あおっちさんのレビュー一覧
投稿者:あおっち
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植物図鑑
2013/06/06 11:33
大切な本の仲間入り
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
大人向けライトノベルを書きたいという有川さんらしい作品です。
自衛隊シリーズや図書館戦争も好きですが、有川さん式大人ライトノベルのとっかかりには個人的にこの本をお勧めしたい。
巻末のショートで、さやかさんに決して怒らない樹さんには、有川作品の戦闘職種の男性陣にも劣らない強さを見ました。
あ、お部屋で読むのがお勧めです。だーっとくるとこが私はあったので!
ヤングガン・カルナバル
2006/06/17 16:59
驚くほど、アクション小説。
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
表紙やタイトルを見ただけで、なぜか気になってしょうがなくって買ってしまう本がある。この本もそうだった。「なんで買ったの?」と聞かれたら、「面白そうなニオイがしたから」とでも答えるしかない。ちなみに、面白い本を嗅ぎ分ける鼻は、結構利く方だと思う。
そして、面白い本を読むと、いつの間にかその面白さを説明する文を考えてる。それが、これ。活字ホリッカーの自分らしい癖だ。
ギャグマンガの間や雰囲気を小説で表現するのが難しいように、アクションを小説で描くのは難しいと思う。でも、この本はアクション小説としかいいようがないほどにアクション小説だ。びっくり。帯のアオリは見ていたけれど、これ程とは思わなかった。
「高校生の殺し屋なんて、ありえない!」とか、「こんなにザクザク人が死んで、教育上よろしくないのではないか」とか、そんな議論は、この際、この本では何の意味も無いと思う。
これは、アクション好きなひとが読むためだけに特化された娯楽小説だもの。この読み始めたら止まらないスピード感や疾走感の魅力に惹き込まれないなら、体質が合わないんだと思う。残念だけどね。
私もこれを読む前に、「銃のこととか、クルマのこととか、何ページも使って描写されてたら(偏見ですかね?)ヤだなぁ」ってちょっとアタマを過ぎりましたが、それも心配無し。使う銃を選ぶのには意味があったりするので、全く無いワケはないのですが、それも文章の流れを殺すようなもんじゃない。むしろそういうトコが好きな向きにはがっかりされるんじゃないかってくらい最小限。
二段組の構成も、まったく気にならない。これもむしろ、細かに視点が移動することで、効果になってるんじゃないかと思うほど。
紙の上で文字が軽快にリズムを刻み、どんどん加速しながら、流れていく。
それほどに、アクション小説。
主人公たちが、若い殺し屋(ヤングガン)として銃を使った仕事に臨んでいるときの緊張感や緊迫感、格闘シーンの緩急自在の描写や展開は、むしろ、コマ割りのマンガや、撮り方の難しい映画とかでは表現できないんじゃないかと思ってしまうくらいに。
流れていってしまうからといって、内容や登場人物がカルいってわけでもない。人がザクザク死ぬからといっても、そこに理由が無いわけでもない。
1巻はまだまだ登場人物の紹介っぽい雰囲気があって、ちょっと食い足りない気がするかもしれないけど、これを読んで「面白いかも」と思ったら、ぜひ2巻目にチャレンジしてほしい。そこからが、アクション小説の真骨頂。
読み終わるまで、きっと眠れなくなるよ。
海の底
2013/06/06 14:36
キャラ読みですが、ナニか?
