってしまうので驚くので
ある。90年代SFの特徴に、古くからある題材を最新の科学/技術的
ヴィジョンで料理する点があるという。数年で陳腐化する近未来は
もういいから、その手法で、はるか銀河の彼方まですっ飛んで行っ
てほしいものである。

批判的なことばかり書いたが、90年代SFを概観する上で、このアン
ソロジーがすぐれたテキストであることには間違いはない。体系的
にSFを読んでいこうとするSF者にとっては、避けて通れない本であ
ろう。

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紙の本

紙の本夜明けのブギーポップ

2002/05/25 03:42

ブギーポップの誕生

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ブギーポップシリーズの1冊である連作短篇集。ブギーポップ世界
の成り立ちを解き明かす、過去のエピソードを連ねた本である。

ブギーポップと〈炎の魔女〉の誕生の物語を軸に、シリーズの諸作
品で言及される過去の出来事や過去の人物についてのストーリーが
繰り広げられる。

このようなシリーズ作品の外伝的な物語は、物語世界をより深く味
わう上で好ましいものである場合も多いが、しかしブギーポップの
世界ではどうだろう? みもふたもない説明づけがなされてしまって、
神秘性を損なっているというか、読者の想像力を羽ばたかせる余地
を奪っているというか……正直いって、あまり読んでうれしいもの
ではなかった。まあ、特にこのシリーズ場合、その感じ方は人によっ
て色々だろうが。

とは言え、こういう本が存在するからには読まないわけにもいかな
い。困ったものである。

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紙の本

紙の本レッド・マーズ 上

2002/03/26 17:14

一種奇妙な味わい

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 シリーズのそれぞれの作品がSF作品に与えられる主要な賞を獲得し、翻訳前から日本でも話題になっていたキム・スタンリー・ロビンスンの火星三部作の第一冊目。翻訳が待たれていた作品なので、大変期待を持って読んだ。

 しかし引っかかる点が多々あった。まず作品のスタンスというか、立脚点がよくわからない。火星の描写はリアルだ。このあたりは非常にすばらしい。しかし技術面ではすでに超技術の世界に踏み込んでいる。ハードウェアの多くがブラックボックスでしかない(宇宙船の駆動装置が「ロケット」でしかない)、リアリティのない機械たちだ。これは……ハードSFではないのか? と首をひねってしまうほどである。

 さらに、登場人物たちがみんな変である。あまりに変で、これは……サイコサスペンスなのか? とますます首をひねってしまうほどである。おまけに人物の書き分けがいまひとつ。延々と続く一人称で、今語っているのがだれなのかよく分からなくなった。そして、ヒロコに代表される、すでに幻想の世界に足を踏み入れている妙な部分。これは……ファンタジーSFなのか? とさらに首をひねってしまうのだ。

 そしてストーリー、主人公たちは結局傍観者でしかなく、だれがやっているのかわからない革命運動や大虐殺や、暴力的かつどさくさまぎれの火星のテラフォーミングに巻き込まれてどたばたするばかり。しかしまあ、惑星まるまるひとつに関するドラマゆえ、これがかえって現実的と云われれば、それはそうなのかもしれない。終盤のカタストロフィは文句なしにすばらしい。すばらしすぎて、このカタストロフィゆえに、この作品が言及されることの方が多いくらいだ。

 さらに、翻訳に問題はないだろうか? 会話文の末尾に「っ」を多用しているのだ。「どうしたっ」「しっかりしろっ」、気持ちが悪い。

 難点ばかり書いたが、不思議と「金返せ〜」とか「読むんじゃなかった〜」とは思わないのである。それどころか、この文章を書くために見返してみて、ついつい途中から読み始めてしまったりしている。結局読み応えのあるドラマではあったということか。とりあえず三部作最後までつき合っていこうと思う。

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紙の本

紙の本タイム・シップ 上

2002/02/08 15:47

中途半端

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 結局いつものバクスター、と云う感じ。しかし、ウエルズ世界を枠組みとして用いたことで、バクスターらしさが損なわれており、なおかつ良くなったところがないと云う感じです。

 最近ではおなじみになった、過去への介入による時間線の分岐の話を徹底的に突き詰めたものなのですが、多様性を強調していると云うのに、それぞれの時間線自体は異様に均質。異星種属すら出てこない均質さ。なぜどれもこれも、人類全体で同じ方向を向く、なのか。分岐に分岐、また分岐と云うのをサイバーパンクで学ばなかったか。まあ、ストーリー上の都合のためなのかもしれませんが。

 さらに、話の核となる意志の力や目的が存在せず、どこかに向かうのかも分からないまま、ただストーリーが流れるだけ、ただウエルズ世界を経巡るだけ。流れも方向性も持たないカタログを見せられている感じです。

 ラストの、「帰ろう、故郷へ……」的な部分もいまひとつでした。ベアの『永劫』のラストと同じような感じでしたが、あの詩情は微塵も感じさせず、なぜ主人公があの世界へ戻って行ったのか、なぜ戻って行って、そこに留まることにしたのか、いまひとつ共感できません。

 いや、決して面白くないわけではないのです。しかし、本当はもっともっとすごい作品に出来たはずなのではと、どうしても考えてしまうのです。残念です。

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