すのさんのレビュー一覧
投稿者:すの
鉄鼠の檻 文庫版
2002/02/18 22:13
狂うのも薬するのもあんたの自由だが人を巻き込むのは止せ。
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京極堂が関口君を箱根に誘うことで物語は始まる。が、その前に死体描写が2つ出てくる。目の見えぬ按摩師が死体を発見し、その人を殺したと告白する僧との問答。古物商と老いた医者が泊まっている老舗宿の庭で発見される座禅中のような僧の死体。
今回は木場さんは出てきません。榎さんは釈迦も弥勒も下僕にしてしまいます。関口君は、相変わらず罵倒され、京極堂は本という名の檻に閉じこめられてます。
『姑獲鳥の夏』を先に読んで置いた方が楽しめる作品かと思います。
京極堂は憑き物を落とすのが仕事です。憑き物の正体は読者の偏見でしょうか。『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』では医学に対する偏見を、『狂骨の夢』では密教に対する偏見を。そして、本作品では「禅」。
医学も宗教も最初は人を幸せにするのが目的であるのに、病院なり寺なりに、集団で籠もると、とたんに外から見通しが悪くなってしまう。人は見えない物を想像し、偏見を持つでしょう。医学も宗教も調べれば調べるほど、ぼやけてゆくので、余計に偏見を助長してしまう。一方、外部から閉ざされた環境は内部の人間にだけ居心地のいいぬるま湯に成ってゆくので、彼らもまた、自分たちのことすらよくわからなくなるのでしょう。
今回は山寺が舞台です。京極堂が外の風を入れると、威風堂々としていた禅師は皆普通の人間に返っていきます。医者も坊主も犯罪者も人間でしかない。読み終わるとそれは当たり前のように感じるが、人は医者や宗教家を特別扱いしてしまう物では? それは差別感上の裏返しではないでしょうか? そんな事を考えました。
きっと、雪が降ったら開きたくなる一冊です。
魍魎の匣 文庫版
2001/06/17 03:24
それでいいのか!?きばしゅー
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相変わらず、何が正常で何が異常かわからない世界で鬱々と事件に首を突っ込む関君(猿→亀)、事件を解決しようと暴走する木場修(このままでは一生独身)、探偵しない探偵榎さん、今回は特に最後までもったいぶる京極堂。
少女の手足限定バラバラ殺人事件、穢封じ御筥様、少女がみたという手袋の男
最初は一人の男が満たされたかっただけなのかも知れない。
生きているには形が必要か? どこまでが人間だ?
京極夏彦さんの作品の魅力を何重にも張られた伏線に感じる人もいるかも知れないが、自分はやはり個性的なキャラによって描かれる京極夏彦氏の哲学というか、美学が魅力だと思う。
満たされぬ者は何をどう詰め込んでも満たされない。満たされる者は、どんな場所でも満たされている。ある意味不公平なことかも。
姑獲鳥の夏 文庫版
2001/06/17 02:17
関君のばかぁ
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京極夏彦さんは、周囲の人間がやたらと読んでいて(別れた彼とか好きな人の彼女とか新友旧友etc.)、世間では大変評判がよろしい作家さんで、しかも、勧めて「くれない」のである。
「好みがわかれるところだねぇ」
とか言われてしまい、その厚さもあってかなり躊躇した後、文庫版で『姑獲鳥の夏』『 魍魎の匣』『狂骨の夢』を読んだ。
かなり、はまります。
まず、この小説のジャンルって推理小説でいいのだろうか? 『少年の時間』なんかでは言われていたが、本格物の枠から飛び出た「ハイブリット小説」に近い。
とくに、この『姑獲鳥の夏』は推理小説と思って犯人探しなんかしてたら全然つまらないのではないかしら? すてきな世界を楽しんだもの勝ちな作品です。
設定、キャラクターがしっかりしているので世界が自然に読めて、そして読み進むうちに、何となく黒いものが見えてくる。もやもやと…。たぶん、京極堂の言うところの憑き物が見えてくる。作品の中に。そして、京極堂が払って終了…。
「いろいろやらかしたあげくに、忘却、思い出して鬱」という最高なキャラ、関口君が好きになれないのは近親憎悪かも知れない。
テロリストのパラソル
2001/03/30 01:42
絶望のにおいがする作品
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全共闘。なぜか、この作品と同時期に宮崎学氏の「突破者」を読み、そのころ読んだ小林よしのり氏の作品にも全共闘の記述があった。
それは情報でしかないので自分にとっては知りたいとも思わない歴史の一片だ。大学解体といいながらレポートを書いて卒業する大学生。数で無理を通す無責任な人々。結局大人になっても変に燃え尽きてしまっていて、今の戦後社会の根底を作った世代。
そしてこの作品にも、そのように批判する人と、その歴史を生き抜いた人が描かれている。両者の認識の溝は埋まらないだろうが、少し優しい認識になるかもしれない。
登場人物が個性的でかっこよく、文章も読みやすい。それでいて、この作品の根底に流れている雰囲気が絶望そのものといった気がしてならない。
賞は伊達じゃない。おすすめである。
凛が鳴る (文春文庫)
2001/03/30 00:39
痛いけど好き
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一時期この作者の作品を毛嫌いしていた。が、しかし結局、内田春菊という人が好きであり憧れるのだ。
これは文庫だが漫画で読みやすくておすすめ。内容は盛りだくさんで
・匿名希望
・男がそれを思うとき
・凛が鳴る
・タラ夫ちゃんとおりょうり
・朝まで何時間
・はじめてくんの期待
・ヨメになる私
・薔薇色の噂
・Bombazo
・健康でいたい
・お仲間
・ねことさかなのはなし
読んでいて自分がいかに偏って独善的な常識に捕らわれているかを考えてしまった。それでいて押しつけてこないところがまた良い。
イーシャの舟
2001/02/11 22:34
かわいい
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天邪鬼が、とてもかわい!!