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
結構分厚い文庫ですがね、キャラ読みするなら気にするこたありません。あっという間です。その時は、有川さんの既刊「クジラの彼」も一緒に購入しましょう。夏木派にも冬原派にもオイシイ話が載ってますからね。
先に読んだ図書館戦争シリーズで、「ええ性格」なヤツがどうにも好きな自分には、小牧さんは若干物足りなかったのですが、冬原さんはめっちゃストライクでした。そうそう、このなんとも言えない「ええ性格」具合。最高です。
あと、明石さんと烏丸さんのところが!烏丸さんの七光言い放つ辺りがたまりませんね。こういうひとが上司だったら、キツイけど愉しかろうな、と。
あとは、川邊艦長さんも。艦長さんって、どうしてこう…だから艦長さんなんだろうけど。巻末のショートストーリー、収録していただいて本当にありがとうございました。
プロットを立てない、有川さん曰く「ライブ派」の小説はキャラ読みとは相性抜群ですよね。
でね、一回目キャラ読みしたら、ちょっぴり落ち着いてまた読み返して欲しいんです。
そしたら、多分一回目で読み捕れなかったことがたくさん捕れる。
有事の人材は平時にはいびつ。の意味とか。政治の関係の皆さんってほんと「主流派」ですよね~。
こんな非常識事態になぜ最初から自衛隊が出てこれないのか、とか。
他にも、色々。ほんと色々読めてくるモノがあるんですよ。
そこからね、また有川さんの他のお話に繋がる道がついてたりもしますしね。
だから。厚さにビビらず、ちょっと手に取ってみて下さいよ。
最初ら辺で引き込まれたら、絶対最後まで読めちゃいますから。
すごいお得ですよ~
YEBISUセレブリティーズ
2004/05/18 00:11
大嫌いって、それは既に意識してるっていうこと。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ひとに薦めたいぞーという本以外書評は書かないというのが、bk1さんに書評を投稿する時のモットーなのですが、この本くらい、BL本好き、もしくはBL本ちょっとくらいは読むよという方たちにお薦めしたい本はない!ってくらいの気に入りの一冊です。読んで! そして語って!
漫画と小説の連動企画ではじまったこの物語、小説版の主人公は、表紙の中央と右側の人物。物語は、右側のひと(益永さんといいます)の視点の一人称で語られます。
潔癖で理論派な自分に漠然と限界のようなものを感じている益永さんは、中央の人物(久家さんといいます)のそれってどうよという人間性なのにも関わらず才能も仕事も超一流の天才ぶりに、最初、とても反感を抱いています。正面きっての嫌いっぷりです。
しかし、人嫌いと言ってもいい(バイトがひとり増えるだけで、人付き合いが増える…と、ブルーになってしまうひとなんですよ)表面クールな彼の性格上、嫌いなら、無視するとかするんじゃないかな〜と思うんですね。黙殺。何があっても。
なのに、久家さんに対しては、それが出来ないのです。それも無意識に。「センパイ」と呼ばれてはバカにされてるとムカつき、近付けば甘い匂いがするのを女の移り香だろうと不潔扱い。…でもそれって、どうみても意識してるんじゃあ?と思いません?
器用に事を運べない益永さんが、久家さんの言動に一喜一憂しつつ、未知の恋愛関係に踏み出していく姿が、たまらなく愛しいです。益永さんの一人称に視点を重ねて、邪魔が入らないようにしてイッキ読みを推奨します。ほぼ間違いなくハマりますよ〜。
そしてハマったら、ぜひとも既刊コミックスの、不破慎理さん版「YEBISUセレブリティーズ」も読んでみましょう。久家×益永の番外編が載っていて、幸福な時間がさらに長続きしますよ。
ノベルズの書き下ろし部分では、エビリティ(デザイン・オフィス「Yebisu Graphics」という益永さんたちの勤める、才能はもちろん、容姿も入社の基準になってるのでは…と言われている会社のメンバーの総称。恵比寿のセレブリティ=エビリティ)の皆さんも、それぞれ益永さんの様子を気にかけていることがわかって、ますます好印象。掲載誌では第2シーズンがはじまり、別カップルの話も進行中です。個人的に、他のエビリティのなかではいちばん恋のお相手を知りたかった、メンバーで唯一のコピーライターさんのお話がなかったのは残念ですが。
雑誌掲載時、このお話は前後編に分かれていました。前編だけ先に読んでしまったひとは、かな〜りぐるぐるしたことでしょう。それが今なら一冊で一気に!読めるのですよ。主人公二人のその後の続編まで付いて! なんと羨ましい(笑)。
ノベルズデビュウ、超オススメです!
