marikunさんのレビュー一覧
投稿者:marikun
紙の本旅の理不尽
2002/07/31 02:14
爆笑!脱力系旅日記
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
バカ旅エッセイの旗手!タマキングの記念すべきデビュー作!!!
もう、このエッセイのとほほな脱力文にはしてやられました。例え
て言うなら「ミッキー・ロークのねこだましパンチ」か(例えが古
いぞ!<自分)知性と教養の「ない」土屋エッセイか…(笑)。
と、言うわけで例によって万人にお勧めできるというわけではない
のですが。身体が適度に疲れているときには、この脱力感はたまり
ません。(真剣に疲れているときは、あまりの馬鹿馬鹿しさについ
ていけなくなります…(笑))もともとは自費出版で、本になったも
のなのですが、もし自分の部下からこの本を「これ私が書いた本で
す!」と渡されたとしたら「お前はクビだ〜!!!」と宣告してし
まうかも…。なぜなら序文からして「さて、私は名もない一介の素
敵なサラリーマンに過ぎない。この本は私が夏季休暇やゴールデン
ウィーク、年末年始休暇のほか、会社員として当然の権利である有
給休暇を取得したり、その他当然じゃない権利もいろいろ取得した
りして出かけた旅の記録である」なんて文章から始まってしまうの
ですから…。もぅ〜、ビバ!宮田珠己としか言い様がありません♪
会社員だから当然のこととして、一般のバックパッカーの旅よりも
短い旅が中心なのですが、どの旅も面白さは、まさに抱腹絶倒!1
度読んではまるか、1度読んで二度と近寄りたくないと思うか…。
それはあなた次第です(笑)。
紙の本帰還 改版
2002/07/31 01:12
う〜ん、重厚でした…
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
三部作で終了したと思われていた「ゲド戦記」の本当の完結編。な
んと18年ぶりに発表された最新作にしてラストを飾る作品です。
大人になってからおとぎ話を読んで思うのは、物語の最後で幸せに
なった王子様とお姫さまのその後です。まさにこの作品「帰還」は
その問いに応えてくれる作品になっています。もちろん主人公は、
前作「さいはての島へ」で、自分に与えられた魔法の能力を使いきっ
てしまい行方がわからなくなってしまった、ハイタカことゲド。そ
してヒロインは2作目に登場したテナー。テナーは冒険のあと、大
魔法使いオジオンの元に身を寄せていたが、年頃になり農園主と結
婚し二人の子供を育て上げ、今は未亡人となっている。そんなテナー
の元にオジオンから使いがやってきた。そうこの世界では大魔法使
いでさえ、寄る年波には勝てずに自分の死期を悟ったオジオンがテ
ナーを呼び寄せたのです。テナーはあの物語のあとも、自分の人生
を見据えしっかりと地に足をつけて生きてきた様子が、細かいとこ
ろまで描写されています。
ラストはファンタジーらしからぬ、非常に現実的で、でもささやか
な幸せをつかみ取るテナーが描かれています。しかしこの作品は、
ファンタジーという枠組みには収まらない大作ですよねえ…。シリー
ズの最初の感想でも書いたのですが、この作品を小学校6年生から
という対象作品にするのは、ちょっと難しいでしょう…。むしろ、
仕事で行き詰まっている大人たち(特に今なら5月病にかかってい
るような人)に読んでもらいたい作品だと思います。ル=グウィン
は、もともとSF作品を書いていた人だそうなので、SF作品も探
して読んでみたいと思います。
紙の本こわれた腕環 改版
2002/07/31 01:10
奥が深い…
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ゲド戦記シリーズの2作目です。いや〜、読めば読むほど深いファ
ンタジーですね、このシリーズ。
今回は、前作の「影」を追う冒険の途中で手に入れた謎の腕輪に関
するお話。とは言っても、これがまた一筋縄ではいかないのです。
普通ファンタジーで宝物をめぐるお話しといえば、ドキドキハラハ
ラの胸躍る展開を想像しますが、いたって地味〜にストーリーは、
進みます。舞台は「名なきもの」が祭られている、アチェアンの墓
所。そこに唯一絶対の大巫女として、名なきものに仕えるアルハ。
巫女が暮らす神殿の下には地下迷宮が広がっていて、巫女以外には
誰もそこから無事に帰ってきたものはいません。地下迷宮の中には
ものすごい宝物が隠されていると言われています。唯一絶対の大巫
女とは言え、墓所内でも巫女同士の権力闘争があったりして決して
平穏な日々が続いているというわけではありません。そこに大魔法
使いとなったゲドがやって来て、宝物の中にあるはずの、世界に平
和をもたらすという腕輪を手に入れようとしますが、なんとゲドは