それにしたって、ここまでされて
まだ面倒見るのか!?
ってなくらい、面倒見のいい主人公。
でも、その優しさは、誰のためでもなく
自分の夢を叶えるための優しさだったのかもしれない。
瓜子姫に憧れる天邪鬼は…
作者はシリーズ物として書いていくのでしょうかね
『星虫』→『鵺姫真話』→『イーシャの舟』が
理想の順番です。どれもハズレが無い!!
鵺姫真話
2001/02/11 22:24
3冊まとめて読みましょう
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まず、『星虫』を読んでから、読んだ方がおもしろさが倍増すると思う。
『星虫』は現実未来に対する前向きな展望を見ることが出来てどきどきして感動した。
『鵺姫真話』は作品の展開にどきどきさせられる。
「プロジェクト」が絡まなくても話として面白いかなっと思える。ここでプロジェクトが絡んだことが
『イーシャの舟』に絡んで行くわけで・・・。
やっぱり、絶対後悔しないから
3冊まとめて読んでしまうことがおすすめ!!
星虫
2001/02/11 22:10
すごいっ!!
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友人に強く勧められて読みました
「殺す以上は、食べるのが礼儀だと思わないか?」
はじめのインパクトにやられてぐぐっと読んでしまいました。3作ともリメーク版と言うことでリメーク前も読んでみたい!!
本当に面白かった。
設定に不自然な点はあるけど、2/50億の確率だから仕方ないかなって気もする。
みんなで暗い話を読むよりは、本当はこういう話を待っているんだと思う…前向きになれる理屈抜きでおすすめ!! 読んでほしい!!
イグアナの娘
2001/02/11 21:38
虐待まではされなくても
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表題作は、まるで自分のことのようで痛くてつらかったです。親に虐待された、とまでいかなくとも
・他の兄弟とあからさまに区別する。
・一番似ているのに、それを否定する。
・「頭がいい」などと便利な台詞で拒絶する。
というような母親に育てられた人には人事ではないでしょう。
この本を読んでから、親に親を求めることをやっと諦めることが出来たような気がします。
表題作以外にも親子のあり方や結婚のあり方などを考えさせられる作品が収録されています。
母親に誉められたことのない人にはお勧めの一冊です(万人向けかと言われると、難しいと思いますが…)。
狂骨の夢 文庫版
2001/06/17 04:15
笑う猶太人(髭面)
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骨というのは陽気らしい。ちょっと解る気がした。この肉をすべて落とすほど時間がたったら、憂いも消え落ちるな…。
精神分析って?結局今までの心の傷を探ったところで傷口に塩塗って、まぁ消毒くらいにはなるだろうけどメチャメチャ痛くなるだけじゃない? 実は、「これから」を変えようと言うときに精神分析は足枷なんだよねぇ。とか考えてるときに読み始めたために大変、タイムリーでした。
この話では「いさま屋」が事件を持ってくる。
今までの作品(「姑獲鳥の夏」「魍魎の箱」)と違って視点の移動が激しいので、難解なイメージだった。
2重人格を思わせるほど、様子が変わる朱美を筆頭に精神分析してしまう旗ちゃん、トラウマ牧師の白丘と髑髏に魅入られた人々が救いを求めて宗教に走る中榎さんがついに神様を名乗る。
関@猿といさま屋@河童を引き連れて榎@神様が拝み屋と大活躍しているお話と、書くと京極堂に怒られてしまうだろうか?
