leidさんのレビュー一覧
投稿者:leid
コーヒーの真実 世界中を虜にした嗜好品の歴史と現在
2008/01/14 23:43
コーヒーの真実
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
著者は元焙煎業者の買い付け。専門が植民地主義とその歴史とのこと。一億人以上の生活を支え、五億人が関わるというコーヒー産業。旧植民地時代から、あるいは現代の企業による植民地主義によるコーヒー生産とその価格破壊が、どれだけ生産コストを下回る買付価格で流通させられ、いかに生産者を圧迫しているかといったコーヒー貿易の問題点を挙げる。中心にそれを捉えながら、本書が取り扱うのは、人類史から始まり、古代秘教、或いは植民地時代によける豆と人の貿易、そして近代コーヒーハウスの影響、ベトナム戦争や現代の農薬問題、ナポレオンが最期を迎えたセントヘレナ島の歴史といった有名無名の逸話など幅広い。コーヒーの健康への影響について、研究機関自体がコーヒー業界によって設立され、独立を名乗っているものの、実態としては利益が背反するというのは、コーヒーに限らず食品関係の研究結果について改めて疑いを持たせる。
はじめに、として書かれているが、注釈や出典は記されておらず、記述も縦横に飛び回る。主義主張にかかわらず、コーヒーの歴史、起源、逸話などの読み物としてだけでも非常に面白い。
なお、私たちが日々飲むコーヒー、最終的に生産者の手に渡るのは、そのうちの1セントが良いところだという。
聖書アラビア起源説
2008/01/14 23:42
聖書アラビア起源説
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
20年近く前の出版ですが、子音で構成されるヘブライ語の地名の語根と、アラビア半島西部(メッカの南辺り)の地名の類似から、本来聖書の舞台であった地を追う。単純に地名で追うというだけではこじつけにしか思えないが、それによって様々な謎に適切な説明が付けられていく。
今も残る村々や川の名前と聖書の地名や用語が一致していく。簡単な地図はついているが、大きな町や川しか書かれていないのは残念。詳細な地図がついていればよりスムーズに理解できただろう。
とはいえ、内容は非常に興味深い。続報が無いのが残念だが、聖書などに興味があるのなら一読の価値はある。
ワインの自由
2008/02/11 03:45
ワインの自由
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
産地や銘柄を隠したブラインドテストで、愛好家たちが選んだのは、本場フランスワインではなく、カリフォルニアワインだった。有名シャトーの隣の畑でも同じようなワインが作られている。にもかかわらず相変わらずフランスの有名ワインは高値が付けられて取引され、有名な評論家の言葉で相場は大きく変動する。
地名や格付け、評価に左右されがちなワインだが、ブランドの価値とそれを維持する努力、逆にノンブランドで拘りのワインを作り上げようとする努力。評論家の受け売りの蘊蓄も悪くないが、ボルドーの有名シャトーのブランドを楽しむのも、カリフォルニアワインのうまさを楽しむのも、自由な楽しみ方ではあるのだろう。
価格の背景や現在の作り方などあまり知られることのない面も自然に描かれているので、知識以上に読み物としても面白い。
1421 中国が新大陸を発見した年
2008/01/15 00:06
1421
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鄭和の大艦隊が、いくつかの艦隊に分かれ、インド洋からアフリカ、喜望峰を越えて大西洋、南米から南極圏を経由してオーストラリアへ、また北米からグリーンランドやロシアへ、西洋が新大陸やオーストラリアを発見するはるか前に中国の大艦隊が世界を渡り、それを地図に書き記していた。マゼランやコロンブス、クックらはその地図を手に、西洋における偉業をなしとげたのだとする。
これだけならただのトンデモですが、書いたのは海の専門である元英国海軍の潜水艦艦長であり、何よりも各地に残されたアジアの鶏や陶磁器、漆器の技術や植民地に残る知識といった傍証(やウンチク)により説得力は増す。特に、西洋の航海者がそこに島があることを知っており、未だ到達していないにも関わらず、既にその地の地図を手にしていたらしいということは、先に到達していたも何者かがいたという証拠だろう。
残念ながら、鄭和の艦隊が帰還したのち、中国は半ば鎖国状態に入り、以降その知識が生かされることはなかったが、歴史にifがあれば、今の教科書は大きく変わっていただろう。とはいえ、あまり耳にしないだけで、中国やアメリカでは北極や新大陸の発見が中国だという説は多いらしい。沈没した中国船や図書館の底に埋もれた地図など、まだ発見は続いているようであるので、今後の動向が楽しみではある。
古地図のカラー図版と、いくつかの地図を対比させたイラストなどはあるが、地名やルートが非常に分かりにくいので、もっと地図やイラスト、証拠写真などがあれば良かった。
プラハの異端者たち 中世チェコのフス派にみる宗教改革
2008/01/14 23:37
プラハの異端者たち
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現チェコの西部に当たるボヘミアとその首都プラハが中心。あまり注目されることのない場所だが、欧州の中央に位置し、各地からの影響を受けやすく、また、ドイツを中心とした各国の勢力バランスにおいて重要な位置を占める国である。
