菅野さんのレビュー一覧
投稿者:菅野
DOS/Vブルース
2001/05/23 22:03
DOS/Vマシンにオネガイ
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鮎川誠が購入したR&RマシーンはIBMのAptiva730だった。Windows3.1をMS-DOSの知識がない状態から、パーソナルコンピュータを「楽しむための道具」として使いこなしていく過程が面白い。あのロックスター・鮎川が長嶋監督や健さんのようにパソコンを覚えていくのがいい感じ。そんな時の鮎川は、その辺の新し物好きのオッサンだし、子供みたいな感じなのかな。他の場所で、「可愛いというのは、他人の劣った部分(劣ったといっても、他の部分が凄すぎたりするとそれと「比較して劣っている」であり、必ずしも自分より格下って意味ではないよ)を見て、親近感を覚えたり、保護したくなったりするような感情なんだろうなぁ」というようなことを書いたことを思い出した。この「DOS/Vブルース」の鮎川はカリスマではなくパソコンの前ではただのオッサンで、好奇心旺盛な子供でしかないわけで、これは「可愛い」だと思った。「ああ、あの鮎川も、こんな風に悩んだりしたんだー」って、ね。
これを読んで、自分がパソコンに初めて触れた頃のことを思い出した。
破獄
2002/08/21 01:23
痛快!・昭和の脱獄王
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銀行強盗物の映画なんかを観ていると、どうも一般庶民は銀行強盗に好意的に描写されるんだよね。これは不思議。だけど、日本の場合は、銀行強盗は人質を取ったり、人質を凌辱したり、とてもじゃないが好意的になんかなれるはずがない。「ゲッタウェイ」や「俺たちに明日はない」、「明日に向かって撃て!」、「ニュートン・ボーイズ」、「バンディッツ」などに登場する銀行強盗たちは、なぜか庶民に好意的に受け入れられていたようなのだ。いや、銀行強盗が犯罪であるということに違いはないよ。だけど、庶民感情として、「銀行の方が犯罪的に庶民を苦しめている」というコンセンサスがあるのだろう。
日本の場合はどうか。銀行の金利は安く、傘下の金融会社で高金利で貸しているわけだが、庶民からもっと嫌われてもいいはずの銀行がそれほど嫌われていないから、銀行強盗物というジャンルが少ないのかな。
日本にも同じように庶民に好意的に受け入れられる悪党がいてほしいと思うのだけど、そういうのは鼠小僧次郎吉、石川五右衛門ぐらいだろうか。巨悪を挫く義賊って、鬱屈した世相には必要なもの、必要悪だと思うんだよね。だから、殺しはしちゃいけない。「実録・梅川事件」とか「実録・帝銀事件」じゃダメなのさ。
日本にはホンモノの悪漢がいないから、悪漢小説というジャンルに隆盛がないのだろうと思えるワケ。
しかし、この「破獄」の佐久間の人間性に卑しさは感じられず、脱獄は犯罪なのだろうけれど、佐久間が獄を破るたびにカタルシスすら感じるんだよね。
ヤマタイカ (潮ビジュアル文庫) 5巻セット
2001/06/10 07:55
美人巫女集団と考古学者父子の邪馬台国をめぐる冒険
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★は5つです。大安売りではない。
「妖女伝説」で見せた星野の魅力的な歴史解釈が、邪馬台国をめぐる物語として結実した。「日本人はどこから来たのか」という問いに対して、みごとに美しい答えを投げつけてくる。実際の学問の現場では「ヤマタイカ」で描かれたような魅力的な答えが出るわけではないのだろうが、学校でも授業もつまらなく聞いていた古代史が、星野の手にかかればこんなにも面白く、奇想天外な物語になってしまう。ヤクザ映画やカンフー映画を見た後では自分が強くなったように気持ちが大きくなるように、読後に「にわか考古学者」の気分に浸れるだろう。
全国各地にある「アサマ」の謎や大和、飛鳥、関東の「地名相似」など、歴史のミステリーの面白さを存分にちりばめてある。その上、物語としても巫女集団と修験僧の戦いなど、手に汗握る大活劇となっている。見事としか言いようがない。
告白
2001/06/10 07:08
原作と作画のぶつかり合いが生み出す迫力
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「生存〜LifE〜」でタッグを組んだ かわぐちかいじと福本伸行のサイコサスペンス。福本の代表作の一つでもある「カイジ」などで見せた細密な心理描写に引き込まれた。福本の原作にはアラがあるが、そのアラを力技でねじ伏せて物語世界に読者を引き込む大胆さがある。
