瑠璃さんのレビュー一覧
投稿者:瑠璃
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2002/11/09 21:06
ブラームスの子守唄
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梅子と元天才ピアニストの蔵之介は、梅子が生まれたときからの付き合いである。お互いに一緒にいることが当たり前の二人の間に、情熱的なセレナーゼは流れていないようだ。
しかし、月夜に梅の香とともに流れてくるやさしい子守唄が聞こえてきそうな、「ゆるゆる」した関係がある。読んでいて、気持ちが穏やかになった。
脇を固める蔵之介の両親なども、いい具合に「ゆるゆる」。まさに「和み系」だ。
これを読了後、私は久々にピアノが弾きたくなった。思わず作曲者がブラームスである曲を選んで弾いてみた。私以外に聴くもののない音だった。
聴いてもらう誰かがいる音楽は幸せである、としみじみと思ってしまった。
漫画で音を表現することは困難であるが、この作品の繊細な絵の間には柔らかい音が満ちている。
読んで幸せな「ゆるゆる」を味わって頂きたい。
2002/08/26 04:17
捨てられていくものと、捨て難いもの
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晴明が魔術師と化していく様子が、見事に具現化されています。
難解な解釈が理解できるかどうかは別として、晴明が自分の本質に近付いていることがよくわかります。
博雅とじゃれあったり真葛を慈しんでいる晴明も、晴明なのですが…。
核へ近付くほどに、あらゆる物を捨ててしまい、痛々しいです。
自分をあまりにも冷静に分析する晴明の姿は、理想ですが悲しいです。
紙の本スカイ・クロラ
2002/08/26 03:59
生きることの静謐
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重力から自由になったような飛行機乗り。
生命の連鎖から解き放たれたような子供。
淡々と綴られた文章は、単純化されてあまりにも綺麗である。
それを読んだ私は、自分の内にある激しい感情に驚いた。
人間は重力から自由になどなれない。
生態系から解き放たれることもなく、綺麗な生き方などない。
だから、青い空を見て泣くことが出来る。
紙の本伊予小松藩会所日記
2002/08/29 21:29
弱小藩の生き残り術
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私事ながら、この本に登場する伊予小松藩(現:愛媛県周桑郡小松町)は私の郷里である。
陣屋跡や藩校跡で子どものころよく遊んだし、旧藩主やその家臣の末裔は今でも小松の中で生活している。
私にとって、あまりにも身近な存在についての本なので、少々贔屓目で見てしまうことを、お許し頂きたい。
伊予小松藩は小藩である。しかも外様大名。
今で言うと、すぐにでも倒産しそうな零細企業である。
「会所日記」とは、藩内で起こった様々の事が綴られている覚書です。
例えば参勤交代の度、資金繰りに四苦八苦する様子などである。
大変なことであるが、読んでいるほうにとっては人間くさくておもしろい。
小藩と言えども、事件は起こる。
華々しい話はないが、ひとつひとつのエピソードが現代に通じるものがある。
なぜこのような小藩が明治維新まで残っていたのかが、私には不思議であった。
しかし、この本を読んで得心した。
是非とも、ご自分で読んで確かめて頂きたい。
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