taigoさんのレビュー一覧
投稿者:taigo
日本人のための宗教原論 あなたを宗教はどう助けてくれるのか
2001/01/17 21:19
新世紀に向けて
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「ことここに至れば、日本を救うのも宗教、日本を滅ぼすのも宗教である。あなたを救うのも宗教、あなたを殺すのも宗教である。」本文から
21世紀は宗教の時代といわれる。
それは、逆説的かもしれないが世界がグローバル化しているからである。
国境がなくなり世界がひとつになる、というのがよくいうグローバル化の効用であるが、ことはそう単純ではない。
実のところグローバル化は世界のキリスト教文化圏化にほかならない。
日本人のように宗教オンチで、宗旨が違っても同じ「人間」として分かり合うことができる、などという寝言を平気で吐く人種にはグローバル化など関係ないかもしれないが、世界中の大多数のまじめに宗教を信じる人達にとっては大問題なのである。
キリスト教が生んだ資本主義や民主主義、近代法などで世界を統一しようとする力と、それに対立するイスラムなどの諸地域の文化。
このふたつの争いの後、世界がキリスト教文化一色に染まるのか、文明の衝突が絶えることがない世界、はたまた新たな価値観の世界を産み出すのか、それはとても難しく、そして重要な問題である。
今現在わかっているのは、この問題を語るときに宗教を避けてとおる事ができないということである。
小室直樹のことについてはいまさら私が語ることもないだろう。
この世界において比すべき人を見つけることができない世紀の大天才といっておけば足りるだろう。
ソビエト崩壊という予言に続き、現在日本の末期的アノミーを的中させた小室直樹。
いまや、彼を抜きにして日本の状況を語ることは不可能である。
その著者の渾身の宗教論。
読めば、あなたの未来への道は豁然と開かれるであろう。
田宮模型の仕事
2001/01/29 11:34
気概
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ご存じ田宮模型のことを書いた本ですが、田宮模型の歴史を書いた本というよりは、「オレたちは模型が好きなんだっ」ていう想いを伝えるための本という気がします。
「オレたちは儲けるために模型を作っているんじゃない、いい模型を作るために儲けているんだっ」という気概が伝わってきます。
この本を読んだ後、私がおもちゃ屋に走り、プラモデルを買ったのは言うまでもありません。模型好きな人、子供の頃プラモを一生懸命作ったすべての人にオススメ。
プロカウンセラーの聞く技術
2001/01/24 21:20
「聞く」ということの重要さ
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
みんな話すことが大好きだ。
相手の話を聞いているようで聞いていない。
相手が話している間、次に自分が何を話すかを考えている。
昨今、自己表現が流行りで、スピーチの仕方、話術の勉強にはよねんがない。
だが、本当に人と人との関係において大事なのは「聞く」ことではないのか。
聞くことによってのみ、相手のことを理解でき、相手の信頼を勝ち得るのだ。
これは、商いでもおなじことだ。
本当にできる営業マンはしゃべらない。
そのかわり、相手の話をずっと聞くのだ。
なぜなら、誰もが自分の話を話したがっているからだ。
聞くこと、すべてはそこからはじまる。
大東亜戦争ここに甦る 戦争と軍隊、そして国運の大研究
2001/03/07 20:33
歴史から学ぶということ
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
勝つべき戦争大東亜戦争、負けるべき戦争日露戦争。この二つの戦争の研究がこれからの日本を救う。小室直樹の一貫している主張である。
人は判断に迷ったときどうすればいいか。答えは簡単である。歴史に学べばよい。イスラエルのラビン元首相は、パレスチナ問題の困難さに対した時どうしたか。歴史を学んだのである。そうして民衆蜂起は力で押さえつけることはできないとの答えに至ったのだ。
我々日本人もこの不況の中どう動くべきかという判断をせまられている。大至急歴史を学ばなければならない。
