青さんのレビュー一覧
投稿者: 青
紙の本46番目の密室
2002/07/31 17:56
「人間、生きてる限り『お疲れ』で『ご苦労』なんだよ」
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【ストーリー】主人公有栖川有栖とその友人火村英生は、推理作家の集うパーティーに招かれる。「日本のディクスン・カー」と呼ばれた密室の大家、真壁聖一が殺され、密室の謎が残された。彼は自分の考えた46番目の密室トリックで殺されたのか? 有栖と火村のコンビが怪事件の謎に迫る、新本格推理小説!
【コメント】推理小説の苦手な私にも、スラスラと読めたのは、やはり登場人物達のキャラクターのおかげだろう。話は主に、著者と同名の有栖川有栖 探偵助手の視点で進むが、その友人である探偵役の火村助教授の人気が高いのは頷けた。
犯罪社会学の専門家で、犯罪(者)に対するこだわりがあり、あくまで公的機関(警察)の外にいる存在として手柄を公表しない。——なんとも乙女コゴロをくすぐるタイプである。
犯罪に興味を持ったきっかけは、と訊かれて「人を殺したい、と私自身が思ったことがあるからです」とは本文中の言葉である。
また、ワトソン役である有栖川有栖 助手も、カッコイイ探偵役とはまったく違うキャラクターで読み手を引きつける。推理小説家であるクセに火村よりも推理力がなく、人前で派手に転んでしまったり、自信を持って打ち明けた推理が的外れだったりと愛嬌があり、独白がまた面白い。
作中には、「天上の推理小説」だの「密室」がどーのと(私にとっては)おカタい用語も出てくるが、私のようなまったくのミステリー初心者にも十分楽しめる内容だった。もちろん、「本格推理小説」を求めるミステリーマニアにとっても楽しめるということは言うまでもないだろう。
ちなみに文庫版の解説は、綾辻行人氏。
火村英生&有栖川有栖シリーズ 一作目、ミステリー好きな人もそうでない人も、ぜひご一読をお薦めする。
2002/07/31 17:55
アウグスティヌスと彼の理性の対話編
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アウグスティヌスは古代キリスト教最大の教父、「ヨーロッパの教師」と呼ばれています。父=子=聖霊という三位一体論など、有名なカトリックの教義を確立したのは他ならぬ彼です。
この『アウグスティヌス著作集1』には彼の初期の作品、『ソリロキア(独白)』が収録されています。彼と彼の理性(?)とが、ソクラテスの問答さながらに神について語り合う、対話編のような話です。
他の著作と違って、キリスト教について知らなくても彼と彼の理性の掛け合い漫才的な対話は充分楽しめると思うので、これはどんな方にもおすすめできると思います。
紙の本世界の名著 35 ヴォルテール ディドロ ダランベール
2002/07/31 17:43
哲学書簡
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哲学書簡は、ヴォルテールがイギリスで見聞きしたこと・考えたことをフランスへ書き送ったものです。
当時、フランスはイギリスより宗教に厳しくて、貴族が権威をカサに着て威張っていたのですが、ヴォルテールは新天地イギリスに行ってフランスとの違いをまざまざと感じ、両国を比較してたくさんの手紙を書きました。
内容を簡単にまとめると、
1、伝統的権威・政治的特権への批判
2、哲学的独断への批判
3、不寛容と狂信への批判——といったような内容です。
ヴォルテールは、
「イギリスには、キリスト教の宗派が13もある。誰もが好きな道を通って天国へ逝くのだ!」
「誰もが税を払っている——収入によって納税額が変わるとは、何と効率的なシステムだろう!」
「過去1700年間、キリスト教は悪しか行わなかった。神と寛容を説き、人を殺し続けた。 教会の歴史は血塗られている。信仰は大切だ。しかし、坊主は信用するな!」
と、当時のフランスを鋭く批判したのでした。
紙の本仁木兄妹長篇全集 雄太郎・悦子の全事件 1 夏・秋の巻
2002/07/31 17:37
仁木兄弟シリーズ1・2作目
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発表から何十年もの月日がたっているが、全く色褪せない作品だと思う。諸処に時代の違いは感じるものの、むしろ作品独特の雰囲気を伝えることに一役買っている。
本書に収録されている『猫は知っていた』と『林の中の家』は、音大生仁木悦子と植物学専攻の雄太郎の兄弟探偵が活躍するシリーズの一作目と二作目である。
日本のエラリー・クイーンと呼ばれた仁木悦子の爽やかな作風を味わって欲しい。
紙の本社会契約論
2002/07/31 17:34
教科書に出てくる名著
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ルソーの『社会契約論』は、誰もが社会の授業で習う名著ですが、教科書に載っている小難しい内容説明を読んで興味を惹かれる人はあまりいないでしょう。
