バナナワニさんのレビュー一覧
投稿者:バナナワニ
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ヘウレーカ
2003/02/07 17:31
倫理の教科書も哲学書も、これほど語ってはくれなかった。だが、この作品は語っていない。「それらしい」ことは一言も。
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私はアルキメデスと生きた。彼の晩年、同じ時代を。
「ヘウレーカ」。歴史に残る彼の言葉だ。だが、この作品では全くそのことに触れていない。アルキメデスの発明・逸話も確かに歴史に残るものだ。しかし、彼は作中で全く「活躍しない」。
考えてみれば、岩明均氏の作品は不思議である。この漫画を私が選んだのは、もちろん「『ミギー』の人だから」なのだが、その『ミギー』主演の「寄生獣」も不思議な作品だった。しいて言えばハッピーエンドだろうが、厳密に言えばハッピーでもアンハッピーでもない終わり方である。この「ヘウレーカ」もそうだ。違うのは史実を元にしている点である。が、歴史ものでもなく、偉人伝でもなく、ただ、「ずしりと重いもの」を読者に残して、行ってしまうのである。そして、作品から与えられるものは、たぶん読者それぞれによって違う。
例えば、この時代の大量殺戮兵器。現代のそれとははるかに少ない殺傷力しかないだろうが、それでも岩明氏の描写の前には身がすくむ思いである。「人が人を殺す」あるいは「大量に人を殺す」ということが、いかに「非人間的」であるか。キレイな映像に慣らされて、我々は忘れてはいないだろうか? にもかかわらず、その「力」を使う者がいる。果たして使う者だけが「非人間的」なのだろうか。作中には答えのカケラが見え隠れする。読者である私たちが考えるべき手がかりだ。
「1人殺せば 殺人犯/世界中の半分を殺せば 英雄/人間を全部殺せば 神である」
あるいは、アルキメデスの科白の中に、
「用途は十分心得ておった/わしも全くの同罪じゃ」
「アルキメデスの法則」で歴史に残る彼。彼は何が「わかった」のだろう。
優れた小説に出会った時、哀しみに似た感情を味わったことはないだろうか。「私はもう前の私ではない。この本を読む前の私には戻れない」。
「ヘウレーカ」。この言葉は、以前はただの単語だった。こんな重さ、こんな色彩は持たなかったはずだ。だが、私はもう、読む前の私にはもどれない。
あくまくん
2002/05/28 10:43
「あくまくんまた失敗するんじゃないの?」と息子はドキドキ
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あくまくんは、ぼくの友達。そのあくまくんが一週間以内にわるいことをしないと、あくまくんと、あくまくんのパパもママも、地獄から追い出されちゃう!
ぼくは、あくまくんにわるいことなんてしないでほしい。でも……。あくまくんは、ぼくとはなしながら人間が困ることを考えて、魔法を使う。ぼくはそんなつもりはないのに、あくまくんに悪事のヒントを与えちゃうんだ!
ところが、魔法で起こした「わるいこと」で、人間が喜んでしまうんだよ。あくまくんはそんなつもりはないのに、地獄の主アスモディスはかんかん。あくまくんの悪魔のしるしを一つずつとりあげてしまうんだ。かわいそうなあくまくん……。
あくまくんはどうなってしまうんだろう? ヒント。「わるいこと」って「人間が困ること」じゃなくてもいいんだよ。それにさ、あくまくんのパパはあくまくんのことを「ダメな息子」とは思っていない。あくまくんのママもさ。理解のある素敵な両親だよね!あくまだけど。
小一の息子に、四日がかりで読み聞かせしました。面白がりました。この間「火が燃えている部屋のドアを開けると爆発するんだよね! 『あくまくん』で知ってる!」と言っていました。
ワニのオーケストラ入門 絵本
2002/05/22 13:12
なぜ、『ワニ』なのか?楽器が語る絵本
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表紙は、ワニの聴衆がコンサートの開始を待っています。中では、緻密なイラストのワニが楽器を演奏しています。そして、楽器たちがしゃべります。「私はどんな楽器か」と。
楽器を演奏する人、音楽が好きな人には大変楽しい絵本です。大人が楽しめます。それぞれの楽器、納得してしまいます。
例えばピアノは「わたしは一人でも、オーケストラとも、音楽を作ることが出来ます。わたしはただひとりで立っています。わたしは楽器のプリンスなのです」。では、ピアノにとって王様は誰? 読んでください。
楽器には「指揮者」も。そして最後の楽器は「オーケストラ」。
さあ、あなたの耳に、豊かな音楽が聴こえてくることでしょう。
でも、どうして『ワニ』? 本にあるように自分の子供にきいてみたけど、わかりませんでした。誰か、解った人書評を寄せてください!
プクプクのかくれんぼ さかなクンのイラストストーリー
2002/08/08 15:03
サカナの声が聞こえますか?
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こどもの本は、こどもに見せればよくわかる。
プクプクの本をひらいてごらん。
とっても青い海の中に、
「見つけた!」「ここにいる!」
そうさけんだときから、こどもはちいさなサカナ。
“でもね…。”
“じつはプクプク、かくれんぼ、ちょっぴりにがてにしてるんだ。”
いろいろなかくれかたを、おしえてもらっても
“ちっともうまくできないや”でもでも…、
“ボク、勝ちたいプク、どうしても!”
