RAJAさんのレビュー一覧
投稿者:RAJA
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ホログラム街の女
2001/01/19 00:45
TRPGゲーマー必読の優良プロット中編集
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私の大好きな作家、F・ポール・ウィルスンの未来を舞台にしたSF作品です。
主人公はハードボイルドを気取りつつも、人の良さがでてしまう探偵シグ。なぜか弱者からの人気が高く、儲からない街道一直線に進んでいる。そこに現れるのが、クローン娼婦のジーン。この世界ではクローンはあくまでモノ、いくら美しくても、人並みに扱われることはないのだが、シグはいつの間にか、彼女につきあうことになる。
第一話は、クローン娼婦の恋人を探して麻薬シンジケートに首を突っ込む話、第二話は捨てられた子供を助けるために暗殺されかかる、思わず笑いのこぼれる話、第三話はクローンの愛情が世界を突き動かす、感動話。
いずれもユーモアと愛情、それにからくりいっぱいの愛すべき作品です。
(ここは少し、TRPG愛好の方が対象ですが、)これって、そのままゲームのシナリオができそうな話ですよね。特に一章と二章。もう、立派すぎるぐらい立派なプロットができていて、落ちも付きますし、理想的だ・・。
個人的なお気に入りは、第二章です。シグが首を斬られた顛末、小説を読んで笑いが漏れることってそうないんですけれど、おかしくておかしくて、本当に、シグのことを一気に好きになってしまいました。NDTの影響でシグの頭脳がブーストかかってるところとかも、この章のお気に入りです。
とかく、プロットに感嘆しきりのこの小説、実は小道具の用い方も超一流です。近未来メガロポリスSFとなると、たくさんの背景設定が煩わされ、話の筋がちぎられるようで嫌なことって時々あります。
その点、この小説では、そうした描写がまず短いし、登場人物の言葉を巧みに操って、自然とこの世界の常識の上に立てるようになってます。それに、現代人の思考から外れすぎたような突飛なものは出てこないか、出てきたとすれば、それはきっちり話しに絡んでくるものに限られてますからね。
さらにうれしいのは、そうして覚えたアイテム達が、必ずまた、どこかで現れることです。主筋に絡んできたアイテムが、今度は雰囲気を醸造したり、またその逆になったりと、複数回登場してくれると覚えても損した気がしませんね。それに一回目が印象的だから、二回目の登場時に忘れてるなんて心配もありません。
プロットに小道具の使い方に、とにかく納得しきりなのは、売れっ子作家の凄さです。おすすめです。
精霊がいっぱい! 上
2001/01/18 22:36
日本向けのファンタジー
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上下二冊、表紙がキュートなコミカルファンタジーです。主人公の活躍する世界は、魔術法則に乗っ取って動いています。電話には電話鬼、移動には絨毯、サッキュバスが客を取り、図書館検索には司書精霊、と言った具合。
そう言われると、たいがい中身が想像つくような「底の浅さ」が危惧されますが、それを克服するパワーがこの作品にはあります。これだけ堂々とやられると、という良い例でしょう。(笑)変に理屈をこねくり回さず、ああ、これが魔法だったらこれだろう、っていうストレートな置き換えぶりが爽やかです。(スペルザらスとか、中国が漢だとか。ライト&マジック(*ジョージ・ルーカスの特撮会社の名前)のイリュージョンとか)
著者も筋金入りのファンタジー好き、資料漁り好き、なためでしょうか、キリスト教も、ユダヤ教も、ペルシアもギリシアも日本も南米もぬかりなく、キリスト教もつっこみすぎない姿勢がいいですね。日本人の無宗教的感性にマッチしてるんでしょうか。特に日本勢は、本編でも活躍しています。神風を利用した高性能絨毯が、GM「=ゼネラル・ムーヴァーズ」を圧迫し、(アフラマズダってメーカーが出てきますが、あれはペルシア絨毯への敬意というより、MAZDAのパロディ(=こちらも本当にアフラマズダからとってるんだけど)でしょう)日系捜査官カワグチ氏は、官製品ではないサムライスタイルの防護メット(奉行スタイルならなお良かった)をかぶり、陣頭指揮を果たします。
