ひゅうがさんのレビュー一覧
投稿者:ひゅうが
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ローマ人の物語 12 迷走する帝国
2004/01/04 13:10
今、この時読むべき本である
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何が良いって、著者は現代の世界や日本のあり方に対して多大な示唆を与えていながら、それを今回は(多分意識的に)明示していないところが素晴らしい。題名からして読み手が現代に重ね合わせてしまうので、ここで著者が更に「これでもか」と明示してしまったらさすがに読者層の主流であるところのおじさまたちもちょっと辟易するかもしれないが、今回は淡々と当時の史実を書くことによってかえって読者に深く考えさせる内容になっている。まあ、著者も冒頭に書いているように「幸福な家族はみな似ているが不幸な家族にはそれぞれの不幸がある(トルストイ)」といったことを考えれば、この本から現代への示唆を取り出そうとするその試み自体がいやらしいのかもしれないが、それでも様々に考えざるを得ない内容であった。特に印象的だったのは、「ローマの衰退の大きな原因は、都市の過密と地方の過疎」であった、と指摘している部分である。2004年の政治経済における大きな問題が地方問題であることを考えると、あまりにタイムリーな指摘といえよう。
また、これも著者が意図して抑え気味に取り扱っているのではと思えるほど本来重要かつ時期を得た内容として、ローマ帝国の東方政策及びキリスト教の問題がある。ローマ帝国東方政策とは、チグリス・ユーフラテス、つまり今のイラク地域のことである。イラク、イラン、アフガニスタン、シリア。これらが強大なひとつの国であったら…。また、多神教が当たり前の世界に、拡大を明らかに意図した一神教が入り込んだら…。詳しくはじっくり読んで頂くしかないが、「歴史に学べ」ということの真の意味が理解できるという意味では、シリーズ随一かもしれない、という気さえするのであった。おすすめ。
ハーバード流キャリア・チェンジ術
2003/07/20 01:05
わかるヒトにはわかる
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この本はすごい本だ。だが、多くの日本人にとって、この本に書いてある内容が、本当に自分のものとして迫ってくるのはもう少し先だろう。偶々幸か不幸か、会社人生のめぐり合わせで先を行かざるを得なかったために、この本に書いてあるような葛藤を繰り返し(繰り返すことができ、かもしれないが)、その挙句に、周りのいわゆる多くの日本人にとっては昔ながらの安定志向がまだまだ主流なのだと日々感じ入る仕事についている身には、「そうそう、まさにその通り!」と、ラインマーカーを引きながら読みたい気分であった。と、ともに、今の自分であれば、この本に書いてあることは残らず実践できる、或いは既に相当実践してきた、と改めて自信を持つことができる一冊でもあった。
自分のものとして本当の意味で迫ってくるかどうかはともかくとして、本書は、転職を考えていながら「自分には何があっているんだろう?」「本当に何がしたいのかわからない」と考えている方にはぜひ一読をお勧めする。
輝く日の宮
2004/01/12 00:40
日本人で良かった、としみじみ感じる至福の一冊
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この本を読んで何を言ってもまともな書評になりそうも無い。一言で言うと「まいった」。縦横無尽に古典の知識教養を駆使し、視野の狭い学界では受け止めきれないスケールの大きな仮説を魅力的に提示してみせる。しかも読者にとって嫌味無く。内容は深く、言葉は美しい。絢爛豪華でしかも緻密な構成に、日本語でこれを読める幸せをつくづく感じた。
大絶賛、に聞こえるかもしれないが、実は評者は丸谷才一はあまり好きではなかった。旧仮名遣いは好きなのでそういう意味では尊敬しているのだが、高踏的な偏屈がちょっと…などと思っていて、この本も出てすぐに買ったわけではなかった。源氏好きなもので、やっぱりちょっと読もうかな、といった気持ちで手に取ったのだ。今考えれば「ごめんなさい」である。読み終われば今度は相手に触れずに吹っ飛ばされた太極拳の対戦相手のように、暫く呆然として書評も書けなかった。日本の最良の部分をじっくり味わうためにもぜひなるべく多くの人、いや、読み手にもある程度の知識と教養を求めることを考えれば、なるべく多くの「良き日本人」に読んでもらいたい本である。
センセイの鞄
2001/11/11 01:22
センセイの鞄
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「女性の37歳は世の中で最も疲れている」そんな記事を何かで読んだ。もしそういう人がいたら、真っ先に読んでほしい。この定まらない年齢が心から愛しく思えてくるかもしれない。星を見上げてちょっと泣いて「じきに40歳にもなろうというのに」なんてセリフ、やっと自分を分かってくれる人が現れたような気分で読める。淡々と綴られているのに、私は途中から久しぶりに大泣きし続けた。左脳ばかり使っている殺伐とした生活の中で、右脳を滾々と潤してくれる小説だったからに違いない。
クリティカルチェーン なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?
