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紙魚太郎さんのレビュー一覧

投稿者:紙魚太郎

40 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本ビッグバン宇宙論 上

2006/08/04 22:01

わかりやすいけど・・・

12人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

宇宙論がビッグバン宇宙にたどり着き、検証されるまでが非常にわかりやすく書いてある点においては、さすがサイモン・シンというべきである。しかし、インパクトというか、掘り下げの深さに関して言えば、全2作に比べかなり見劣りがする。ビッグバン宇宙論は現在、かなりポピュラーな宇宙論であり、優れた解説書も多い。その成立までの歴史をたどるだけでは、この方面に多少なりとも興味を持っている読者が思わず唸るような展開は期待しにくいだろうと思ったのだが、まさにその通りであった。パラダイムの変遷に関して言えば、最近でも「磁力と重力の発見」(みすず書房)や「空間の謎・時間の謎」(中公新書)など深みや切り口などに驚かされる本が日本人によって書かれている。宇宙論の発展に関する人間ドラマについて言えば「宇宙はこうして始まりこう終わりを告げる」(白揚社)に、大変詳しく人間くさい科学者の姿が、ビッグバンモデル以降の宇宙論の発展にまで絡めて描かれているし、一般向け宇宙論全般解説書(読む人の主観にもよるろうが)でも、もう少し詳しく、さらに知的好奇心がかき立てられる書として「なぜビッグバンは起こったか」(早川書房)、「エレガントな宇宙」(草思社)、「宇宙 その始まりから終わりへ」(朝日新聞社)など、枚挙にいとまがない。各論(元素合成、星の進化など)の解説書に至っては言うまでもない。強いて言えば、ビッグバン宇宙論の提唱者としてルメートルがここまで詳しく取り上げられている点が目新しいぐらいか。今初めて「ビッグバンってなに?」と言う読者にはわかりやすいかなあという感じである。著者が著者だけに点数が辛くなるのは仕方ないか?

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火星への夢

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

いやー、面白かった。ここのところ、早川書房は、サイエンス関係で良い本をいくつも出している。「エレクトリックな科学革命」、ドーキンスの一連の著作、全部面白いのだが、旨く訳文と読み手としての僕の感性が一致するものは少ない(原文で読めばいいのだろうがなかなか難しい)。この本は訳文も良くこなれており、とても読みやすいことに好感が持てた。2004年に火星に着いた探査ローバー「スピリット」と「オポチュニティ」があげた大きな成果については日本でも多くのメディアが取り上げた。その映像にテレビにかじりついた人も多かったのではないだろうか。本書は火星探査計画「マーズ・エクスプレーション・ローバー計画」の研究代表者が著した、その立案から、火星探査までのサイエンスドキュメントである。あのようなミッションはNASAが最初の立案から最後まで計画を立ててやっているものだと思っていた。しかし、その実際は、日本人の僕たちが想像もできなかった一般公募であった。しかもそれが現実になるまでの気の遠くなるような道のり。火星は距離的にも(光でも10分もかかるのだ!)、夢の現実化への道のりとしても遙かに遠い星なのであった。夢の競争相手との熾烈なプレゼン争い、予算の制限、相次ぐトラブル、。火星に到着するまでの長い道のりと、到着してからの様々な問題。火星に夢を託す人々と、国家の威信をかけたNASAの姿勢。ここに記されいるのは、まさに自分たちの夢の実現にかけた人々の悪戦苦闘と至福の時間の物語である。日本でも是非こんな本を出してほしい。「かぐや」でも「はやぶさ」でも、いくらでも面白い本がかけるはずだ。そんな努力をしないと、なかなか社会の理解と感心は得られない。何年か前に日本のロケット打ち上げの失敗時に、多くのメディアがその損失金額だけを取り上げて避難めいた報道をした。そんなときこそ、「負けるな日本」、「頑張れ日本」とエールを送りたい。日本ももっと世論を得るための努力をすべきだろう。しかし、アメリカの底力は凄いなあ。

