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風に吹かれてさんのレビュー一覧

投稿者:風に吹かれて

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大学病院に家族を奪われるということ

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最近、ようやく明るみに出始めた「医療ミス」の現状に切り込んだ一冊。不幸にも医療ミスで家族を失った遺族や、過労死に至った研修医の遺族、病院の現状に立ち向かうことを選んだ果敢な医師たちを取材しまとめたドキュメンタリーである。最先端の技術の裏側にある、大学病院の封建的な体制と、ずさんな労働環境、被害遺族への怠惰で非情な対応を浮き彫りにしている。
大学病院の絶対的な組織「医局」では、研究として成果を修めた医師が評価され、出世するという体制がある。だから医局に入った医師は、「患者のための医療」よりも「研究のための医療」を優先し、無謀な手術や、成功例の少ない診療をまるで人体実験をするように行っている…。それが大学病院の実体である。

出世のため、金のために、良心に逆らう仕事をする人というのは、企業ドラマではよく見かけるし実際にいるのもわかる。けれども、それが「命」を扱う医療で行われるというのは本当に許しがたい。まして重症患者やその家族は無力で、それこそすがるように医師を頼るのである。なのに、運び込まれた病院でずさんな治療や手術を施され、その挙句、取り返しのつかない後遺症を負うことがあり、最悪の場合は命を失ってしまう。
こうした医療ミスの背景には、研修の不整備もある。名目上は、医学部を出たばかりの新米医師は「研修医」として、ベテラン医師の指導下のもと診療にあたることになっている。しかし、実際は医師の不足などを理由に深夜の当直はもちろん通常の診療でも、経験の乏しい研修医のみが行うということが多々あるというのだ。研修医はまともな研修を受けていないばかりか、週100時間を超える労働を強いられており、睡眠もほとんど取れない。そうした状態で大学の命令のままに重態の患者を受け入れなければならないのだ。事故が起こらない方がおかしい。
医局の人事制度、国の研修予算、研修のあり方、医療ミスはそうした要因がいくつも重なって起こるものなのだと著者は指摘する。その詳細な経緯が、医師や遺族たちの発言によって、本書ではかなり具体的に書かれているので是非読んで欲しい。
そして著者は、医療ミスを防ぎ「患者のための医療」を行うためには、病院や医師のあり方を改めることはもちろん、患者や家族が、より積極的に医療に参加することだと主張する。病院任せの医療では、まともな診療を得られないという警鐘である。
取材は患者や遺族の立場からだけではなく、医療の現場からも行われている。その中で「平成のブラックジャック」として登場するある心臓外科医。彼の仕事への姿勢には胸を打たれるし、医療に希望を見出すことができるように思った。
他人事ではない医療問題。今、そこで何が起こっているのかを知ることから医療に参加していくべきだと心から思った。

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