2004/01/12 01:06
読み手のニーズによって評価は異なるだろう
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プロジェクトマネジメントについて深く考えている人にとっては、資するところは大きいかもしれない。また、「ザ・ゴール」以降のシリーズを熟読している人にとっても、そこかしこにこれまでの蓄積が出てきて面白いだろう。だが、「この本でプロジェクトマネジメントの概観をつかもう」と思ったりすると失敗する。小説にしては冗長だし、プロジェクトマネジメントを語るには散漫、という感がある。提唱されている内容自体はそれほど目新しいものでもないので、実際のプロジェクトにどのように用いられているか、そのあたりをもっと具体的に書き込んでほしかった。
面白かったのは、下請けとの交渉をどう行うか。価格以外の交渉軸を如何に駆使するか、というのは参考になる。また、不動産デベロッパーと下請けにとってのWinーWinとは、という点、プロジェクトが早く終わった場合に起こること、などの説明はうなずける。ただ、それほど紙面を費やさなくても十分に理解できることばかりである。
より興味深かったのは、アメリカのMBA事情が分ったことと、投資評価についてNPVでも回収期間でも正しくない、と言い切っていること、であろうか。後者については次に続けるつもりのような感じも受ける。逆に、そうでなければあまりに説明不足であろう。別にNPVの肩を持つつもりは無いが、ファイナンス理論をどこまで咀嚼してどういった実践への応用をしてくれるのか、今後の展開に期待、というより「展開が必要」である。
シャッター・アイランド
2004/01/11 23:56
早川書房の遊びゴコロが嬉しいですね
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袋綴じで話題の本作品だが、こういった遊び心があると、読んでいる間中どきどきわくわく。楽しめました。本格ミステリらしいつくりになっていつつ、またアメリカ系の小説によくあるお約束的な展開、を想像させつつ、どちらも裏切る結末。読むな、って言われても「ちょっと待てよー」と、もう一回最初からじっくり確かめてしまう、という二度美味しい作品である。ただ、ルヘイン自身は「今回は悪評を期待しているんだ」と言っていた、とあるように「ふざけるな」と怒る人もいるかもしれない。これは読んでのお楽しみ。一方でルヘインが期待した「悪評」とは別に、もうちょっと冷めた感想を言わせて頂くと、袋綴じとはいえ「決して想像できない内容ではないよな」という感もあり。袋綴じの前で描いた結末と、自分の場合は大きく変わらなかった。期待しすぎ、と言ってしまえばそれまでかもしれないが…どこで何に気づくかによって、意外性、という意味ではずいぶん読後感が違うかもしれない。
千年の黙 異本源氏物語
2003/12/30 01:29
精進してください
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この本は、色々なところで損をしている。
まず、見た目。読者がこういった本に持つ期待と装丁があっていない。千年の時を超えた奥深さ、源氏を紐解く秘密、といった深く重く謎めいたものを期待している読者に対して、「うすっぺらいですよー」と宣伝しているようなこの見た目は何とかならないものか。また、表紙にも帯にも見返しにもそこらじゅうに「鮎川哲也賞受賞作」の文字。とどめに巻頭に写真入りで作者の受賞の言葉。いや、賞が悪いわけではない。受賞の言葉を語ってくれてもいい。だが、それがこの本を手に取らせる唯一の要素だと固く信じて疑わないようなこの作りが、そうしたことにはさして興味の無い古典系ミステリ好きには非常にうっとうしい。また、そうした部類の人間でなくても、これでもか、の“受賞”の羅列に「売らんかな」主義を感じ、手には取ったものの辟易して棚に戻したであろう潜在読者は相当いるのではなかろうか。
その次の損は、中味の構成。第一部から第三部まで分かれているが、第一部は不要。第一部は、第二部の導入に適度に使う程度で十分で、独立して読ませるには底が浅すぎる。第二部と第三部だけで素晴らしいミステリ、それもとてつもなく深い心理ミステリが描ける。これだけの題材を、無下に100ページ無駄にしてしまったようで本当に勿体無い。せっかく面白くできているのに。
勿体無い、というのは構成のみならず、中味の膨らませ方にも言える。この本、なぜか「雅び」でないのだ。遊びが無い、といえるかもしれない。話の展開などに色々工夫はしているのだが、謹厳実直ただひたすらに問題解決を目指して一直線、という感じがぬぐいきれない。普通のミステリならそれもあり、かと思うが、せっかく古典を題材にするのなら、左脳系で全速力で走るだけではなく、王朝絵巻の美しさ、その文化の深さにうっとりできるような周辺描写の書き込み、右脳系の道草(例えば本家本元の紫式部が描く十二単の色目の話なんか絶品である。まあその時代の人だからこれは仕方ないが)をぜひ織り込んでほしいものである。こうしたことには作者が博覧強記振りを発揮しても、いや発揮することにこそ読者は喜ぶのである。
最後の損はいわずもがな。「輝く日の宮」である。でもこれは損だか得だかわからないな。
オクシタニア
2003/07/20 00:54
歴史と宗教、男と女。
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これは男と女の物語だ。男は追い、女は逃げる。途中で逆転するかのように思えたり、実際に逆転したり戻ったり。途中、ずいぶんはしょってるよなあ、と感じるところもある。書かない方が伝わる、と感じるヒトと、何だか話が飛んだよね、と思うヒトと半々かもしれない。だが、最後の十数頁では泣ける。出来過ぎたラストによってではなく、そこに至るまでのあれこれに(詳しくは書けないが)、それまでどのように感じていたヒトでも胸に迫ってくるものがある。それはもしかしたら、とても身近な自分の物語を重ね合わせているからかもしれないが。
最後に。関西弁はいい味出してます(これは読んでのお楽しみ)。
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