あすかさんのレビュー一覧
投稿者:あすか
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聖王ルイ
2002/03/27 15:35
列聖された唯一の王
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聖王ことルイ9世は、13世紀に生きたフランス王で、2回の十字軍を興した。エルサレムをのぞみながら2度目の十字軍の途上で死んだ。
信仰心の篤さで知られ、1270年の死後。1297年になって列聖(カトリック教会によって聖者として認定されること)された。
アメリカのセント・ルイス(Saint Louis)の地名は、彼にちなんでつけられているぐらい、親しみを持たれ尊敬された王だったらしい。
これまで、日本語の書籍で彼について知る事は難しかった。今回ジャック・ル・ゴフという、すでに何作も邦訳のある、アナール派の大家が10年以上もかけて書いたという本書が、日本語で読めるようになって本当にうれしい。
値段も高価であるが、BK1の解説にもあるように、3部に分けられ、様々な面から描写されたルイ像が、だんだん自分の中で立体化され、イメージが膨らんで行く過程を楽しむことできる。
訳注が非常に多いので、専門家ならぬ身としては、(専門家は原典にあたるんだから、訳注を削って安くしてくれたほうがいいなあ…)と思わなくもないが、自分の本として再読する場合、注を楽しむ読み方ができるくらい注が充実している。
本書は専門書だが、物語として引き込まれて読める。
1200ページあること、充実した内容からすると、高くない(安くもないが)。
中世フランスに興味を持つ方には絶対おすすめの1冊である。
侯爵夫人ポンパドゥール ヴェルサイユの無冠の女王
2002/03/19 00:32
フランス文化に大きな影響を遺した女性
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ポンパドゥールと聞いて思い浮かべるものは何でしょうか?
月の女神ディアナに扮した肖像画で知られる、ルイ15世の寵姫ポンパドゥール夫人は、単なる性の相手をつとめる女性ではありませんでした。むしろ彼女は身体も丈夫ではなく、体質もいわゆる冷感症といわれる、愛妾としてはむしろ不利な条件の下にありました。
しかし、彼女はその死にいたるまで、敵の多い宮廷生活で、常に勝者としてその座を占めつづけました。その秘訣は、王であるルイ15世を退屈させなかったこと。
劇場を作ってはみずから女優として舞台に立ち、歌を所望されれば、即座にアリアを歌う。デザインにも優れた才能を示し ア・ラ・ポンパドゥール(ポンパドゥール風の)という表現を冠される様式が残るそうです。セーブル焼きを開発・援助させ発展に寄与する、陸軍士官学校を建てるなど、先見性を持った統治者の面も持っていました。
彼女がただの愛妾ではなく、自分の才能を磨き生かした、受身でなく意志を持って行動した面を描いた興味深い伝記です。
アイ・アム
2002/03/22 22:53
機械の看護婦が問う自らの存在
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彼女の名はミキ。苗字とも名前とも取れる名を持つ彼女は、病院で看護をするために生み出された。機械であるがゆえに、人は彼女に遠慮せず用事を頼める。機械であるがゆえに、彼女はミスをしない。
しかし人が感情をともなってミキに相対するとき、双方が人間同士では感じることのない微妙な違和感を覚えることになる。死に行く家族は、なぜ自分の子が? とつぶやかずにはいられない。ミキが返す答えにも、なぜ機械にこんなことを言われねばならないか、と叫ばずにはいられない。繰言を発する女性は、機械にこんなことを言うなんて、でも同じことを言うのだから機械に言うぐらいでいいのかも…と自問する。そして、人々の生々しい感情に触れるとき、ミキは自分がなにものなのか、と問わずにはいられない。
中篇ながら、機械と自我、人間を人間たらしめるものは何か、という問いと、物語を巧みに織り込んだ佳篇です。
天使のような修道士たち 修道院と中世社会に対するその意味
2002/03/14 19:21
修道院のイメージが変わる一冊
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“Angelic Monks and Earthly Men”という原題を持つ本書は、修道院とそれをとりまく世界を今までとは違った捉え方で描いている。フランスの一地方についてなされた試算では、人口に占める修道士の割合は0.3パーセントほど。建物からあまり出ずに生活する傾向を考え合わせると、見かけることすら珍しかったのではないかと思われる。当時の文字に書かれた情報の量や性質、社会の中での位置について語る第一章は、文字資料に依拠して形成されてきた歴史観の持つ偏りを教える。この導入部から、修道院がどのように外界と関わったか、ということが知的貢献、芸術、領主層との相互関係など、章立てて語られる。