本書で小室直樹は、大東亜戦争を科学的に検証している。まず大東亜戦争が勝つべき戦争であることを科学的に実証する。そこで導き出される結論は驚くべきものである。真珠湾攻撃はしなくても良かった。普通に海戦をすれば日本の圧勝。アメリカとは戦わずオランダとだけ戦えば良かった。戦わざるを得ない状況になってもドイツに手出し無用と言っておけばアメリカの戦争目的がなくなり、アメリカは戦う理由をなくすetc… 驚くべき結論だが、論理は非常に明確であり納得できる。
そしてなぜ負けたかを検証していく。日本陸軍・海軍や日本の政治が持つ問題点を発見する。それは現代日本にも通ずる問題点である。
本書には、いままであるイデオロギーからの偏見や思いこみだけでのみ語られてきた歴史ではなく、我々の助けとなるデータベースとしての歴史がここにある。
勝つべき戦争大東亜戦争になぜ負けたのか。それを読み解くことで日本というものがわかってくる。
少年時代(中公文庫) 3巻セット
2001/03/07 20:56
郷愁
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
傑作である。「少年時代」というものを持っている者なら、本書を読んで必ず泣くことができる。
原作の柏原兵三の自伝的小説『長い道』の力も大きかろうが、藤子不二雄の絵でなければこれだけの傑作にはならなかっただろう。現に戦中のことなど何ひとつ知らない私が読んでも感動したのだ。
読み終えて、感じたことだがこの作品は郷愁をかいたものなのだ。
郷愁。それは不思議なものである。たとえ故郷を持たない者でも、田舎の田園風景には何かを感じてしまう。そこには日本人というものが持っている原風景があるのかもしれない。
凡事徹底 正 平凡を非凡に努める
2001/03/07 20:50
あたりまえのことをあたりまえに
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
イエローハットの創業者鍵山秀三郎の本。
あたりまえのことをあたりまえにやる、ということの難しさを本当に解っている人は、この本に感動するだろう。
これぐらいのことどうでもいいや。そう思うとき我々は、宝を得るチャンスをドブに捨てているのである。あたりまえのことをあたりまえにやる。これさえできていれば、人間どこに行っても成功できる。
ヨコハマ買い出し紀行(アフタヌーンKC) 14巻セット
2001/03/07 20:48
ハードSFの設定でほのぼのとした日常を描いてみたら
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
物語の設定は近未来。何が起こったかは解らないが、海面が上昇し日本の土地はけっこう海の中に沈んでいるらしい。科学技術の進歩もストップした世界のようだ。
こう書くとハードSFのようだが、そういう物語ではない。なんにも起こらない物語である。ただ、「何かがあった」近未来を生きる人々の日常を淡々と描いている。
これを読むと、人間ってのは何があろうと生きていく生物なのね、と思ってしまう。
おだやかな午後、ぽけーとしながら読みたい一冊。
p.s. 主人公のロボットのアルファさん、いいですねぇ。
西城秀樹のおかげです
2001/03/07 20:43
笑いたいあなたのために
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
久しぶりに大笑いした本。
私の持論であるが、ユーモア小説を書ける人は本当のインテリジェンスを持っているのである。
森奈津子はバイセクシャルでサディストでマゾヒストで、主に性愛をテーマにする作家である。普段ならば、私はこういうタイプの作家の作品は読まない。自分が特異であるということを唯一の根拠として書くからだ。私の感性が唯一正しくて、世間のほうが間違っているのだ、って言ってるようでね。いや、そう思うのはべつにいいのだが、それを作品の中で真剣に真面目にデマゴーグされてもね、と思ってしまう。
その点、本当の知性を持っている森奈津子は、それほどうかつではない。事実、バイにもホモにもレズにも全く興味がない私でも、大笑いできる楽しい作品ばかりだ。
本当にお薦めの一冊。
森さん曰く、最近はユーモア小説を発表する場がないそうだ。編集者、森さんにもっとバカ小説を書かせろ!