フスの時代は、カトリックはフランス・アヴィニョンと、ローマの教皇が並立し、贖宥状が発行されていた、ルターやカルヴァンの前時代、ウィクリフの主張が流布した時代にあたり、初期にはウィクリフ派とされた。フス自身は神聖ローマ皇帝でもあるジクムントの治世下におけるコンスタンツ公会議において弁明の機会もないまま処刑されるが、フスの教えはカトリックへの反発もあってチェコ=ボヘミアに広まった。また、ドイツなどへの反発から、チェコ人としての民族主義とも重なる部分があるようだ。
本書では、国王、貴族、民衆という三身分それぞれの視点から、宗教改革の前史として転換点にあった欧州各国の意図に翻弄されるフス派を中心としたボヘミアの歴史を描く。
宗教自体はその後のハプスブルク家の統治によりカトリックに統合されてしまったが、宗教改革、民族主義などその後各国で大きく動き出す要素がひとつの国の中に凝縮されているようでっ興味深い。
信長と十字架 「天下布武」の真実を追う
2008/01/14 23:28
信長と十字架
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
天下布武の天下の概念の見直しから、信長と朝廷との関係、イエズス会と細川藤孝やキリシタンらとの関係を解説。南蛮勢力とキリシタン大名による策謀による権力者のすげ替えという観点から信長と本能寺の変を追う。全体に多少強引な感じだが、信長のブレーンたちに着目している点は新しいか。
信長の神格化や、改暦を主張した問題についても説明が付けられているのは非常に良。一時官職を返上した理由はなかったか。
光秀の和歌、あるいは中国大返しや重臣たちが秀吉に簡単に鞍替えした流れについても、他の謀略説がひとつの黒幕に偏っているものが、ここでは一連の流れとしてとらえられる分、説得力はある。ちなみに「南欧グローバリゼーション」というほどのことは別に書いてない。
若い著者なのかと思ったら、カルチャーセンターで古文書を読み始めて、独学で研究し、70歳で博士号をとった女性とのこと。それにしては非常に読みやすい。
なかなか面白い一冊。
秀吉神話をくつがえす
2008/01/14 23:39
秀吉神話をくつがえす
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農民から天下人に上り詰めた英雄伝説の他に、80年90年代から、秀吉による天下統一は権力欲によるものではなく日本に平和を現出させるためだったという考えが通説化しているという。本書では、豊臣平和令というこの考え方に異を唱え、時代毎に変遷した秀吉像を追いながら、英雄伝説ではない、豊臣秀吉の実体を追う。
平和令という考え方自体になじみがなかったが、それでも戦国時代後期には傀儡として軽視されがちな足利幕府や公家といった既成権力や、信長陣営内の微妙な勢力バランス、四国国分における勢力争いなどは非常に興味深い。
ユダの謎解き
2008/01/14 23:38
ユダの謎解き
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神の子イエス・キリストを裏切り、わずかな金で司直の手に売り渡し、その死の直接の原因を作ったことで、永遠に断罪され、許されることも無いというイスカリオテのユダ。転じてユダの名前を持つユダヤ人への悪意の源泉の一つにもなっている。ギリシア語の原典を辿り、福音書にはそもそも何が書いてあったのか、そしてそれらの下には何が隠されていたのかを丹念に追う。
まず、ユダは「裏切っ」てはいないという事実がある。ユダの裏切りとは、福音書に記載された言語学的な基礎は無く、彼は「引き渡し」たのだという。
誰でも抱く基本的な疑問として、救い主を救い主たらしめた行動は裏切りなのかという点があるが、記された単語の意味においてユダは一度も「裏切っ」てもおらず、ユダの行動に対して福音書記者は知らず、少なくともイエスはそれを非難も驚きもしてはいない。
本書では、ユダの福音書の立ち位置に近く、ユダはイエスの忠実な弟子としてその意図に従ったというが、そこまでの深読みは永遠の断罪を与えるのと変わらない。しかし、少なくとも裏切り者として非難し続けるのは公平ではないだろう。
異端の宗派ボゴミール
2008/01/14 23:30
異端の宗派ボゴミール
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
フランスカタリ派との関連で触れられる東の同胞。カタリ派は、この東の同胞の教えをより上位の教えとして受け取っていたという。その基となったブルガリアのボゴミール派は、教え自体はグノーシスに連なる二元論だが、発生の背景にはスラヴという地方独特の異教的基盤と、後のプロテスタントと同様、堕落した教会に対する反発があった。
起源からその教えの本質、歴史、影響とボゴミール派の全体を網羅。少々高いのが難ではある。
転生 古代エジプトから甦った女考古学者
2007/12/30 02:50
転生 古代エジプトから甦った女考古学者
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
原書の出版は1987年。オンム・セティ(セティの母の意。息子にセティと名づけ、エジプトの風習に従って自分の名前ではなく、息子の母という名を用いる。)は幼い頃の事故以来、セティ一世と直接の面識を持つ巫女の転生という記憶を持ち、度々幻視によってセティ一世と交流を持っては、アビドス神殿のそばに一人東屋を建てると、神殿のガイドをして生活していたという。
1978年に亡くなっているが、大英博物館のバッジ館長の教えをうけるなど、当時のエジプト考古学界においては有名人だったようで、見覚えのある名前も頻出する。
