らむさんのレビュー一覧
投稿者:らむ
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ザ・汚染
2003/05/25 11:58
相手の心をもらうこと
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業績悪化、高齢化、後継者不足により、楮(こうぞ)組合は解散へ。残されるのは、借金、農協の不良債権、跡地。跡地のある過疎の村に、1万頭規模の養豚場の招致が計画される。その養豚業者は、過去に2度公害問題を引き起こしている。しかし、推進派は、地区の仲間意識を巧妙に利用し、関係地区の総意で地元の合意をとりつける。
「彼等も、我々と同世代で、ぼつぼつ体が不自由になりかけているんだ」
村長に関係地区として認められなかった跡地近くの地区が反対し、環境調査等を行政に求めようとするが、なかなか進まない。そのうち法改正があり、首長の判断でゴーサインが出せるようになった。はたしてどうなるんだろうか。
テンポ良く話は続き、スリリングで、目が離せない。
公害は出ないのか。何か起こると、村のイメージダウンのため、嫁さんがこなくなるのではないか。名水は守られるのか。そんな心配もある。開業後、事業の業績見込みはどうか。市場の動向はどうか。赤字が続けば、企業は倒産する。村は潤わない。そして、その跡地は放置されたままになるのではないか。そんな例はすでにいくつもある。
養豚場が長期的にこの地域に及ぼす影響をできるだけ確実に検討しなければならない。反対派は金銭抜きに相手に協力する。とくに大勢が決まったあとの反対派の真摯さと、かれらと真正面に取り組む進出企業のスタッフの真剣さが私にはすがすがしく感じられる。
「大切なのは相手の心をもらうこと」
誰だったかこう言っているが、この言葉は本書の言おうとするテーマの一つだろう。
環境の世紀といわれる21世紀には実際ありそうな、もうどこかで起こっているような話で、いつ私たちが当事者になるかわからない。そのとき、私たちはどのような対応ができるのだろうか。
とても魅力的な銀行が登場するのだけれど、これ以上はもうふれない。その頭取の言葉を抜き書きしておく。
「地域の産業の振興育成と、地域の文化・福祉の発展とは同一のものでなければいけない」
どちらかが優先されるものではない、将来に禍根を残さず、「次世代」、将来の子孫が生きる環境のことまでを考えて、私たちは選択と行動を起こすべきだ、と思わせられる小説だった。
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