かわぐちの画力か、福本の原作のパワーが為せる業なのか、本作の二人の登場人物の表情が、確かにかわぐちかいじの絵なのだが福本の描くキャラクターのそれにどことなく似て見えてしまうのは錯覚だろうか。
この作品に関しては、福本の原作がかわぐちを呑み込んだといえるだろう。
聖の青春
2002/08/24 13:53
村山聖をとりまく人たちの優しさに打たれた
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もちろん村山聖を主人公に据えているのだから彼を魅力的に描くのは当然なのだが、そんなことを割り引いても、彼の生き様の凄まじさにページを繰る指にも力が入り、集中して一気に読んでしまった。
読者の立場では、この小説が夭逝した棋士の話であることは分かっていたので、彼が死んでしまうことなどあらかじめ分かっていたのに、彼らをとりまく家族や師匠、友人、ライバルたちがそうであったろう悲しみの何分の一かを読後に感じてしまうのだった。
村山はヘンなヤツである。汚かったり、臭かったりもしたのだろう。感情の起伏も矯しかったのだろう。ワガママで頑固だったのだろう。しかし、そんな欠点ともいえない部分をも笑い話にできてしまうぐらいに魅力的な人物だったに違いない。将棋に対する真摯さがライバルたちを、彼の他人には一見分かりにくい優しさに家族も師匠も友人たちを魅入らせていたのだろう。そして、著者もその一人であったのだと納得した。
哀しいと思ったことがある。そんな彼の生き様も時代の流れとともに忘れ去られていくのだろうな、と思うと、今の大量生産、大量消費の時代が疎ましい。
日々、これ口実
2002/08/21 00:35
頭のよさと頭の使いドコロのよさ
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「ガムをかむと、頭がよくなる」について、「ウソです。勉強しなきゃダメです。バットの素振り毎日1000回やっても、ルールがわかんなきゃ野球はできません」と書いている。
根性馬鹿のことをいっとるんだろうなぁ。
仏壇はゴミと一緒に捨ててしまったが、創価学会にいたことがある。題目を何遍唱えてもそれだけじゃ何も変わらない。「宗教は麻薬だ」というが、本当に麻薬だということ。今のところ、仏罰はあたっていない。
T.R.Y.
2001/06/26 08:13
義侠心と冷徹になりきれない詰めの甘さが魅力の詐欺師
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舞台である明治末期の混沌とした上海、クセのありそうな登場人物と物語の冒頭からワクワクする展開が期待できる。日本陸軍の最高幹部や武器商社との腹のさぐり合い、次期陸軍大臣を巡る確執、漁夫の利を得ようとする悪徳警官、そして主人公を狙う殺し屋と、実在の人物をうまく織り交ぜながら、手に汗握るコンゲームを展開させる腕は見事。
「T.R.Y.」というタイトル名は意味がわからない。キューバの革命家チェ・ゲバラを描いた「C.H.E.」とそろえたのだろうが、それならば副題をつけるか、改題とともに作中にタイトルの謎解きを入れて欲しかった。
刑務所の中
2001/05/23 22:17
刑務所の中というのは思いのほか自由な空間のように思える
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現在も札幌に在住するマンガ家で、趣味でガンを集めていた花輪和一が拳銃不法所持で3年間の懲役に服していた中でのエピソードをマンガにしたものです。言っちゃ何だけど、刑務所の中というのは思いのほか自由な空間のように思えるのは錯覚なのだろうか。娑婆っ気を断ち切ってしまえば、半年や1年ぐらいは快適に過ごせるのだと思ってはいた。20日やそこらの留置拘留は修学旅行みたいなもので、不謹慎の誹りを覚悟で言うならば割と楽しいものなのだ。だが、それでも3年は長いと思うのだが、淡々と当たり前のように過ごせてしまうものなのか。予備校と監獄は一度は入ってみるものなのかも知れない。
見沢知簾の「囚人狂時代」でもそうだったが、ムショに入っても反省なんかしていないというのは、ある意味で健全なことなのかも知れない。反省してグチャグチャジメジメしている方が精神衛生上よくないのではないだろうか。たぶん、反省したとしても、犯罪を犯したことを反省するのではなく、それを発覚させてしまった事を反省するのだろう。
