ムラタさんのレビュー一覧
投稿者:ムラタ
2002/11/17 19:12
英語と日本語の違い
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有名なくまのプーさんですが,英語ならではの表現が多いこの本を,みなさんにぜひ原文で読んで欲しいです.日本語に翻訳した方も苦労されたと思いますが,主人公のクリストファー・ロビンや森の動物達の,つたない英語からくるかわいい間違いの数々の本当の面白さは,英語を読むともっと深まります.フクロの家の前の看板や,コブタがビンに詰めた手紙のエピソードなど,原文がこうだから翻訳がこうなったのかと,感心させられるとともに,本当にいいお話だなあと改めて思いました.
紙の本博物誌
2002/07/03 09:37
岩波の博物誌もいいよ
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新潮文庫の博物誌の挿し絵はボナールらしいですが,こっちはロートレックですよ! 文章自体は変わらないと思いますが,私は岩波文庫のほうを推します.フランス人らしい,毒の入った洒落やフランス語独特の言葉の使い方などが楽しいです.いつもカバンに入れて持ち歩いて,ちょっとした空き時間とかに一ページだけ読んだりしてます.これを読み終わったら,原文(仏語)にも挑戦!?
2002/07/31 13:47
ブラックで詩的!
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まず絵! 細い繊細な線で描かれた登場人物たちはみな異形.「ナイトメアー・ビフォークリスマス」でおなじみの,あのテイストがそのまま絵本になったという感じ.
次に文章! ブラックでシニカルな笑いを誘う,言葉の数々.「メロンヘッド」という一編にある,最後踏みつぶされて「べちゃ」という音は読み手のこころにいつまでも響く.ミイラ少年は友達に頭を割られ,その中からはカブトムシが這い出してくる.「オイスター・ボーイ」はハロウィンの夜に人間の男の子に変装したがる.こころの闇の部分で誰もが覚えのある残酷さを,改めて目の前につきつけられて,その上で全部含めて笑ってやらないとそれこそ病気になりそうだ.
しっかりと厚みのある表紙は光沢のある黒.この本を象徴する漆黒に思えてならない.この闇を隠すかのように,この本は漂白していないダンボールのような素材で作られたケースに収められている.宝物のような本だ.
紙の本文体練習
2002/07/03 09:49
本屋で衝動買いしました
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初めは本の装幀がかわいかったので手に取ったのですが,中を見てみると,なんだか変なことになっているらしいので,少し立ち読みしてみました.すると! ひとつの同じエピソードが小難しい哲学的な言葉で書かれていたり,単語同士の最初の一文字が入れ替わったり,少しボケの入った人の「なんだっけなあ,忘れちゃったけど」みたいなうろ覚えの文章になってたり,思わず立ち読みしながら笑いそうになってしまいました.それで,買いましたよ,結局.うちに帰ってじっくり読みながらもう爆笑.友達にもウケがよかったです.買って損はなかったと思っています.
紙の本細胞の分子生物学 第3版
2002/06/04 16:41
ライフサイエンスの最大の教科書
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ライフサイエンスを学ぶ大学生には必読の書。全部覚えるのは無理だけど、最新の生命現象についての説明が全部載っている。英語版のほうが安いし、最新版が早く出るから、英語が平気な人にはそちらもおすすめ(Molecular Biology of the Cell)。大学の講義でちょっと聞いたことのある話とかが詳しく書かれていたり、大学院の入試問題の元になったりしている。研究者になりたい人は、買ってもそんはしない。
紙の本ナンバーファイブ 吾 1
2002/05/09 12:39
新しい世界観
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松本大洋の世界が新しい形で作り上げられている話。戦うことと愛することが同居する、やさしくてせつない世界。よく読みこまないと分かりにくいところがあるけど、そこを後で読んだときに「ああ、そういうことだったのか」と分かる快感がたまらない。
2002/08/01 13:43
大学受験から学術英語論文作成まで
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うちの高校は生徒全員これを買わされました.あくまでも文法の問題集なので,これで英文が読めるようになるというシロモノではありません.どちらかというと英作文をするときのルール,冠詞や前置詞の使い方,似た意味の単語での微妙なニュアンスの違い,決まり文句等,重箱の隅をつつくようなものばかりで面白くはありません.
しかし,大学受験の勉強には必要不可欠なもので,この一冊を何度もやって覚えれば,テストで小さなミスがなくなります.
そのうえ,わたし自身現在英語で学術論文を書いているのですが,英作文をする上で日本人にとって難しい,細かい文法のルールがこの一冊にほとんど網羅されているので,高校時代に使っていたこの本は今も現役で活躍しています.カバーもなくて,白くハゲチャビンのボロボロな本ですが,その分愛着がわいてきたような気がします.
紙の本スティル・ライフ
2002/07/31 14:16
この透明感が大好きなのです.
