ふくろうさんのレビュー一覧
投稿者:ふくろう
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紙の本掌の中の小鳥
2001/12/18 01:02
きっかけはつまらない偶然にちょっとした作為
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さっぱりしたラブストーリー。カクテルならスプモーニかな。ちょっと苦くて(笑)もちろん謎解きもしっかりあり、です。男性の視点で書かれている(部分が多い)からかもしれませんが、私が読んだほかの加納さんの作品よりドライな感じがします。で、一番おしゃれかなぁ。
昔片思いしていた女性の夫に会い、苦い思い出に落ち込んでいた主人公が、パーティーで出会ったのは個性的で素敵な女性。彼女と出会ってから、彼の周りは小さくも不思議な事件でいっぱいに…。
回転が速いけどちょっと素直じゃない主人公と、元気でまっすぐな彼女の組み合わせがほほえましい。物語の舞台は「エッグスタンド」というバーなのですが、女性バーテンダーも「第二のヒロイン」って感じでかっこいい し。ストーリーに合ったカクテルや花々、素敵な言葉もいっぱいです。
私はミステリファンなので、謎解きの部分も好き(マンションの部屋が消えちゃう話とか。きちんと伏線の用意された本格ミステリです)ですが、出てくる人達の個性とか思いとかが一番の魅力かなと思います。大切にしてきた事、変わらない事、断ち切った事、影響されていく事…、男性はちょっと情けない所がかわいいし、女性は欠点はあってもそれぞれ一生懸命で凛々しいし。ミステリファンじゃない人にもおすすめです。
タイトルにした言葉は一話目のキーワード。この書評が一つのきっかけになりますように…。
紙の本トーマの心臓
2001/12/18 01:42
名作なのにー!!構成が抜群です
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名作なのに、書評は一つしかついてないんですね。勿体なーい。ぜひ読んでください。大学のとき周り中がハマって、男の子も夢中で読んでいました。
ある冬の夜、トーマという少年が線路に飛び降りて死んだ。みんなに愛されていた少年の死は自殺だったのか? そして同じ寮の上級生に彼の最後の手紙が届き、彼にそっくりな転校生がやってくる…。
最初の方に出てくる意味深な言葉が、最後にいくにしたがってパーツがパタパタはまっていき、思いがけない意味が浮かび上がってくる。私が全体の構成に凝った話が好きなためかもしれないのですが、ストーリーのつくりが抜群だと思います。メッセージも「神とは愛とは犠牲とは何か?」と、とても深く悲しいのですが。
絵は「少女漫画」だ!! と言う感じですが、読んでいくと入り込んでしまい古さを感じなくなります。ただ、男の子同士の友愛の話なので(決していいかげんにいやらしく描かれたりしていませんが)、ストーリー自体には好みがあるかもしれません。
紙の本半神
2001/12/18 02:04
深い。
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読んでいて涙が止まりませんでした。妹がいるのですが、まさに姉妹の複雑な感情そのものだと思います。無邪気に笑う妹はかわいい、でも両親の愛を奪っていく妹は憎い。無心に信頼を寄せてくる妹の罪の無さを感じれば感じるほど、自分が惨めになっていくような気がして。
「兄弟は他人の始まり」なんて言いますが、今、私にとって妹は、大切で、心配で、無条件に守ってやりたいと感じる存在になりました。「半神」を読んで「そんな事もあったなぁ」と思うと同時に、「みんなそんなトコあるよ」と言ってもらったような気がしました。
2001/12/18 04:07
良くある感想かもしれないけど「一晩で読みました」
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
一晩で読みました。すでに3巻まで読み、日本語版が無くなってしまったので、洋書を1巻から読み始めています。ハマリましたね。
深みがない・想像力をかきたてないなどの批判もあるようですが、その緻密で現代的な舞台設定が一番の魅力だと思います。「現代に魔法使いが居ても変じゃない」と思わせるところに、世界中の子供たちも惹き付けられているのでは? オーソドックスな魔法の杖・マント・ふくろうなどなどの道具立てと、お店に行けばそのふくろうから魔法の杖、ドラゴンの目玉まで買えるという現代的な設定を共存させているのはそのためだと思います。
それにユーモアがあって楽しい! どこまでも手紙が追いかけて来たり、組み分け帽子が考え込むシーンではいつも笑っちゃう。魔法の小道具も一つ一つが細かくて、思わずニヤニヤしちゃう。お約束だなぁ、と思うのがまた楽しかったりして。
ストーリー展開は「子供向け」とは思えないほど構成が巧み。1巻の中でラストに向けていくつもの伏線が張られているのはもちろん、2巻目、3巻目の伏線になっている個所もあるんです。読み進めて行くと「1巻目のあの話がココにつながるのか!」という面白さも味わえます。ひょっとして全部のストーリーを考えてしまっているのかしら?