それにしても、拳銃の不法所持ぐらいでチョーエキですか。世知辛い世の中ですね。いいじゃん、本来の使用目的で使用しない限りは美術工芸品なんだからねー。俺なんか、免許もないのに殺傷能力があるキックボードなんかに乗ってたりするわけで、これはどういうことだ。というか、日本人は、人を殺したかったら竹槍ででも殺す民族だということを忘れているのではないだろうか。竹槍で鬼畜米英を倒せると嘯き、後の世代では火炎瓶や投石で国家が転覆できると嘯いていた、そういう民族なのだと思います。
39 刑法第三十九条
2002/08/22 08:51
精神鑑定を覆せるかどうかを描いた法廷ミステリー
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精神鑑定を覆せるかどうかを描いた法廷ミステリー。
実は、精神鑑定を覆せずにまんまと逃げおおせた場合はどうなったのだろう、なんて考えが膨らんでしまいますね。
読後まで気がつかなかったのだけど、この作者、永井豪のお兄さんだったと思う。マンガの原作者、高円寺博としてはダイナミック・プロの作品をいくつか手がけていたらしい。小説家としてのデビューは「デビルマン」のノベライズだった。
刑法第三十九条を不条理と思う人も多いと思うけど、該当者する人たちは刑を与えても反省もできないんだよねー。でも、死刑を除いて刑罰の目的が社会復帰なのだから、精神病の人間に刑罰を与えるなんてことは無意味というか、ただの私怨を晴らすだけのことで法治国家のすべきことではないよね。リンチと変らない。
単に、「殺人を犯したのだから殺してしまえ」なんて言っているだけの人は野蛮人に思えてしまいますね。
ただ、やはり俺は犯人に同情的になっちゃうな。仇討ちは認めてもいいんじゃいかなー。
囚人狂時代
2002/08/21 00:30
獄中作家と元犯罪者作家
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刑務所を出てから作家になっても元犯罪者作家であるだけで、見沢は獄中作家になりたかったのだろう。元犯罪者作家と獄中作家ではカッコよさが数倍違う。元犯罪者作家だとただのイロモノだけど、獄中作家はそうではない。獄中作家はカッコイイのだ。
アフター・スピード 留置場→拘置所→裁判所
2002/08/20 05:37
本当の自由を知る者は塀を軽々と跳び越える
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いわゆる獄中記なのだけど、何とも楽しそうな獄中記だ。留置所程度ならピクニック気分ともいえるのだが、彼の場合は留置所→拘置所なのでピクニック気分とはいえないはずなのだが、彼の人間性がそうさせるのだろう。精神が自由なやつは、獄中でも楽しむ術を知っているのだろう。むしろ、獄に拘束されてはいないが、自由であると思いこんでいるシャバの人間の中には自分が拘束されていることにすら気づけない者もいるのではないかと思える。自由な精神を持ったやつは、シャバでも獄でも自由に生きられるのだろう。
留置所の中でのドラッグ・パーティーのシーンが一番感動した。本当は、自由ってこういうことなんだよ。
キャピタルダンス
2002/08/15 02:29
和製アーチャー?!
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「T.R.Y.」の井上尚登の最新作。
難を言えば、起承転結の転が慌ただしく、結が尻切れトンボになっているような感じではある。そして、経済小説と謳ってはいるが、コンゲームに重点が置かれているようだ。前作「T.R.Y.」もコンゲーム小説だったが、このジャンルにはジェフリー・アーチャーがいるので、それと比べてしまうと少し褪せて見える。しかし、ベンチャーを扱うこととネットで知り合って起業するというような部分で従来の経済小説の読者とは違った層を捉えられたのではないかと思う。
ベンチャーを扱ったものといえば、1985年のテレビドラマで「華やかな誤算」というものがあったが、起業のダイナミックさでは「キャピタルダンス」のタコボールの方が規模も大きく派手なのだが、ドラマとしては「華やかな誤算」の方が見せてくれたと思える。ベンチャー企業内での仲間内でのドロドロした愛憎なども描けていればよかったのではないかと思うのだ。キャラクターの性格付けが単純で、まるでマンガの主人公のようにデフォルメされているのだ。
本作「キャピタルダンス」は、起業や企業買収などについて取材の成果は大いに認められるのだが、ドラマ作りも骨組みはよくできているのだが、後半で息切れしたのか、種明かしの段階では、それまでの盛り上がりに水を注すような興醒めする終わり方だった。あらかじめ決められた結末に向かって一直線という無味乾燥した終わり方だったのが残念だ。
