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オオトリさまさんのレビュー一覧

投稿者:オオトリさま

112 件中 1 件~ 15 件を表示

「トライ・アンド・エラー」がなぜ悪いのか?

15人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

平成2年大阪北部の小学校に新任教員として勤務することになった黒田先生は自分の担任のクラスで豚を飼い、最後はみんなで食肉にして食べる事を提案する。
夏の暑い日にやってきた子豚は「Pちゃん」と名づけられ4年2組の子供達は試行錯誤を繰り返しながらPちゃんとの交流を深めていく。
当初は1年で食肉にするつもりだったが、子供達の意見が別れPちゃんの件は5年生に持ち越された。
クラス替えをされた5年2組は全員一致でPちゃんを飼い続けることを決めた。
大きくなるPちゃんの為の新しい小屋作り。大量の餌の手配。糞尿の始末。動物を飼う事にはさまざまな苦労が伴う。
話し合い・知恵を出し合い成長していく子供達。
やがて6年2組に卒業の日が近づく。
Pちゃんを下級生に引き継ぐか、食肉センターに連れて行くか。
クラスの意見は16対16に別れ、最後の決断は黒田先生に託された。
クラスで豚を飼う様子は先生の知り合いのテレビ局関係者がビデオに収録しつづけNHKがドキュメンタリーとして放送する話も進行していた。
しかし、最終編集段階になってNHK側より反対意見が出た。
「これは教育ではない。間違った教育だ。教育とは結論がわかっていて、そこにいかに上手に子供達を導いていくものである。それを結論もわからずに始めてしまって挙句の果てに子供達にこんな辛い思いをさせる教師は教育者ではない」
子供達の様子を見続けたテレビ局関係者は「トライ・アンド・エラーが何故悪いのか?」と内心不満に思いながらもNHk放送は諦めるしかなかった。
その番組は1993年民放で放送されて賛否両論の大反響を呼び各種テレビ賞を受賞する。
「命の授業」というが黒田先生はいくつかの大きなミスをおかしていると思う。
子供達に命の大切さや動物を育てることの難しさ・楽しさを体ごと学んでほしいという趣旨は理解できるが、「それならば、大きくて存在感のある動物を飼って見たい」というのはあまりにも安易だったと思う。
農業高校の畜産科で自分達が丹精こめて育てた鶏をあえて自分達が食べて食の大切さを学ばせる授業があるというが、小学生に最初から豚はやはりハードルが高すぎると思う。
第2の間違いは子供達に押し切られるような形で豚に「Pちゃん」という名前をつけ、家畜というよりペットとしてのニュアンスを強くしてしまったこと。
酪農家の中でも牛に名前をつけている場合があるというが、職業として牛を飼っているプロと小学生では感情移入の仕方が違う。
黒田先生の行なった授業には大きな間違いがある。
しかし、Pちゃんを飼う事により子供達が大きく成長した事も事実である。
新米教師が情熱に先走り、下調べも不十分に動物を飼って結果的に子供達に悲しい思いをさせてしまった。
その事も含めて黒田先生の行なった「命の授業」には今の教育が無くしてしまった「何か」を考えさせられる。
「トライ・アンド・エラーがなぜ悪いのか?」
この質問にどのように答えたらいいのだろうか?

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マスコミの喜ぶ「絵」になりすぎた林眞須美

7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「和歌山カレー事件は冤罪かもしれない」という話はネットでチラホラとみるようになったが、あまり深く考えていなかった。
この本を読んで「こんな曖昧な証拠で死刑判決が確定してしまうのか」と恐怖を覚えた。

弟4章 虚構 加熱するマスコミが作り上げた格好の犯人像
特に「絵」になりすぎた眞須美の放水シーン がすべてを物語っている
「松本サリン事件」の河野さんと林眞須美を比べ
河野氏も眞須美も消去法で犯人にされ、報道被害にあったが、河野氏はかばってくれる住民もいたが眞須美は地域から浮いていた。
河野氏は視聴者受けするような「絵」は撮られていない
眞須美は「毒婦」である事を印象づけるような「絵」を取られている。