しかし、この本の冒頭には、次のようなことが書いてあります。
「人間は生まれつき自由でありながら、あらゆるところで鉄の鎖につながれている。一人の人間は自らを他人の支配者と考えているが、その他人よりもよく多くの奴隷状態にとどまっている」
たしかに、主人なくして奴隷は存在し得ないし、主人も奴隷がいなければ主人足りえません。
ルソーは、人間は自由じゃないけれど、自由であることこそが人間の本質なんだ、と主張したのでした。
教科書でもこんな風に、冒頭の一節だけでも引用されていると興味がますのにな……と思わされました。
2002/07/31 17:32
ユング心理学の入門書
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ユングの経歴から思想まで、わかりやすくまとめられてると思います。
他の本では見られない、ユングが書いた絵やマンダラがカラーで見られるのが、この本の一番いいところだと思います。特に『赤の書』はユングがせっかくカラフルな絵をたくさん描いているのに、ふつうの本では白黒でよくわからないのですが、この本ではカワセミの羽の色までよくわかります。
ユングの年表や彼の住んでいた町の写真まで、「図説」というタイトルの通り、豊富な絵や図・写真があるので、パラパラ見るだけでも十分楽しめる一冊です。
紙の本赤毛のアン 改版
2002/07/31 17:30
「行く手には常に期待にとんだ曲がりかどがあるのだ!」
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この物語は、孤児だったアンが老兄妹の家、グリーン・ゲイブルズの娘となり、日々の生活を楽しみつつ成長していく物語です。その物語のなかには、もちろん感動も、涙もありますが、それよりもまず、アンの感じる「何の変哲もない、日々の中に埋もれたかけがえのないもの」が感じられます。
これまでこの物語を敬遠してきた方には、ぜひご一読をおすすめします。私はいま読み終えたばかりでこの感想を書いているのですが、続きを読みたくてたまらない!という心境です。(ぜひ明日には手に入れなければ!!)
ダイアナとの友情、カスバァト家の家族愛、「いい子」になるための努力の数々など、見どころが盛りだくさんの一冊です。
紙の本赤毛のアン
2002/07/31 17:21
「あしたという日は、まだあやまちのない新しい日だと思うといいわね」
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『赤毛のアン』という物語はすべての女性にとって、子どもの頃に読んでしまうか、そうでなければその本への先入観から敬遠しているかのどちらかではないでしょうか。私は後者の敬遠してきた方で、アンの物語のことを「夢見る少女が読むような、ロマンチックな児童文学」だとばかり思ってきました。
しかし、ある作家さんがエッセイで「そんなことはない」と仰っていたことから単なる思い違いだと知り、またある小説に出てきた『赤毛のアン』からの引用——今日は新しいいい日。〈まだ〉失敗のない——を読み、興味を抱いたのでした。
読み始めは最初の思いこみが抜けきらず、なかなか先へ読み進めることができなかったのですが、数ページ読んでしまうともう止まりませんでした。それからは半日をこの本を読むためにつぶし、食事もとらず、一気に読み終えてしまったのでした。
ロマンスはほとんどなく、いわゆる『古典』に見られるような堅苦しい教訓もないお話ですが、とにかく時間を忘れて読むことのできる、まさにこの解説にあるように『読者の友達となってくれる』一冊です。
2002/07/31 17:19
「王子様はひとりで充分だ」
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【あらすじ】
オリンピック代表選手に選ばれた要一、腰の故障を抱えた飛沫、そして3回半をものにしながら、オリンピック代表に漏れた知季は……。
オリンピックへそれぞれの思いを託す3人の行動とは——突拍子もない彼らのその後が、あなたを待っている!?
【感想】
何とゆうか、もう、なんて愛すべき人なのでしょう、要一くんは! 2巻では知季のかわいらしさにメロメロでしたが、MDNのリーダー的存在・要一のその秘められた素顔を、この巻では余すところなく見せていただきました。
ふつう、サラブレッドといったら「親の七光り」なるものにプレッシャーなり反感なりを抱いたりするものですが、要一は逆に「水の中では自由だった」と言います。「みんなは僕を『富士谷要一』として単純に評価してくれる」と。小四で日本一に輝き、また2巻では高二にしてオリンピック出場権を手に入れた彼ですが、それなりに悩みがあったのですね。
一方、知季は一皮むけて、カッコ良くなってしまいます。人に与えられた目標ではなく、自分で定めたハードルを跳び越える——これこそ男のロマンってヤツじゃあございませんか!
