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馬場ダイさんのレビュー一覧

投稿者:馬場ダイ

4 件中 1 件~ 4 件を表示

紙の本センセイの鞄

2002/03/29 01:52

常温の居場所

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「恋」だった。
 この本の中に存在しているのは愛ではなく、恋なのである。

 年齢的には、おじいちゃんと呼ばれてもおかしくない70代のセンセイと、おばちゃんと呼ばれてもおかしくない37歳のツキコさん。

 高校時代の先生と生徒であった二人は、偶然居酒屋で出会い、大人の付き合いをはじめる。良くも悪くも大人の付き合い。
 お互いに必要以上に干渉しないし、毎日会うときもあれば、1ヶ月以上も会わないときもある。
 高校を卒業して、何十年も過ぎているというのに、先生と生徒の関係は残したまま。
 きっと、お互いに居心地が良かったのであろう。
 もしかするとセンセイとツキコさんのそれは、人間としてではなく空間だったのかもしれない。

 しばらくすると、センセイとツキコさんのそれは、空間から人間へと変わってゆく。まるで、動物が環境に適応するための擬態を繰り返すかのような、ゆっくりとしたスピードで。

 しかし、そのゆっくりとしたスピードも、ツキコさんにとっては早いものだったのである。
 いつのまにか、センセイへの「恋」をコントロールできなくなってしまっていた。センセイとは大人の付合いをしてきたのに…。
 子供みたいに感情がストレートに表れてしまうことは、“人間関係に冷めている”を自負していたツキコさんにとっては、計り知れない戸惑いだったのかもしれない。

 ツキコさんはセンセイを求め、センセイはそれに応えようとする。干渉しない大人の関係は、干渉しあう大人の関係に姿を変える。二人の居心地の良い関係はそのままの姿で。
 そんな関係が続くなか、おじいちゃんと呼ばれてもおかしくないセンセイは亡くなった。
 センセイの鞄の中に入っていたものは何だったのか?

 文中に、
  旅路はるけくさまよへば
  破れし衣の寒けきに
  こよひ朗らのそらにして
  いとどし心痛むかな
 という、伊良子清白の詩が出典されている。

 私は、人間は1人じゃ生きていけない、ちっちゃな生き物だと思っている。時々、オレは1人で生きてるんだって我が物顔をしてる人を見かけると、
 「その食べ物はどこから手に入れたの?」
 「その着ている服は?」
 なんて、意地悪なコトを聞いてみたい衝動に駆られてしまう。

 センセイがいつも持ち歩いていた鞄の中には、“常温の居場所”が入っていたのかもしれない。
 センセイのお葬式が終わった後、鞄を覗いたツキコさんは、自分が今までセンセイと過ごしていた時間、場所が、常温だったことに気付いたのではないだろうか。
 「…だから、居心地が良かったのかぁ」なんて、自分で酌したお酒を飲んで、湯豆腐でもつっつきながら。

 私の常温の居場所はどこにあるんだろう…、今度の休日にでも探してみようと思う。

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紙の本君の鳥は歌を歌える

2002/03/08 01:22

アナタの鳥が歌う歌

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 「北野武」、「村上龍」、「銀色夏生」、「南Q太」をキーワードに検索した結果、枡野浩一氏著『君の鳥は歌を歌える』が一致しました。

 アナタは自分自身の自己表現の形を把握しているだろうか? 自己表現の形は人それぞれ。十人十色である。映画を用いる人。小説を用いる人。詩を用いる人。漫画を用いる人。

 99年に、マガジンハウスから発行されたB6判の文庫化である『君の鳥は歌を歌える』。この中で、著者である枡野浩一氏は、各著名人により既に自己表現されている形を、短歌を用い、枡野浩一形という全く新しい形として表現している。北野武氏、村上龍氏、銀色夏生さん、南Q太さんなど、各界を代表するであろう数多くの方々の自己表現の形が学べ、もれなく、枡野浩一氏の自己表現の形もついてくる。いうなれば、自己表現の二乗が楽しめる一冊なのである。

