山鯨さんのレビュー一覧
投稿者:山鯨
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紙の本民子
2001/10/17 23:47
いつか私を置いて行ってしまう君たちへ
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本当のところ、猫はなにも考えちゃいない。
女の掌にすら易々と納まるあのまるい頭の中身は精々がところゴハンとトイレと嫌いな猫と好きな猫のこと位しか詰まってそうにない。日向で香箱を作って目を閉じている彼等に哲学者を見るのも怠け者を見るのも全てこれ人間の勝手な思い込みに過ぎない。蒲団の端でほっくり蹲っているこの小さな獣の重さと手触りと温度は、なにとなく人寂しい心地のする夜半とても頼りになるけれど、撫でまわすヒトの掌が安眠妨害と感じればプイと立って茶の間の座布団へ逃げてしまうに違いない。大した場所を取る訳でも無い代わりに役にも立たない、新聞ひとつ運んで来るでない彼等はけれどもたったひとつ、呆れるような寛容さで私達の勝手な思い入れを何処までも許してくれる。なにもしない。なにも考えない。ただそこにある。そしていつか必ず私達を置いて旅立ってしまう硝子玉の眼差し。だからこそ私達はいつまでも数多の民子を忘れることが出来ないのだ。
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