一読者としては、これだけのクオリティの作品を3作も読ませていただけて、すごく幸せです。
スプーン 超能力者の日常と憂鬱
2001/06/17 01:47
続編を熱望
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おもしろかった。読み終えたときにちょっと視野が広がる良書。
この本を読んでいると、超能力にたいする議論よりも、ドキュメントをとる側、みる側のスタンスについて考えてしまう。観察者は、信じるとか信じないとか言ってはいけないのだ、たぶん。
最近、いろいろな事件が起きて、それに対して犯罪に近いほどの過剰な報道。被害者への配慮のなさ。そういったものに近いものを感じる。超能力、犯罪、こういった普段「受け入れたくないもの」をヒトはできるだけ自分とは違う、特別なものとしようとして、沢山、情報を求める。自分は関係ないのを確かめたくて。犯罪ができれば関わりたくないものであるのに対して超能力のたぐいは、できれば認めたくないものだ。それでいて、もし、自分が「特別な力」を持っていたら…と誰もが一度は思うはずのものでもある。
著者のスタンスが本当に絶妙だった。ダウンジングが好調の堤さんが「信じている人の前だと好調」みたいなことを言ったときに「え?信じてませんよ」と、言い切ってしまう(しかもそれをTVで放送)。
そうかと思うと、ドキュメント撮影を通して少し気がおけない仲になった頃に、秋山さんや清田さんが突飛なことを言い出したり、別に超能力者じゃなくても、友達とでもよくありそうなすれ違いも書かれている。
自分の目の前で、スプーンが曲がったら狂信者のように超能力を信じるだろうか? 絶対トリックだと言って信じないで嫌悪するだろうか?そう、「いきなり肯定」も「いきなり否定」も根底にある感情は一緒だ。結局それは、一緒の世界で生きていくものとして受け入れてない。
ケースバイケースに対応し、信じてもなく、疑いもせずに普通に接することができている著者はすごい。自分の受け入れることのできる限界を感じることができる。
マスコミの人はこうあるべきかも知れない。そうして、そういう人が作った作品を楽しむ視聴者にならなくちゃいけない。
いくつになっても清田「くん」と表記される清田さん。超能力の社会的認知を求める秋山さん。ダウンジングは超能力じゃない、と言う堤さん。
そして、最後に出てきて大きな問題提起となった大槻さん。
今の視聴者の大半は「下世話で、問題を多く含んだ現在のTV番組」を好む。そろそろ、大衆のレベルアップの時代かもしれない。
11人いる! 新編集版
2001/06/07 19:48
面白かった
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今見ると絵が「昔の少女漫画」なのだが、少女漫画お約束の恋愛至上主義みたいな所はなく、非常に読みやすいストーリーになっている。
割とありがちなストーリーのようにも思うが、きっと、発表当時は斬新だったのだろう。名作の一つに数えられている。
11人居るが、はっきりとスポットの当たるキャラと全く脇役に徹してるキャラが居て面白い。今だったら、意味のない脇役にでもむやみやたらと美男美女を持ってくる作家が多い。
設定がしっかりしていて、続編も違和感無く読める「とってつけたような設定」は特に目に付かなかった。基本の設定がしっかりしていて、かつ、後付の設定も上手いのだろう。
SFに慣れていない方にも安心しておすすめできる一冊かと思う。
電脳天使
2001/03/30 01:09
電脳であって煩悩ではない
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いわゆる、同人誌活動をしている婦女の皆様に受けそうな表紙(笑)とタイトルの語感で衝動買い。
仮想現実。小説自体が仮想現実であるがその中でさらにコンピューターネットワークを仮想現実として展開する。そこで生きようとするモノが有ればそこは現実になる。PCと呼ばれる人工知性体はコンピューターネットワークという現実の中でプログラムとして生きていく。
インターネットが普及する前に書かれている作品だが今現在読んでも、遜色はないと思われる。
敵は海賊・海賊版 Dehumanize
2001/03/30 01:01
やられた
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自分は訳された物語が読みにくくて苦手である。この作品は、日本人の著者であるにもかかわらず何かに訳された印象を受けた。訳されているのだ。
訳すモノすら創造する物語の強さ、それはすなわち、筆者の力の強さなのかもしれない。
表現者として、このような表現をとることが神林氏が最初なのか、ほかに誰か居るのか知らないが良い意味で裏切られた、とても。
