サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

  1. hontoトップ
  2. レビュー
  3. KAZUさんのレビュー一覧

KAZUさんのレビュー一覧

投稿者:KAZU

74 件中 16 件~ 30 件を表示

紙の本

紙の本博士の愛した数式

2004/10/15 21:31

完全数28のひみつ

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

最近、姫野カオルコ著「ツ、イ、ラ、ク」の書評で僕は、「理系的例え話による「左脳」使用の強要により、折角の「右脳」刺激による感情の高まりを阻止される代償は大きいと言わざるを得ない。」と書いた。そしてその舌の根も乾かないうちに、180度逆の感想をこの「博士の愛した数式」で述べることとなるとは…

僕のbk1での「肩書き」は偶然にも「書評の鉄人28号」である。オーストラリアの大学で研究員をしている博士なので、bk1の方は僕に科学技術関連書籍の書評をしてもらいたくて、「鉄人28号」に任命(?)してくれたのかもしれない。そんな期待を僕は裏切って、恋愛小説だとか、経済関係の書評ばかりしている。それはともかく、僕の誕生日は5月28日。28という数字の素数は、1、2、4、7、14の5つ。5月28日とは凄い日に生まれたものだと自分でも感心している。その素数を全て足すと、1+2+4+7+14=28。そう自己完結しているこの数字を「完全数」と呼ぶのである。

語り手でもあり、主人公でもある家政婦の年齢も28。そして博士の愛した(?)江夏投手の背番号も。事故で記憶が80分しか持たない元数学者と、理数系とは縁遠い家政婦とその息子の心の動きは、博士の繰り返す数学の美しさへの感動を媒体として、見事な小説になっている。自然対数「e」は確かに、今僕の仕事の上でも、実験結果を表現する数式にいつも入っている。自然現象と数学の美しさを改めて感じ取れた。大学時代は「あの忌まわしい数式。テイラー展開、オイラーの公式、複素関数、フーリエ級数、量子力学、縮退…」僕もこの博士に人生の早いうちに出会っていたら、もっともっと自然現象を美しく、そして楽しく、現在の仕事に打ち込めていたかもしれない…

などと考えながらも、読み終えるころには涙で眼がにじんでしまったのである。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本理科系の作文技術

2003/05/12 23:53

研究者としてやっていくノウハウの全て

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

作文が苦手な理科系の方は意外に多いように思う。それは、普段の実験で実践している思考方法、ロジスティックな頭の中身を文章にするときに、ついつい見せかけを良くしようという下心が芽生え、文学的表現を試みるために起こる悲劇だと思う。何の事はない、普段の思考をそのまま簡単に、わかりやすく、着飾らない言葉で短く表現すれば、それが最上の作文になるのである。

研究者の文章作成のノウハウ本としてはバイブルと言われている本書を、私自身は職業研究者になってのちに読んだ。大学卒業後2年してからのことである。その後、本書は文字通り私にとっての文書作成のバイブルとなった。大学時代に読んでおけばよかった、願わくば授業で本書を使った「理科系の作文技術」なる講義があればよかったのに、とずっと感じている。

本書に足りないもの。それはインターネットに関連した事項、たとえば、e-mailやPowerPointを利用したプレゼンの仕方の類である。しかし、その基礎となる事項はすでに本書の中に、手紙の書き方や学会講演の要領として詳しく書かれており、それを現代風に応用すれば済むことである。

まさにこの一冊で、職業研究者としてやっていくノウハウの全て −研究立案から論文発表まで− を得ることが出来る。1981年に出版された噂のバイブルはその版を重ねて現在も出版されている。その事実が本書が「本物」であることの証明となると思う。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本「原発」革命

2002/11/24 14:16

理想の原発と現実社会のギャップ

4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

数年前まで原子力の研究という世界にいた私には、大学時代の講義や研究職時代を思い出しながら、非常に面白く、そしてかなり感動しながら本書を読むことが出来た。個人的には本書で紹介されている米国オークリッジにも行き、シーボルグ博士にも直接お会いして、かなり身近な内容であった。

