稲葉誠二さんのレビュー一覧
投稿者:稲葉誠二
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モーニング娘。5+3−1
2001/07/06 19:31
モーニング娘。であるということ
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本書はモーニング娘。誕生の経緯から、メンバー最初の脱退者である福田明日香の最後のライブまでの歩みを、彼女達の出身番組である『ASAYAN』のスタッフの目から記したドキュメンタリー本で、活字媒体ではいまだにモーニング娘。を知るための最も重要な資料である。どれくらい重要かというと、モーニング娘。の増員オーディションに合格し晴れてメンバーになると、まず真っ先にモーニング娘。のCDと共にこの本が渡されるくらいだ。モーニング娘。のメンバーでさえモーニング娘。とはどういうグループであるかという事をこの本から学ぶ。
では彼女達が学ぶ「モーニング娘。であること」とは一体どうあることなんだろうか。モーニング娘。とはどのようなグループなんだろうか。ここで私が期待している答えは音楽やダンスの話ではない。また、よくモーニング娘。の「特徴」として話される、メンバーの増員のことでもない。これらのことはどれもモーニング娘。について語っているようでいて、実はプロデューサーや事務所の戦略の事を話しているに過ぎない。でもだからといって一人一人のメンバーがどういう性格をしている子なのか、という話でもない。あくまで「モーニング娘。」というグループについての話だ。それはどういうことか? この本によるとモーニング娘。のメンバーになることとは、例えばこんなことだ。
「ファンと握手をすること」
「誰にも似ないこと」
「競うこと、負けないこと」
「何かを捨てること」
ファンと握手をする事はモーニング娘。がずっと大切にしてきている活動で、原点は五万人のファンと握手をしながら課題のインディーズ・シングル五万枚を全て手売りし、ファンのおかげでメジャーデビューさせてもらえたというところにある。最後の「何かを捨てる」というのは、恥を捨ててあの変な踊りを踊るという意味もある。でももっと広い意味も含んでいて、グループのために恋愛も、時によっては歌以外のことへの興味すらも捨てなければならないという意味がある。なぜなら全てを捨てて打ちこんでいるメンバーとは、同じように全てを捨てないと対等に競い合うことが出来ないし、対等に競え合えるレベルに達しない事はグループの足を引っ張る事にもなるからだ。このような場合、競争の激しさは天井知らずに上がる事になる。これは非常に厳しい。そしてたぶんこの厳しさはメンバーの成長の早さと、そして恐らくメンバーとしての寿命の短さにも関係している。そう。モーニング娘。にはメンバーが定着しない。
この本の評価は満点から一点差し引いて四つ星。なぜ一点差し引くかというと、作りがあくまでテレビ的過ぎるからで、例えば本書ではモーニング娘。のメンバー増員はテレビ通りつんくが思いついた事になっているがこれはテレビの演出で、今では元々はモーニング娘。所属の事務所アップフロントエージェンシーの社長・山崎直樹のアイデアで、最初からモーニング娘。は十人でやる予定であった事が明らかになっている(『サイゾー』2000.10月号)。それにASAYANのスタッフがいなかったのかもしれないが、何故か横浜アリーナのデビューイベントについての記述がない。このデビューイベント、一万人入るアリーナに最後の回には五人しか客が来ず、オリジナルメンバーは自分達と同じ数の客の前で歌うという悔しい思いを経験をしている。この事がモーニング娘。初期メンバー五人の「売れる事」に対するこだわりを形成しているので、本来ははずせないエピソードだと思う。
だが星の数に関係なく、この本が唯一無二の必読資料であることに変わりはない。これを読めばモーニング娘。がモーニング娘。になるために、何をやってきたか、あるいは何をやらなければならなかったのかが分かる。
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