真っ暗やみの地下迷宮に閉じこめられてしまいます。
良くあるファンタジーならば、捕らえられるのはたいていお姫さま。
しかしゲド戦記では、主人公であるゲドが地下迷宮に捕らえられ、
魔法を使うことすら出来ず、ただただ衰弱していくのを、大巫女で
あるアルハが助けるという設定になっています。この設定だけでも
かなりびっくりものですよね〜。書かれたのが1976年、う〜ん、
そういう時代背景だったのでしょうか?とても女性を啓蒙する内容
が濃い作品だと思います。本当にこのシリーズ奥が深いです。
紙の本文芸百物語
2002/07/30 15:01
ゴージャスな百物語
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
怖い話を読みだすと、なぜだか止まらなくなります(笑)。怪談には
全く季節外れなんですけどねえ…。ただし、この百物語は参加者が
とってもゴージャス!ばりばりのホラー作家による、ホラー作家の
ための?百物語なのです。
参加者は、井上雅彦、加門七海、菊池秀行、篠田節子、霧島ケイ、
竹内義和、田中文雄、森真砂子、(編者として東雅夫)。さらに
百物語の舞台として、東京、根津の古旅館を借り、外界とは結界を
張って行うという、かなり本格的なもの。導入部分から、そのよう
な前書きがされているので、読んでいるこちらも実際に百物語に、
参加しているような臨場感を味わうことが出来ます。
語られるのは、本人が体験した話が中心。やはりホラー作品を、
書いていたりすると、「そういう」体験をしてしまう確率が、
普通の生活をしている人よりも高いのかもしれませんね。参加者は
話のネタが尽きなかったようで、百物語どころか、百三十を超えた
そうです…(笑)。
そして例によって、百話目は収録されていません。その代わりに、
参加した作家達による参加談?が収録されています。かなり盛り
上がったようですねえ…。う〜ん、怖かったです。
紙の本東南アジア四次元日記
2002/07/26 12:57
脱力な旅、またもや登場!
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
脱力全開、とほほ脱力旅日記。
馬鹿馬鹿しいの一言に尽きるのですが、とにかく面白い。スーパー脱力系、馬鹿らしいさ全開のエッセイ。
とうとう会社をやめて(!)、念願の長旅に出発した宮田さんの旅の日々。馬鹿らしい文章が嫌いな人は
一行も読まない方がいいでしょう!(断言)。でもこの文体にはまると、やめられません。電車の中では
読まない方がいいでしょう…(笑)。
旅の目的が、いつのまにか「変なモノ」を見るになっていて、掲載されている写真の「変なモノ」度の
高さも注目です。一見の価値ありのバカ本です!
2002/07/28 16:04
まあ、良く出来ているよな…
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
映画も大ヒット公開中。話題のファンタジー。
友人から借りて読んでみました。
感想は「良く出来ている」と言ったらへそ曲がりでしょうか(笑)?
自分の素性を知らないまま、マグル(人間)の親戚の家で
育てられたハリーにある日突然、魔法学校からの入学許可証が
届きます。そう、ハリーは、実は有名な魔法使いの子供
だったのです。親戚の家で決して恵まれた状況にあったと
言えないハリーにとっては、まさに晴天の霹靂。
魔法学校で起こる、楽しい日々。そして魔王との対決…。
と言った所が、主なストーリーなのですが、確かに人気が
出るのは分かります。読み出すと面白くて一気読みでしたから。
児童文学としてなら、もちろん二重丸ものだと思います。
だって子供なら誰でも思うじゃないですか、「自分は本当は
ここの家の子じゃなくて、実は本当の両親がいて…」って。
大人の読書には、もうひとひねり欲しいと思ってしまうのは
私の心が純粋さを失ってしまったからなのかな(^^;
いや、でも面白いのは確かなんですよ(笑)
紙の本老人力
2002/07/28 12:44
老いてますます盛ん♪
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ますますパワーダウン〜帯より(笑)
いいですねえ〜♪ こういう風に年を重ねたいものです(*^ ^*) 老いてますます盛んを実践ですね。
赤瀬川さんがこういうメジャー路線なのは、大変に似合わない気もするのですが(笑)、そこは時代に
呼ばれたと言う事で…。文庫版は、単行本の「老人力」と「老人力2」をまとめたものなのも、ファンには
お得で嬉しい限り♪ 後半は、「老人力」があまりに売れたため(?)、やや真面目な考察になって
います。しかし赤瀬川さんが講演とはねえ…(笑)。
紙の本ロウフィールド館の惨劇
2002/07/31 01:59
読みごたえ十二分!
