えるにゃんさんのレビュー一覧
投稿者:えるにゃん
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紙の本私的所有論
2001/01/27 03:33
私の身体は私のもの?
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私的所有論というタイトルからは想像がつきにくいかもしれませんが、生命倫理や障害学といったテーマに興味のある人であれば、6000円という値段も安いものだと思えるのではないでしょうか。
著者のホームページ生命・社会・人間にも情報があります。
私の身体は私のものなのか、私が作ったものは私のものなのか、という問いから始めて、多く生産できる人が多く分け前を得るという社会は必ずしも正当ではない、とされます。したがって、ほとんど、あるいはあまり生産できない人、たとえば障害のある人が、そのために分け前が減ってしまったり、享受できる自由が制限されてしまうことは不当だとも言われます。
とくに、「他者」について述べている第4章が素晴らしいです。この部分に共感できれば、上に述べたような「一見突飛な主張」も理解できるのではないかと思われます。
楽に読めるという本ではありませんが、私たちが生きているこの社会を考える上で、とても重要な本ではないでしょうか。
2001/02/11 01:24
普通の親たちの体験談
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障害児の家族が書いた手記の類いはいろいろ出版されております。この本もまた、障害児の親の体験談集なのですが、登場してくる親たちというのは、本当にごく普通の人たちです。
なかには障害があるということを積極的に受け止めているような人たちもいますが、多くは、親類や医療関係者からの充分なサポートを受けられず、混乱したまま、我が子の誕生を素直に喜ぶことができないままに、出産直後の大切な時期を過ごしてしまった人たちです。そして、障害のある子を産んだ後でもなお、障害児に対する偏見から自由にはなりきれていないような人の体験も載せられています。
その意味で、障害のある人たちを取り巻く医療や社会、家族のあり方を考える上で、ひじょうに貴重な体験談であるということができるでしょう。医療関係者(とくに産婦人科と小児科)はもちろん、これから子どもをもつ可能性のあるカップルには必ず読んでほしい一冊だと思います。
一方で「バリアフリー」などと言われ、障害者が住みやすい社会になりつつありますが、他方では、出生前診断が進み、障害児である可能性の高い胎児を中絶することが以前よりも容易になり、障害のある子どもがこの世に生を受けることは困難になってきているともいえます。あらためて、障害のある子を産むという選択はどのようなことを意味するのかを考えるために、この一冊はいろんな事を教えてくれるのではないでしょうか。
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