技術的には著者の仰る通り、色々な意味でかなり理想的な原子炉であると思う。著者も指摘されておられるように、燃料となるトリウム製造過程でU233から発せられるガンマー線がかなり問題になることであろう(しかし、テロ防止には役立つとのことで、その点が全くネガティブだというわけではなさそうである)。私自身は、固体核燃料の照射損傷の研究をずっとやってきたのであるが、その研究動機の根底から見直す、つまり液体燃料にするという発想そのものは私の頭の中にはなかった。その点は非常に新鮮に感じた。

技術的な一番大きな問題点は、燃料の液体そのものが熱交換器まで巡回することであろう。確かに交換器の部分の圧力差や熱応力、腐食などは、軽水炉と比べれば問題ないのであろうが、それでも初期欠陥が熱交換器(複雑な細管)にあると核分裂生成物(燃料)が直に二次冷却側に漏れ、さらに蒸気タービンまで到達してしまう危険性は大である。

著者は20年で実証できると考えて居られるようであるが、その根拠が薄弱なように感じた。また、50〜70年で太陽光等のエネルギーへ移行するとの根拠も本書からはあまり汲み取れなかった。その点は本書でキーとなる重要事項だと思う。もし実証に30年かかり、太陽光へ40年程度で移行できるとすると、この原発を開発するよりは、現在の世界中に400基以上ある軽水炉をより安全に運転して直接太陽光の方へ移行したほうが良いと思うからである。

著者は、現行軽水炉の技術も確保しつつ、熔融塩炉も開発し、さらに同時に太陽光などの新エネルギーにも注力するのが良いとのこと。「なぜそんなに良いとされる熔融塩炉がいままで開発されなかったのか?」との疑問に答えておられるが、すでに世界中で400基以上の軽水炉が運転されている現在、もうその疑問に答えられても、歴史は戻せない(とき既に遅し)と感じる。

良い悪いは別とすれば、現行軽水炉は「英語」のようなもので、熔融塩炉は「エスペラント」のような例えができるのではないだろうか。確かにエスペラントの方が優れており理想であるが、現実社会はとにかく「英語」で動いている。なぜ素晴らしいエスペラントが普及せずに、欠陥だらけの英語が普及したのか、の理由に答えられても、とき既に遅し。完璧な自動翻訳装置が完成するまでは「英語」を使用するしか手はない…そんな気分である。

著者の言う「人材こそ技術」というのは、全くその通りだと思うが、現行の軽水炉の技術でさえ維持するのがかなり怪しくなっている昨今(それはマスコミや原子力反対派の方々にかなり責任があると思っているが)、「つなぎ役としての」熔融塩炉に「人のやる気を起こさせる」夢や希望を与えることができるのか…私は原子力の研究をやめてしまったが、この本を読んで感動こそすれ、今から原子力の研究に戻ろうとは思えない。日本の大学の原子力工学科はほとんど全て消滅してしまっている。原子力を専攻する学生が激減し、しかも優秀な学生も集まらない状態を改善するだけで10年は簡単に吹っ飛んでしまう現実。理想が理想だけで終ってしまわないようにするには、一般人のドラスティックな意識改革に着手しなければならない。私には本書からはそのエネルギーを感じることができなかったのは残念である。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本オーストラリア楽農パラダイス

2013/02/12 20:23

パーマカルチャーって?

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

著者のリック・タナカ氏は得体の知れない方だと思っていた。あの「日本軍捕虜収容所の日々 オーストラリア兵士たちの証言」を翻訳した堅い方かと思いきや、おちゃらけオーストラリア文化(?)を紹介した「おもしろ大陸オーストラリア コアラの経済学から宇宙基地まで」の著者でもある。そんな謎の人物、リック・タナカ氏の正体が、本書によって暴かれる。

