田口善弘さんのレビュー一覧
投稿者:田口善弘
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虫たちの化学戦略 盗む・欺く・殺す
2002/12/24 12:43
虫たちに化学物質の使い方を教えてもらおう
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犬の見る夢は匂いばかりじゃないか、という説を何かで読んだことがある。外界の情報を圧倒的に視覚に頼っている我々に比べると、犬は嗅覚に頼っている割合が圧倒的に大きいからだ。が、この本を読むと、「夢は映像」と思っている我々人間の方が自然界では少数派で、犬のような「匂いの夢」の方が多数派じゃないかと思えてくる。
本書は、虫たちが化学物質をいかに活用しているかについての啓蒙書だが、その多くは「化学コミュニケーション」とでもいうべき現象の解説に費やされている。超長距離からでも雌の出すフェロモンをかぎつけてやってくる雄のガの話のようなメジャーな話題から、姿形はまるでで違うのにアリの幼虫として受け入れられて、育ててもらえる虫の話というまるでカッコウの託卵まがいの話題まで、じつに多岐に渡っている。
考えてみれば、アリの巣の中に明かりなどあるわけもないので(4本足のアリを登場させて非難轟々だったディズニーアニメ「バグズライフ」のアリの巣の中は煌々と明かりで照らされていたが、もちろんそんなことはないわけで)、匂いで識別するのは別に珍しいことでもなんでもないのだ。
その他にも、化学物質を使った攻撃・詐欺・コミュニケーションの例が満載。意外だったのは実際に化学物質が特定されている場合が少ないことで、近年これが続々と明らかになりつつあるという。そのおかげで、応用への期待も大きく膨らんでいる。
例えば、アリの用いる抗生物質には絶対耐性菌ができないという。人間が合成した化学物質の自然への影響が問題になっているが、虫たちははるか昔から化学物質を多用してきたのだ。
どうやら、虫たちの科学知識は人間のずっと先を行っているらしい。彼らに化学物質の使い方を教えてもらうというのも、悪い考えじゃないかもしれない。
(田口善弘/中央大学理工学部物理学科 助教授 http://www.granular.com/tag/index-j.html)
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