自然に生きた一人の女性のノンフィクションとして、或いは転生者として、どちらから読んでも良いですが、非常に興味深い一冊。二倍の厚さでも良い。
本書に、有名なファラオの転生と自称する者が出現する中で、アクエンアテンの女官をしていたという記憶を持つ女性が登場する。或いは邦訳は無さそうですが、過去の記憶を元に小説を書いたというジョーン・グラント。他の事例もあるのだろうけど。調査と邦訳を待ちたい。
ナチスドイツ支配民族創出計画
2008/01/14 23:31
ナチスドイツ支配民族創出計画
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劣悪民族であるユダヤ人を廃絶するというホロコーストと、同時に、優秀な民族であるアーリア人の人口を増やすことで、人類を進化させようという「生命の泉」計画。ヒムラーを中心に勧められた計画によって、アーリア人とアーリア人と認められる周辺ゲルマン人の出生が推奨され、私生児であっても純血のアーリア人と認められれば、SSがその育成に責任を負ったという。
誘拐されたというポーランドなどの子供たちは20万人とも言われ、殆どが自らの出生を知らずに成長しているという。
優秀なSSには子供を作ることを推奨し、私生児を容認した計画だったが、キリスト教社会においては不気味なものとしか認められず、SS内においても私生児や多産よりも、子供がいないことによる罰金を払ってでも、子供を多く作ろうとはしないなど、一部以外には好意的に取られず、結局生命の泉施設においても、人口増加とするにはあまりにも少なかったようだ。
なお、優生学自体はナチスドイツの専売ではなく、より徹底的に実施したのがドイツだったというだけで、当時においては一つの科学的な考え方であった。簡単に済まされがちなアーリア人の増産計画。個別の事例報告も多い。
内容としてはそれほど、なので、特に興味があれば。
スターバックスに学べ
2008/02/11 03:31
スターバックスに学べ
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
基本的にスタバなどは、雑誌の特集や別会社が出しているチルドカップ等以外ほとんど広告を出していない。それは商品のイメージではなく、立地やサービスを含めた商品そのものを売っているからだ。顧客の必要(ニーズ)ではなく、願望(ウォント)をかなえる、つまり約束以上のことを提供することが、マーケティング、ブランディングの成功の要因だとする。
サービス業として特段すごいことが書いてある訳ではないですが、逆に当たり前のことを当たり前にやること、イメージを維持しつつ、顧客の立場に立つことが重要なのは変わらない。低価格という手段が使えないブランドの場合、金銭的にも、そして手間や単なる出費ではないコストを要するそれをどのように?というのは問題なのだけれど。
サービス業としては意識し続けなければいけない問題。
三種の神器 謎めく天皇家の秘宝
2008/01/14 23:46
三種の神器
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
著者もあとがきで書いていますが、謎めくとか秘宝とかいうほど軽佻なノリではなく。現代の扱い、神話時代の扱われ方、その後の歴史経緯、いずれも出典と原文を記載していることと、各文献での表記、歴史的な流れを図示しているのは良。どれが正しいということもできず、存在すら謎のものを丹念に追っている。ただ、1/3を占める歴史的経緯の扱いが短いせいか、南北朝などの混乱期の情勢の扱いが短いのが残念。新書なので、「そもそも」という部分に重点を置いているという点では不明な部分をそのまま残すのも良いのか。
現代においても安置場所自体へ触れる際の注意や女性職員の対応など、時代錯誤とも思えるような取り扱いがされていることにある種安心。
バチカン・エクソシスト
2008/01/14 23:35
バチカン・エクソシスト
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
著者はLAタイムズローマ支局長の女性とのこと。カトリックの司祭自体は叙任の時点で祓魔師としての権能を授けられてはいるが、実際に悪魔祓いを行うのは、一部の専門家である。ローマを有するイタリアでは、多くの悪魔付きが発生し、一般的に悪魔祓いが行われているという。
本書は悪魔祓いを実際に行っている司祭たちへの取材により、悪魔祓いの実態だけでなく、司祭それぞれの立場や悪魔に対する意識の違い、あるいは精神病と悪魔憑きとの峻別の難しさや悪魔祓い自体による催眠誘導の恐れなどからくる教会内部における対立まで記されている。
根幹に関わる問題ながら、現代の科学世界において説明のつかない要素である悪魔の存在。明らかでないながらも悪魔祓いの数は増え続けている。
なお、日本における事例は無いようだ。
徐福 日中韓をむすんだ「幻」のエリート集団
2008/01/14 23:32
徐福
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
奇説の類ではなく、徐福研究を行う団体の中心人物による、歴史や徐氏に関する基本情報と現代における研究や活動の動向。今から手を出すのなら、基本として最初に読んでおいても良いかもしれない。
ただ、徐福伝説は現代まで生き残っている、というか現代再復活しているが故に、政治や観光によって歪められているということは留意する必要がある。古代モノについてはどれもそうだが、三国にまたがった半ば史実とされる伝説故に余計に影響はあるのだろう。