 自己表現の形? 興味はあるけど、そんなことが書いてあるのって、どうせ、難しい言葉が行儀良く整列してる本なんでしょ。そういう本はちょっと…という方にはいいかもしれない。難しくはない言葉が、57577のリズムで行儀良くも悪くも整列しているのだから。

 自己表現の形が見つかっていない人は、読んだ方がいい。自己表現の形が半信半疑の人も、読んだ方がいい。自己表現の形が自信満々の人も、ついでに読んだ方がいい。アナタの鳥がどんな歌を歌っているのか? この本を片手に探してみるのも悪くないかもしれない。

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まっピンクへのコスプレ

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ヒュ〜現役の女子高生が短歌を詠んでるドーン!
ヒュ〜装丁がまっピンクだドーン!!
ヒュ〜中を開くとレイアウトがノートみたいだドーン!!!

 これらが、加藤千恵著『ハッピーアイスクリーム』のド肝抜き3連発である。隅田川の花火だって、こんな衝撃的な連発花火は上げやしない。

 この本の著者である加藤千恵さんこそ、放送直後から話題となり、再々々放送されたNHK「電脳短歌の世界へようこそ」で主人公となった女性である。

 17歳の現役女子高生らしいというのだろうか。一見、授業中の暇つぶしに何気なく書きとめた。そんな落書きを思わせる短歌たち。それらは、化粧もしてなければ、よそ行きの服も着ていない。ありのまま姿で、盆踊りをおどりまくっているのだ。ただ、その音源が、決まりきった民謡や音頭ばかりじゃなく、ロックやクラシックだったり。ときには、演歌やボサノバだったりもするのである。とにかく、ストレートで気持ちのいい音・音・音。

 それなりの年になれば、セーラー服を直に着ちゃうコスプレはキツイものがあるが、心の中でセーラー服を着て、女子高生の気持ちをコスプレすることは、そんなにキツイことじゃないような気がする。

 最近、娘との会話が少なくなって…とか、口を開くと小言ばかり言っちゃうんだよ。と嘆いている世のオジサマ方。思い切って、心の中をまっピンクへとコスプレしてみてはいかがだろうか。娘さんの気持ちを理解できるようになり、そして、忘れかけていた自分のまっピンクの気持ちをも思い出すかもしれませんよ。

 もちろん、オジサマ以外にも、老若男女問わず、まっピンクになりたい人にはオススメです。

 サブタイトルは「17歳って、これだけじゃ無理。加藤千恵処女短歌集」。加藤千恵さんが何を求め、何処へ行こうとしているのか。今後の彼女を見つめるためにも、一読でも二読でも何十読でもしておきたい短歌集である。

 今どきの17歳。なかなか捨てたもんじゃない。というより、むしろメチャクチャかっこいい。

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歌をつくって口ずさむ

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 『ハッピーロンリーウォーリーソング』。そこには枡野ワールドが広がっている。

 この歌集の短歌は、97年に発行された『てのりくじら』『ドレミふぁんくしょんドロップ』(実業之日本社)を一冊にまとめ再構成したものである。

 それまで「短歌」といえば、
・老人の専売特許
・わかんない言葉を使ってる
・5☆7☆5
のイメージしかなかった。

 そのコリコリのイメージを払拭してくれたのが、枡野浩一氏の短歌集だったのだ。
・老人は、まだ特許が取れていなかった
・わかる言葉を使ってる
・5☆7☆5☆7☆7
 枡野氏が生みだす57577の三十一音は、あふれすぎて見過ごしていた日常ばかり。そんな、日常さえも視点さえかえればドラマにだってなっちゃうこと、平凡の日常が実は非凡の毎日だということを教えてくれる。

 4年前と違うことといえば、池田進吾氏の写真が短歌の余韻をより一層引き立てていることと、私が4歳年をとったことだろうか。同じ短歌のはずなのに、当時とは全く違う短歌にさえ見える。

 今日の私が好きな歌は、
ハッピーじゃない だからこそハッピーな歌をつくって口ずさむのだ   

 明日はどの歌を好きになっているのか…、何を感じさせてくれるのか…。『ハッピ−ロンリーウォーリーソング』は、そんな毎日をプレゼントしてくれる短歌集だ。

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