リック・タナカ氏はパーマカルチャー思想に共感し、シドニーから西へ行った国立公園近辺の町、カトゥーンバにてパーマカルチャーな生活を開始する。

持続可能社会を目指した「パーマカルチャー」は、1970年代、当時タスマニア大学で教鞭をとっていた、ビル・モリソン氏およびその学生のディビット・ホルムグレン氏により体系付けられ、世界的ムーブメントとして今日にいたる。日本語にも翻訳されている「パーマカルチャー」はどちらかというとモリソン氏とホルムグレン氏の思想を反映した「教科書」であるのに対し、本書では、それら大御所へのインタビューを通して、易しくその体系が理解できる内容となっている。

僕自身は、パーマカルチャーのコロニーで有名なクイーンズランド州のマレーニでエミュー農場を経営しているトンプソン氏と友人となり、「エミューオイル」の日本への販売、パーマカルチャー思想を反映してティーツリーオイルを育てるティルトマン氏とも友人となり、「ティーツリーオイルおよびレモンマートルオイル」の日本への販売を開始した。

パーマカルチャー思想の優れた点は、決して現代技術を否定することなく、むしろ持続可能社会の実現に向けて積極的に現代科学を応用している点にある。オーストラリア発祥のパーマカルチャー思想が世界中、特に日本へと広がることを願っている。その導入編としての本書の役割は重要であると感じている。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

ニュージーランドに住んでみよう

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

今や硬派山岳系出版社「ヤマケイ」の定番書籍(?)となりつつある、「海外極楽暮らし方シリーズ]
のニュージーランド版。著者は、あの『巨大鱒に魅入られてニュージーランド暮らし』の斉藤完治氏。

著者の斉藤氏はニュージーランドで暮らし始めて18年。ニュージーランドの光と影、表と裏を知り尽くした自由人である。そんな氏の生活体験(ライフスタイル)に基づいた智恵とセンス、そして豊富な生活情報は、ニュージーランドで生活したいと願う人々の心をガッシリと掴むに違いない。

実は私自身オーストラリアに移住する時の移住候補先で、ニュージーランドも視野に入れていた。連れ合いが寒いところが嫌い。そのため、「年に数ヶ月、鱒釣り三昧の休暇をニュージーランドで過ごす」ことを、亜熱帯・オーストラリア・ブリスベン移住後の目標として、現在に至る。本書により、その想いはますます強くなった。恐らく本書の出現は、ニュージーランドへの海外移住だけではなく、リタイヤ後やワーキングホリディ、あるいは留学による長期滞在の方々への影響と言う意味で「エポックメーキング」となるであろう。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

旧世界の勢力とは、あ・な・た・自身である

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

大前研一氏の著作の集大成「The Invisible Continent(見えない大陸)」の日本語訳バージョン。旧世界の経済に加え、ボーダレス経済、サイバー経済、そしてマルチプル経済の4つの経済がどう関連しているのか、そしてその将来とは…

その英語版を現在勤めるオーストラリアの大学内書店で見つけて購読した。それに比べると日本語版はやや日本の事例を多めに用いているようであり、「訳本」でありながら、読みやすいように思う。本書は、大前氏の政治経済理論の根幹をなすものであり、そこから「生活者主権」「道州制」など、大前氏の提唱する未来像が克明に浮かび上がってくる。

本書を読んだ後、個々人はどういう行動をすればよいのか? そこで読者の「価値」(本書の価値ではない)が試されているように思う。ちなみに僕自身はウエブショップを始めてみた…これは、理論が具体的に実践できるかどうかの実験でもあり、本書に書かれた内容を100%意識して起業したものである。

それはさておき、ここオーストラリアでもIT関係の職(特にコールセンター業務)はインドへとどんどんシフトしている。一次産品の輸出に関しても、ご多分に漏れず中国に押されっぱなしである。ボーダレス経済への準備とサイバー経済への準備を論じた本書の内容からすれば当然予期できた事象であり、上記4つの経済の動きをもっと良く把握していれば…とオーストラリア政府の対応のあり方が悔やまれる。残念ながら新世界(見えない大陸)への日本の対応は、「悔やまれる」レベルにさえも到達しておらず「悲惨」の域に入っているようである。

