青弓社さんのレビュー一覧
投稿者:青弓社
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紙の本力道山と日本人
2002/12/16 17:18
第12回橋本峰雄賞を受賞
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12月14日、岡村正史編著『力道山と日本人』が、第12回橋本峰雄賞を受賞しました。
橋本峰雄賞とは、さまざまな角度から現代の風俗現象を調査・研究をした作品に対して、京都を中心に十数年にわたって活発な活動を続ける現代風俗研究会が選定する賞です。過去の受賞作品には、永井良和『社交ダンスと日本人』(晶文社)、熊谷真菜『たこやき』(講談社文庫)、鵜飼正樹『大衆演劇への旅』(未来社)、岡本信也/岡本靖子『超日常観察記』(情報センター出版局)、町田忍『マッカーサーと征露丸』(芸文社)、小林多寿子『物語られる「人生」』(学陽書房) などがあります。
今回の受賞は、力道山現象を説明するのに常套句だった「戦後ナショナリズム」という切り口ではなく、プロレス論、メディア論、ジェンダー論、在日朝鮮人論、ファッション論など新しい視点から対象に迫っていることが認められたことによるものです。また、選考委員からは、「力道山に代表される時代の風俗を再現することに成功していて、現代風俗研究のメルクマール、一つの土台となるだろう」といった高い評価を受けました。
本章の内容を一部紹介しますと、第1章「力道山と村松以後」では、日本文化の研究家で有名な井上章一氏が、力道山以後の日本のプロレス興行史とプロレス批評の変遷から日本知識人の大衆文化に対する立ち位置を分析しています。また、第5章「黒く覆われた脚」は、小野原教子氏が力道山のトレードマークでもある黒タイツを、「おしゃれ」をキーワードに、当時の先端のメディア=モノクロテレビとからめながら読み解くファッション論となっています。 そのほか、いずれの論考も「ただの」力道山研究にとどまることなく、同時代の文化状況までを射程に入れた研究スタイルが貫かれています。その意味でも、当時の日本を知るカルチュラル・スタディーズの好著です。
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