loveholic 恋愛中毒 (Be×boy comics)
2003/12/19 01:50
読了後の余韻について
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「余韻」という言葉を辞書で引いてみると、「言外のおもむき」という記載を見つけた。このコミックス、この作者さんにとてもふさわしいように感じて、タイトルにしようと思った。
コミックスに収録されている作品の順番が、作中の登場人物たちの時間の流れに沿っていない部分があるのだが、私はそこになんともいえない「余韻」を感じるのだ。
以下はネタバレになるのだが、二番目に収録されている作品「冷たい人」では、表紙の下になっている人物の、過去の苦い恋が描かれる。
タイトルロールにもなっている「loveholic」ではすっかりエリートサラリーマンが板についている彼の、若かりし頃の無軌道ぶりは、さらりと読んだだけなら、もしかしたら同一人物だと気付かないくらいの180度転換ぶりだ。
だが、よく読みこめば、「冷たい人」での彼の言動のはしばしに、「loveholic」の彼に繋がるルーツをいくつも発見することができるだろう。
それらの具体的な台詞などには、あえて触れないでおこうと思う。読んだ方が自分で見つけて、このコミックスを読んだ他の方とそのことについて話してみたりしてほしいと思うから。
三作目の小品「Rainy Day」は、「loveholic」と「冷たい人」を繋いで、とても暖かく、しあわせな余韻を残す。今後のふたりをあれこれ想像してみるのも、物語を楽しむ方向性のひとつだ。
読了後に、読者に想像の余地を残し、良い方向に読者の想像力を掻き立てることの出来る作品というのは、それだけで強い力を持つ作品だということの証明になると私は思う。その匙加減はたぶんとても難しい。描き過ぎればもとより「余韻」は残らず、描き足りなければ登場人物や作品世界に読者を惹きこむ強い力は生まれないだろう。
この作品と作者さんは、絶妙のバランス感覚でもって、あえて時間を逆行させることを選んだのではないかと私は思う。
小難しいことを書いてみましたが、結局ナニが言いたかったかったのかというと、私はこの本が好きだ!ということなのでした。ちなみに、最近雑誌のほうに掲載された続編では、大ちゃんの激しい部分と暗黒サラリーマンぶりの一端を伺えますよ。
胡桃の中 in the walnut (ビブロスコミックシリーズ)
2002/11/05 01:38
このコミックスを読む前に…
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
まずは先に出ている同じ作者のコミックス、「形而上なぼくら2」を購入して、巻末に同時収録されている「マイ・ビューティフル・ワールド」を読みましょう。読まなくても充分楽しめますが、読んだほうがより楽しめます。ついでに、「形而上なぼくら」や「loveholic」も集めてしまうのもいいでしょう。
どんな内容か…と尋ねられれば、青年誌で連載しているマンガ「ゼロ」や「ギャラリー・フェイク」とかぶるような内容ではあるのですが、重要なのはそこではない(かといって、そこで劣っているといいたいわけではないのですが)と思います。
この作者の描く作品世界の中心は、二人の主人公によって形成されていることが多いようなのですが、その人物の描写と二人の力関係がとてもツボなのです。
見た目もっさいのにカメラ映りは最高の男谷崎英生は、大学では芸術学科で美学を学び、現在は祖父が遺したちょっとあやしげなギャラリーのオーナー。つまり、ゼロや藤田と同じ役割になるわけですが。谷崎は「この世に本物はひとつだけでいい」とか、「重要なのはカネですよ」とかとは言いません(そして、そう言うのが悪いと言いたいわけでもないのですが)。優しくて、弱くて、でも強い。極度の面倒くさがりだったりもしますが、カメラのレンズを通さなくてもとても魅力的です。とくに「うそつきな天使」では、作者の構成の妙の後押しもあって、彼の優しくて、弱くて、でも強いところがよく描かれています。
その谷崎の強さを陰で支えているのが、このコミックス中ではちょっと影が薄めですが、もうひとりの主人公で谷崎とは大学時代に知り合った映像作家の卵中居草平です。中居がまっすぐできれいで、その中居が自分を見ていてくれる…というのが、谷崎の強さなのです。支えている部分はあるけど、寄りかかっているわけではない、とても対等で平等で自由で、なのにとても優しいふたりの関係が、読んでいてとても心地いいのです。
この心地よさ、読んでみなければわかりません。そして読んでみれば、きっとほかのひとに薦めたくなりますよ!
Flesh & blood 3
2002/06/29 21:37
海賊と忍者なら海賊が好き?