「もうこれまでに十分学んできたのだから、これ以上勉強はしたくない。(中略)それよりも、景気が回復し、あるいは、今後も繁栄を続け、職を失うようなことがないように」。そう少しでも思っている方、打倒すべき抵抗勢力は、自分自身の中にあるということをまず認識する必要がある。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

戦略が意味するものは

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

現在日本や世界で繁栄している「日本企業」の創業者やリーダーで、本書を読んでいない、あるいは本書に影響を受けていない方はいないのではないかと思う。それだけ本書の登場は衝撃的であり、かつその後の経営に関するパラダイムシフトを起こした本は無いのではなかろうか。

大前氏は、近著「新・資本論」の中で、ビルゲイツが登場する前後で経済原理が変わったと主張する。つまり1985年を境にB.G.(Before Gates) A.G. (After Gates)として四つの相互リンクした経済社会が出現したとの考えを我々に示してくれた。また、企業参謀で示した4つのCの定義も不可能になったとの見解も示している。

本著は、大前氏の言うB.G.時代に書かれた物であるが、その内容は既に現在の経済社会の根本原理を突いている。そのため、事例そのものは20年の年代を感じさせるものの、ものの考え方は現在でも新鮮であり、オリジナリティの面では輝きを保っている。

本来は科学技術者であった大前氏は、左脳による戦略的思考と右脳による感覚的思考を見事に調和させているのである。前者は西欧的アプローチであり、後者は東洋的アプローチとして、その片方だけでは本著を始めとする大前氏の発想は生れなかったのであろう。特に日本人の経営者にとって苦手な前者(戦略的思考)と前者と後者の橋渡しについての考え方は、身の毛がよだつほどの凄さを感じるのである。

今回、「企業参謀」と「続・企業参謀」を合わせて再出版された本書は、時代を超えて現在の経営者予備軍の方々にも多大なる影響を及ぼすものと思う。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

今年最後の書評は、【人生あみだくじ】

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

今年最後を締めくくる書評は、大ファンである村山由佳さんのエッセー、「晴れときどき猫背」である。
ここオーストラリアで真夏の年越しを迎えるのも、これで7回目。そしてタイムリーなことに、僕らも都会(?)ブリスベンからサンシャインコーストの田舎への引越しを真剣に考えているのである。
村山さんの人生哲学というか、生き方。それはご自身で「人生あみだくじ」だと表現されているが・・・やはり人生、ある時期に決断をする必要があるということ。僕も強く同意する。「自分が本当にやりたいことをやって、素敵に生きて、そうして死ねたらいいね。笑わずにはおられない日々。」ということである。
僕も来年は田舎への引越しも含めて、楽しく決断して行こうと思っている。
ところで、村山さんの連れ合いさんのM氏との掛け合い。これは、まさしく(おいしいコーヒーのいれ方の)勝利と丈の掛け合いを彷彿とさせる。ということは、猫たちは「かれん」なのだろうか・・・
いづれにしても、村山由佳さん、今年は貴方の著作を楽しませてもらいました。ほんとうに感謝しています。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本すべての雲は銀の… 下

2004/05/07 12:26

じわじわと溢れ出る、涙そして希望

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

今、ボーっとしている。それは、昨日の上巻に引き続き本書を今朝の5時までベットの中で読んでいたためかもしれないし、小説の余韻に浸っている状態が継続しているためかもしれない。

上巻で助走をつけた物語は、下巻でいっきに、しかし静かに力強くクライマックスを迎える。主人公自身の問題にかかわるストーリー、特に(評判の?)「濡れ場」は凄い。恋愛小説にありがちなフワフワした描写は一切なく、もう精神の中核に深く刻み込まれるような交わり。やはり今の僕がボーっとしているのはこの部分のためかもしれない。

メインストーリに付随しているサイドストーリーも、完全に物語の幹に喰い込んでいる。どのサイドストーリーが欠けても本物語はここまで素晴らしくならなかったであろうと思う。登校拒否している小学生の女の子と母親のやり取りの場面では、涙がじわじわとあふれ出てくるし、花屋の女性たちの苦悩もひしひしと心にしみる。