登場人物がみんな生き生きして魅力があるのはもちろんですが、彼らのメッセージが単純でまっすぐなのも魅力の一つ! 何かと言うと「人生の不条理」「生きる悲しさ」などをテーマにしたものは深くて高尚で、「友情」「勇気」「親の愛」…などを真っ向から肯定しているものは浅くて子供向け、と扱われがちな気がしますが。ましてそれがユーモアや夢にあふれていると余計に。でも、お説教嫌いの私みたいな人間でも「そうね、がんばろう」って思ってしまう物語って単純なもの。それはそれで偉大だと思う! どうでしょう?
つらつら書いてしまったけど、要するにおすすめです。さぁ、今すぐ注文しよう!!(笑)
紙の本イグアナの娘
2001/12/18 02:31
母親と娘ってこうでは?「親子の普遍のテーマ」じゃないのかなぁ?
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まさに母親と娘の関係かな、と思うのですが。身近だから、似ているから、血がつながっているからこそ受け入れにくい、打ち解けられない。そう言う面って無いですか? 私が二人姉妹の姉なので、まさにこの設定どおり。だから余計にそう感じるんでしょうか? 特に虐待されたりした事は無いし、母とは仲も良いですが、描かれている関係は理解できます。父と息子でもありうる「親子の普遍のテーマ」かな、と思っていたのですが…、万人受けするテーマではないのかしら?
愛嬌のある絵に思わず笑ってしまうけど、ホントは笑い事じゃないんですよね。彼女の「イグアナとして生きていくんだ」という力強さが大好き。その強さがほっとするラストに繋がっていくんだと思います。
紙の本いちばん初めにあった海
2001/12/17 23:30
切なくて切なくて。「ミステリーは読まない」人にぜひ。
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これはすごいラブストーリー?すごいミステリー??? 謎が解けた時、切なくて苦しい記憶から開放される二人の女性の再生の物語です。
静かな、淡々とした生活を求めて一人暮しを始めた主人公が、アパートの騒音に悩まされ、引越しを決意する。荷造りの途中で見つけた一冊の本「いちばんはじめにあった海」に挟まれていた開封されていない手紙の差出人とは…?
やっぱり殺人や強盗は起こらないのだけど、それが余計に主人公の心の傷をリアルに感じさせるんです。人が傷つくのには事故や小さな誤解やすれ違い、、普通の人に起こりうる事で十分ですもんね。
それを乗り越えようとする人同士の絆。友情とか愛情と言うと重くて似合わないけど、しっかりと結ばれた人と人との絆がすごく切ない。「ガラスの麒麟」で描かれていた女性の心理がすごくうまく描かれていて、傷ついて引きこもった時の周囲から遊離してしまった感じとか、女性同士の関係の距離感とかがとても好きです。
一話目と二話目のバランスも良くて、この人の連作はホント物語と物語のつながりがパズルだなーと思います。ぜひ、「普段読むのは恋愛小説。血みどろのサスペンスやホラーは苦手」と言う人に読んでみてもらいたいです。
紙の本ななつのこ
2001/12/17 22:27
私もおすすめ
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大好き!! これ以来、加納さんの本を読み漁ってます。残酷な事件は起こらなくて、日常のちょっと不思議な出来事がほっとしたり、せつなかったり…でも謎解きはきちんとしてて。連作集なのですが一つ一つ最後に「あーっ!」と言っちゃうんです。
主人公が「一目ぼれした本」の作者に書いたファンレターとその返事が、そのまま「問題編」と「解答編」になってます。その「一目ぼれした本」がもう一つの「ななつのこ」。二つめの「ななつのこ」のストーリーとリンクして、主人公の見つけた謎が解かれていくのです。物語と物語の構成が上手で、二つのストーリーがリンクしているだけでも複雑なのに、最後に物語同士が「パタパタッ」つながるんです。どうつながるかはお楽しみ。
私のお気に入りは居なくなっちゃった怪獣の話。
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