なお、ウィチロポチトリだけが叩かれていますが、彼はアステカの偉大な守護神にして、生け贄大好きなやばやばな神様です。どうも近代文明下では、生け贄に反対し追放されたケツアルコトルの方に同情的なようで、彼は日本のベストセラーゲームブック、「君はエスパー」でも、悪役を務めました。
忘れてましたが、本筋の方も、単純かつ骨太なのが功を奏して、小道具に埋もれず頑張っています。(時々見失いますが。)ファンタジー世界に興味がある、ミステリーエンターテイメント好き(たぶん日本の小説好きの大半)には、ちょうどフィットするんじゃないでしょうか。バランスのとれた良品です
見習い魔女にご用心
2001/01/18 23:47
ランドオーヴァーも新しい物語の始まりか。
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堂々ファンタジーしている、五巻です。最近、このシリーズをいいペースで読んでまして、三、四巻から評価がぐっと高まって、期待して手に取ったのがこの巻でした。
もちろん、一番の関心事は四巻末で生まれたベンとウィロウの娘です。ところが読み始めてびっくり。おいおい、二年も経ってるし、しかも10才!中身はもう分別着く大人ぁ?ウィロウとベンが赤ん坊相手に悪戦苦闘、子供のわがままに振り回されるベン、なんてのが見たかったんだけど、ブルックスは子供嫌いですかね?訳者の井上さんがいうほどには、ミスターヤの魅力を感じられず、どうもベン二号といった印象です。やっぱり子供書くの苦手なんだろうか…。おいしい役どころのキャラですので、今後の飛躍を期待したいです。
もう一人、この本で活躍してほしかったのが、四巻で意外な面を見せてくれた魔女ナイトシェイドです。うーむ、こちらも、反対の方に化けましたね。しかも中途半端だ。今後どう扱われるのか予想できませんが、このままだとランドオーヴァーのバランスが大きく崩れるのでとにかく早く帰ってきてほしいと、今はそれだけです。
さてそんな中、私の期待を一人で数十倍にして返してくれたのが、ランドオーヴァー書記のアパーナシイでした。エリザベスと再会。しかも犬じゃない!こっちはツボをよく心得てらっしゃる。大満足です。敢えていえば、アパーナシイが若いままで、クエスターがヨボヨボ?なのは、ちょっと扱いが不公平かなあ。ベンも俺は老けない!とか言ってるし。年を気にしだしたら老けてきた証拠じゃ。いったいブルックスは誰を老けさせたくて誰を老けさせたくないのだろう?(ミスターヤかな?子供書くの苦手だから)
全体を見て気になるのは、今まで理詰めで来たブルックスが、ずるいところでファンタジーを持ち出すようになったことでしょうか。説明(設定)も増えたし、これが本格的ファンタジーへの切り替えといった、前向きな変化であることを希望します。
ラヴクラフトの遺産
2001/01/18 23:02
ラブクラフトとF・ポール・ウィルスン、これ以上ない最強タッグだが。
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H・P・L(ラブクラフト)と、F・P・W(ウィルスン)、二人のビッグネームに惹かれて読んでみた本ですが、アンソロジーというのは難しいですね。短編な上に作者が異なるわけですから、よほど工夫してもらわないと、こっちが話に乗り切れません。どうも「工夫して、早く読者を取り込まなくちゃいけない」という部分を、H・P・Lへのリスペクトで浪費してしまっている気がします。作品自体は粒がそろいませんでした。むしろ、作者紹介とか、訳者解説とかのが興味深かったです。
一番期待していた、F・ポール・ウィルスンの「松光」も、いつものウィルスン作品の輝きが、残念ながらありません。確かにラブクラフトといえばコズミックホラーなんでしょうけど、ここでオチだけで逃げられても困るなあ、という感じです。この本の目玉となる作家なのですから、ウィルスンらしさを前面に出して、主人公を危機に立ち向かわせて欲しかったです。
皮肉ですが、今回はラブクラフトの偉大さを、改めてその遺産が知らしめたという印象です。
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