かずんさんのレビュー一覧
投稿者:かずん
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東京タワー
2002/03/31 01:32
男と女のかたち
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どうしてだろう。
江國さんの書いた小説と読むと、いつももどかしい切なさを感じる。そしてそれはしばしばやるせない哀しさをも連れてくる。
この話を読んだ後、最初に心の中に生まれた感情は「哀しさ」だった。誰に共感してしまったのか自分でも分からないままに、哀しみの沼にどっぷり落ちてしまっていた。
主人公の2人は共に年上の女性と付き合っている。
片方は真剣にその存在を愛し、片方は身体に惹かれ(と本人は思って)いる。前者は透という青年で、詩史さんという母親の知り合いを愛している。とても一途に。彼女には夫がいて、傍目にはとても幸福な家庭を築いているように見える。詩史さんは透に「愛している。滅茶苦茶に愛している」と言うが、夫との生活は完全に出来上がっていて、それを手放して透と生活する気はないと言う。どうしても一緒に暮らしたいなら、自分のうちに越してくれば、と言う。それでいて彼女は透との未来を予想して幸福な気持ちになるのだ。
後者は耕二という。彼は由利という恋人がいるにも関わらず、喜美子という主婦とセックスをする。そしてその獣のようなセックスを通して彼女を好きだと言う。耕二はいつも行動的で、自由に恋愛を楽しんでいるかのように見える。全てが上手くいく、と思っている。そして後半現れる吉田という女性。過去と現在の彼の行動が、彼を翻弄する。
心を奪われる恋や愛には、必ず痛みも同居する。痛みは徐々に広がり、収拾がつかないほどに己を蝕んでしまう。透は詩史さんとの関係に自分なりの未来を見つけるが、読んでいるこちらとしては、どうしても幸福な未来には見えない。耕二は自分の未来が見えているようで見えていない。
私は2人をとりまく女性達を想い、哀しい気持ちになる。
捨てる女性、捨てられる女性。選ぶ女性、選ばれる女性。そして最初から相手にされなかった女性。自分が女だからこそ生まれる感情なのだろうか。
恋や愛に完全な形はないと知っている年齢になっても、どうしても拭い去れない感情もあるのだ、としみじみ思った小説でした。
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