TGWさんのレビュー一覧
投稿者:TGW
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〈子ども〉のための哲学
2001/07/14 16:29
<哲学>に驚いてみませんか?
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テツガクというと、なんだか小難しい、高尚なガクモンのようにとらえられる。青白い顔をして眼鏡をかけた少し神経質そうな中年の男が、一人薄暗くカビ臭い研究室に閉じこもってすごく昔の人がいったよくわからないことに一人没頭している、そんなイメージがないだろうか。
一昔前『ソフィーの世界』なる哲学の入門書と称された小説が爆発的に売れたが、あれは先人が残したものを(しかもわかりやすいように歪めて)なぞってみせただけのものだ。正直なところ訳もそれほどよいとは言えず、何度も挑戦してはそのたび挫折する本だ。
その点、この本こそ本当の「哲学入門」にふさわしいといえる。この本は著者が自分が実際に考えたことをたどる「生きた哲学」にあふれている。哲学とは教室で先生から教わるものじゃない、疑問に思ったことにとことん真摯に付き合う態度のことだと教えてくれる。
大誘拐
2001/08/27 17:24
国内ミステリの傑作!
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推理作家協会賞を受賞した、国内ミステリの傑作です。こちらを読む前に、岡本喜八監督による映画を見ていてストーリーは知っていたのですが、それでも息をつかせぬ勢いで最後まで一気に読んでしまいました。キャラクターの個性が立っていて、奇想天外な構想を、実にうまい筆致で描き、最後にまたどんでん返しを食う。爽快な読後感を味わえます。ミステリという枠にとらわれず、読んで損のない面白い作品です。
私立T女子学園(Young jump comics 10巻セット
2001/08/17 17:32
かくも字の多い四駒漫画
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かなり普通じゃない、あまりにもそれぞれのキャラクターが立った(立ちすぎる)女子高生たちの4コママンガです。4コママンガというジャンルではいしいひさいちに次ぐおもしろさ、というわたしの一押しです。それにしても、こんなにも限られたスペースしかない一つ一つのコマに活字が詰まったマンガも珍しいのではないでしょうか。単行本では閑話休題として筆者の日常がマンガで描かれますが、こちらも作品と同等に笑えます。
新解さんの読み方
2001/06/08 12:42
SM嬢生涯1冊(?)の本
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話題になった『新解さんの謎』(赤瀬川原平・著/文藝春秋社)に登場するSM嬢こと鈴木マキコ女史による新解さんの読み方読本。『新解さんの謎』は「新解さん」の人間性にスポットをあてた怪書とも言うべき本でしたが、これは新しく5版が発行されるにあたってその改定の内容と解説が加えられていて、他の人には出来ないだろうという迫力があります。ただ面白いだけじゃないのがこの本のすごさ。そこにはSM嬢の苦労話などが盛り込まれ、まさに人生で一冊の本、的な気迫を感じます。
不夜城 (角川コミックス・エース)
2001/08/17 17:49
原作を読んでいませんが…
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かなり原作の雰囲気を捉えている感じが伝わります。
大体もとになる作品を、漫画化、映画化、小説化するときにはどこかしらに違和感が生じるもので、それは特にキャラクターのリアリティなどに如実に現れてくるものです。しかし山本氏が解説で、こんな作品が書きたかったというように、原作との波長が合うのか、キャラの個性が迫ってくる感じを受けます。
どことなく寂しい読後感。原作が読みたくなる、いいコミックです。
地底人の逆襲
2001/08/17 17:36
これぞいしい氏。
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いしいひさいちと言えばいまでは朝日新聞朝刊の連載4コマ漫画家として有名ですが、その昔はこんなナンセンスなマンガも書いていたのです。
とにかく一本調子。パターンは常に一緒で、地底人たちが地表を占拠しようとわれわれ地表人に戦いを挑む、というものですが、ひたすら執拗に繰り返されるパターンに、最初呆れていたものが、いつのまにか面白みを感じてしまうという不可思議な作品。ののちゃんが好きな方、こんなのはいかがでしょうか。
卒業式まで死にません 女子高生南条あやの日記
2001/07/14 16:47
それでは、あなたは「正常」なんですか?