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
久しぶりに重量感たっぷりの作品を読みました。レンデル作品は当
たり外れが大きいイメージがあるのですが、代表作と言われる作品
だけあって、どっぷり世界にひたることが出来て大満足の1冊。
一応ジャンルではミステリと書きましたが、冒頭一行目で犯人とそ
の動機が明かされます。「ユーニス・パーチマンがカヴァデイル一
家を殺したのは、読み書きができなかったためである。」なんとも
興味をそそられる、オープニングじゃないですか!殺されてしまう
カヴァデイル一家は、典型的なアッパーミドルの人の良い一家。そ
こに、召使いとしてやってきたユーニスが、いかにして殺人を犯す
心理状態に追い込まれていくのかというのを、読者は時間の推移と
もに見守ることになります。
この時代のイギリス小説には、かかすことの出来ない要素なのです
が、この絶対的な階級の差というのは日本で生活していると、あま
りリアルではないですよね。しかしこの作品では、犯人のユーニス
が文盲であり、そういう人々がいることすらを理解しないがために
殺されることになる、知的階級という人々の対比がものすごく鮮や
かです。もちろんそんな難しい背景は考えなくても、十二分に楽し
む(というと語弊があるか?)ことが出来る作品です。自分の日常
から追いだされることへのものすごい恐怖から、感情を殺してしまっ
たユーニスがあまりにも哀しい存在です。
活字中毒の自分からしたら、「文盲」と言うことが一番恐ろしかっ
たりするのですが…。
紙の本うまひゃひゃさぬきうどん
2002/07/31 01:23
はぁ〜、お腹空いてきた…(笑)
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
去年新潮OH!文庫で発行された「恐るべきさぬきうどんシリーズ」を
読んでから、個人的にとってもさぬきうどんブームです。行きたい
なあ…、さぬきうどんを食べまくるだけの旅♪というわけで、この
本を書店で見つけたときは、久々の即買いでした。
著者のさとなおさんは東京で育ち、大阪で働いていた蕎麦好き人間。
しかし大阪の駅前で日本一のうどんやに出会ってしまい、とうとう
家族を巻き込んで、香川へさぬきうどん巡礼への旅へと出掛けるこ
とになるのです。
この本の中でも、やはり「恐るべきさぬきうどん」が紹介されてい
るのですが、あの本は本当に罪ですねえ〜(笑)。あの1冊で、どれ
だけの人が香川まで足を運んだのかを考えると恐ろしいばかりです。
著者のさとなおさんは、もちろん「恐るべき〜」を参考にしてはい
るのですが、そこは素人(失礼!)の強み。あくまで自分の好みが
優先なので、決して「恐るべき〜」と同じ評価になっているわけで
はないのも面白いところ。そしてやはり県外の人が、製麺所で打た
れている極上うどんを食べるのには勇気が入りますよね。その辺り
もきっちりレポートされていて、店の立地のわかりづらさとともに
読者はその旅を楽しむことが出来ます。
もともとはこの本は、著者が運営している「さとなお.com」のコー
ナーが、単行本化されたもの。う〜ん、やはりただただ好きという
思いは、パワーの度合いが違いますね。
2002/07/30 14:57
こ、恐すぎる〜!!!
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
うえ〜ん、本気でかなり怖かったです、この本。
夜中に一人で読むのは、絶対に止めたほうがいいと思います。
およそ200年前の文献「耳袋」に感化された著者が、自分の周りや
友人達から聞いた、怖い話、不思議な話を集めたものです。
当然、本人やその知人が体験した「???」な話が、もとなので
オチなどはありませんが、そこがまたリアルで怖いのです。
真剣に夜に一人で読んだら、トイレやお風呂に行けませんよ〜!
