ファッハさんのレビュー一覧
投稿者:ファッハ
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紙の本人のセックスを笑うな
2005/01/07 22:03
葛藤はどこに?
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これは恋愛小説である。本の帯にもそう書いてある。人を好きになって、寝て、一緒に過ごして、そして別れる。よくある話ではあるが、大なり小なり、恋愛なんて定型化すれば陳腐な出来事に違いない。
にもかかわらず、恋愛は文学の、映画の、ひいては芸術におけるテーマの最大の関心ごとのひとつである。多くの作家や芸術家が恋愛をテーマとして作品を創造しうる、あるいは表現せざるをえない衝動に駆られるのは、個々の恋愛におけるほとんど無限に近い特異性・多様性の故ではないだろうか? 作品の読者や鑑賞者は、個々の物語の要素に感情移入しうるものを見出すことによって、その作品を評価する。最大公約数的な要素が大きければ多くの読者に高く評価されるだろうし、一部の者にしか理解できない価値観を前面に出した作品は、やはり一部の者にしか評価されないだろう。
もちろん、多数者に評価される作品が優れ、少数者にしかアピールしない作品が劣っているなどと言うつもりは毛頭ない。芸術としての価値は量的な評価によって決まるものではないと信じているからだ。作家や芸術家がその作品に与えた特異性の意図を読み取ることこそ、読書や芸術鑑賞の醍醐味ではないかと信じているからだ。
そして39歳の女性と19歳の青年、実に年齢差20歳の恋愛小説である。いかに年下男との恋愛や結婚が増えているとはいえ、20歳の年齢差は世間一般的にみてまだまだ特異な恋愛関係だろう。
にもかかわらず、この作品で描かれている恋愛模様は、どこにでもありそうなごく普通の恋愛だ。誰かを好きになる、一緒に食事して結ばれ、そして別れる…ごくありふれた恋愛関係。
別にリアリズムを求めたいわけではないのだが、20歳の年齢差を意識した葛藤がほとんど感じられないのはどういうわけだろうか? かといってハードボイルドな恋愛を書きたかったのでもなさそうだし…?
あるいは旧弊な葛藤を描かないのが、新しいのか?
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