人間・この劇的なるもの
2001/02/21 03:40
すごいなあ
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
これが昭和三十年に書かれたものだということに驚いてしまう。これを読んで、私は今まで何をやっていたんだろうと思ってしまった。これ一冊あれば社会評論の本なんて他に読む必要ないじゃないか。
書いてあることは、無知な私には難しいことだらけなのだが、それでも何か感じるものがある。ここにはすごく重要で本質的なことが書かれているんだぞ、って本が訴えてくるのだ。この本の内容を本当に理解すること、それが今の私にとっての一番大切なことだ。
プロジェクトX挑戦者たち 1 執念の逆転劇
2001/02/18 12:04
日本人ここにあり
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
現在文句なく一番おもしろいテレビ番組プロジェクトX。
この不況の世。一番の問題は不況ではなく、不況によって自信を失った日本人。有名でも天才でもなく普通の人を取り上げ、普通の人でも、ただ毎日の努力次第でこんなことがやれるんだ。ふつうの人たちの執念のドラマを見せることで日本人の自信を取り戻そう。
この番組のみえみえのコンセプトだ。本当にいやらしいくらいみえみえだ。だからこそ強い。ここまでドンと直球でこられるとホントにどうしようもない。この番組を見たあとはただ感動するだけだ。
大和魂よ甦れ。
外食王の飢え
2001/02/16 14:15
選ばれた男の生き様
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
経済小説の書き手としては一番好きな城山三郎の最高傑作。一代で巨大レストランチェーンを築き上げた男の物語である。
大きなことを為し遂げる男というのは、何者かの大いなる意志によって動いているのではなかろうか。そう思うことが、成功者の評伝を読んでいる時ある。もちろん本人は自分で考え決断しているのだが、俯瞰してみると最初から定められた道をたどっているように見えるのだ。その道に進もうとした最初の一歩、数々の苦難・逆境、大きな成功、そして終焉。
本書の主人公倉原礼一の人生も、そのように書かれているように私は思う。働き過ぎによって体を壊しぼろぼろになっても、なお前に進み続ける。そこにはもはや外食産業の覇者を目指すという当初の目的はない。前に進まなければいけないという何者かの声を聞いているかのように、行き着くところが奈落の底だとしても前に進む、ただそれだけである。
だから私は本書のラストに、納得した。このような生き方をしてきた人間は、このように終わらなければいけないはずだ、そう読みながら思っていたからだ。
選ばれた男はいかに生きるべきか。その答えがここにある。
月の影影の海 上
2001/02/03 00:00
異世界と己の心への旅
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
本書のストーリーは、普通の少女がある日異世界に紛れ込み、その世界の騒動に巻き込まれるというファンタジーの王道なものである。
だが、本書の本質はそこにはない。本書はビルドゥングス・ロマンなのである。教養小説とも訳されるがここでは成長小説としたい。本書は陽子の成長物語なのである。
主人公の陽子は、異世界に一人でとりのこされる。
そして異世界の住人ことごとくに欺かれ、誰も信用できなくなる。本当の意味で、陽子は孤独になるのだ。そこで陽子は自分の過去を振り返る。はたして自分は本当の意味で「生きていた」のかと。
陽子は異世界をひとりで旅することになるが、孤独になることで己の内側へも旅立つことになるのだ。異世界での旅、それは己の心への旅でもある。本当の自分を探すという目的において。
この旅で、初めて「自分」というものに向きあった陽子が、旅の果てに何を得、何を見つけたのか。その答えは、ぜひ本書を読んで知ってほしい。
大豪快。
2001/01/24 21:17
ふたつの奇跡
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「デジャブか? ——いや、アンコールさ。ヤマトは、自分にそう言い聞かせて、ゆっくりと歩き始めた。新たなる冒険だかお笑いだかの旅に向かって。」
『未来放浪ガルディーン 三巻 大豪快。』
火浦功 角川スニーカー文庫
二十一世紀の奇跡ここにあり。未来放浪ガルディーン、十四年ぶりに連載再開す。
うぅ、それにしてもまさか世紀をまたぐ作品になろうとはっ。 感慨がありすぎて涙なくしては読めない、でも読むと笑っちゃうという二重に?お得な作品になっちゃいました。このままの勢いでいけば、ホントに完結するかもしれない。そうなれば、まさに奇跡。奇跡中の奇跡。世界が滅びなかったのはこの奇跡を待っていたからだ。
ここでひとつの奇跡の話をしよう。いや、火浦功の奇跡とはまったくこれっぽっちも関係がないのだが。ただだれかに話したかったんで。
私の知人にケンさん(仮名)とホシさん(仮名)という人がいる。彼らはそれぞれ、ケンさんはオーストラリアに一年間、ホシさんはアメリカに三ヶ月行っていた。ケンさんは皮ジャンとグラサンが似合い、ターミネーターというあだ名と持っている男だ。ホシさんは女の子が三度の飯より好きというナイスガイだ。