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
タイムトリップとか、タイムパラドックスとか、難しいことは言いっこナシ! 松岡さんの作品はどれもすばらしい「娯楽作品」で、ありがちなネタでも料理の腕は超一流! 難しいことは考えずに作品世界を愉しみたいというひとにはどれもオススメですが、特にコレはいいです。
特に今回は、攻キャラが魅力的! 金髪碧眼の海賊船の船長ジェフリーはもとより、隻眼の航海長ナイジェルや敵方のビセンテまで、松岡キャラの良い男が揃い踏み。5巻で完結予定とお聞きしましたが、あと2冊で終わってしまうのはもったいない気がします。
そして、最終巻には解かれるであろう、スペイン無敵艦隊との海戦でジェフリーたちが活躍した記録がない…という謎が、主人公のカイトに良い方向であることを祈りたいと思います。
最新刊が出ると、次の巻がもう待ち遠しい。このワクワク感、体験してみませんか?
砂漠の月に抱かれて
2003/12/16 15:37
砂漠の王族と、クールビューティーと
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
と聞いただけで「ツボ!」と思うひとはかなりいるんじゃないかと思います。もちろん、かくいう自分もそのひとりなのですが。
こういう設定は結構多くて、それなりに読んでもいますが、ツボどころの問題もあって、当りが微妙だったりしますよね? そしてなかなか手を出し難かったりしますよね?
でも、この本はオススメです。特にこのお話のクールビューティーさんは、なかなか意思が強固で、かなーり最後の辺りまでじれじれさせてくれます。これまたマニアの多い眼鏡さんでもありますし、美人で、でもなかなか言いなりにならないひとが好きだ! そしてそういうひとを好きになる砂漠の王族のひとが出てくるお話が好きだ!という方、ぜひご一読ください。求む、同士!
ちなみに、同じ国が舞台の前作は、登場人物の方向性がかなり違いますのでご注意を。
ハチミツとクローバー 3
2003/01/27 03:07
やさしくて、やさしすぎるひとたち
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
そのひとの瞳に、世界がどう映っているのか。それを知りたいと思ったことはありませんか?
私は羽海野さん(ウミノさんと読みます)の描くものを読むたび、思います。羽海野さんの瞳には、この世界はいったいどんなふうに映っているんだろう、と。
「ハチミツとクローバー」は、主に芸大とその周辺を舞台にして、学生や卒業生やその関係者を中心に描かれた集団モノです。主人公はその都度持ちまわりで、なかには計り知れないヒトもいますが(いや、芸大だし)、多くは等身大で、それぞれ「ああ、あるよね、そういうコト」と思えるようなことでぐるぐるしてたりします。
すんごい突き抜けた笑いもあるし(今回自分的に出色だったのは、モンゴル相撲の辺りです。思い出しても笑える)、恋愛だって三角関係?や切ない片思いやちょっとプチストーカー入ってる(でも個人的には真山好きな私)微妙なものまでいろいろあります。年中行事もあるし、卒業できるひとは卒業していくし、髪も伸びるし、時間も流れていきます。それぞれの登場人物には、心に傷があったり、悲しい過去があったり、謎の稼ぎ先があったりします。
そのなかで、「どこがいちばんオススメなの?」と聞かれれば、それは登場人物がみんなとても「やさしい」ということ。ただし、それぞれが示す「やさしさ」は、登場人物の個性がとりどりなように、分かり易かったり、分かり難かったり、直接的に描かれていたり、間接的に描かれていたりします。
このコミックスを読んでいて、そういう「やさしさ」を見つけるたび、私は羽海野さんの瞳に映る世界を思います。テレビもあまり観ないで大切にしているという瞳に映る世界は、たくさんの「やさしさ」を描ける羽海野さんには、この作品で多く使われているパステルっぽい雰囲気のカラー絵のように、ふんわりとやさしく映っているのでしょうか。
登場人物の個性や年齢や立場が幅広いため、読み手の性別や年齢をあまり選ばない仕様になっています。ぜひ、読んでみてください。そして気に入ったなら、インディーズ時代の作品なんかも探してみるのもいいかもしれません。そこにも、やさしくて、やさしすぎるひとたちが、たくさんいたりするので。
幽霊の国・解