また、この巻では「日本一のバカ」が決定されます。まだ読んでないいらっしゃらない方は、その辺も楽しめるかと(^^; この中で、誰が一番バカかな〜と思いつつ、読まれてみてはいかがでしょうか?
最後に飛沫はというと・・・ジミでした。しかしながら、ただいま特訓中とのこと。4巻が楽しみです!
紙の本ダイブ 2 スワンダイブ
2002/07/31 17:17
スワンダイブ
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【あらすじ】
スーパーダイブに挑む知季、荒海に飛び込み飛沫、完璧主義の陽一……。それぞれの夏。
【コメント】
まず驚いたのは、カバーの鮮やかなオレンジ色。夕焼けの中で飛ぶかのようなダイバーの姿でした。写真撮影協力に早稲田大学が挙げられているところを見ると、何か有名な写真だか人物だかなのでしょうか。
内容も、カバーに負けないような情熱的で波瀾万丈なものでした。飛沫が大人になります!(←なんか意味深だなぁ/笑) 逆に知季はサッパリしちゃって、でもなんか子供らしくなってかなりかわいいです。
スポ根なのに繊細で、バカみたいに感動してしまう、エネルギーに満ち溢れた作品です。子供から大人まで楽しめると思います。以下続刊! 3巻が楽しみです。
紙の本石と笛 1
2002/07/31 17:14
「自分の力の儚さを、よく心得ている者だけが、よい裁判官になれるのだ」
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この作品では、登場人物たちの過去の物語や、主人公たちが旅した土地の逸話が作中作として語られる。その部分だけ取っても楽しめるが、もちろん主要なストーリーとの関係が深い物語なので、脇役や敵役の理解が深まり、主要ストーリーがますます面白みを増すのである。中世ドイツを彷彿とさせる世界の中で様々な問題に苦しむ平民たちの暮らしの様子がリアルに描かれ、その法律制度ひとつとっても真に興味深い。
特に定められた裁判制度がないこの世界の裁判制度は、公正さで有名な民間人に判断を任せるというもので、例えば、主人公・聞き耳が公正さを欠いた無慈悲な判決を下した罪を償うために、当の冤罪の判決を受けた被害者の従者となるくだりは、今どきのすぐキレる若者たちも、子供の頃にこれを読んでいれば——と思わせられた。
最近、ハリー・ポッターのブームで児童文学が注目を受けており、以前からの児童文学ファンとしては嬉しい限りだが、ハリー・ポッターを面白いと思った方々には、ぜひ「ハリー・ポッターが特別、児童文学の中でも面白い筆頭なのだ」と思うのではなく、「ハリー・ポッターは児童文学の中でも面白い本の一つだ」と認識していただきたい。
『石と笛』は、ハリー・ポッターと同様、確実に『児童文学の中でもおもしろい本の一つ』である。
紙の本細雪
2002/07/31 17:13
「佳き人のよき衣つけて寄りつどふ都の嵯峨の花ざかりかな」
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英語訳では『Makioka Sisters』と題されている様に、蒔岡家の姉妹たちがメイン・キャスト。
ストーリーは日常生活そのまんま。三女雪子のお見合結婚と四女妙子の恋愛結婚が対称的。「お見合い結婚」が常識だった戦後と、「恋愛結婚」が多くなった現在と比較しながら読むこともできてとても面白い。
ホントにただの日常生活なんだけど、スラスラと読めてしまう。いわゆる「昔の名作」的なものを避けていた私でも、あっという間に読めてしまった。
大阪弁の言いまわしも綺麗だし、情景の描写も美しいので、そういうところは文学・教養として勉強になるかも。
終わり方はかなり素っ気なく、「あれ、これで終わり?」という感じ。でも雪子と妙子の結婚という終止符があるにはあるから、ちゃんと計算した終わり方なのかも。「もう少し続きを読みたいなぁ」と思わせるところで切るのが、良い終わり方というものなのかも知れない。
紙の本ななつのこ
2002/07/31 17:05
「いったい、いつから疑問に思うことをやめてしまったのでしょうか?」
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「君は夏休みの宿題を自分でやらずに、人のを写したでしょう? それはものをとったとおんなじことよ」
三章の『一枚の写真』の中で、あやめさんはそう言いました。
