光デパートさんのレビュー一覧
投稿者:光デパート
| 1 件中 1 件~ 1 件を表示 |
バカモン! 波平、ニッポンを叱る
2002/04/28 23:14
ゆるぎなき親父の物の見方
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「さっすが昭和一桁、し〜ごと熱心だこと」
この台詞は映画「カリオストロの城」でルパン三世が銭形警部を観察しながら発した言葉。
そう、銭形警部は昭和一桁生まれ。もしご存命ならば、今では70歳前後のおじいさん。
昭和一桁といえば第二次世界大戦敗戦時に多感な少年期をむかえ、その後の高度成長をモーレツな働きぶりで支えた世代である。
まじめ一徹で曲がったことが嫌い。映画での銭形警部は、世間がもつ昭和一桁男のイメージを体現していた。
著者である永井一郎さんも昭和六年生まれの70歳。「カリオストロの城」ではカリオストロ伯爵の右腕、ジョドーを演じていが、この本での永井さんは銭形警部と同じ、真面目で一本気ですこし哀しい昭和一桁の親父そのものである。
アニメファンならば永井一郎を知らぬものはいまい。名前は知らなくとも、日本人であるならば赤ん坊から老人まで、彼の声を聞いたことの無い人間はいないはずである。
これほど有名な人なのに、我々は永井一郎の人となりを知らない。日本一有名な声の持ち主が、どのようなことを考え、何を語っているのか。この本は今のところ、それを知る唯一の手がかりである。
曲がったことが嫌いな昭和一桁の男の考えがストレートに表現されている。教育から経済、政治にまで縦横無尽に話題は広がる。
ご本人は酒飲みの与太話と謙遜しておられるが、なかなかどうしての博識ぶり。出身校で人を判断するのはどうかと思うが、京都大学出身ときいて成る程と唸る人も多いに違いない。
物の見方も右や左に偏ってはいない。筋を通すこと、あたりまえのことをあたりまえということ。cだ。
だからこそ、「バカモン!」と叱られてもそれは説教臭くなく、むしろ耳に心地よく響くのである。
なんだ、アニメについて語られていないのかと残念に思うアニメファンもいるかもしれない。しかし、がっかりしてはいけない。
次の著作はアニメ史中心になると永井さんは仰っているのだ。この本が売れれば、出版の可能性が出てくる。これでこの本を買わなければアニメファンの名折れであろう。
| 1 件中 1 件~ 1 件を表示 |
