sfさんのレビュー一覧
投稿者:sf
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脳のなかの幽霊
2000/09/03 05:16
知的興味の尽きない脳の世界
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人間の意識、世界の認識とはどうなっているのか。それを、脳に機能障害の発生した事例をもとに分析していく、スリリングな内容です。例外的な処理になっている事例から、人間の認知の処理手順を追いかけるというのは、たいへん分かりやすく説得力がありますね。
幻の腕を実在するかのように認識して動かせる、手でものを持った感覚がある、と主張する人々。片手が動かないのに、拍手してみせてくれといわれると、ちゃんと手を打ちあわせたと主張する。動かない自分の腕を、これは兄の腕です、と本気で主張する……。そんな“幻肢”とその治療法を中心に、脳の認識する現実と、外部の世界との感覚フィードバックの仕掛けについての分析を行なっています。
そして、その延長として……。肉親をみても自動的に親愛の感情が励起されないことを、本物の肉親ではないと合理化し確信する、ごく良識ある人。視覚障害をもつ多くのひとが、鮮明な幻影をあたりまえのように見るという現実。電気刺激で特定部位を刺激するだけで、神々を知覚するという事実……など。むしろ脳のなかの神々、脳の中の現実、とでも言いたい内容となっています。
人間の知覚と認識が、いかに作り上げられていくか。そして、いかに自分、自我というものが一貫性を取り繕っただけの、ごまかしによって成立している存在であるか。一章一章、わくわくします。
現実がこんなものなら、ちょっとやそっと変わった世界観や概念を出しても、まったく平気な気がして来ますね。認識、意識を利用したSF概念には、まだまだ未開の地が沢山ありそうです。
大江戸泉光院旅日記
2000/09/08 10:13
托鉢の旅が語る江戸時代の村落のありかた
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江戸時代末、1812年から1818年にかけて、ほぼ日本全国を、徒歩で托鉢しながら旅をした老山伏の残した『日本九峰修行日記』。その日記をもとにして、旅程を現在の地名と勘案しつつ、当時の庶民の生活を追っているのが、この本です。
執筆者の山伏は出発当時。皇族の居る寺院の直下の地位にある寺院の住職で、大先達という高位の山伏として日向一国の山伏を支配するという階級であったばかりか、佐土原の島津家の縁者として禄も受けており、佐土原では弓術の指導などもしていたという人物であります。
そして『日本九峰修行日記』の興味深いところは、そのような有能な人物が、貧しい人々の間を托鉢修行をしていった記録の中から、当時の一般の人々、とくに農民の生活の一端がうかがえるというあたりにある……ということでありまして。この本では、旅の経路を現在の地名と照らし合わせつつ、当時の一般の生活を浮き彫りにしようという主旨で書かれております。
藩ごとに国境警備体制がまるで違うこと、旅行者がかなり多いこと、このような旅の修行者から教養や武術・呪術などを教授してもらう機会があったということ、貧しい地域の方が托鉢してもらいが多いこと、詩歌や教養が広く普及していたこと、などなど興味深い事実が書かれており、当時を舞台とした話を考える上ではいろいろと興味深いものがあります。なにせ、江戸以外の場所の生活については、書いてある本がとぼしいですから。
錬金術大全
2000/08/17 19:34
錬金術はこうして形成されたのか
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錬金術の通史を文献学的にまとめたものです。巻末には、大英図書館の錬金術関連の写本や手稿の目録と簡単な錬金術用語辞典がついています。図版も多めで、カラーの図版もあり、価格なりのものはあります。
文献を山ほど追いかけて変遷をたどるもんだから、固定的な「こういう概念である」というものが変遷していくというのが面白いですね。もともとは、ふつうの化学的知見を書いた文書だったものが、いかにして再解釈されていったかとかが面白く感じられました。
こういった本と比べると、通俗紹介本は底が浅いものよなぁ、とか思ったり。これを読むと、錬金術のような概念を技術として整理した解説書そのものに疑問を感じたりしなくもありません。統一的原理で明快に記述できるようなものではないんですよね。
呪術と占星の戦国史
2000/09/08 10:10
意外に占いにたよっていた戦国武将たち
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日本の戦国時代の武将たちが、いかに占いや祈祷に頼っていたかを、古文書などを引用しつつ解説しています。
勝利を軍神や地元の神に祈願するために神社に奉納を行い、連歌の会を開き、神前にて神官に引かせたおみくじをもって最後の決断を行う。戦いはお抱えの軍師……すなわちに修験者や易者・陰陽師により日々の吉凶を調べさせ、吉日を選び悪日には打って出ないなどする……。などといった、少し意外にも思える戦国の戦いぶりが紹介されています。
運気を変える道具としての軍扇や調伏の矢、敵調伏の呪術、弔ったり勝ちどきをあげたりすることで死者が怨霊化するのを防ぐ、勝利の先導をする霊獣(カラス・白狐・山鳥・鹿ほか)など。この時代の話を書くなら使ってみたい・使って欲しい小道具も色々と出てきます。
中世衣生活誌 日常風景から想像世界まで
2000/09/03 05:18
中世の民衆の衣服の実像に迫る
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アナール学派の、図像や死後の財産目録、その他の古文書などを中心として中世西欧の衣服にからんだ習慣について研究した論文を翻訳し、まとめた本です。
子どもがなにを着たか、肌着・寝具はどのようなものか、仕事別の労働着、高級衣装とはどのようなものか、染色、ズボンを穿くことの意味、などなど、中世西欧の生活に密着した衣服のありかたについての知見が得られます。
論文なので整理された情報をまとめて得るとか、概観するという感じではありませんが、生活における衣服のありかたについての情報はれまで極度に少なかったと思いますので、いろいろと興味深く読めます。中世の生活に関心のある人にはおすすめです。
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