カレー事件の真実はわからないが、眞須美が普段から近隣住民と良好な関係を築いていてマスコミ対応を間違えなければ証拠不十分で逮捕に至らなかった可能性は高いと思う。

人が社会で生きていく上で、「普段の行い」が大切だという事はわかる。しかし、それがこうした形で現れるとしたら公正を欠いている。

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紙の本獄窓記 正

2004/09/24 10:28

元衆議院議員の目から見た獄中体験記

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

政策秘書の名義借りをした事による詐欺罪により実刑判決を受けた山本譲司元衆議院議員の433日の獄中生活と事件を語る本。

獄中生活の手記というと安部譲二氏の「塀の中の懲りない面々」が有名だが、阿部氏は極道の世界に身を置く人なので著書の中で語られた「塀の中」は再犯者が収容される府中刑務所などの「B級施設」であり、そこで語られる収容者は赤軍派兵士、テキ屋、殺人犯などベテラン。
山本氏は初犯なのでA級に分類されて栃木県の黒羽刑務所に服役する事になった。
黒羽刑務所での山本氏の体験記は阿部氏とはまた違った興味深いものであった。

山本氏が刑務所での配役先は「寮内工場の指導補助」
寮内工場とは「塀の中の掃き溜め」と収容者の間で言われている一般工場から完全に隔離された場所にある体や心に病を持った収容者を集められた場所である。
痴呆症、自閉症、知的障害、精神障害、聴覚障害、視覚障害、肢体不自由など、さまざまな障害を抱えた寮内工場の収容者の日常生活も含めたサポートが「寮内工場の指導補助」の仕事である。
寮内工場で山本氏はまさに糞尿にまみれて奮闘する事になる。
そんな日々の中で「バリアフリー」と言われながらも社会に根強く残る「差別」という名の「バリア」に躓き再犯をくりかえす障害を持った入所者達の姿は心に突き刺さるものを感じる。

治安の悪化・不景気などの影響で刑務所の収容者は増え続け、日本全国の刑務所は過剰収容の問題に悩まされている。
「過剰収容」は職員と収容者どちらにもストレスをためさせ雰囲気が殺気立ち、工場内での暴力沙汰も増えている。

役所の縦割り行政の弊害。
明治時代から変わらない「監獄法」に対する疑問点。
など、国会に身を置いていながら獄中体験をする事になった著者にしか書けない鋭い分析に考えさせられる事が多かった。

現在、山本氏は将来的には障害者の授産施設やグループホームを運営する事を目標に、福祉関係の資格取得を目指して勉強中だそうだ。
それは、障害のある受刑者たちと過ごしてきた体験と恩人の死によってもたらされた目標である。
14ヶ月の刑務所生活は、これからの山本氏の第二の人生でどのように生かされていくのかに注目してみたいと思った。

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過去と現在のキャチボールで見えてくる物は…

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

題名と著者の経歴を見ると、「歴史学者が書いた難しい本」のイメージがあったが、読んでみたら大変読みやすく一気に読んでしまった。

「加賀藩御算用者」とは加賀百万石のそろばん係の事。経理のプロである。
代々「御算用者」の家だった猪山家の第6代(1842)から第9代(1879)までの37年間にも及ぶ詳細な武士の家計簿を分析し、専門外の人にも読みやすく書かれてある。
詳細な家計簿から見えてくるのは、「金融破綻」「財政再建」「教育問題」「年収格差の拡大」など現代の問題と重なる部分が多くある。

猪山家がなぜこれ程詳細な家計簿を残す事になったのかも興味深い。
猪山家は借金が膨らみ家計がパンク寸前。不退転の決意をして売れるものは売り、残った借金は交渉して金利をまけて貰うという、借金整理を決行した。
当主直之が「二度と借金を背負わないように計画的に家計を管理しよう」と決意して完璧な家計簿をつけはじめたと推測される。