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主人公がアルバイト先で不思議な男・佐々井と出会い仲良くなるが,やがて佐々井はアルバイトをやめてしまう.しばらくして佐々井から電話があり,あることを手伝って欲しいと頼まれ事情を聞くが,その裏には大きな金と犯罪の影が……と書くとたいへんスリリングに聞こえますが,文章はいたってクールというか淡泊に流れます.そんな犯罪のことなどたいしたことじゃなくて,それよりも地球の地形のできかたとか,星の並びとか,染色の化学反応のことを考えて二人が話をしていることの方が大切だから,とでも言っているような.これを読んでからというもの,飲み屋とかでグラスの中にチェレンコフ光(宇宙線が水分子にぶつかって放出される光)が見えないかと思ってじっと見つめてしまうくせがつきました.
紙の本羊の宇宙
2002/07/31 13:56
物理学と哲学の宇宙
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長年,物理学で宇宙を考えてきた老博士.モンゴルの少年と出会い,少年の宇宙観を聞き,新しいインスピレーションを得る.「石はどうして手から落ちるのか」という質問に少年は「そんなの簡単だ,石が落ちたいと思ったからだ」と答える.「世界は何でできているのか」という質問には「ここと,ここじゃない場所.または羊と羊じゃないものでできている」と,いとも簡単に答えてしまう.宇宙の法則は単純で美しいものであると考える老博士は,少年の哲学がその法則であることに気付く.
CGで描かれた絵が宇宙の浮遊間をみごとに表現していて,読んでる間ふわふわとここちよい.
紙の本きちきち四世 新装版
2002/07/31 11:37
この絵本はすごい!
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哲学です.自分という存在に対する,誰もが持つであろう疑問.自分はどこから来てどこへ行くのか,世界に対して自分の役割とは何なのか.主人公の「きちきち四世」は考え悩みながらも世話係の「じい」に導かれ,この世での彼の役割「神様」として成長して行きます.最後の場面で卵から子供(たぶんきちきち五世)が生まれて,四世はまたもうひとつ答えのヒントというよりは疑問かもしれないものが増えて終わります.このつづきは「きちきち五世」で.
絵は筆と墨で描いてあって,質素ながらも力強さがあるタッチがわたしは好きです.まあるいヒヨコみたいなきちきち四世はかわいいです.
2002/06/04 16:48
大学院入試対策に!
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これは高校の時にやってたような問題集とは違って、実際の実験結果を想定して、予期しないアクシデントなどを考え合わせた上で答えを出さなければならない、実践的な問題集。昼に実験をすると失敗したが同じことを夜にやったら成功した、これはなぜか、とか。論理的なものの考え方が身につく。今これをやってみて、大学院の入試前にやっておけばよかったと今更ながら思った。
紙の本ナンバーファイブ 吾 2
2002/06/01 15:17
泣きました
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主人公のナンバーファイブはちゃくちゃくとかつての仲間と戦っていきます。私はこの巻のナンバーシックスとの戦い(?)のところで、思わず本を閉じて号泣してしまいました。愛と幸福と戦い。映画の「レオン」を見てもそう思ったのですが、強いやつはみんな死んじゃうんだから、その人を愛するってことになると、きっと辛い思いをするんだって。でも、それでも、私はどうしても強いやつが好きなんです。それと、パパとナンバーファイブの対話のところもぐっときました。
紙の本花
2003/01/10 16:53
柳田民族学,みたいな
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木を削ってお面(祭礼の踊りで使う)を作る家系に生まれた兄弟.面を作るのが上手な兄は,普通の人にはわからない「彼ら」が見えて話もできるが,そのせいか家の外に出るのを怖がっている.弟は「彼ら」を感じることができなくて,面を作るのも兄より劣る.父親は兄に面を作らせるのを拒み,弟に作らせたいのだが,周囲の人は兄の作る面を求める.そんな中,森で父親が危険な状態になったことを「彼ら」に教えてもらった兄は,やがて決意をする…….
話の大筋としては松本氏の「GO GO モンスター」と似たような印象.全体的にしっとりと落ち着いた雰囲気で話は進む.舞台となる土地は山村といった風情で,人々の衣装や生活様式などの文化はまるで柳田國男的民族学というイメージ.松本氏の興味がこんなところにもあったのか,という感想を持つとともに,マンガとして一般ウケはしそうにないとも感じた(もともと舞台演劇の脚本だったのだから当然かもしれないが).松本氏特有の,注意深く読まなければ話の本当の意味が見えてこないという描き方も,ここまでくれば立派な文学だと言っていいのかもしれない.
紙の本山月記・李陵
2002/07/16 14:59
高校の現代文の授業をおもいだして
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「山月記」は高校の現代文の授業でやりました。とってもクールな文体が逆に読み手の想像力を引き出して、登場人物の心理を自然と考えさせられます。あと「文字禍」は子供の頃ひらがなの練習をしているときに、ずっと同じ字を見ているうち、その文字がただの線の集まりに見えてきて、文字としての意味がわからなくなる、という体験をしたのはわたしだけではないはず。ここでは老人がそのような体験をするのですが、それが実は文字の精霊の仕業だったという話。「言葉の意味」という哲学的な、ヴィトゲンシュタインの言うところの「言語ゲーム」の正体が垣間見えます。