門土知安さんのレビュー一覧
投稿者:門土知安
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デジタル時代の出版メディア
2000/08/06 16:21
1990年代の出版界の動向と今後の見通しがよく分かる渾身のテンコ盛りレポート
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テンコ盛りというのはこういう本のことを指すのだろう。
お気楽な評論家たちが描く〈21世紀の出版はズバリこうなる!〉ふうの御託宣では決してない。熱血編集者が〈出版はこうあるべきだ〉と熱弁をふるう理想論でもない。
この本は1990年代から現在にかけて出版関連企業がじっさいにどう動いているのかについての多面的なリポートなのだ。
これまで三位一体とされてきた「書店・出版社・取次」。再販制によって維持されてきたこのトライアングルが、インターネットの出現や欧米巨大資本の日本進出、各種規制緩和等によって激しく揺さぶられている。そんななかで、生き残りをかけてさまざまな取り組みを模索する。
そうした業界全体のようすが、事実をもって多面的に語られている。しかも、わずか200ページ足らずという小ぶりのお茶碗に、これでもかこれでもか、と情報が詰め込まれている。
まさにテンコ盛りなのだ。
たとえば昨今話題の「電子出版」。この言葉の意味するものは多様だ。編集課程のデジタル化を指すこともあれば、CD-ROMや電子ブック、オンライン上での電子書籍を示すこともあるし、オン・デマンドによる製本も電子出版のひとつの形態といえる。そんな新たな出版形態が普及していく背景や経緯が、あらためて整理され解説されるのは新鮮で、読んでいてあたまが妙にすっきりする。
アマゾンドットコムやベルテルスマンの日本進出についても多くのページが割かれている。それ同時に、コンビニエンスストアが町の本やさんを脅かして本の流通を担おうとしたり、複数の出版社が版元ドットコムという共通サイトを立ち上げるといった現象も、次々報告されている。そして、そうした同時多発的に起こった現象のどれもこれもが、著者の手にかかると、互いに関連し影響を及ぼし合う。
そして、読み手は「なるほど、そうだったのか!」の連続となる。
本筋から少しそれるが「アグリゲータ」という言葉をご存じだろうか。インターネット時代の出版界に求められる新しいビジネスをさす用語だ。具体的にいうと、操作や契約方法が個別ばらばらな出版社等のネットサービスを、使いやすい情報のプラットフォームに集約するサービスのことを指す。これが第1部でサラリと紹介されている。
日本ではまだ本格化していないため著者は多くを語っていないが、取次や書店がアグリゲータに変貌していかなければ、地位低下は避けようがないのではないか、という視点は注目に値する。ときおり顔を覗かせる著者の問題意識は鋭く的確だ。
将来、出版の道に進もうと思っている学生や業界関係者にとって、90年代の出版界の動きを知る必読の一冊。本好きを自認する人も、これから書籍がどうなっていくのかを知る上で読んでおいて決して損はない。
そういえば、版元のポット出版といえは、過去に著作権フリーのスレイヴ というアナーキーな本を出した意欲的な出版社。著者の湯浅さんともども、ポット出版の心意気にも拍手とエールを送りたい。
検証病める外務省 不正と隠蔽の構造
2002/09/05 12:47
外務省の不祥事を追い続けた共同通信社会部記者の本
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外務省をめぐる一連の不正や刑事事件を丹念に整理してまとめている。不正を指弾するのは地味な作業である。骨は折れるし、ときには恨みも買う。本書はそうしたことを再認識させてくれる良書である。情報公開法を取材ツールにしているあたりは、昔の新聞記者が書いた「お説教もの」とは違い、現代のジャーナリスト志望者にはいい参考書となるだろう。
著者は執筆動機を「最前線で取材していた誰かが、きちんとフォローしておかなければ、未解決の案件が闇に葬り去られてしまう…。そのうち、国会も取り上げなくなり、国民も忘れてしまう…」という危惧からであると表明している。だが、ひねくれた読者の立場から言わせてもらえば、最も忘れやすいのは新聞記者ではなかろうか。筆者はそうしたマスコミ側に内在する病巣にもっと光を当ててもよかったはずだ。
力のある筆者ゆえ、次回作にも期待したい。
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