歴史の授業で「幕末頃になると下級武士は貧しかった」と習った記憶があるし、時代劇でも貧しさから刀を売る武士の話などもよく出てくる。
しかし、なぜ貧しかったのかはよくわかっていなかった。
猪山家の家計簿から読み取れるのは「武士が武士としての格式を保つ為の費用」(召使を雇う費用・親類や同僚と交際する費用・武家らしい儀礼行事をとりおこなう費用・先祖や神仏を祭る費用・子供を武士の子供として教育する費用など)が収入より多くなるという構造的な問題だった。

著者があとがきで「歴史とは過去と現在のキャッチボールである」と書いてある。
猪山家の家計簿から読み取れる数々の事例は人によって解釈が分かれると思うが、バブル崩壊後の不景気から抜け出せず不安な現代の私達に語りかけてくる物が大変多くある。

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紙の本きよしこ

2002/12/11 14:12

言いたい事を上手く伝えられないもどかしさが切なく伝わる

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

吃音の子供を持つ母親が「子供に励ましの手紙を書いて欲しい」と返信用の封筒同封の上頼んできた。作家は悩んだ末、励ましの手紙は書かずこの作品を書いた。と、いう設定で物語は始まる。

重松さんがモデルと思われる吃音の少年の小学校1年から大学受験までを7編の短編によって語られる。
すべてが実話ではないだろうが、「カ」行と「タ」行が苦手な為に言いたい事があってもとっさに得意な単語に置き換えて話す。などというエピソードは吃音の悩みを持った人でないと書けない話だと思う。
言いたい事があってもその言葉が苦手な音で始まる言葉だと逃げ腰になってしまったり、変わりの言葉を捜している内に言い逃してしまう。というのは何とも切なく悲しい。

印象的な人物が沢山描かれている。
「このままだと、大人になっても誰とも口をきかなくて済む仕事にしか就けなくなりますよ」と言って、吃音矯正セミナーに通わせた小学校3年の担任の先生。
作文の上手な少年に卒業お別れ会の劇の台本を任せる小6の担任。クラス全員にセリフを与えるのが条件。吃音に悩む少年に「おまえのセリフも忘れるな。得意なセリフを選べばいい」と言う。
中学生になると少年の吃音をからかう級友はいなくなる。変わりに気の毒そうな顔をする。そんな中「おまえはどもりだからあだ名はドモだ」というちょっと迷惑な友達。

沢山の出逢いの末少年は教師になる事を志して上京を決意し、少年時代と別れを告げる。

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増税論のウソに対抗するために読んでおきたい

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「ネットの神(三橋貴明氏)」と「勝間和代の最強ブレーン(上念司氏)」がタッグを組んで、メディアにはびこるウソを完全論破!の帯の文字
お二人の論調は過激で実名を出して経済評論家を両断している
幸田真音・藤巻健史・浜矩子・藻谷浩介・池上彰・田原総一郎etc
与謝野馨氏にいたっては呼び捨て
かなり過激な表現なので不快感を覚える人も多いと思う。

二人の説には共感できない部分も多いが、増税論のウソ・国債破綻のウソ・為替介入の無意味さ・ユーロ危機の真実などは大変参考になる。
誰も利用しない高速道路や無駄なハコもの行政はうんざりだが、第二国土線は必要だと思うし、建物や道路の耐震化・発送電分離は必要だと思う。

「今増税しても、国家財政にも被災者にも国民にもプラスにならない」とはまさにその通りだと思う。
企業の大幅赤字決算が発表されているが、増税しても輸出も消費も冷え込んで元の収入が減っては国の収入が増えない事は誰でもわかる。
財務省の頭の良い官僚の人たちが強引に増税しようとしているのはまったく理解できない話だ。

「増税やむなし」の論調がマスコミでは大勢をしめているが、そういう時代だからこそ過激な二人の対談を読んでマスコミの論とは別の見方を身に着けて庶民の生活を少しでも守りたいと思う。

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紙の本創竜伝 13 噴火列島

2003/07/28 12:06

をーっほほほほほほほほほ、だから言ったであろう、このシリーズの主役は私だって(征夷大将軍・小早川奈津子)

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

待ちに待った創竜伝の新刊。
12巻が2000年発売。11・12巻は外伝だから10巻から数えると7年!

