ナミエアキヒコさんのレビュー一覧
投稿者:ナミエアキヒコ
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東京タワー
2002/01/08 13:42
嫌悪と危うさ。
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この物語に出てくる2人の男に対して苛立ちを覚えてしまうのは、やはり僕が男だからだろうか。耕二の場合は理由がはっきりしている。こういう男が苦手であり、嫌いだからだ。できれば避けたいタイプである。このタイプを端的に表現すれば、「俺たち親友だろ」とか言うような男。うわあ、嫌だ、むかむかする。耕二の考え方、振舞い方、喋り方、すべて気にくわない。
耕二と透、どちらが自分に似ている、といえば、圧倒的に透だ。僕は音楽的な顔をしているわけではないし、彼ほど穏やかでもないけれど。でも、「馴染むでもなく孤立するでもなく存在する」というのはよくわかるし、一本の電話を待って時間を持て余してしまうところにも共感してしまう。彼の穏やかな言葉遣いや一途なところを好ましく思った。だがしかし。透の場合、むしろ危ういのだ。それは、透の素質に対して感じる危うさと、透にシンパシィを感じてしまう自分に対しての危うさと両面的だ。透の行く末を案じると同時に、自分の行く末も案じてしまう。
この物語、「鳩よ!」に連載中はとても楽しく読んでいた。単純に、起こっている出来事を愉快がっていた。でも、1冊の本になってまとめて読むと、楽しむことはできなかった。おそらく耕二と透という人間がわかってしまったからだろう。彼らは、「愛すべき」から逸脱してしまっていると思う。
結局のところ、よくわからない。耕二と喜美子(あるいは厚子)の関係も、透と詩史の関係も。だから、咀嚼し血肉化して読むことができない。年上(しかも結婚している)の女性との恋愛なんて想像もつかない。それでいて、透にはシンパシィを感じるものだから、余計な心配までしてしまう。自分もこのようなことになってしまう可能性があるのだろうか、と。想像もつかないことに対する恐れを抱いてしまう。
小説とは、ある物語に途中乗車し途中下車するようなものだ。読者が下車したあとも、物語は続く。江國香織の小説はいつもそのようなことを思わされるのだが、今回は特に、有無を言わさず下車させられた、という感覚だった。もう、放り出されたぐらいの勢いで。そして、この物語はとんでもない方向に暴走(迷走)していくのでは、と、すごく気になってしょうがない。でも、そんな列車に乗りつづけるのはためらわれる、というのが読み終えた今の感想である。
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