ペンションのオーナーのパーマカルチャーな思考と行動は、実は僕の連れ合いの考えとほぼ同一であるし、長野弁は(僕の連れ合いも数年間長野で住み込みのアルバイトをしていたことで)ほほえましく、なんだか懐かしい。

装丁。上巻と下巻を見比べてみた。上巻では主人公が一人ぼっちで広っぱの端っこにぽつんと座っている。下巻は、子供を含めた数人と一緒。本書は、装丁・内容・解説、すべてにおいてほんとによくできている。じわじわと溢れ出る涙の後に、その涙の水分を吸収して希望の種が発芽する。そんな気持ちを僕に与えてくれる。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本すべての雲は銀の… 上

2004/05/06 21:55

すべての感動本は解説者の…

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

昨日、bk1にSAL便で注文していた本書が、注文から二週間してオーストラリアの僕の職場に届いた。文庫本をSAL便でbk1から購入した理由は、文庫本は単行本に比べて軽く送料が安いこと、そしてオンライン書店でbk1のみ送料実費、という経済的な理由も、もちろんある。しかし、それにもまして重要な理由は、海外在住なので本屋で立ち読みが不可能であり、本を購入するかどうかの判断がネット上でしかできないことにもある。注文した本が「ハズレ」のときのショックをなるべく受けたくないし、「文庫本」というある程度評価の定まった本だと「ハズレ」の確率はぐっと低くなることを経験上知っているからである。

そして、さらなる楽しみは、文庫本の巻末には解説がついていることにもある。それにしても、僕が感動した文庫本の解説はかなりの確率で、「北上次郎」氏のものであるのは何故だろう? 今までも、森巣博著「無境界の人」、真保裕一著「奇跡の人」、文庫本ではないが、姫野カオルコ著「ツ、イ、ラ、ク」の帯。僕の感動の行く先々に北上次郎(目黒考二氏)が待ち受けているのである。

本書「すべての雲は銀の…」上巻。待ちに待った村山由佳さんの本。僕は我慢できずに昨夜、明け方までじっくり村山さんの作り出す物語のキャラクターの言動を噛締めるように味わい、上巻を読み終えた。ああ、ほんとに良い小説だ。でも僕は「村山由佳という作家のいい読者ではない。もう作家活動は10年近い方なのに、いまさらその真価に気がつくのは遅すぎるけど、これほど素晴らしい小説を書く作家の作品を読んでこなかったことを深く反省する。」と思った。

そして、今晩いまから下巻を読む予定である。解説は下巻にのみ記載されているのであるが、解説者はやはり「北上次郎」である!(まあ、帯に氏の名前が挙がっていたので、当然予測していたが) そこで、ちょっとフライングして、下巻の解説を読んでしまった。

そして僕の眼は点になった…北上次郎氏は解説で、こう書いている。「正直に書くと私は、村山由佳という作家のいい読者ではない。…いまさらその真価に気がつくのは遅すぎるけど…」

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本博多学

2003/10/20 11:18

道州制のさきがけとして

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ここまで褒め上げてよいものであろうか! 福岡で生まれ育った私としてはかなりくすぐったい内容の本書である。熱しやすく冷めやすい、そして異文化に対しての包容力がある(?)、そんな私自身の性格を、博多の歴史や風俗から解明してくれた本書を、新鮮な驚きをもって読むことができた。

私は現在、オーストラリアのクイーンズランド州、ブリスベンにて生活している。ブリスベンの人口も福岡と同じ100万人強。しかも熱い、独立色の強い州の州都である。多くの移民で成り立つ都市であり、そこに住む人々は熱しやすく冷めやすい。そしてビジネス上でもいい加減(?)。そう、外国であるにもかかわらず、私自身はまるで福岡に住んでいるような錯覚を起こすのである。その住み心地は、福岡同様、快適そのものである(他州からの移住により、人口も増加している)。

さて、話を福岡に戻す。今後日本が歩むであろう道州制が施行された場合、福岡は九州「州」の首都として繁栄するであろうと確信される。そこには東京一極集中ではなしえない、アジアとのつながり、そして九州独自の独立した生活観、文化観の確立が約束されているように思う。GDPで見た経済力も九州は韓国とオーストラリアと同規模である。