今回の創竜伝では首相が自分の知らない間に政権交代させられ、前首相となってしまいましたが、本編の主役も小早川奈津子に乗っ取られてしまったようです。

ドラゴンブラザースをも凌駕する愛と正義の美女戦士小早川奈津子!! 恐るべし!

富士山の噴火騒動の中日本に帰ってきた竜堂兄弟。
年少組二人はアメリカ兵と戦い、年長組は京都にて宿敵小早川奈津子と手を組む。
終の提案した奇策とは小早川奈津子が征夷大将軍となり京都幕府を打ち立てる事だった。

恒例の社会風刺ネタ満載。今回はややイラク批判が多すぎて本編のストーリーが散漫な印象もあるが、幕府を打ちたてるという喜劇のアイディアは最高です。

第10章の幕府の政策やら、小早川奈津子を丸め込む為の美辞麗句の数々には大笑いしました。

遅筆の田中先生は、批判したい事件が起こると筆が進むようなので次回作は早く出る事が期待出来るかも(?)
何しろ小早川奈津子の十八番のセリフ「市中引きまわしの上、磔刑獄門に処するのが当然!」を言ってしまう現職大臣や人造湖に自分の娘の名前をつけちゃう県知事など、創竜伝の上をいく事件が続発してますからね。
田中先生の創作意欲も刺激されているのを期待しています。

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紙の本夢の樹が接げたなら

2004/05/15 22:10

緻密な世界観を堪能できる

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「星界シリーズ」で人気の森岡浩之さんのメジャーデビュー作の表題作をはじめ8編の短編集。
どの作品も短いながらも緻密な設計図が準備されているような緻密な作品世界観にうならされる。

「夜明けのテロリスト」が一番印象に残った。
「メディット」という名の小型コンピューターが進化した近未来。かつては人間だけのものとされた知性・創造力の必要な仕事もメディットがこなすようになる。
ごく一部のエリートと、肉体労働やセールスのような人間相手の仕事だけが人間の仕事となっている。
作品が発表された1998年には、まだSFの感があったが今読んでみるとほんの少し未来の話に感じられる。
携帯型のメディットをウエストポーチに入れ、メディットと脳をコードで直結させている「背負い族」は、携帯にすべての情報を入れて片時も携帯を離さない現代の若者を連想させるし、自分で考えているのかメディットに命令されているのかわからなくなってしまう悩みなど、明日の日本の姿のような気がする。

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竹田和平さんの投資指南書では無く、混乱の時代を生き抜く哲学書

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「大貧民ゲームの勝ち抜け方」という題名から、売った・買ったの激しい投資市場を勝ち抜いた投機的な人物のサクセスストーリを想像すると失望すると思う。
竹田さんの投資法は安くなった優良銘柄の安値を静かに買い支え、じっくりと会社の成長を待つという、投資家として本来あるべき姿勢。王道そのものである。

町の零細な菓子職人の息子に生まれ、いち早くオートメーション化を取り入れ近代的な菓子メーカーへ発展させた竹田和平さんの半世紀と投資哲学を書いた本である。

竹田さんの時流を読み、緩急をつけた投資戦略はみごととしかいいようがない。
戦後の混乱期、人々が甘いものに飢えていて菓子メーカーが右肩上がりを続ける時は、おしみなく資金をつぎ込み事業を拡大する。
昭和40年代に入りお菓子の需要が頭打ちになってからは、無理が拡大政策はとらず、かといって守り一辺倒でもなく今でもスーパーの店頭に並ぶ「タマゴボーロ」「麦ふぁ〜」などの商品をきちんと守り抜く。
ボーリングブームに乗ってボーリング場経営に乗り出すが、すぐにブームは終焉。それでもしっかりと残存者利益を確保し、投資した分はキチンととりかえすしたたかさ。

竹田さんも最初の頃は証券会社の勧める銘柄を購入して、4勝1敗なのに精算すると収支ゼロという株の売買を10年ほど続けたという。
竹田製菓が安定成長になる頃から、目先の利益を追わず長期投資に徹する姿勢に変わった。

