まさきっちさんのレビュー一覧
投稿者:まさきっち
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紙の本13階段
2001/11/27 16:36
テーマや緊迫感は買うんだけど…
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第47回江戸川乱歩賞受賞作だから少し期待して読み始めた。所々描写や会話の拙さは目立つものの、まあ新人だからと、それくらいは捨象して読み進んだ。デッドリミットミステリということで、徐々に迫る期限終了日時はなかなかの緊張感だった。
あらすじ:喧嘩で人を殺し仮釈放中の青年と、犯罪者の矯正に絶望した刑務官の二人に持ちかけられた仕事は、1000万円の報酬。記憶を失った死刑囚の冤罪を晴らすこと。タイムリミットは3ヶ月。どれだけ冤罪に近づけるか。当時の殺人現場に赴く二人。当時の関係者に質問していくうちに明らかになっていく事実。並行して描かれる死刑執行手続き場面。
事件真相追求と共に、明るみになる仮釈放中の青年の10年前。
布石というより露骨なまでの当時の事件との関連性の暗示。
はっきり言おう。この小説は破綻している。
すでに10万部を越えているという。この本をすすめる人たちは、事件の真相場面での破綻を無視している。私には理解できない。
多少ネタバレ:この殺人事件が今まで未解決というのが、そもそもありえない設定なのだ。10年も経って二人が捜索して、なぜいろいろ新しい証拠が見つかるのだ。まあ仮にそういうことがあったとしよう。だが、最後の最後で明らかになった証拠は、あまりにもナンセンスだ。これが10年後に見つかるくらいなら、当時絶対に見つかっているのだ。こんなものを警察が見逃す訳がない。
私としては、同時期に発売された夏樹静子著「量刑」のほうがよほど良く書けていると思う。裁判官を主人公にしている点でも新鮮だし、“死刑制度”に言及している点でも似ている。私は断然こちらをおすすめする。また、刑務官を主人公にする作品としては、丸山健二のデビュー作にして芥川賞作品である「夏の流れ」講談社文庫1973年を大大大おすすめする。映画では「グリーンマイル」が刑務官を主人公にしているかな。これは別にすすめないよ。(2001/11/23)
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