気難し屋のくまさんのレビュー一覧
投稿者:気難し屋のくま
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日本探偵小説全集 10 坂口安吾集
2001/04/12 00:54
収録作『アンゴウ』
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坂口安吾は文学青年なら高校時代に一度は通り過ぎる作家で、アンゴだのダザイだのと言ってみたくなる時期のものだと思われているようだ。坂口安吾の小説が「上手い」とか「完成されている」と言われることはない。つまり青臭さがのこる類の小説なのだ。観念的で、破綻ばかり。物語ることなど彼にはできない。その前に自分自身が走りきってしまう。現代において「青春」と口にすることの恥ずかしさと同じような恥ずかしさが、この作家を語る傍らにはあるようだ。
しかし作品などくそくらえ、生きてることが全部、とことん落ち抜くことを命題にしたのは彼だ。文章の一行一行の美しさや描写、人生の眺め方に目的はない。書くことで(書き終わることで)そこに何が現れてくるか、ただその光景だけが彼の生きる糧だったのではないだろうか?
『アンゴウ』は彼のアンソロジーにはあまり取り上げられることがないようだが、この短編には力があると思う。この短編は小説というよりも論理学の問題のようである。世界とは何であるのか、もし答えがわれわれにありうるのならば、このようでしかありえない、と私は思う。そしてそれは観念の中で憔悴しながら生きていた坂口安吾の日々の、繰り返し行き着く「ゆりかご」ではなかったか?
この短編を読むためだけでも、買う価値はあると考える。
ニーチェ全集 別巻4 生成の無垢 下
2001/04/12 01:31
自分に対しての...
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別巻『生成の無垢』上下巻は遺稿集である。さまざまな時代、テーマ別に編纂されている。
ニーチェについて私が何事か言ったところで仕方がないが(単に読者にすぎない)、病弱で決して実生活で幸せではなかったニーチェは、これらの言葉とともに生きていたのである、という点は是非主張したい。それはまずなによりも自分自身を生き長らえさせるためにあった。言葉は巌のようにマッスルな印象だが、彼自身は貧弱な不健康児であった。発作に襲われ、死に瀕する。
健康と力。しかし、それを彼は求めていたと言うよりも、その威光を貧弱な自分に突きつけるのだ。それは永劫回帰という命題に象徴される。この思想自体は実際には彼が否定してやまなかった「聖書」にほぼそっくりそのままあるものにすぎない。要点は、彼がその思想を自分に突きつけたということだ。きみは一秒一投足が寸分違わないきみの人生をもう一度生きてみようと思うか?
それが事実として疑いがないのか否かなどこの際どうでもいい、その命題に耐えられるか?、つまりは自分の人生を引き受けているか否かということだ。
それを病床の中、彼は書きつづけ、その中を生きつづけた。もし、倫理の教科書に『永劫回帰』『超人』の思想家とキーワードが記載してあるなら、われわれはどうするか?このキーワードを暗記したことで誉められたとしたらどうだろう?そのような生をわれわれは自信を持って誇れるだろうか?「もう一度」と言えるだろうか?
否、だがそれは反復されるのだ、寸分違わずきみはその瞬間を複数回生きなければならないのだ、もうすでに生きられたことはこれからも繰り返されるし、これまでも繰り返された。そのように考えよ、とニーチェは言う。何よりもまず、自分自身に。
この瞬間、世界だけが目の前に姿を露わにするこの瞬間こそが、重要なのではないだろうか?
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