後半に著者の勧める会社四季報のCD−ROMを使った「他人が見落としている優良銘柄の見つけ方」など竹田流投資法が載っているが、ある程度の余裕資金の無い人間には向かない方法だ。

本の内容からすると「大貧民ゲームの勝ち抜け方」という投機的なインパクトのある物より副題の「旦那的投資哲学」の方がふさわしいと思う。
暴走族の少年達を「不況が生み出したひずみ」と捉え、地域社会が若い者達をキチンと取り込んでいかなければいけないと積極的に話しかけていく話など人生訓として素晴らしい話が多いだけに題名のつけ方にはやや不満を感じた。

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「怒る」と「叱る」の違いについて考えさせられた

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

桂才賀さんは20年以上も少年院の慰問を続けられている。
謝金はわずか5000円。(最近は一万円になったらしい)交通費も自腹。
北海道など遠くの少年院へ慰問に行くときは自衛隊の慰問とセットにして交通費を節約するなどの工夫をして心を閉ざした少年達に「笑い」を届けている。

「なぜ師匠は、そんなに少年院にいくの?」と聞かれると
「彼らを笑わせたいから」と答えるそうです。
聞いた人はピンとこないようで不思議そうな顔をする事が多いらしい。
言われてみれば最近の日本は子供達の無邪気な笑い顔が少なくなったような気がする。
「子供がいつも笑っている国はいい国だ」とは、まさにその通りだと思う。
日本は物質的には豊かになったが、国の宝である子供が楽しく安心して暮らしている国と言えるだろうか?

才賀さんは講演で、父親が「怒るのはダメ、叱ってあげなさい」と言うようにしているという。
「怒り」は「自分を弁護」しようとする心理で、「叱る」は子供の為に「いさめる(忠告する)」事で「怒る」と「叱る」は全く違うそうだ。
自分の身を振り返って恥ずかしく感じる部分が多かった。

神奈川県の小田原少年院で配布している「非行化の手引き」が興味深い。

「子供を非行化させるコツ教えます」
1 幼い時から冷たく放りっぱなしにせよ。
2 欲しいと言ったら何でもすぐ買い与えよ。
3 子供の問題や失敗は理由を問わず叱り飛ばせ。
4 子供が何をして遊ぼうが気に留めない。
5 兄弟やよその子と比較して「お前は馬鹿だ。誰々を見習え!」を連発せよ。
6 忙しいのに食卓の団欒などは無駄。
7 子供が善い事や努力をしてもめったにほめるな。
8 子供の前では決して夫婦間の意見を一致させるな。
9 お金こそ人生のすべてであると身をもって教え込め。
10 子供の前で常に法律・警察・学校・役所の悪口を言い、社会の決まりや公共機関への敵意を植え付けよ。

これだけ実行してみごと不良少年・少女になっても少年院は全国に53箇所しか無く狭き門なのだという落語の落ちも笑える。

子育てに悩む親御さんには参考になる話が多いと思う。

本書では非行少年達の更生に協力を呼びかけているが、彼らの犯した罪は重大だ。少年達の人権以上に被害者の人権も守られなければいけない。との考えから本書の売り上げの一部は「犯罪遺児救援基金」に寄付されるという。
最後まで頭の下がる師匠の行動だと思う。

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紙の本クイールを育てた訓練士

2003/09/20 20:35

じっくりのんびり努力して他の犬並みにやっとなったクイールが相性の良い使用者と出会え素晴らしいユニットとなる不思議

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「盲導犬クイールの一生」がベストセラーとなり日本一有名な盲導犬となったクイール。
そのクイールを育てた「魔術師」と呼ばれる名訓練士多和田悟さんのこれまでの軌跡を書いた本。

クイールは盲導犬用の繁殖犬と一般の家庭犬の間に生まれた犬で、血統的に多和田さんはあまり期待していなかったそうだ。訓練所に来てからも平均訓練日数446日を上回る511日も訓練にかかっている。