また、装丁がものすごく凝っています、表紙カバーを外すと
そこには、本文中で語られていた、ある写真が…。
うえ〜、怖いよお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!
帯は、怪談と言えばこの人でしょうね(笑)。京極夏彦氏。
「この本は、私だけの秘密にしておきたかった。」
いや、わかります。その気持ち!
しかも、本文を読み終えて、さらに怖くなる話があとがきに
書かれています。「リング・鈴木光司」的な…と言ったら
ちょっとネタバレかな? いや、もうとにかく怖いんですよ!
怖い怖いを連発するなら、読まなければいいんですけどね(笑)
(しかも、こんな怪談には時期外れな季節に…)
しかし繰り返しますが、本当に怖い本なので、気の弱い人は
読まないで下さい!私は責任持ちませんよ〜(笑)。
紙の本極大射程 上巻
2002/07/29 00:44
大傑作!!!
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
読了するのが、もったいなかった本は久しぶり!!!!!
まだ読んでいない貴方はラッキーです。これから、こんなに
面白い本を読む事が出来るなんて…。う、うらやましいぞ!
とは言うものの、2000年版このミスの1位作品なので
読んでいる人が多いかも知れませんね(^^; ランキング作品を
敬遠する人も、騙されたと思って読んでみて下さい♪
ベトナム戦争で数々の武勲を打ち立てた、伝説のスナイパー、
ボブ・リー・スワガーは、今はアーカンソー州の山の中に
ライフルと犬だけを友として暮らしている。そんなボブの元に
ある仕事の依頼が舞い込む。新開発の308口径弾を試射して
欲しいと言うものだった。その依頼を成功させたボブは、次第に
大きな陰謀に巻き込まれていく…。
ハッキリ言って、あらすじはさわりのさわりでしかありません。
どんでん返しにつぐ、どんでん返しが続くので、これ以上書くと
ネタバレになるのです…(^^; また、そのどんでん返しの
タイミングが絶妙!う〜ん、十分にどころか、十二分に読書の
楽しみを味わう事が出来ます♪ また海外のエンターテイメント
作品にしては、メインの登場人物が少ないので(これ、個人的には
重要(笑)!)ストーリーが頭の中で???な状態になる事も
ありません(笑) とにかく、問答無用で読むべし!の傑作です!!!
紙の本中国の思う壺 下
2002/07/31 02:28
やはり中国侮りがたし(笑)!
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
仕事が詰まると読みたくなる紀行本。今回は、作者が中国で1年間
日本語教師として働いた経験をまとめたものを読んでみました。
作者の小田空さんは、少女マンガの「りぼん」でマンガ家としてデ
ビューした人。ほのぼのとしたイラストに味があります。デビュー
後に、なぜか旅に目覚め、世界のあちこちを放浪したり、留学した
りしているわけですが、今回は中国に語学留学した経験を生かして
なんと共産党の聖地とも言うべき「延安」の大学に日本語教師とし
て派遣されることになります。報道されている上海などの様子を見
ると、中国もだいぶ近代化されてきたような感じがしますが、さす
がに広い国土を持つ中国。まだまだ奥が深いです(笑)。なんせ、水
は給水時間が決まっていて1日4回各1時間しか給水されない(そ
れすらも必ず水が出るわけではない!)交通手段は、日に2回来る
電車と、週に一度の飛行機のみ。そういう土地柄でも、日本語を学
ぼうとする人々が存在するということに、かなり驚きました!(外
国語の授業は英語と日本語があるだけ)作者自身が、中国を第二の
故郷と言いきっているだけあって、日本から見たらものすごく不便
な生活なのに、それをものともせず、中国人の生徒達に悪戦苦闘し
ながらも、授業を行い生活を楽しんでいる様子が、可愛いイラスト
と、読みやすい文章で紹介されていて、とても楽しめました。紀行
文とはちょっと違いますが、異邦人の視線をもって、そこで生活す
るというのもかなり面白いですね。
紙の本ヒーローたちの荒野
2002/07/31 02:25
参考になる…
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ミステリの評論集というのは、色々ありますが、新しいジャンルで
ある分だけ『ノワール』の評論というのは、まだ数が少ないと思い
ます。そんなノワール・ハードボイルドをメッタ切りにした評論集。
これは私の愛読雑誌「本の雑誌」で連載されているものを、まとめ
たものなのですが、連載中から楽しみにしていただけあって、読み
ごたえのある1冊でした。ハードボイルドからノワールまでの系譜
を、初心者にもわかりやすく読み解いているし、もちろん古今東西
の、ハードボイルドのガイドブックとしても読むことが出来ます。
ある作品を読んでいて、「あ、これって●●に似ている!」と思う
のは、良くあることですが、この本は評論集なので、思うだけでな
く、どこがどう違うのか、その差はなんなのかまで、細かく解体し
てくれていて、色々と考えさせられました。また結構辛口な評論な
ので、そういう側面からも楽しめます。あ〜、また読みたい本が、
たくさん増えてしまった…(笑) 単行本にまとめるにあたって、収
録されている本の(手に入りやすい)データなども収録されている
ので、非常に役立つ1冊だと思います。
紙の本笑う警官
2002/07/31 02:23
おお!これぞ警察小説!