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研究のフロンティア

8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

20世紀、ローレンツ、ティンバーゲン、フリッシュらにより動物行動学が確立された。彼らは刷り込みや餌付けにより人に慣れた動物の行動を間近に観察することで多くの業績を上げ、その後の動物行動学の礎を築いた。猿に関しても今西錦司らを祖とする京都大学チームが自然、飼育下にある猿の行動をつぶさに観察、記録することにより大きな業績を上げた。その後、野生動物の行動を観察することとゲーム理論との比較によって多くの知見がもたらせられる。バイオテレメトリーの発達により対象は鳥類にまでも広がった。しかし、それはあくまで人間が直接観察できる世界に限られていた。魚類でも多くの行動観察をもとに様々な理論が作られたが、その多くは沿岸域の定着性の魚類に限られていた。海に住む多くの生物の生態は依然として、その大部分が謎なのである。考えてみればおかしな話だ。何万光年も離れた宇宙空間の様子が高精度の望遠鏡や観測装置でわかるようになり、それまでの惑星形成理論を覆すような太陽系外惑星の存在が明らかになる。宇宙という広大な空間から見れば塵のような惑星についてさえ仮説とそれに対する検証が行われる時代だというのに、大海原を生活にしている大部分の生き物たちについて観測をもとにした検証を行うことが難しい。海は宇宙という気の遠くなるような距離より厚いベールを人間に突きつける。本書はその謎を会間見ようとあがき続ける一研究者の、面白くもおかしい苦闘奮戦の記録の一部である。その行動を直接見ることができないウミガメやペンギン、アザラシに様々な記録装置(データロガー)を装着し、そのデータから彼らの行動の一端を明らかにしてゆく。本当に面白い。仮にペンギンの刷り込みに成功したとしても人間はペンギンと同様に深く潜り、早く泳ぐことはできない。各種記録装置によるデータ解析は隔靴掻痒の感はあるが、その隙間からみえてくる海洋生物の生態の多様さには、読者はみんな驚くべきである。また、アザラシの装着に関し日本の研究でも厳しい倫理委員会が設置されていることも一般啓蒙書としては始めた目にした。以前「死体に付く虫が犯人を告げる」で、厳しいアメリカの倫理規定に感心した身としては、南極のアザラシに対して行われた取り決めに、なぜかほっとしたのである。しかも、このハイテクが人間の日々の労力というローテクに支えられている現実。カミオカンデや、スバル、ゲノム、グレープなどのビッグプロジェクトだけでなく、このような、先にどのように使えるかわからない博物学的なデータを集めるという基礎研究にもなにがしかの予算が組み込まれていることはとても嬉しい。これが億単位ではなく数十億単位であったなら、日本もまだまだ捨てたもんじゃないと安堵できる気がするのだが。先端の研究は、それが基礎であれ応用であれ、理論であれ、実験であれすべてがフロンティアである。巻末の著者のおばあちゃんの意見もなかなか鋭い(どんな家庭だったのだろう?)。筆者の若い世代へのエールが行間から聞こえてくる好書である。難点をあげるとすれば題がやや長いか。著者の意気込みを買って「携帯圏外、ハイテク動物行動学」なんてどうだろう。これも長いかな?

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その次の進化

9人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

現代の進化論にとって、パラダイムシフトともいえる発見が少なくとも二つある。一つは恐竜絶滅に関与したと言われる隕石の衝突説であり、もう一つがこの本に述べられる地球凍結説である。どちらも異論はあるにせよ(異論があり得るというのは少なくとも健全な科学的思考であることの査証の一つとなる)、徐々にその様な事実(どれほどの規模であったかについて異論はあるが)が有ったことは受け入れられつつあると言っててよいだろう。いずれもダーウィンの自然淘汰説を超えるものではないにしろ、大きな視点の変更を迫った。それは生命進化は生命の持つ適者生存的な力だけでなく詰まるところ無機質(と思われてきた)な地球環境との密接なコラボレーションによって作り上げられたものであるということだ。最新の進化論に関して言えば、もう地球の惑星システムとの共進化の視点ははずせない(この点に関して言えば日本の研究はトップを走っている)。地球上で生まれた生命が地球という惑星全体のシステムに組み入れられることの自然さは考えるほどに納得せざるを得ない。隕石衝突説に関して言えば宇宙システムとのコラボレーションと呼んでも良いだろう。しかし、地球凍結にしろ、隕石衝突にせよ、なんと一般の想像力を超えた出来事であることか。現代の科学技術のすべてを持ってしても地球の大部分を凍結させることが即時に可能だろうか。しかもそれがちょっとしたバランスの崩れからくるものであろうとは。このような地球環境の激変(実際には長い時間が必要なのだが)が自然に起こることを考えると現在人類が地球に対して行っている勝手な振る舞いは何なのだろうと思う。もっともそれで人類が滅んでしまった後も、そのニッチを求めて新たな生物が進化を続けてゆくのであろうが。