2002/07/06 13:40
謎は解かなくていい
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
んですよ、この方の小説はね。そんなムツカシイことは、歴史部の姫サンや大学のセンセェに任せておけばよいのです。
読み手は、小さくて透明なもうひとり(笑)の神になって、その場の成行きを「ほぉ〜」「へぇ〜」「うおぉ!」とか言いながら見ていればいいのです。というか、そうなっちゃいます、臨場感あるので。で、そうしてると「厚い〜」とか思っていた本も、あっという間にラストに!となっちゃいます。
それでいいんですよ。それがゴラクというもんですよ。
ほんと、これだけ読者を引っ張り込んで煙に巻く(良い意味でね)パワーのある小説、なかなかお目にかかれませんって。手にとってみてくださいよ、ぜひ。そして、ちょっと匂いかいでみてくださいよ。きっと「オモシロソウ」な匂いがしますって。
運命は剣を差し出す 1
2004/02/15 15:14
なぜここで終わる(泣)と多分読んだひとのほとんどが思う
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
だろうな〜。そして、それは多分作者の思うツボなんだろうな〜。
しかし、そう解っていてもやはり面白い。ニ段組のノベルズなのにあっという間にぺろりと読んじゃうくらい。男(それも平均年齢30代ですな)ばかりで華がない!とか思われるむきもあるかもしれませんが、仕方ないよね、戦場なんだから。
表紙向かって左側の黒髪に髭の男性(私がこのノベルズを最初に手に取ったのは、この方のルックスが某三部作映画の登場人物にちょっと似ている気がしたからでした。たは〜)は、お医者様で、察するになかなか腕は良い様なのですが、現在すごい不運な状況で逃亡者と相成っております。そして彼が偶然通りかかった戦場跡で見つけたのが右側の男性で、彼は脚にかなりの傷を負っており、故あって戦場に置いて行かれていたのでした。手当てをするうち、男性が有名な傭兵隊(この傭兵隊の名前が「アード=ケナード」。バンダルというのは「隊」という意味。つまり、タイトルロールはこの傭兵隊な訳ですね)の隊長であることを知り、彼を護衛に雇うことにするのですが、二人にはそれぞれ別の追っ手がそれも複数かかっていて…というのが、この物語の出発点です。
「運命は剣を差し出す」という第1話は3冊出るそうなので、物語はまだまだ序章といった感じです。バンダル・アード=ケナードなんて、まだ実物には一度もお目にかかっておりません。傭兵隊長さんの追っ手のほうは、目的とかいろいろと不明なことも多いし、挙句にこの1巻目のラストでは、片方が絶体絶命の大ピンチ!と、これでもかと続く波乱の波状攻撃にすっかり参ってしまいました。
知りたいことがてんこ盛りです。
負傷中の傭兵隊長さんの護衛を勤める白い雌狼さんの真のご主人(バンダル・アード=ケナードの隊員さんだそうです)はどんなひとなんだろう…とか。
お医者様はどうして剣が使えるんだろう…とか。
他にもいろいろ、もう、続きはいつ出るんだ〜と、床をゴロゴロしたいくらい。
あまりにも「序章」なので、★は四つにさせていただきましたが、ほんとにとても面白いです。物語の展開の妙や破綻のない筆致、登場人物も魅力的です。そして作品上重要な位置を占めるであろう戦闘シーンの描写も見事です。傭兵隊長さんが自分の傭兵隊になかなか合流できないため、この巻ではあくまでまだ個人レベルの戦闘ですが、これが傭兵隊の戦いぶりになったらどうなるのだろうと、かなり期待してしまいます。
面白いから読んでみなよ〜とひとに薦めて、そのひとが「はやく続き〜」とゴロゴロするのを見てうひひと悦に入る。いまなら、もれなくそういう愉しみも付いてくること請け合いッス。
尾のない蠍 遠征王と流浪の公子
2003/01/27 01:57
パッケージはティーン向けでも中身はビターな本格派
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ひとつの世界が在り、いくつかの国が在り、それぞれの階層の属する国民が在り、それぞれの国を統べる王家と王が在る。そしてある王家には、美しい宝玉と、その化身との深い縁が在る。