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ここbk1で出会った良書です。
イチオシで以前紹介された本ですので細かい内容に関してはそちらをごらんいただきたいのですが、私にはこの本は「戦慄」でした。確かに文体は明るい。ものすごいことがさらりと書いてあったりする。でもそれであははと笑ったりできません。
こころの病気と呼ばれるものを抱える人が多くなってきた昨今、あるところではそれがひどく残酷な形で社会にあらわれ出てきたりもしています。しかし、その表層だけをとって、そうした精神病者たちを十把ひとからげに悪いものと決め付けることなんてできない。
この人も社会とのコミュニケーションのとり方を少し間違ってしまった。でもこの人のことを決して「異常」とみなすことができない自分に、なにか背筋の凍る思いがします。
センチメントの季節 7 (Big spirits comics special)
2001/06/29 17:36
あなたには、わかりますか?
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このテの週刊マンガ雑誌には面白い作品があるが、これはその中でもある意味で異色の存在。テーマは中学〜大学の、いわゆる青春期の性だ。単行本4巻まで1話完結だったが、5巻以降一冊一話となった。
とにかく登場人物の性格付けがリアルっぽいのだ。取り扱われるテーマのために敬遠なさる方もおられるかもしれないが、冷静に見つめてみるとこの作品(群)に登場するひとりひとりにそれぞれの個性がきらめいて(あるいは蠢いて)いる。世代ごとに作品の捉え方は分かれるだろうが、読む人の体験や思い出に直接にリンクすることはまず間違いない。
…だが、この巻で取り扱われる話は少し(私自身からは)遠かった。思わずうなるような感性を持ちながら実感からは離れている、という感じか。
青少年による凶悪犯罪などが横行しますますわからなくなってきた「最近の若いもの」たちを、理解する一助になるかもしれない。
赤瀬川原平の今月のタイトルマッチ
2001/06/15 13:47
路上観察者の、本の見方
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作家なのに本を読まない赤瀬川氏。作家なんだからと書評の仕事がよくくるが、読まないんだから書きようがない。編集者のあまりの熱意に、「タイトルだけで書くなら…」と言ったらそれが実現してしまいました。その月の新刊リストを見て、タイトルに興味のある3〜4点の本について、装丁・タイトル・ぱらぱらめくった感じで書評を書く。もちろん内容と関与しない書評(?)が多く、結果的にエッセイ調になっているのが面白い。でも振り返ってみてみると、ちゃんと書店でも売れたり話題になった本が多いのがオドロキです。さすが文豪、目の付け所がいい。
正体不明
2001/06/07 15:11
これが「おもしろさ」
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路上観察における著者の識見はいろいろな作品や対談などにちりばめられているけど、実際に集められた写真を集めて純粋にそれだけで本にしたというのはこれが初めてではなかったか。
白地の表紙に改装中の議事堂の写真を中央に据え、そのタイトルは『正体不明』。『今月のタイトルマッチ』の対談では「ちょっと作りすぎた」と語っているが、本を手に取った瞬間からすでに読者を食った感じがする。もちろんよい意味で。
要するに、著者の路上観察の集大成なのだ。町にある、何気ないモノのおもしろさ。それは「うわあ」とか、「すごい!」とか、そういう感覚とは離れた、しみじみとした、日本人独特の感覚。
休日にでも、カメラを持って町を歩きたくなる、そんな本です。
攻殻機動隊 2 Star seed
2001/08/17 17:43
何か違う…
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そもそもキャラクターが原作と違うのです。前作でも気になったのですが、素子があまりにも軽率で、必ずトラブルに巻き込まれます。いくら人間臭いといってもフチコマは冒険好きだし、今作ではバトーがクールさを欠いている。
もうひとつ納得がいかないのが全体の筆致です。どんな社会的不条理もあっさりと欠くことで暗さを逃れている原作ですが、このノベライズではべたべたの真っ暗。
原作を好まれる読者の方には違和感を禁じえない作品ではないでしょうか。
わたしが・棄てた・女
2001/07/23 15:53
いまこそ読まれるべき
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評価云々の問題ではありません。ハンセン病訴訟に一通りの決着がついても、新たなニュースに目を転じる前にまずこの作品を読んでみてはいかがでしょうか。この作品のメインテーマは直接的にはハンセン病問題ではないのですが、作品を通じて、実際の隔離政策というものがいかなるものだったかを知るてだてとなります。個人的には内容に少し時代差を感じる面があり、どこか不十分な感じを抱きましたが、この人の作品に通じる社会問題への目はいまの作家に少なくなってきたのではないでしょうか。
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