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紙の本中島敦全集 別巻

2003/01/04 03:37

思い出

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

25年ぶりの出版となる「中島敦全集」。このような全集は出版されること自体に意味があり、内容その他について善し悪しを語るべきものではない。まして中島敦の作品と人については多くの優れた研究があるのでそちらに譲るとして、ここでは個人的な思い出を少し。
 高校の授業で「山月記」に触れた時の驚きは今でも忘れない。彼の他の作品が読みたくて本屋に行くが田舎の小さな本屋には残念ながらおいてなかった。学校の図書館で探したら筑摩書房から出ている日本文学全集の中に彼の名を見つけ早速借りてむさぼるように読んだ。やがて、同じ筑摩書房から「中島敦全集 全3巻」が出ていることを知った。1冊5000円前後。今から20年近く前の高校生にとって決して安い買い物ではない。少しずつ貯めた小遣いとお年玉でようやく第1巻を買った。寝床の中でも抱え込み、むさぼるように読んだ。嬉しかった(ちなみに今年、うちの長男に聞いてみたらお年玉の総額は3万円である。親は3千円しか与えてないのに。何を買うのかと聞いたらゲームソフトだそうだ)。大学に進み魚市場のアルバイトで金を貯め、3巻までそろえたのが20才の誕生日である。あれから何年たったのだろう。この3冊は今でも僕の青春の宝物である。新しく全集が出ると聞いて、町の図書館にリクエストを出したがなかなか購入してもらえず、意を決して、新全集を購入した。新発見のエッセイや書簡を含め、今まで知らなかった中島敦が私の目の前に広がってくる。別巻は前の全集にはなかったものだ。しかし、値段は各巻以前の1.5倍。別にお金に困っているわけではないのだが、少し寂しい。主な作品は文庫で入手しやすくなっているとはいえ、やはり、今の高校生にもたやすく手が出る値段ではない。今の時代にこれだけの全集が出版されることになったことに驚きを感じ得ないが、もう少し若い人たちが買えるような値段に出来なかったものか。中島敦は若者の文学だと思うからこその思いである。同時にこれぐらいの値段でないと採算割れしてしまうのであろう今の世を少し悲しく思うのである(この値段でも採算割れかもしれないが)。先日、久しぶりに母校を訪ねる機会があった。予感がして図書館に行ってみた。昔借りた日本文学全集がまだ書架にあったので開いてみたら、貸し出しカードは20年前のまま。未だに借りたのは僕一人であった。

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哲学は死なず

8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

どんな人間でも、年をとるにつれ、「時間」と「自己同一性」の問題について考える。しかし、現代物理学では「時間」と「空間」は区別することができず「時空」という、一つのまとまりとして考えなくてはならない。本書のユニークな点は、時空についてニュートン→アインシュタインとつながる物理学的枠組みでではなく、ライプニッツとニュートンの対立から始まる空間と時間に関する哲学的論考から見直すという、異色の内容となっている点である。ライプニッツの先見性はさておき、質点の関係から時空を捉えるという方法論が着実な成果を上げてきた点については目から鱗であった。先見性に関していえば、たとえばデモクリトスの原子論をいかに高く評価するかといった問題がある。おそらくライプニッツの先見性の高さがその後とぎれることなく続いた思考の流れを作った点で評価されるのだろう。決してライプニッツ自身が自分の後に続く思考の流れを予測していたとは思えない。そこの評価の仕方に筆者のひいきが出てくるのだろう。しかし、私が感じたおもしろさは何が正しいのかではなく、ものの考え方の根本を考える哲学のおもしろさである。現在に生きる私たちは哲学という言葉に対し時代遅れのレッテルをつい貼ってしまいがちである。しかし、どんな思考も現象を捉える視線の原点に関しての疑いをぬぐい去ることはできないのではあるまいか。その意味で時空問題は哲学の基本問題なのであろう。新書では惜しい。マッハについても電磁気学についてならまだしも、ふつうの教科書しか読んでない人にはその力学に関してはわかりにくい。「アインシュタインでも理解に2年かかった。」部分がほんの数行では消化不良もいいところである。単行本で300ページ以上でじっくりと論考したい

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題に偽りあり?

