ねむさんのレビュー一覧
投稿者:ねむ
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紙の本ジーヴズの事件簿
2005/12/19 01:22
ジーヴズのいじわるっ!
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
貴族階級のお気楽ぼっちゃんバーティが巻き込まれるさまざまなトラブルを、天才執事ジーヴズが見事に解決していくお話。とはいえこのジーヴズ、ただのご主人想いの忠実な従僕というわけではありません。ご主人の窮状を救ったうえで、しっかり上前をはねるなかなかのクセモノぶり。読者はジーヴズの慇懃なる策士ぶりをニヤリと愉しむのが正解ではないでしょうか。
事件自体はどれもささいなもので、殺人などの深刻なお話はいっさいナシ。謎解きに挑むミステリーというより、他の方が書かれていたように落語とか、ちょっとブラックな一休さんをイメージするといいかもしれません。まぁ本当にジーヴズって意地悪だなぁと思うんですけれども(そしてそこが楽しいんですけれど)、読後感が悪くならない勝因は、間抜けでのんきなご主人バーティを、物語の語り手に据えていることでしょう。ジーヴズに全く頭があがらないにもかかわらず(そしてかなりいいようにあしらわれているにもかかわらず)、なんの疑問も抱かず鷹揚なご主人ぶりを発揮するあたり、そうして時おり意外に(失礼)気の利いた考察をしてみせるあたり。絶妙です。
国書刊行会からも同時期に同じシリーズが刊行されていますが、次々に続巻が出ているところを見るとあちらも好評なのでしょう。個人的には文春版の翻訳の方が、ジーヴズの慇懃意地悪ぶりが良くでているような気がして好みです。あと文春版は装丁もかわいいですね。帯にある紫の靴下をつまみあげるジーヴズの手、最高です。
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