ホシさんはソウル空港経由で日本へ帰ってきた。ホシさんがソウル空港でぼ〜としていると、前を革ジャンとグラサンを着けた無精髭の男が歩いていた。まさかなぁ、いやしかし、と思い、迷いながらもホシさんは「ケン?」とつぶやいてみた。なんと、目の前の男はその言葉に反応し、「ホシさん!!!!!」と叫んだ。二人は再会の喜びを、ひしと抱き合うことで味わった。
オーストラリアとアメリカ、北半球と南半球、それぞれ別の場所から旅立ち、お互い偶然にも日本直帰ではなくソウル経由で日本に向かっていた。偶然にも同じ日、同じ時間にソウル空港にいた。(もちろんお互い相手がいつ帰国するかなんて知らない)この偶然を奇跡ということ以外で説明できようか。いやできない(反語)我々はこれを、ソウルの奇跡、ソウルの再会、と呼びたい。
だが奇跡はそれだけではない。ケンさんとホシさんは飛行機も偶然同じだった。だがそれは「ソウルの奇跡」を起こした二人であらば、必然ともいえよう。奇跡はそのあと起こった。
ホシさんは税関を越え、ひさしぶりに日本の大地を踏みしめていた。ところが、一緒の便に乗っていたはずのケンさんが出てこない。一時間ほど待ち、ようやくケンさんは出てきた。なんとケンさんは髭もじゃ、革ジャングラサンという格好で、真っ白い粉である粉石鹸をペットボトルに詰めこんで持ち歩いていたのだ。いろめきたった税関に一時間詰問されたのはいうまでもない。(靴のそこまでレントゲンで調べられたらしい)
ガルディーン復活とソウルの奇跡。このふたつの奇跡をさっそくバチカンの奇跡認定所に報告したいと思う。
恋愛小説 愛の「超」短篇集
2001/01/24 21:15
愛のカタチ
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「僕は、大きな勘違いをしていた。君は、嫌なことがあるたびに、引っ越しをするのだと思っていた。そうではなかった。君は、幸せになると引っ越しをするのだ。幸せにしがみついて、不自由にならないために。君にとっては、幸せさえも、お荷物なのだ。」本文から
私は短篇小説が好きである。長篇小説が嫌いというわけではないが、やはりキレのある短篇の魅力に惹かれてしまう。まあ、最近むやみやたらに長い小説が流行っているということも、短篇への愛情を深める一因になっているのかもしれない。
本書は掌篇小説で構成されている。掌篇小説とは文字どおり掌に載るような小説のこと。短篇よりも短い小説なのだ。当然私は掌篇小説が好きになった。
この本のなかは、恋愛でいっぱいである。三年前の私ならこの本を読んでも、こんなことありえるわけないだろ、としか思えなかっただろう。それほどいろんな恋愛(ドラマ)が描かれている。
友人たちと一緒に飲んでいると、大抵出てくる話題がある。恋愛である。友人たちの恋愛話を聞いてみると、世の中なんて広いんだと思う。事実は小説より奇なり。この経験により、私は『恋愛小説』を読んで、その内容に納得できるようになった。
友人知人たちの愛のカタチ
・彼女の卒業式に、スーツに赤い薔薇を一輪というカッコで参上し、一言も言葉を発せず薔薇を渡して去る。
・彼女を、裸の上にコート一枚という格好でコンビニにティラミスを買いに行かせる男。
・渡部篤郎の話題で盛りあがったということで、つきあうことを決めたカップル。
・「彼女とは冷静に話し合ってお互い納得して別れたよ」というセリフを、酒をガブ呑みしながら何十回と繰り返す男。
・一週間ごとに彼女を変える。
・相手の前では赤ちゃん言葉で話す。もちろん寝るときはヒザを抱えてまるまった状態で寝る。
・旅の一夜、酔っぱらった勢いで友達の思い人とひとつのベットで寝てしまう。
・彼女が欲しいと一日に百回は言うくせに、女の子の顔を見て話ができない男。
・中学生の時、つきあっていた上級生と別れる場面で、柳沢慎吾ばりに「あばよ!」と言い走り去った男。
・遊び人のふりをして、事実年中遊んでいた男が、実は結婚していてしかも子供までいることに三年間気付かなかった。
・同じ理由でケンカし、別れ、再びくっつくという行事をあきずに年中やっているカップル。
私が大学時代、一番学んだことは世の中にはホントにいろんな人がいる、ということである。
面接の達人 2002−5 問題集男子編
2001/01/17 22:03
就職するなら
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
私自身は、就職活動を終え、来春から働くところが決まっている。今から就職活動をする後輩に、オススメの就職関係の本は?と聞かれたら、まずこの本を挙げる。
ただ、この本をホントに理解できるかどうかは、わからない。多分わからないだろうな、と思いながら薦めている。私自身も、この本の本当のすごさはわかっていないだろう。
私が考えるに、この本のすべてとはいわずとも、この本のすごさを理解できる人間は、就職のための自己分析ではなく、本当に自分自身と向き合いたい、という想いを抱いている者だと思う。
就職のためにがんばる、というのではなく自分自身の人生のためにがんばりたいという人にオススメ。