9人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

うーん、評価は分かれるところだろうが、僕はこの本を支持しない。だって、「今までの本と比べたら、詐欺と言っても良い内容だよ、高野さん。」と、言いたい人は多いのではないだろうか。文章は面白い。読んでいて笑ってしまう部分も多い。でも、この内容で文が面白くなかったら本当に腹を立てているだろう。せめて、副題の「インドへの道」を「遠かったインドへの道」と改めなさい。読者は題と、著者を見てその内容に期待を弾ませて本を手に取る。「幻獣ムベンベを追え」、「巨流アマゾンを遡れ」、「アヘン王国潜入期」など一連の著作を読んだ高野ファンなら、当然著者のインド現地でのウモッカ調査と原住民との交流、その過程での七転八倒の旅路を期待するでしょう?でも、そこまで行ってないんだもの。実際に海外での活動はリスクがつきものだろうし、私のような実際に行動してない者が言ってはいけないとは思うけど、だから期待しながら本を手に取るのです。自慰的内容と言われても仕方ないでしょう。たとえば「ワセダ三畳青春期」に胸躍る冒険談は期待しませんよ。題が題だから。もっと別のものを期待して読みます(そして期待通りでした)。でも、この題は違う。まあ「探検記」ではなく「格闘記」となってはいるのだが…。はたして、高野さんはこの本を出版したかったのだろうか。出版社から「なんか面白い話無いですか?」なんて言われ、無理矢理書かされたのではないだろうかと考えてしまう。決して面白くない本ではない(正直、面白いと思う)が、題と期待と内容との間に大きなギャップが有りすぎる。そのための失敗作。

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これからの楽しみ

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

新書の役割と何だろう。最新の知識をわかりやすく、廉価に提供することではあるまいか。そういた意味で本書はその役割を十分に果たしているといえるであろう。前半(ほぼ7割)については「宇宙はこうして始まりこう終わりを告げる(白揚社)」のダイジェスト版である。ただ、単なるダイジェストではない。非常にわかりやすく、また、「宇宙は…」で不満のあった最新宇宙論に関する日本人研究者の貢献分野も気持ちよく補ってくれている。むしろこちらを先に読んだ方が理解が早いだろう。後半のマグナム計画については痛快であると同時に研究者の直面する行政問題を浮き彫りにしてくれる。研究費の使い道を規制するより、あらかじめ使い道を明確に国民に示して、賛否を問えば、圧倒的賛同が得られるのではなかろうか。とにかく、研究者の心意気が心地よく伝わる1冊である。本書を手がかりに「宇宙は…(前出)」、「なぜ、ビッグバンは起こったか(早川)」、「エレガントな宇宙(草思社)」あたりを読めば、一般人が手に届く最新宇宙論は手にはいる。1冊の書物として不足に思えるのは、その辺の邦訳本の案内に関する不丁寧さだろうか。何年か先に筆者のマグナム計画のその後に関する本が出版される日を待ちたいと思った。

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厚いけど薄い

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

分厚い本だ。しかし、その内容から見ると本来は全6巻以上の本として出版されるべき内容だろう。これだけの内容をたった635ページ分にまとめた筆者の力量は並ではない。宇宙論から人類の起源まで手っ取り早く全体を眺めるには格好の著作である。しかし、ページ数ゆえの不満も多い。たとえば、第2部に関して言えば現在の地球科学を宇宙論や生命進化と結びつけダイナミックなシステムとしてみる視点が少ない。全体に本質よりも科学者のエピソードや社会的な見方に対するニヒリスティックなブラックユーモアに重きが置かれている点にも疑問が生じる。このような見方はもっと自分で深く勉強した後に判断を下すべきもので、生半可なかじり方(たとえばこの本を読んだだけで)で受け取ることは非常にまずいと思うのである。ある程度各論に精通した読者にとってもそれなりに新しい発見があることは素晴らしいと思うのだが、このページ数でそのような現象が起こることは、反面本論が軽視されている証拠でもある。翻訳に関して言えば、比較的わかりやすいのだが、生物名を漢字で表しているのはどうかと思う。科学的啓蒙書ではカタカナ表記が妥当であろう。また、原文の間違いかどうなのかは判断しかねるが、明らかな間違いもいくつかある。たとえば、素潜りによる世界記録の表記はどう考えても2倍しなければならない。これだけの内容を訳そうとするとかなりの下準備が必要だと思うが、もう少し慎重さが必要だったのではないか。巻末には索引も付いており、このような内容にほとんど今まで興味がなかった人には、とても面白く読みやすい内容の本だろう。親父に勧めてみたら「とても面白かった。」といっていた。変な言い方だが、「厚いけど薄い本」なのだ。