地方分権ではなく、いっきに道州制による独自文化と経済の舵取りを行うための、その参考書としての本書の役割は大きい。そう感じる本書である。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本僕らの夏

2013/02/12 20:22

男の成長の仕方

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズは現在8巻まで出ており、その先は村山由佳さんのHPで月に二回ウエブ連載中である。村山ファンの僕は当然アップTOディトで、彼ら(かれんとショーリ)の成り行きをハラハラしながら見守っているのであるが…

そんな長期連載の中で、どれか一つだけお気に入りをあげるとすると、本書「僕らの夏」。一巻の「キスまでの距離」を読み終えて、その続きの本書をソワソワしながら開いたときの、予期せぬ(?)場面。悩み多くも爽やかな二人のやり取りの緊張感と安堵感。本書は本当に良くできている。

実は、待ちに待った「天子の梯子」の感想を(既に3分の2を読み終えたところで書評を投稿してしまったので)投稿することができなかったので、ここに主人公たちを関連付けて書かせてもらうが…

ショーリも「天使の梯子」の歩太も、料理ができ、年上の女性(といっても年下に見えるし、あまり料理は得意でない)を好きになるのである。このシリーズの結末だけはハッピーエンドを願っているが、もし「天使の卵」のように理不尽な悲しい結末でも、ショーリは「天使の梯子」の歩太のように精神的にもたくましい男に成長してゆくのだろうと思えてならない。

逆に、村山由佳さんには、(「天使の梯子」のようなキツイ状況を克服したあとの歩太のような成長の仕方とは)違った成長をショーリを通じて示してもらいたいと思っている。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

ロマン、メルヘン、冒険心、そして「何か」

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

画家であり、作家である、そして冒険家でもある私の義父の記した本。義父は昔、太平洋の島々を転々と放浪生活していた。そして太平洋の孤島、ヤップ島で「何か」に魅せられ、住み着いてしまう。その「何か」とは、異文化でありながら自分自身の心の奥底に潜んでいる、懐かしくも新しい、ワクワクするものであり、生きる源となる「何か」であったのだと推測される。

昔ながらのやり方で島にある天然木を切抜いて海洋用のカヌーを作り、そして島の酋長を含めた男たちと共に、いにしえのポリネシアン達がやってきた海へと乗り出していく。その行き先は日本。本作品は、島との出会いからカヌーの製作、そして日本への一ヶ月以上にもわたる航海の、克明な事実の記録であり、そして異文化物語でもある。

本書は1989年に出版され、国語の教科書にも採用された作品であり、その復刻版である。おりしも私はオーストラリアをはじめとした一年間の世界放浪から帰国し、1990年に福岡で開催された環太平洋博覧会「よかトピア」の会場で、実際に義父達がヤップ島から日本へと航海した、そのカヌーの実物を目にすることができた。あの小さなカヌーでヤップ島から日本まで。技術の発展した現代社会に生きる私にとって、その事実は感嘆そのものであった。

本書を読み終え、そして義父の描いた豊富な挿絵を眺め、ロマン、メルヘン、冒険心が私の心に再び浮かび上がってきた。そして、義父が感じた「何か」も少しながら感じることができたことだと思う。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

紙の本在日外国人と帰化制度

2013/02/12 20:18

基本に立ち返って物事を考える

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

オーストラリアに移住して5年。オーストラリアの国籍は取得しておらず、日本人の永住者としてオーストラリアに滞在している。オーストラリアで大学職員として(公務員として)働いているが、国籍を取得していないため、選挙権や被選挙権はない。あるのは日本の国政選挙の海外在住者選挙権(比例代表区)のみである。

オーストラリアに永住しているにもかかわらず、オーストラリアの政治の参加できないのは、国籍(市民権)を取得しないからである。私自身が取得しようと思えば明日にでも取得できるのであるが、現時点ではあえて日本国籍のままである。理由は、日本の国籍を放棄したくないという点にある。日本は二重国籍を認めていない(オーストラリアは認めている)ため、フジモリ元ペルー大統領のような(非常に不透明ではあるが)特別な人でないかぎり、オーストラリア国籍を取得すれば、日本国籍を放棄しなければならない。

