神田川大助さんのレビュー一覧
投稿者:神田川大助
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巴
2001/06/12 23:40
夢なら醒めるな
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「形而上学的推理小説」という帯の文字。男だか女だか分からないけれど、妙にエロチックな何かに唇を寄せている人物のカバー。エピグラフにニーチェの洒落た言葉。これは、絶対に何かあると思って手に入れて読んだ。
果たして直感ははずれていなかった。主人公は、松浦寿輝ファンには、おなじみ(?)の落ちぶれたやる気があるのかないのか分からない中年男。彼が、朋絵という少女と会ってのち、彼女のことが気になって頭がいっぱいになるのだけれど、そんな気持ちのまま、じつに怪奇な体験をしていくのだ。
前半は、松浦氏の息の長いじつに生々しいエロチックな文体で、実際にエロチックな場面が描かれ、これは夢か幻か、もし夢から永遠に醒めないでほしいと思ったほどのエロスである。これほどのエロスは珍しい。バタイユもびっくりだ。叶姉妹も、このエロスに比べれば、子供のようなものだ。
時代は何か昭和のはじめのようでもあり、大正のようでもある。でも、実際は90年代のようだ。探偵役のような主人公は、文京区の根津から台東区の日本堤までなんかは平気の兵左。人間何か困ったことがあるとき、歩くことはあろう。しかし、ここまでは歩かない。。
昔、女に振られたとき、人はよく歩くものだ。西荻窪から高円寺までとか。中野から四ッ谷とか、どこからどこまでというのは人それぞれだろうけれど。
脱線してしまった。物語はそうこうしていくうちに進行して、新興宗教めいた時間論を語る老人とか(最初はいかがわしいが、そのいかがわしさがだんだんと格好良くなる)、とにかく登場人物が、存在感を発揮しはじめる。人でなしというか、やくざな人物(女性も含めて)が多くあこがれを抱かざるを得ない。
最後になって、突然、文体が変わって、ハードボイルド調になるのもかっこよすぎる。登場人物は、東京を舞台に、ある意外な乗り物で追いかけ逃げ切ろうとするのだが、それはいまは言わずにいこう。
エンターテインメント的な物語を堪能でき、ついでにちょっと哲学的なことを考え、エロスの偉大さを確認できた小説だった。
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