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無人島へ持っていく1冊の本

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 厚さ約1000ページ。価格4300円。思わず購入をためらうような外観である。
 しかし、これは2000年に発行された数多くの出版物の中でも、その内容の濃さ、面白さ、わかりやすさで群を抜く。だいたい、副題がおもしろい。「中学生からの全方位独学法」。そう、著者はこの本を、知的好奇心あふれる中高生のために書いた。行間には、若者たちへのほとばしるようなエールが満ちあふれている。数学(虚数)を通して、考えることの面白さ、大切さ、人生を正面から見つめることの大切さを説いているのだ。
 内容については、前3分の1痛快、次の3分の一大満足、最後の3分の一やや消化不良と言ったところか。前半のオイラーの公式が出るところまでは、かなりわかりやすく、しっかりと授業を受けている高校生であれば、十分ついてこれるであろう。この部分は、筆者の前著「オイラーの贈物」(名著!)でも取り上げられた部分であり、かなりよくこなれている。後半の調和振動子以降になると演算子法による微分方程式の変換が出てくる。これは慣れない人にはかなり分かりづらい。筆者はそこを何とかしようとバットによる打撃の解析など興味を引く内容を例に出しているが、それよりももう少し演算子の扱いそのものを例題で練習できるような内容があった方がよかったように思う。自分はもっと前のところの複素数のところでも、少し苦労した。なぜなら、自分が高校時代、複素数はやってなかったので、演習量が足りなかったのだ。この本は、この1冊での自己完結を目指している。とすれば、演習問題もほしかった。さらに、調和振動子からマクスウェルの方程式、量子力学へと話は進み最後は量子脳力学で締めくくられる。調和振動子から200ページほどでこれらの内容まで紹介するとなると、ちょっと無理があろう。従って最後の200ページは、理解よりはこれから先への動機付けと考えた方が無難である。筆者の気持ちもそれに近いように思う。
 毎日、少しづつ鉛筆をなめなめ、ノートをとりながらの読書は1ヶ月近くかかってしまった。しかし、それによって得た満足は、40才のおじさんさえ興奮させたのである。
 無人島に持っていくたった1冊の本の有力候補の一つである(ノートと鉛筆も必要)。オリジナルの挿絵やグラフを使う事により、価格をできるだけ押さえようとする姿勢も好感が持てる(出版した東海大学出版会も立派)。諸般の事情が許さないのだろうが、1500ページくらい書かせてあげたかった内容である。この内容でこの値段は絶対にお買い得。全国の中高生買うべし!

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もったいない

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

なんと言ったらいいのだろう。十分に面白い内容なのだが紙面不足である。内容的には東京大学出版会の「進化する地球システム」のダイジェスト版であるように思える。どちらがわかりやすいかと問えば「進化する…」の方がわかりやすい。これはページ数の制限による図版の不足からきていると思われるのだがどうだろうか。地球上の生命進化が地球の地学的進化とシンクロしてることはここ数年の岩波新書「地球進化論」やNHKブックス「生命と地球の共進化」などの関連書籍によってある程度浸透してきているといえるだろう。また、太陽系外惑星についてもNHKブックス「異形の惑星」や、「生命の星エウロパ」など優れた啓蒙書が存在する。そのような状況下で本書の果たす役割を考えると「さらに浅く広く」か、「もっと深く」のどちらかである。そういった意味で一般的には中途半端になっていると判断せざるを得ない。むしろ「地球温暖化問題」に対して筆者の考えるところを深く追求した方がよかったのではないだろうか。少なくとも11回に渡る講義をこのような手軽な形で出版しようとした集英社に文句を言いたい。単行本で出しなさい。そうしたらきっと100倍は面白い。

