宏人さんのレビュー一覧
投稿者:宏人
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創元推理 11(1995年冬号)
2001/04/28 21:56
傑作!巽昌章「閉ざされた庭で」と芦辺拓「名探偵Zの不可能推理」
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本書は本格ミステリ読者なら絶対に読み逃せない内容である。評論家としても活躍中の巽昌章氏の短編ミステリ「閉ざされた庭で」が掲載されているのだ。巽昌章氏は鋭い考察はもちろん、読み物としても面白い評論を書く数少ない才能の持ち主だが、小説の分野においても最も注目すべき作家である。
氏の小説は現在のところ、「夜の顔」(創元推理7号及び、日本推理作家協会編「殺人博物館へようこそ」講談社文庫収録)と「閉ざされた庭で」が書店で入手できる。どちらも甲乙つけがたい傑作だが、本書に掲載されている「閉ざされた庭で」を読んだときの衝撃は忘れられない。
幾重にも閉じられ、そして完成されたこの物語の結末は山田風太郎の「虚像淫楽」以来の衝撃だった。物語は物憂い夕刻の書斎でのみ語られる。その心地よい世界で突きつけられる結末は恐ろしいほどの切れ味を持っている。長編では出せない短編ミステリの醍醐味がこの作品には凝縮されている。また、長編ミステリでは残りのページ数によってどこまで読んでいるのか自ずと知ってしまうが、短編、特に雑誌掲載の作品では読み進むほかに確認の方法はない。このことも本作の衝撃に一役買っているかもしれない。ともあれ、短編ミステリの愉しみを再認識させてくれる、本格ミステリの最高峰に位置する傑作である。
更に本書には芦辺拓氏の名探偵Zシリーズの記念すべき第一作「名探偵Zの不可能推理」が掲載されている。本格ミステリのパロディであるこの作品は、本格への愛に溢れる逸品である。奇妙な事件を解決しまくるバカバカしい推理の数々は、考え抜かれた舞台設定と相まって、絶妙のおかしみを与えてくれる。パロディとしてもコメディとしても、これ以上に上質のミステリをほかに知らない。
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