そもそも何故私自身、日本国籍を放棄したくないのか? 自問自答しても明確な答えが出てこない。「なんとなく不安」であるとか、そういった漠然とした理由で「国籍」という「海外」で住んでいる自分にとって最重要な問題を深く考えることを放棄し、漠然と暮らしているのである。

そこで、そんな不安定な自分の「国籍」に対する考えを訓練し、鍛え、何らかの自分なりの結論を得る起爆剤として、本書を手に取った。つまり、外国人が日本人になる(日本に帰化する)時の心境や、そもそもそのバックデータはどうなっているのか? ほとんど知られていない「日本人になること」に焦点を当てた本書から、逆に「日本人をやめる」ことを考えて見ようと思ったのである。著者の浅川氏はオーストラリア国立大学での滞在経験もあり、現在、在豪の日本大使館で研究員としてキャンベラに滞在している。その点も、興味をそそられる。つまり、自分の置かれた境遇になんらかの関連性も期待したのである。

内容は、なるほど研究書だけあって、冷静かつ緻密であり、今までにないデータ満載で、そのデータを元にした予測(たとえば年代ごとの出身国の比率から導き出された将来の帰化元国籍の構成予測など)は非常に興味深い。また、一見大胆な未来への提言は、まったくもってフェアーであり、説得力のあるものである。

逆に、いままで日本政府の日本の移民、帰化政策は、「もしかしたら政府はあまり真剣に考えてこなかったのではないか?」と本書を読んで危惧されるのである。本書で調べ上げられた基礎的なデータでさえ今までほとんどなかったことを考えると、危惧は危惧だけで終わりそうにない気がする。少なくとも本書を読んで、私自身の「国籍」に関する考えは少しだけでも鍛えられた。そして、本書は、近い将来日本の移民政策にスポットが当たるとき(それはかなり近い将来だと確信しているが)ある種の「たたき台」として必読書となるであろう。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

GDPに反映されない、「Bタイプ労働」とは?

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

今年初めの書評は、ご存知、オーストラリア・ラトローブ大学教授の杉本良夫著「オーストラリア」である。

実は、大前研一著「日本の真実」の書評を年頭の書評としたかったのだが、それはあまりに日本の真実を突きすぎているためか、昨年出版されたにもかかわらず(しかも大手の小学館から)現在入手しにくくなっているし、書評も書けなくなっている。真実を突かれた誰かが出版社に圧力を掛けているのかもしれない。

両著作に共通している点。それは、日本人の政治・経済・文化に基づいた行動を詳細に分析し、どうすれば「豊かな生活」を送ることができるかの処方箋を克明に示していることである。

杉本氏は、豪のGDPは日本のそれに比べ半分ぐらいなのに、何故日本以上に「余裕のある」生活が営まれているのか?という疑問に、GDPに顕れない労働、「Bタイプ労働」が寄与していると指摘されている。つまり、例えばDIYで家の改築をすれば、賃金としてGDPには反映されないが確実に住居環境は改善される。「Bタイプ労働」とは、賃金を得て行う労働「Aタイプ労働」に対する呼び名である。

大前氏も、「GDPは単なる経済指標にすぎず、先進国ではGDPと豊かさの相関はない」と明言されている。全国に散らばる漁港をマリーナとして一般市民に開放するだけで、お金を掛けずに豊かな暮らしができることを指摘されている。

今年僕はボートを購入する予定でいる。オーストラリアではボートを持つことは極普通なことで、車でボートを牽引して進水させる場所が(もちろん無料で)沢山用意されている。また、公園には無料のバーベキュー施設もあり、ピクニックも一般的である。それらレジャーはGDPには(お金を落とさないので)反映されないが、確実に生活に余裕をもたらす。杉本氏に倣って命名すれば「Bタイプレジャー」ということになろう。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

74 件中 16 件~ 30 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。