ryuichihさんのレビュー一覧
投稿者:ryuichih
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神の火
2000/11/14 02:04
彼等はなぜ原子力発電所の襲撃に至ったのか?
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主人公は、かつて原子力技術者であり、その極秘情報をソヴィエトに流していた島田という青い目をした男。スパイの過去を捨て、平穏な日々を送っていた彼が、かつて自分をスパイに仕立て上げた男と再会し、幼馴染みの日野とともに謎の<トロイ計画>に巻き込まれていく。前半は、島田を中心に《北》の工作員、公安警察、CIA、KGB、政治家などが<トロイ計画>の資料をめぐって、策略や駆け引きを繰り広げる。そして後半、島田と日野は音海原子力発電所を襲撃する。話の前半と後半を結び付けるのが、チェルノブイリで被爆して日本に密入国した高塚良。 彼等はなぜ原子力発電所の襲撃に至ったのか?
この作品は、高村薫愛読者でも好き嫌いが分かれるのではないだろうか。登場人物の設定がそれぞれクセがあって、なかなか取っ付きにくいところがあるし、話も硬い内容である。読んでいてワクワクする話の展開ではなく、常に暗い部分、何か冬の厳しさの様なものが背景にあるような感じだった。それは主人公である島田や日野、良の過去や心情がそういった話の背景に繋がっているからだと思うし、そういうふうに読者である僕に感じさせたのは高村薫の筆力の素晴らしさであるとも思う。
この話の核(野球でいえばボールみないなもの) となるのが、原発襲撃プラン<トロイ計画>の資料。そのため、原子力関連の専門用語がいろいろ出てくる。コンピュータの話も出てくるけど、理系の人ならなんとかついていけるかな。後半、原子力発電所を襲撃するシーンなんかは想像力を働かせるのが大変。原発の中なんて見たことないしね。
でも、高村薫の神髄はこういった科学とか社会問題とかを題材にしているところではなく、人物描写 だと思う。登場人物一人一人にきちんと人生を持たせいていて、心情の変化や行動の描写 が実にリアルである。
じっくり読むにはオススメ。スカッと楽しみたい人にはオススメできないかな。
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