Janeさんのレビュー一覧
投稿者:Jane
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自由からの逃走 新版
2001/10/13 19:28
心理学者による現代批評
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
私達は本当に自由なのか?日常の中、ふとそんな疑問を抱き、手にしたのがこの本。新フロイト主義に立つ心理学者、エーリッヒ・フロムの手により自由とナチズムとの関連、近代の自由の二面性という問題が精神分析の手法で考察される。中世社会からの人々の解放は、個人に極度の孤独と不安の感情をもたらしたことを著者の鋭い視線は見抜き、真の自由は「愛と仕事」から始まることを説く。本書は心理学という枠を超え、人々の「自由である」というテーゼに対して疑問を突きつける。初版は1941年。しかしながら一切の古さを感じさせず、それはすなわち、当時の課題は現在も残されたままであることを示す。第二次大戦の最中に自由というテーマを世に問うたフロムの切迫した思いは、いまだ報われません。
記憶/物語
2001/12/08 20:53
歴史修正主義に抗して
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ホロコーストを生き延びたユダヤ人、従軍慰安婦の経験をもつ韓国人女性、そして現在も生まれるパレスチナの難民。いずれも暴力的な出来事の記憶を持つ者である。彼らの語りは、即ち歴史の証言である。しかし、サバルタン化した自己は過去の体験を語り得るのか。惨殺の光景の記憶を持つ者は、その記憶の暴力性ゆえに沈黙を守ろうとする。また、出来事の当事者でない者はどうだろうか。彼らが当事者に代わって忠実な再現を行うことは、記憶が他者に分有されることを必ずしも意味しないだろう。どうすれば忘却と修正から逃れ、歴史を語り続けていくことが可能か。表象の不可能性と可能性をめぐって、本書の論考は進められる。著者は大阪女子大学人文社会学部教員、岡真理である。
アイデンティティ/他者性
2001/12/08 17:11
アイデンティティと文学
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「言葉にならない無言の詩を抱えて、ひとは生きている」 — 著者の大阪府立大学総合科学部講師、細見和之氏の言葉である。
本書ではユダヤ系詩人、プリーモ・レーヴィとパウル・ツェラン、そして在日韓国人作家、金時鐘の表現を中心に、アイデンティティ/他者性というテーマが考察される。
レーヴィとツェランはそれぞれホロコーストを生き延び、強烈な詩を残し、自殺により生涯を閉じる。レーヴィを悩ませたものは家族の中で自分一人がアウシュビッツの生々しい記憶を抱えた孤独であり、ツェランを苦しめたのはドイツ語という母語である。
また、金時鐘にとって日本とは支配者の土地であり、日本語とは自らの引き裂かれたアイデンティティの場であった。朝鮮文字の書けない時鐘は、自らの意識を規定している日本という圧倒的な他者を、日本語そのものにより内部から食い破っていく。
本書は境界を生きた彼らの表現=投壜通信を受けとめ、我々自身の在り方を探求していく試みである。
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