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
前から気になっていた本なのですが、ようやく入手して読了♪
教えていただくまで知らなかったのですが、シリーズものだったの
ですね…(笑)
舞台はストックホルム。ストックホルム警察の殺人課主任刑事マル
ティン・ベックを主人公にしたシリーズの4作目にあたります。
1970年度のMWA賞受賞作です。
ストックホルムの街はずれの荷役場に市内循環の二階建てバスが突っ
込んだ。運転手と乗客の射殺死体を満載して…。しかも乗客の中に
は、ベックの部下の刑事が含まれていた。彼はいったいなぜそのバ
スに乗っていたのか?死んだ刑事の行動を追っているうちに、ある
事実が浮かび上がる…。
いや〜、まさに正統派の警察小説です。シリーズの途中から読み始
めてしまったので、読み出すまではちょっとどうかな?と心配して
いたのですが、非常に緊迫感のある展開で、しかも緻密。この作品
単独で読んでも全く問題なく物語の世界に入って行くことが出来ま
した。通貨単位や人名がちょっとなじみがないので、「大金を持ち
歩いていた」などの記述があっても具体的なイメージをすることが
できなかったのですが(訳者の方でも補足して欲しかった…)、そ
ういう事をさしおいても十二分に満足を味わうことが出来る作品で
す。殺人課の刑事達の背景も気になるので、1作目から入手してシ
リーズを完読したいと思います。
紙の本わが目の悪魔
2002/07/31 02:18
もしかしたらあなたの隣人も…
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ロンドンのあるフラットで、なるべく他人とかかわらないように、
目立たず静かに暮らす男「アーサー・ジョンソン」。彼には、自分
ではどうすることも出来ない、ある衝動があった。その衝動をはら
す方法はただ一つ。めったに他人がやってくることがない、フラッ
トの地下室に隠してあるマネキンの首を絞めること。しかしその地
下室への出入り口を見下ろす部屋に新しい住人がやってきた。彼の
名前は「アンソニー・ジョンソン」。二人のA・ジョンソンが同じ
フラットに住んだことから起こったある悲劇。 CWA賞受賞作。
ルース・レンデルは、本当にこういうちょっと世間の基準からずれ
てしまった人間を書かせると上手いですね〜。非常に読みごたえの
あるサスペンスです。不幸な出生から、厳格な叔母に育てられたアー
サーは、叔母が死んでしまった今も、その呪縛から逃れることが出
来ずに、完璧なほどの潔癖さを保って生活を続けている。しかしそ
んな抑圧された生活は、どこかで破綻をきたすもので、アーサーに
とっての唯一の自我を開放する方法が「殺人」なのです。しかし、
その「殺人」すら、新たな隣人の登場により犯すことが出来なくなっ
たアーサーの厳格な生活は、徐々に破綻を始めてしまうのです。実
際に殺人を犯す人間を擁護するつもりはもちろんありませんが、こ
の小説を読んでいると、実際の殺人者も、隣でごく普通の生活を営
んでいるのかも…と、ちょっと怖い想像をしてしまいます。