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紙の本機龍警察

2010/11/11 23:40

浅すぎる

7人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 何が書きたかったのかはっきりしない。というか、小説を書きたかったのかアニメを描きたかったのか?
 小説とアニメの決定的な違いは何だろうか。その一つは、イマジネーションの豊富さである。登場人物、メカ、場面、すべてにおいて読者独自のイマジネーションが豊富に何通りもわき上がることが小説の醍醐味だと思う。だから人と議論できるのだ。この小説はそのイマジネーションがわき上がってこない。人物しかり、メカしかり。メカに関して言えば、この程度のものは十分にアニメ化されている。固定概念の範疇をでない。人物についても、アニメのキャラクター的な掘り下げで終わっている。アニメがこれだけ豊富な世界を提供しうる現在、この程度のイマジネーション小説は余り意味がない。アニメ化したいならその意図はわかるが、改めてアニメ化するほどの新鮮さもないであろう。

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厳選素材、不思議の缶詰

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 面白い本だ。兵庫県三田市にある「兵庫県立人と自然の博物館」。平成4年に開設された比較的新しい博物館だが、従来の資料収集展示型だけでなく、職員全員が県立姫路工業大学のスタッフも兼ね、基礎研究から応用、教育、ジーンバンクまで精力的な活動を展開している。この本は、この博物館スタッフが、自分の研究分野からそれぞれ1、2編の興味深い自然科学の話を紹介したものだ。それも、ただ単に「どうです、面白いでしょう、不思議でしょう」といっているのではなく、教育現場や生涯学習の興味付けやきっかけになるような話が取りそろえられている。しかも、それぞれが決して入門、基礎的な話ばかりではなく、それらの分野に興味を持ち勉強している人たちが読んでも十分に「えっ、そうなんだ。」と思える最新の知見が盛り込まれている。一編に費やされる紙面は3400字程度。ページ数にして5ページ分くらい。これだけのスペースに「面白く」「わかりやすく」「最新の知見」と「興味付け」を盛り込むのは並大抵ではないだろう。何度も推敲や討論が重ねられたであろうことが想像される。館長の河合雅雄氏の舵取りも良かったのだろう。博物館の経営方針がそのままにじみ出ている良書である。個人的には、共生を巡る競争の話や疑問に思っていた羊歯の自家受精の問題に別方面からの光が当たったことが収穫であった。全編どこから読んでも良い。特に地元の小学校や中学校の先生方に是非読んでいただき、生徒達を連れて行っていただきたい。注文をつけるとすれば、興味を持った人のために、各編ごとの文献紹介やホームページ紹介があるとさらに教育現場でも使いやすくなっただろう。

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紙の本新世界より 上

2010/11/11 23:09

そんなに良いかな?

5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 飽きさせることはないけど、再読したいとは思わない。最終戦争後のイメージだったら「地球の長い午後」の方が強烈だし、そんなに簡単にDNA操作で訳のわからない怪物や人間のデバネズミ化ができあがるのか疑問でしょうがない。すべての一般人間がデバネズミにさせられるというのも、広い地球で可能かな?呪力は、超能力と言うことで納得はできるが、何も不自由な生活に戻ることもないでしょう。テクノロジーはテクノロジーとして使えばいいのだから。イメージとして一つの世界を作っているのはわかるが基本的にスペオペかジュブナイルレベルではないだろうか。他文化の呪力保持社会が同じ形になるとはとうてい思えないのだが…昔読んだ、夕映え作戦や時をかける少女、北北東に進路をとれのほうが子供だった分だけ素直に没入できた。そういえば、小学校の2年か1年で読んだ「地中怪生物マントラ」なんて、もっと凄いイメージがあったぞ。年はくいたくないものだ。

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紙の本黄金旅風

2010/11/12 00:01

この小説は凄い!

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

飯島氏の新刊を読む度に思う。なぜ、彼らはこのような人生を歩まざるを得なかったのだろうかと。
「飯島に間違いなし」の格言はこの小説にも確実に生きている。読んで損はない。国姓爺合戦…自分の父親から祖父の代までは明確に諳んじている。から始まり、やがて威信へ続くわずかな時代。その裏にあった歴史の細部に宿る弱い立場(少し語弊があるかもしれないが)の人々の姿を描き続けている作者の一つの到達点かもしれない。と言うのは、今までの作品と違い、読み終わったときの感動や爽快感があまりないのである。非常に興味深く、読んでいて面白いのだが最後に中途半端なやりきれなさが残る。これこそが歴史ではないだろうか。決して、英雄や悲劇のヒーローに祭りたてることもなく淡々としかし途中で止められないおもしろさを保ちながら物語は進んでいく。しかし、氏はどのようにこの時代をここまでいきいきとよみがえらせることができたのだろうか。氏の取材ノートを是非とも除いてみたい。

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