spade-mayさんのレビュー一覧
投稿者:spade-may
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屋上物語
2003/06/20 02:09
楽園に一番近いデパートの屋上で繰り広げられる、あるうどんスタンドの店員と二人の客に纏わる、苦く切ない、けれど温かい連作ミステリ
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「さくら婆ァ」「さくらさん」「さくらおばさん」呼び方は『人』それぞれだが、その全てに畏敬の念が込められていることは明らかだ。そう、彼女こそが、このデパートの屋上で最強と謳われた女傑に他ならない。
彼女が仕切るのは、とあるデパートの屋上にある、百円数枚で高級店並みのうどんが食べられるスタンド。この屋上にくる誰もが、彼女の鋼鉄の視線と濁声には逆らえない。裏の世界を知り尽くした興行師の杜多や当世の高校生、タクも例外ではない。
非日常という幻想にしか存在しない楽園は、決して天国ではなく苦い日常の続きそのもの。屋上で起こる、時には救いもなく、遣り切れないような事件を次々に解決する三人は、やがてそれぞれの過去といううねりの中へと帰納されていく。
確かに、祥伝社から新書版で出版されていた同名の小説の文庫化だけれど、「もう読んだから…」なんていちゃいけません。新たらしく、『タクのいる風景』も収録して、バージョンアップしております。新書版を読んだ方は是非ご一読を。まだ読んでないという方も、北森鴻という作家を知る絶好の機会です。どうぞめしあがれ。
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