修道院というものが、どれほど外界に影響を与えたのか、多大なものか、些少のものか。歴史の時間に習ったイメージよりも、具体的なデータを得て考えることができる。巻末の索引、参考文献も充実しており、学術書としてしっかりとしている。原典にあたり、著者の間違いかと思われる部分には注が付されていて、訳者の誠実さをうかがわせる。原著よりも図版が多く採録されており、わかりやすい。
読み物としても楽しめる、良書である。なお、2002年3月、著者のミリス編による、「異教的中世」が同じ新評論から出版された。
オリーブオイルのすべてがわかる本
2002/03/16 23:25
すべてはわからないけれど、バランスのとれた楽しい本
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この本は前半に使いこなしのための情報、買い方、保存の仕方、種類と使い分け、産地別特徴が書いてあります。さらに40ページ近い量のレシピがついています。レシピはわかりやすく、特殊な材料も使われていないので、実際の参考になると思います。後半は歴史、作り方、ラベルの見方、酸化しにくいなど成分の特徴など、より詳しく知りたい人のための情報が書かれています。ただ、この本だけでオイルを探すよりも、写真のついている他の本と突合せながら探すほうが効率的に思います。
ところどころに挿入されているコラムは、オイルは何回くらい揚げ物に使えるか、エクストラバージンオイルは加熱してはいけないのか、など、身近な疑問をデータをあげて解説しています。
レシピならレシピ、オリーブの産地なら産地の情報と特化した情報を求める人には、もっと詳しく、多くの情報を、という不満が残るかもしれませんが、行間から研究熱心な著者の姿勢がうかがえる、バランスのとれた本です。
外務省の掟 徹底検証!外務省なんていらない
2002/03/19 21:34
いらないとは思わないけど…
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最近ニュースに出てこない日はない外務省。雑誌で匿名の記事、あるいはすでにやめられた方の告発本は数あれど、単行本で実名をあげた本はめずらしいかな…と思って読みました。
この本の面白い部分は、相反する意見がそのまま記されていることです。たとえば、機密費の使途を30年経ったら公開すべき、という人もいれば、相手は信頼・信用のもとに教えてくれたのだから、死んでもソースは明かしてはいけない、という人もいる。外交官は“情報屋”でなければならない という方もいれば、冷戦終了後は機密情報戦なんてナンセンス、という方もいる。大使館はお金を流用して美食・色欲を欲しいままにしているという告発もあれば、コーラ一本たりとも公私混同することはなかった、という大使の息子さんの体験談もある。
機密費やモラルについてのさまざまなインタビューは、たぶんきっと、皆真実なのでしょうが、公私混同しない人の存在は、何億も使い込んだ人の罪を帳消しにはしない。自分はやっていなくても、他の人がやっていたのを知らなかったのか、知らないふりをしていたのかと思ってしまいます。
疑問に思う人はやめていくしかないとしたら、残っている人はどんな価値と天秤にかけて、残ることを選択したのか。現役を退いて政治家になられた方、大使館でひどい目にあったジャーナリストなどが執筆者で、現役外交官の本音にまでは踏み込んでいないものの、面白くは読めました。
しかし掟のなんたるかについては、あまり良くわからず、タイトルと違うなあ、という読後感です。
プーさんのくるりんえほん まわしてさがそう くまのプーさん
2002/03/19 00:16
何を贈ろう?
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最近珍しいように思える、クラシック・プー(ディズニーのアニメの絵でない、という意味で使っています)の絵本です。
今日はティガーの誕生日。プーさんやオウル、イーヨーは何をプレゼントするのか? 厚紙のボードでくるくる回せます。
プーさん達の好きなものが分かっていないと難しいけど、それなりの知識を持っているお子さんには良いと思います。
ただ、カンガルーのプレゼントの おくすり と、プーさんのプレゼントの はちみつ が、両方つぼに入っていて私には紛らわしかったのです。わざとなのかな? 持って遊びに行った2歳半の甥も、最初ちょっと混乱してました。すぐ おなーじつぼ! とか言っていましたが。
何々ちゃんなら何をプレゼントする? などと話をしながら一緒に読んでも良いのではないでしょうか。
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