しかし、現時点でエンタテイメントしているコンゲーム小説を書く若手がほとんどいない現状では、彼に次回作でも新しい取り組み方で和製アーチャーと呼べるような作品を仕上げて欲しいと思う。
天牌 麻雀飛龍伝説 10
2001/09/22 15:39
今度の「天牌」は脱衣麻雀だ
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麻雀劇画の極北を往く「天牌/作・来賀友志 画・嶺岸信明」の最新刊は、谷口隆殺しのケリをつけるための黒沢と入星の勝負は黒沢の天和で勝負ありとなったわけだが、学生麻雀大会を謀略により失格にさせられた沖本瞬の次の標的は、全日本麻雀競技審査会の稲垣名誉八段だ。ところで、名誉八段っーことは実力は八段よりは数段劣るわけで、金や年功による与えられる段位っていうのは、いわば「お情け」でもらえる段位なわけで、ちっとも名誉じゃないような気がするんですがね。まぁ、それはさておく。
沖本と稲垣の対決は脱衣麻雀! 女の子相手ならいいのだが、頭の禿げ上がったオッサン相手に脱衣麻雀とはえげつない。さすがに稲垣たちをスッポンポンにするまでは描かなかった。若い女の子の裸は猥褻ではないが豚のように肥えたオッサンの裸は猥褻だろう。少なくとも俺のコードに引っかかるのだ。
ところで、ビデオ化決定だそうで、蛭子能収や小島武夫も出演ということだ。衛星でもドラマ化するというし、ここのところ破竹の勢い。かつての「哭きの竜」以上だね。久しぶりに麻雀したくなっちまったい。
名探偵の掟
2001/08/29 05:43
推理小説を盛り上げる作中人物の苦悩
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これから東野圭吾の作品群を読み始める人には、まずこの作品を最初に読むことをお薦めする。
これは東野圭吾の作品の予習テキストのような連作短編集で、推理小説を読みなれた人にもこれからハマろうとしている人にとっても新鮮に映るはずだ。実は、著者の他の作品のネタバレになるものだが、本作で使った手口は封印してしまうという作者の意気込みなのだろうか、そういう意味も込められているのだろう。あるいは作者が自身に課した枷であろうか。自分で笑い飛ばしてしまったトリックを少し焼きなおしただけでほかの作品に使うことなどできないだろうからだ。その後に上梓された東野作品には、使い古された謎やトリックはほとんど出てこない。本作は、東野圭吾自身にとっても以降の方向性を決定付けるものとなっている。風刺や諧謔、おちゃらけが作風であるというのではない。
本書や、その続編である「名探偵の呪縛」や本格メタ推理小説ともいえる「超・殺人事件 - 推理作家の苦悩」は、メタ推理小説というかメタ・ミステリーという分野を開拓したといえるのではないだろうか。ガチガチの推理小説ファンの中には拒絶反応を示す人もいるのかもしれないが、推理小説の新しい可能性を期待させるものとして歓迎する人もけっして少なくないのではないかと考える。一種の踏み絵のような作品ではないだろうか。
超・殺人事件 推理作家の苦悩
2001/08/29 00:37
推理作家の苦悩は読者の愉しみ
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「名探偵の掟」、「名探偵の呪縛」に続くメタ推理小説。あるいは、推理小説の作家、評論家、読者の推理小説ともいえるかもしれない。すべての短編の題名が「○○殺人事件」なのだが、実は作中で人が死んでいない「○○殺人事件」もある。「超読書機械殺人事件」や「超長編小説殺人事件」では、殺人事件が起こっていないのだ。殺人事件の描写がない作品の題名もが「○○殺人事件」だというのが、この作品の最大の謎ではないだろうか。ほとんどの作品で、殺人事件が起きていないか、物語の中での比重が無視できる程度になっている。殺人事件を期待した読者(シリアスな殺人事件が起きることを期待する読者はよもやいないと思うのだが)は肩透かしを食らうことになる。というか、東野圭吾が「ただの殺人事件を描くはずがない」という読者の期待を自身が知っているのだろう。副題の「推理作家の苦悩」は、東野圭吾自身の苦悩なのであろうが、読者にとってはその苦悩は愉しみでもある。
本書の読後に、 bk1 から宮部みゆきの「R.P.G.」が届いていたのだが、「薄いなァ」、「軽いなァ」と感じてしまった。そこで、直前に読了していた本書の中の一編である「超長編小説殺人事件」を思い出して苦笑してしまった。自分自身の価値観も、作中の作家や編集者、書評家、評論家、読者と大差なかったのである(笑)。