盲導犬訓練士というと「盲導犬を育てる」のが仕事だと思っていたが、犬を訓練するのはもちろん、それと同じかそれ以上に大切なのが犬と使用者との組み合わせを決める事だと知った。
外出の多い人・事務所での過ごす事の多い人とでは適した盲導犬の性格も違う。
多和田さんは魔法のように人間と犬との相性を見ぬいてしまう。
多和田流は「完璧に訓練された犬に人間がついていく」のではなく、「犬の能力を人間が上手く使いながら仕事を分担する」。多和田さんの育てた犬は仕事をするのが楽しくて仕方がないというように尻尾を振りながら使用者の隣を歩いているという。

盲導犬訓練生全部が盲導犬になれる訳では無い。訓練所にきてから適性を判断し、盲導犬に向いていない犬は候補生からはずされる。
一般に盲導犬になれた犬は優秀でなれなかった犬はダメだと思いがちだが、そうではなくあくまでも盲導犬に向いているか、向いていないかなのだという。
クイールも我慢強く物事に動じない盲導犬向きの性格をしていたが、言い方を変えればちょっと鈍感なタイプだったという。
盲導犬向きの性格の犬は警察犬や麻薬犬としては劣等生の犬なのだろうと思う。

ノンフィクション作家の矢貫隆さんの多和田さんの半生を綴った部分と多和田さんの手記で構成されている。書き手が代わる部分が少し読みづらく感じるが、盲導犬の世界だけでなく人間の世界にも通じる人と人との相性が1+1が2以上になる不思議を感じさせてくれる。

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検察の腐敗は誰が正すのか?

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2002年4月22日、検察の裏ガネ作りの実態を現職のまま実名告発する直前に検察に逮捕され、2003年3月保釈された元大阪高検公安部長三井環氏の「獄中手記」です。

1章をあてて、検察の裏ガネ作りの実態がこと細かに説明されている。
裏ガネの温床「調査活動費」をどういう手口で裏ガネに変えるかの苦労話は涙ぐましいほどである。
裏金作りは公金横領で犯罪ではあるが、外務省の「機密費」地方自治体の「食料費」などの事件の後では、「検察よ、お前もか!」と怒り・呆れるが、公務員の堕落ぶりからすると「ああ、やっぱり」という諦めの気持ちもあり大きな驚きはなかった。

驚いたのは、平成11年に裏金に関する内部告発文書が大手出版社や国会議員に送付された後の検察の対応である。
「この機会に裏金作りを止めて、調査活動費を国に返すべきだ」という意見が多かったのにも関らず、法務省は予算を返上すると今まで何に使っていたのか説明しなくてはいけないからという理由で返上しない事を決めてしまう。
本省は「今後は架空名目を使って裏金作りをしてはいけない」と通達を出したが、今まで全部裏金にしていたので、本来の調査活動費の使い方がわからない。
マニュアルを作り、説明会を開き、それでも3割減らした調査活動費を消化する為に必要の無い講演会を開いたりして税金の無駄使いをする姿は怒りを通り越して哀れでさえある。

そして、真に恐ろしいと思ったのは、実名告発を決心した三井環氏をテレビのインタビュー前日に「微罪逮捕」「でっちあげ逮捕」して口封じを図った事である。
マスコミ嫌いで有名な特捜部長が、要請も無いのに会見を開いて三井部長の悪徳ぶりをレクチャーして「悪徳検事」のレッテルを貼ろうとした。
偶然かもしれないが、三井氏のインタビューを放送する予定だったテレビ朝日の「ザ・スクープ」は2002年9月惜しまれつつ視聴率不振を理由に打ち切られた。

警察や政治家・自治体の腐敗は検察が捜査する。
検察が腐敗した場合は誰がチェックするのか? 現在は検察を捜査する機関は無い。
三井氏の裁判は国民のひとりとして注目していきたいと思う。

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まさに目からウロコ英語がペラペラになれそう

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日本人は英語の勉強に多大な時間と費用を費やしているのにもかかわらず、外国人と会話するのが苦手な人が多い。