この話を読んで、私はすごく気が楽になりました。私はすごく心の狭い人間で、学校でノートを写させてくれと言われる度に、いつも嫌な気持ちになっていました。私がいつも時間に遅刻せずに学校に来て、つまらない授業でも眠らないよう気を付けて、一生懸命書いているノートをタダで見せろと仲良くもない人に——それもほとんど知らない人に迫られるのは、本音を言えばとても苦痛でした。
けれども、それが私のように心の狭くない人間だったなら「いいわよ、どうぞ」と優しく言えるだろうと思うと、そしてまた、たかがノートを写させることも嫌がるなんて、なんて狭量な、性格の悪い人間だろうと思われるのだと勝手に想像しては、持ち前のつまらない矜持を発揮して、無愛想な顔しかできないまでも、たいていは「はぁ、どーぞ」と貸してしまうのでした。
主人公の駒子なら、「なんて自分ってヤツは、プライドのない、なあなあ人間なんだろう」と自己嫌悪に陥るところかも知れません。でも私は、駒子ほどにもプライドのない、自分に甘い人間なので、自己嫌悪に陥る前に、ノートを貸して欲しいと言った人たちに八つ当たりしてしまうのでした。「何で授業に来ないんじゃ!」「この講義を取った以上、まじめに講義を受けるか、さもなければ潔く諦めるかどっちかにしろや!」と。そして「今日はいつも『ノートを貸せ』と言ってくる人は来ないのかな」「でも遅刻してくるかも」「授業終了と同時に急いで教室を出よう」などとくだらないことをいつも考え、そんな自分がますます嫌いになりました。
けれどもこの『ななつのこ』の、はやてが宿題を写したことを恥じ入るところを読んで『ああ、そうだ。なぜあの人たちは恥じないのか。あの人たちは恥じ入るべきなのだ。私は恥じ入ることは何もない。ただ、快くノートを貸して、その人たちがいつか恥じ入るのを見守っていればいいのだ』と思うことができました。(←これもひどいか・・・(^^;))ノートを貸すこともできない私、ノートを貸せと言われることを嫌悪する私、ノートを貸せと言った人を憎む私は恥じ入るべき、ひどい、性格の悪い人間ですが、きっと、ノートを快く貸し、その人たちがいつか恥じ入ってくれますようにと思う私は、前よりはマシな人間となるでしょう。
……何だかやっぱりちがうような気もしてきましたが、気が楽になったことは確かです。次からは、以前ほど嫌がらずにノートが貸せることでしょう。(……そうだといいなぁ(^^;)
私以外の方も、この本を読み、ほんの一行でも『気が楽になる言葉』を探し出せることを祈っております。
紙の本アンの友達
2002/07/31 16:57
「あのころは朝が大好きだった——これから読もうという本のように」
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この作品は『赤毛のアン』第4作で、短編形式になっています。原書ではアン・ブックスではなく外伝扱いで出されていますが、アンの周囲の人々のお話で、アンもチラッと登場します。
わたしは二編目の『ロイド老淑女』が一番好きです。わたしも彼女と同様、あまり親切とはいえない性格の持ち主なのですが、彼女の優しくなっていく気持ちが、まるでわたしの方まで流れ込んで来るかのようでした。
また、三編目の「めいめい自分の言葉で」を読んだときは、人の死というものについて考えさせられました。死を直前に控え、神の栄光を信じることができない人をどうするべきか——それがわかる人はいないでしょう。しかし、フェリクスはわかっていました——彼の感性は。彼の演奏を聴いて、不信仰な人であったナオミはこう言います。『いままでわからなかったのが——いま、とてもはっきりしました。感じでわかるのです。神様は愛の神様です。どんな者でも許してくださる——わたしでさえ——わたしでさえ。なにもかも、すっかり知ってなさるのだ。わたしはもうこわくない。わたしの赤ん坊が生きていたら、その子がどんなに悪い子であろうと、また、どんなことをしようと愛し、許してやるように、神様はわたしを愛し許してくださるのだ。』(p.188)
2002/07/31 16:51
「ユーモアは人生の饗宴においての最も風味に富んだ調味料である」
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『赤毛のアン』第3作です。
アンはレドモンド大学に入学し、当初の夢のとおり文学士を目指します。
一緒にクイーン学院で学んだ同郷の友人、プラシラと下宿をはじめたアンは、新しい土地でユーモアあふれる友人たちに出会うことになります——学園のマドンナ的存在・フィルや、ステラの伯母・ジェムシーナ伯母さん。彼女たちとの暮らした『パティの家』は、アンの第二の故郷となります。
愛情と結婚とを見据えたアン・ブックス第3作は、子供から大人まで時を忘れて楽しめる作品です。