こどもだからいえる、このことば。だから、こどもはプクプクになる
(おとなはしっている。どうしても勝てないときがあることを。
安全のために冒険を捨てるときがくることを)。
「どうしても勝ちたいプクプク」を見つけたのは…、友達なんかじゃなかった!
みんなでたすけあっても、かなわない。かくれても、みつけられてしまう。おそろしい、おそろしい敵!
サカナたちのせかいでは、つよいものが、よわいものをたべて、いきている。
いきのこるために、サカナたちは、かくれたり、毒をもったり、するんだ。
サカナをしりつくした「さかなクン」だから、あたりまえのうみのなかが、あたりまえに描かれている。
でも、それってちょっとすごい。
さいごのページには、本物の写真と、解説がある。これはおとなでもおもしろい。
ちょっとおおきいこどもは、「さかなでございます!」や「仲良しサカナ組」の絵のところを、拾い読みしている。
ちいさなこどもは、りょうてをひろげ「プクー、プクプクー」といつまでも、うみのなかにいる。
そして、きくんだ。サカナの声を。
オーケストラ楽器別人間学
2002/05/21 09:40
オーケストラはサイボーグ009。オケ人間(楽隊)、ブラバン人間にはお薦め!
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楽器別に、演奏者のキャラを設定してしまおう(多少決め付けでも)。それぞれの楽器の短編小説と思えばいいんです。それが当たらずとも遠からず。で、楽器をやっている人には大うけ。ブラバンの人にも受けるけど、オーケストラ経験者だとさらに楽しめる。楽器の深みにはまっている人ほど面白がりますね。
例えば、「あるサクソフォン奏者」は「ナウいポップス系から、いきなりクラシックおたくへ」。「あるトロンボーン奏者」は「運動部で鍛えた肺活量、気がつけばプロに」。序論は「オーケストラはサイボーグ009なのだ!」ですから。
「なに、最初はファンファーレか。行け! トランペット」「了解!」「む、カンタービレだ。たのむぞオーボエ。弦楽器、ハープ、援護しろ!」「ほいきた!」「とぼけたフレーズだ!」「それならあっし、ファゴットにおまかせ!」「よし、いよいよクライマックスだ。全員で突撃するぞ。打楽器いっせい、発射!」
読みたくなったでしょ?
絵本「ワニのオーケストラ入門」とあわせて読むと、もっと楽しめます。
よい国 世界の法律・制度まるごとガイド トンデモ国へ行こう!
2002/05/21 09:18
「国」って何だかわからなくなった。そんな今こそ読んでみよう。
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どんな国が「よい国」か。世界の法律・制度を比較しながら、新しい独立国「よい国」を作っていこう。それは日本の南約500キロの太平洋上に浮かぶポコチン形島国「よい国」の話。ところが突如クーデターが! 「よい国」は「わるい国」に……。
深夜放送のテレビ番組から産まれた本です。
なんだか、このごろ「日本」という国が、何をやっているんだかわからなくなってきた様子。「よい国」を作ろうと法律・制度を作り直すつもりのようですが、国民はもしかしたら「わるい国」ができちゃうかも、と心配しているようです。やはり、世界のことを調査・比較・検討して、どんな国を作りたいのかよく考えて、みんなで相談して決めなきゃ。
昔の発行ですが、急に読み返して見ました。改めて、再編してくれないかな。
人生教典
2002/05/15 16:43
もしもゴーストだとしたら高田純次を表現しきっている
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サギみたいに活字が大きくて、さらに意味なく大きいフォントで強調。大体「第32回くらしのうるおいコンテスト金賞受賞」って何?
真面目な人は読んではいけません。悩みを読んで「本当にこういうことで悩んでいる人いるなあ」とか、回答の中に「彼の真実が見え隠れしている」とか、考えてしまうかもしれない。無駄! 脳細胞そんなことに使っちゃいけない! こんな本読むのも時間の無駄! 買うなんて、究極のお金の無駄!
万一買ってしまったら、野良犬にでも噛まれたと思って、少しでも高く売れるうちに古本屋に売り飛ばし、書評を投稿してせめてポイントでも稼いで……。何てせこいことを考えて貴重な時間と手間をますます無駄にする、悪魔の書です。
それとも開き直って「一見全編ふざけているようだが、実は彼は人生のあらゆる機微を分かった上で、全ての悩みを笑い飛ばし、人々に救いを与えているのだ。それこそが高田純次という存在であり、彼が活躍しつづける意義を我々に教えてくれるだろう」なんて書いて、だまくらかして買わせましょうか? たぶん、何人かは、その気で涙を流して感動する……かも。
ここだけのふたり!! 8巻セット
2002/05/18 17:31
変な人ばかり。かえって普通に見えてくる。「普通」って変なのかも。
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変な人ばかり出てくる。森下裕美だから。結婚式で「結構かわいいのに、奥さん、趣味悪いね」とは、ブサイクな新郎のことではない。新婦の招待客に向けられた言葉。
この奥さん、高校教師の夫の元教え子。次々に変な人と友達になっていく。夫は善良な化学の教師で、いい先生って本当、生徒が苦労するわ。
ふたりは、まわりが「変」でも「普通」でもどうでもいいんだね。あんまりスーパー変な人が集まっているんで、かえってみんな普通に見える。普通なはずの人が浮いて見える。「普通」って何?
「超、金持ち」も数人でてくる。団地の旅行でお小遣い3千円しか与えなくて、札束ぎっしりのバッグを「返して」といわれると「ちょっとのお金でやりくりすんのが楽しいの!」
一度、行ってみたいネエ。
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