ファンタジーと言うよりは、王家の歴史モノの色合いが濃い気がします。身分を隠して市井に紛れる王もいるし(単に温泉巡りが趣味だからという説もありますが)、美しい王家の姫(このひとがいよいよ曲者だったことがこの巻でわかってかなりびっくりしましたよ)や、剣一本でのし上がった王騎士(シリーズ最初の「ジャック・ザ・ルビー」の主人公)や、王の愛人(シリーズ2巻目の「エルゼリオ」で詳しく描かれてます)などの魅力的な人物も多いし、他国との戦も、陰湿な宮廷闘争も、宗教団体もあります。多くの登場人物が、愛情や憎悪や、友情や恋情で、複雑に絡み合って一枚のタペストリーになっている、そんな物語が、ティーン向けの文庫の包装を施され、麻々原絵里依さんの美しい(個人的には大好きなので)イラストで飾られています。
面白いのには間違いないのですが、存在自体がいろんな意味で微妙。星が4つなのはそのせいです。破綻のない文章と、無駄のないストーリー展開とで、ひといきに読ませてくれるし、個性的なキャラクターも、独自の世界観も、とても魅力的。例えば、少女マンガの「サラディナーサ」とかが好きだ!というひとは、きっとこの本を面白いと思う私の気持ちに賛同してくれることと思います。この値段でこの濃い内容は買いでしょう。
ただ惜しむらくは、次巻が最終巻だということ。前の「ドラゴンの角」辺りから少々駆け足で物語が進んでいくのがどうにも勿体無い気がします。
ちなみに、もしこの「遠征王」シリーズしか読んでないという方、もしいらっしゃったら「黎明に向かって翔べ」もぜったい読んだほうがいいです。「表紙が中国っぽいからきっと別の話なのね」とか言ってはいけません。だったらどうして麻々原さんがイラストを描いてるんでしょう? ね?
少年☆周波数 王様の棋譜 6
2002/11/05 00:41
副題の、その意味の深さに瞠目
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
かなり以前に、「少年周波数」というタイトルは作者自身がつけたものではなく、作者は「王様の棋譜」というタイトルでいくつもりだったと、どこかで読んだ記憶があります。
連載中は、「これは学園モノになっていくのか?」とか、「これはもしかして芸能界モノになっていくのか?」とか、ちょっと心配したりもしましたが、やはりこの話は将棋の話だったのか…と、特に最終巻の覇王戦と挑戦者決定までの経緯で再認識させられました。
そして、あの結末…。してみると、やはりこのコミックスのタイトルは「王様の棋譜」でよかったのではないか…と、思います。
漫画を描く方たちの画力の向上もあってか、動きが少なく、今までは絵になりにくいと敬遠されていたであろう将棋や囲碁の世界を正面から描く漫画が徐々に増え、少年誌や青年誌では既にかなりの人気を得ている作品もあります。
が、少女向け、女性向けの漫画の世界では、実際にその世界で生きる女性が少ないこともあってか、まだまだ市民権を得ているとは言い難いのが実情です。それを思えば、この作品の途中での寄り道にも思える部分の存在も致し方ないのでは…と思われます。
それよりも私は、最終巻のまさに「王様の棋譜」という形で示される、勝負の世界の冷酷さと非情さとを、この作品で出来うる限りの表現で描き切った作者の力量を高く評価したいと思います。
棋士は、将棋の勝敗だけがすべて。「棋士は将棋が強ければ、キャリア、人格、容姿、家柄に不具合があっても何の問題もない」という、勝負の世界。実の親兄弟よりも互いを理解し、尊重し合える師弟、兄弟弟子の関係。
エンドマークがついてしまったいまとなっては、北村六冠王が目指したもののほんとうの到達点はどこだったのか、私たち読者にはもう知るすべはありません。エピローグ的なものも、作者は最後のページのみであっさりと終わらせています。
読了し、最初の衝撃が薄れてくると、心に残るのは、主人公の入江裕貴に託された最後の一手の重みでした。その一手は、ただの盤上の一手にとどまらず、まさに棋界の将来を示す「王様の棋譜」だったのです。
このラストを、作者が最初から念頭において描いていたのかの真偽はわかりませんが、作者が最初につけたタイトルだったという副題から、すべてはここに至るためのものであったと私は思います。
時代ものや野球など、少女向き、女性向きでない舞台を選ぶことが多い方ですが、華やかな画風に惑わされず、その構成力に着目して読んでみるのも一興かと思います。
蛇足かとも思いますが、それでも覇王位についた入江をもっと見てみたかった!
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