英語が苦手科目ナンバーワンで、いつも赤点・通信簿の評価は2だったという著者がアメリカでセスナの免許を取得し、アメリカで飛行教官を務めるまでに英語力が伸びた魔法の方法。

英語学習の書籍は沢山あるが、この本はテクニックというより気持ちを切り替える為の本。著者の考案した英語EQを上げる方法である。EQとは心の知能指数・心の偏差値と言われている。日本人は英語が話せる十分な素質を持っているのに話せない。いや、話せないと思いこんでいると著者は言う。

私達日本人は日本語なら外国人の話すカタコトの日本語でも意味がわかり、簡単な会話なら出来る。ネイティブの人と話すのに完璧な英語を話す必要はない。確かに言われてみればその通りなのだが、試験英語で凝り固まってしまった頭には中々上手く切り替えが出来ない。

この本を読むと「私は英語が話せる」と英語ペラペラ宣言をしたくなってくるから不思議だ。

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子供を持つ親すべて必読の本

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「学力低下」が叫ばれている。不景気で消費が伸び悩んでいるにもかかわらず、私立人気は衰えを知らない。
この本は現在の学校の状況を告発したものです。

専門的な用語や教師向けの指導要綱の抜粋も多く読みにくい部分もあるが、すべての親に読んで欲しい。
「ゆとり教育」のもたらす未来像に背筋が寒くなると思う。

マスコミがあまり報道しない「家庭科」教科書の内容には驚いた。
厚生労働省所管の財団が作成して全国の中学生に配布した冊子はまるで「フリーセックスの勧め」のようである。この冊子はピルを扱う製薬会社8社からの支援金などで作成されていたというから呆れて物が言えない。
戦前の男尊女卑の社会が良いとは思わないが、
「専業主婦として、日中家で子供と過ごす母親は、生きがいは子供だけになり、一方で孤独感や苛立ちを募らせる。子供は友達との関係築けなくなる」
「良妻賢母は個人としてどう生きるか以前に、まず良き妻、良き母である事が期待された」などは行き過ぎた偏向教育だと思う。「家庭科」という名の「家族」や「家庭」を否定するような教育は早急に止めるべきである。

「総合学習」の問題点もわかりやすく書かれている。「生きる力を養う」「地域との連携」と聞こえの良い言葉を並べても、授業に協力してくれた地域の人への謝礼の予算が計上されていない自治体が多いという。地域の協力・参加というと一見良い事のようだが、地域の思想団体等が学校に食い込んで思想・権利獲得運動を推し進める場合がすでにあるという。
国語力低下が叫ばれ「朝の読書運動」が広まったのは良い事だが、「総合」の授業時間消化の為に都合がいいからだとしたら悲しい事である。

文部科学省は早急に平成十四年四月に施行された「新学習指導要領」の誤りを認め抜本的な改革をすべきである。

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詩織さんが残したひまわりの種

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題名の「虚誕」とは、事実無根の事をおおげさに言う事。うそ。でたらめ(広辞苑)。
1999年に起きた桶川ストーカー殺人事件は、警察によって作られた事件だった。
必死に被害を訴える被害者を無視し、殺人事件が起きると警察の怠慢さを隠すために被害者にも非があるような情報を流した警察にあきれたが、その後の対応にはもっと驚いた。

警察と言う組織を守る為に事件捜査の為に押収した資料の中から警察にとって都合の良い物だけを提出して、都合の悪いものは隠してしまう。こんな事が許されるのなら、警察はもはや信用できない。
警察を信じられなくなったら誰を信じたらいいのだろうか? 国の治安はどうなってしまうのだろう。戦慄を覚える。

表紙はヴァン・ゴッホの「ひまわり」。
「ひまわり」を表紙に使った理由は父憲一さん「詩織さんの死」を「ひまわりの種」と呼ぶ事から選ばれたと思う。
「ひまわりの種」は希望の象徴として、あえて警察という大組織に戦いを挑んだ。
警察には詩織さんの事件の反省を糧として、生まれ変わってもらいたいと切実に望む。

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